絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

159 / 592
一三四話#【外へ】

神崎

 

 

あれから、師匠は二年程掛けて世界の調整を終えた。

二年も掛かった理由は、『すじゅかママ』だ。

それが、一番大きな割合を絞めているだろう。

結論だけを言うのなら、あの世界軸に新たな【凌辱系転生者】は愚か【異端技術】は存在しなくなっていた。それはつまり、【凌辱系転生者】達の改心を意味している。

その結果、翼が『元』凌辱系転生者に文句を言う場面があった。だけど、改心した者達に自分の功績の為に【凌辱系転生者】に戻れとか言い出してはイケない。

あの時は、本当に焦った。師匠も『何を言い出すんだ!?』みたいな顔をしていたし、その後の翼の言い訳も笑えてしまう。まあ、鉄の呆れ切った様子以上の笑いは取れなかったけれどそれなりに楽しいお別れ会となった。

その翌日には、俺達は新たな世界軸へと旅立ったはずなんだけど……何故か、見知らぬ広場に俺達は立っている。

 

「えっと…………ここ、何処だ?」

 

「ねぇ、こんな所に棺みたいなのがあるんだけど……」

 

「棺?…………吸血鬼でも入っているのか?」

 

「まさか、んなわきゃねぇーだろ!?」

 

そこへ、師匠が黄緑色に光る壁から現れた。

それを見て、何となくSF等に出てくる転移装置のようなモノかな?と考える。つまり、ここは師匠に関係する場所なのだろう。しかし、秘密基地でもないようだし……いったい、何処だというのだろうか?

 

「師匠、ここは?」

 

「僕の所有する船だ。これから、僕達は【セフィロト】に向かう……即ち、【零の次元】にだ……」

 

「えっと……マジ?」

 

「マジだ。ついでに言うと、僕達は今高次元にいる」

 

「……………………」

 

師匠は、何でもない事の様にサラッと大問題を告げて来た。『高次元!?高次元ッスか!?』と大はしゃぎなのは、言うまでもなく鉄だ。ある意味、俺はコイツが羨ましかった。師匠の言う言葉の意味を、軽い意味で捕らえられる何もわかっていないコイツがマジで羨ましい。『わかってんのか!?』と小一時間問いただしたいが、今はそれどころでは無かった。

 

「えっと、師匠……他の《神殺し》の方々も……」

 

「もちろん、一緒に戻るよ?ああ、挨拶がしたいならそこの壁を越えて通路を右に突き当たりを左に行った三番目の部屋に居るよ?」

 

「…………それは、パッと見ればわかる場所ですか?」

 

「…………両開き扉くらいの出っ張った壁が入り口になってるから、パッと見ただけじゃあわからないかも……」

 

「つまり、魎皇鬼みたいな内部構造なんですね?」

 

「リョウオウキ?」

 

「クリスタルで出来た宇宙船です」

 

「あー……まあ、そんな感じかな?」

 

「つまり、魎皇鬼と同型の船と考えて良いのか……」

 

師匠が、珍しく言葉を濁して来た。きっと、クリスタルで出来た船がアニメ技術の再現だと理解したからであろう。

視線も泳いでいたし、考えるまでもなくこの船がクリスタルで出来ている事を語っていた。それにしても、【鮮血の小悪魔】さん趣味に走り過ぎです。

 

「まあ良いや。【鮮血の】をとっちめるのは、また今度にするとして……今は、周囲を散策している使い魔達が戻り次第、セフィロトに向かうことになるから……覚悟してて!」

 

「マジッスか!?」

 

「アルバイトだけじゃあ、間に合わなくなって来たんでセフィロトでお金を下ろして来るんだよ。一兆か、十兆あれば十分だし……それに、そろそろ僕の持ってる端末が時代遅れの産物になりつつあるみたいだしなぁ……」

 

普通に、オーバーテクノロジーの塊であるはずのそれらは、師匠が言うには時代遅れの骨董品となり始めたそうだ。

処理能力も落ちているから、一度セフィロトに戻って一新するらしい。

 

「ねぇ……お買い物システムは、出来たら現状のままでお願い出来るかしら?」

 

何故か、翼が超真剣な面持ちで要望を告げている。

 

「あ?ああ、じゃあアレの最新バージョンな?」

 

「設置型と自由型を選べるの!?」

 

「出来ると思うよ?馬鹿が居ればだけど……」

 

色々、言いたい事はあるけれど話を聞いている間に使い魔達が帰還したらしく船が動き始める。体感感覚では、船が動いているようには感じないけれど、師匠が外の光景を俺達にわかるように見せてくれているので動き始めたという事がわかった。

 

「不思議な光景ね……光り輝く雲が見えるわ……」

 

「ああ、あれは光雲だよ。あの下が中次元だな……その下が、低次元って事になっている」

 

「あれ、水蒸気なの?」

 

「いや、綿菓子みたいなモノだよ。食えないけど……」

 

「触れるのね?」

 

「うん。フワフワしてる……」

 

「触れるなら、布団とかに出来るんですか?」

 

「ヤろうとした奴はいたけど……時間が経つと、消えちゃう物体だよ?造れる訳ないだろう?」

 

『あー、いたんだ……』

 

そうこうしている内に、船は光雲を抜けて星々が輝く宇宙(?)空間へとやって来る。その後、外の光景は消えて師匠が『亜空間移動してる』と言って棺の前にあった出っ張りに座った。そんな師匠を見ていると……後ろの棺に視線が行って、それに関して何も聞いて無かった事を思い出す。

 

「師匠」

 

「これには、僕の本体が入っている。僕を封印する為の棺だ。吸血鬼が飛び出したりはしないぞ?」

 

「そんな事、聞いてねぇよ!?つーか、師匠の本体!?」

 

「ああ。今は、封印されているけどな……必要となれば、今の僕を消して意識を本体に移せば封印は解けるよ」

 

そう言えば、現在の師匠は自分を『分体』だと言っていたのを思い出した。ならば、この棺に封印されているのが師匠の本体だという事なのだろう。

しかし、見れば見るほど何もわからない棺である。

普通なら、畏怖や威圧感の様なモノが滲み出ていてもおかしくないのに全く何も感じない。即ち、師匠自身を完全に封印しているという事なんだろう。

 

「はぁぁ……今の師匠は、分裂した半分の存在なんですね」

 

「んにゃ。羽、三枚程度の存在だよ?」

 

「は!?羽三枚!?」

 

羽三枚で、あのレベル!?いったい、どんな化け物だよ!?しかも、それで《神殺し》が可能だって!?もはや、チートじゃねぇよ!反則じゃん!?

正気をぶっ飛ばすような発言に、俺は自分の耳を疑ってしまった。常識的ではない。だが、恐ろしい事にそれでも師匠は下から数えた方が早い存在なのだ。

つまり、この上がまだ存在しているという事だ。

そして、俺達は今……そんな化け物達の巣窟に向かっているという。死ぬ……下手な事をすれば、確実に死んでしまう。

 

「師匠!後生ですから、戻りましょう!!」

 

「もう無理だよ……だって、着いちゃったもん(笑)」

 

言われて、周囲を見回すと薄い雲に覆われた様なホワイトグレーな世界を師匠の船は飛んでいた。何もない、どこまでも白くて灰色な世界をぽつんと飛んでいる。

 

「これが、次元が生じる前の命すら存在出来ない空間だ。あの《旧・神族》ですら、手も足も出ない場所。【死の海】とも呼ばれる【次元の果て】……【零次元セフィロト】だ」

 

「えっと……俺等、生きているんですが……」

 

「この船の中は、安全領域だからな……でなければ、出入り出来ないじゃん……まあ、僕等は【零の次元】でも問題なく存在出来るけど……」

 

言って、師匠は秘密基地の箱を地面に置いた。きっと、秘密基地の内部にいるすずかを呼び出すつもりなのだろう。

すずかは、今尚秘密基地の中で暮らしている。師匠の願望と、すずか本人の願いによって異世界行きは決定済みらしいけど……今は、すずかの調整の為に留まっているとのことだ。要は、すずかが得た《外部協力者への功績褒賞(スキル)》を馴染ませる為の期間というモノだった。

完全に師匠のわがままなんだけど、すずかが了承している上に必要な行為だからと二年間程留まっている状態だ。

まあ、すずかが心配なのはわかるので何も言うつもりは無いけれど……そろそろ、親離れする時期ではないだろうか。

 

「自動誘導システムのリンクを確認。オートパイロット起動……と。もう二、三時間程すれば、セフィロトのユグドラシル・シティに到着だ!」

 

「マジッスか……(凹)」

 

本気で、凹んでしまう。ユグドラシルに着いたら、俺達は【組織】の中でも最悪最凶と呼ばれた、トラブルメーカーさんに紹介される事が決まっていた。既に連絡が済んでいて、尚且つ良い返事も貰っているとのこと。

お陰で、気分が全力で乗らなかった。しかも、俺達は【組織】に二週間も滞在する事に菜っているらしい。船の整備と共に、秘密基地やその他の基本支給物を一新する予定とのこと。他にも、物資や足りない物の補充などをするらしい。ここでしか、得られないモノも多いから補給の為に立ち寄ったという事だ。それと、この世界で使えるお金の引き出しもするらしい。それは、俺達への給料等に当てられる事になっているので文句は言えなかった。

 

「神崎は、一度……最強の女剣士の所に連れて行って貰え。まあ、二週間しかないから短期間の修行を受けることになるだろうけど。僕は、その間に神崎専用の武具を貰って来るから楽しみにしておくんだな!!」

 

「くそっ!ますます、行きたくなくなって来た!!」

 

「武具名は、【ダーティー・ニーズ】。重力を操る両刃の両手剣だそうだ。特殊効果があって、土系の魔法を強化出来るらしいから錬成とかが楽になるんじゃないか?まあ、受け取ってみない事にはどんな効果があるかはわからないから後で試してみると良い……」

 

「【ダーティー・ニーズ】……汚れた両膝ッスか?」

 

どうやら、それが俺の専用武器となるらしかった。

 

「まあ、ネーミングセンスはアレだけど……強力な武具である事は間違いない。他にも、色々出来ると聞いているから持っていても損にはならないさ。因みに、制作者は【風紀委員】だとさ。もし、出会う事があったならお礼を言っておくと良い」

 

「…………それって、この組織のNo.2じゃないですか!?なんで、そんな人が俺の武器を作るんです!?」

 

「他の奴の手が空いていなかったからだろう?大丈夫、大丈夫!片手間に出来る事だから、息抜きとかに使われたんだろう?良かったな!」

 

「片手間……息抜き……もう、規格外過ぎる……」

 

俺は、両膝を付いて頭を抱えてしまった。

 

 

………………………………

 

 

……………………

 

 

…………

 

 

俺達は今、巨大な格納庫にいた。何百という、宇宙船(?)モドキが格納出来そうな程広いその場所で立ち尽くしている。最初は、港に着く予定だったのだけど……船の整備もあったので、直接造船所の格納庫エリアに直行すると師匠が言い出した為だ。

 

「ヤベー!広ーい!!」

 

「鉄!ちょっと、落ち着け!」

 

「これが、落ち着いていられるか!?超SFだぞ!?オーバーテクノロジーだぞ!?男なら、大興奮するシュチエーションだろう。まさか、枯れているのか?」

 

「OK!まずは、貴様から血祭りに上げてやるわ!!」

 

ここに来る前に見た、【組織】は巨大も巨大過ぎる恒星規模の機械で出来た惑星だった。それが、後幾つかあるとのこと。しかも、今尚建設されて増えているらしいっていうからとんでもない話である。

 

「ちょ、冗談に本気で掛かってくる人があるか!?大人げない!!あ痛!?ちょ、止めて下さいよ!?」

 

鉄を捕まえて、拳骨を落とす。

そのまま、顔を掴んでギリギリと締め上げてやった。

 

「その辺にしておきなさい……」

 

「…………ぉぉぉおおおやあああーーー!!!」

 

翼が呆れた体で、俺達の仲裁をしに近付いて来た辺りで……凄まじいスピードで、何者かが叫びながら突っ込んで来た。そして、勢いを殺さないまま師匠に突っ込んで行く。

師匠は、慣れた様子で突っ込んで来た人を勢いを流して投げ飛ばしていた。ってか、投げ飛ばすんだ……。

突っ込んで来た人は、何故か顔面スライディングを決め海老ぞり状態で硬直。しばらく、動かなかったが師匠が軽く蹴ると直ぐに復活した。

 

「ソウニャ!久しぶりだぁ!」

 

「ハハ、セイビアも相変わらずだな……フェイやシュンは、一緒じゃないのか?」

 

「今は、別行動中だ。ま、任務じゃねぇから顔を会わせる事になる……で?そっちの三人は?」

 

セイビアと呼ばれた青年は、見た感じでは無表情で眠た気な様子なのに声だけが嬉しそうで楽し気だった。もしかすると、表情と感情が結び付いてない人なのかもしれない。

 

「ああ、彼等は今の任務で強力してくれている者達だ。元踏み台と邪神に魅いられた不幸少女。それと、迷子だな」

 

「ちょ、師匠!ちゃんと、紹介して下さいよ!?」

 

「師匠?お前、弟子を取ったのか!?しかもコイツ、《神殺し》の肉体じゃんか!?え!?嘘っ、お前……【契約者】を作ったのか!?」

 

「違うよ……それは、神崎大悟つってインスタント・ソウルの試し体だ。造ってみない事には、わからない事もあるからな。お試し感覚で、造ってみた訳だ……」

 

「あ……じゃあ、後で破棄する予定なのか?」

 

何故だろう?師匠とセイビア(?)さんの会話は、俺の背筋を冷やかに冷たくする効果があるらしい。

ゾワゾワとした寒気が、背筋を這い回っていた。

 

「魂の方は、転生させる予定ではあるけど……肉体は、破棄する予定ではあるよ?」

 

「残念。仲間が、増えるかと思ったのに……まあ、お前がそんな事を望まないのは知っているけど……一応、優秀そうな奴は勧誘しておいてくれよ?」

 

「人材不足は、何処でも一緒だろう?ガンバ!」

 

「超他人事だなぁ…………あ、そうそう。お前、今回の指令書今あるか?」

 

「メールだったから、BOXにあるけど……」

 

そう言って、師匠はウィンドを開き契約書みたいな細かい文字のメール(?)を提示した。それを確認したセイビア(?)さんは、一つ頷くと俺達の度肝を抜く発言をする。

 

「ん。じゃ、今回の任務はこれにて終了だ!お疲れ様~」

 

『は?』

 

微妙な空気の元、突然の終了宣言に俺達は言葉すら無かった。え?師匠の任務、これで終了なの!?

 

「どういうことだ?」

 

「ま、ま。今回の騒動が、もう少し長引きそうだって話があってな?で、それじゃあ報酬と労働が割に合わないって意見が上がって来て……報酬の見直しが行われたんだ。で、今出している指令は一旦終了って事にして、再度指令書を発行する事になったんだよ!」

 

「……………………つまり、続行って事?」

 

それを聞いて、俺達はホッと安堵の息を吐いた。

全く、セイビア(?)って奴は人が悪いというか何というか……他人を驚かせる事に余念を掛けない人らしい。

あ、化け物か……。

 

「ああ。今回の任務で、並行世界の乱数複製があったらしくて一筋縄では行かなくなっちゃったらしい。お前は、《ルール・ブレイカー》による複次作用だとか報告していたけど……アレが、仕様らしいぞ?」

 

「そうなのか?じゃあ、再発行された指令書の報酬は?」

 

「フッフッフッ……見て驚け!ジャジャーン!!」

 

「……………………正気?」

 

セイビア(?)さんが、表示したウィンドを師匠に向けて勝ち誇った様に胸を張る。師匠は、そのウィンドを覗き見て驚き疑惑の表情で問い直す。

 

「疑うよな!!あのケチ臭い上層部が、こんな太っ腹な報酬を上げるなんて……しかも、歩合制だぞ!?」

 

「お……おおぉう!?ちょ、これ……間違いとかじゃねぇのか!?上層部、酔っぱらってたりしないよな!?」

 

盛り上がる二人。あんな、師匠の楽しそうな姿は最近見掛けなかったが……気を許しているセイビア(?)さん前だからか、大はしゃぎである。

 

「だろ?だろぉ!?俺も、この後で指令を受けようかと思ってるんだよ!!滅多にない儲け話だしな!!」

 

「!?トラブルメーカーが、動く!?それはそれで、面白そうだけど……僕の指令書は!?」

 

「上層部に問い合わせたら、すぐ発行して貰えるぞ?」

 

それを聞いた師匠は、『ヒャッホー』と言いながらメールを打ち出した。そして、新たな指令書を貰ってニヤニヤとそれを眺めながら上機嫌となる。そんな師匠を横目に、セイビア(?)さんがこちらにやって来て自己紹介を始めた。

 

「零次元・セフィロト……ユグドラシル所属。ヴァリュウ軍、第三中隊の聖 セイビアだ。セイビアって呼んでくれ……よろしくな?」

 

「あ、これは御丁寧に……神崎大悟です」

 

「不知火翼よ。よろしく」

 

「鉄翼刀だ」

 

「じゃあ、こちらに滞在する間……君達が使う部屋に案内しよう。ああ、一応男女別に用意してあるから同じ部屋とかにはならないから……セックスとかする場合は、そういう施設でやってくれ……」

 

『しない(わ)よ!?』

 

「アハハハ。冗談。冗談だよ!」

 

「あんまり、イジメるなよ?それでなくても、彼等は転生被害者だ。一応、保護やカウンセリング目的で行動を共にしているんだから問題になる様な行為や発言は控えてくれ」

 

「はいはい。じゃあ、そこの自動浮遊円盤に乗ってくれるか?この広い格納庫では、通常的に使われる移動手段なんだ……ソウニャもそれで良いよな?」

 

「ああ」

 

促されて乗った円盤は、浮かび上がると結構なスピードで格納庫から外に出て行く。格納庫から出ると、一面ガラス(?)で出来た円環状の通路がずっと続いていて外が一望出来るようになっていた。そのトンネル状のガラス(?)内を移動して行くと、俺達が宿泊する施設となっているらしい。らしいっていうのは、施設に入ってもしばらくは浮遊円盤での移動だったからである。

 

「二週間の滞在期間に、装備とか一新するのか?」

 

「ああ。物資の方も購入予定だ。詰め込めるだけ、詰め込む予定だよ。それと、システム交換も予定している。【鮮血の】がいなくても、出来るよな?」

 

「まあ、不可能ではないな」

 

「後、秘密基地をA型からC型に変更だ。カスタムするけど……アプリで、可能だよな?」

 

「ああ。問題ない……そうそう、後でちょっとお願いがあるんだけど……聞くだけでも、聞いてくれないかな?」

 

「聞くだけならただだからいいよ?」

 

円盤から降りて、少し歩いた場所から宿泊施設へと入っていく。プシュッという音がして、自動ドアが開くとそこは秘密基地の広間より二倍は広い空間だった。そこから、いくつかの部屋へと通じる扉が見てとれる。

 

「一応、スィートを用意して置いた。寝室は、そっち。三部屋あるから男女別で使えば良い。ああ、ソウニャが滞在している間は俺がいる様になっているから用があるなら俺に言ってくれ……」

 

「悪いな」

 

「良いさ。そうしておけば、こちらの頼みを断りにくいだろう?つー訳で、俺の個人的な依頼を受けてくれないか?」

 

「内容にもよるが、出来るだけ聞こう……」

 

セイビアさんは、ニヤリと口角を吊り上げてソファーに座った。そして、俺達にも座る様に促す。ソファーに座ると、セイビアさんがズズィッと身体を乗り出して来た。

そして、一旦前置きをしてから語り出す。

 

「俺も、小耳に挟んだ程度なんだが……とある世界で、目に余る事態が進行中らしい……」

 

「目に余る事態?……ある程度、発展した文明のある世界で全人類が裸体で行進しているのか?」

 

「それはそれで、大問題だが……今回は、違う。ソウニャは、『ソードアートオンライン』という言葉を聞いた事はあるか?」

 

『ソードアートオンライン!?』

 

師匠は、初耳といった感じだったが……俺は、とても良く知っている物語の題名だ。しかし、まさかここでその名を耳にする事になろうとは思わなかった。

 

「……オンライン?って事は、ゲームか何かか?」

 

わかっていた事だけど、師匠は『オンライン』という言葉からそれがゲーム関連の題名と判断したみたいだが、少し違うので訂正しておく。

 

「師匠、SAOは書籍等を含む物語でアニメ化もしています」

 

「ゲームじゃないのか……」

 

「へぇ……君は、知ってるのか…………成る程、アドバイザーとしてソウニャと契約したな?」

 

「あ、はい。その通りです」

 

「うん。じゃあ、詳しい内容は君がソウニャにしてくれ。俺は、現在進行中の問題について話すな?」

 

「はい。承りました」

 

説明が、面倒になったのだろう。SAOの世界観関連の説明を省いて、セイビアさんは現在進行中の問題について語り出す。

 

「まあ、簡単な話。ゲームの世界観をそのままに、独立した世界として構築した世界があるんだ……これ、【転生者】が特典として願った結果……生まれたらしい」

 

つまりは、【転生者】が特典として願ったのがSAOというゲームを忠実に再現した世界だった。まあ、そこまでならば問題なかったのだが……転生者は、事もあろうにSAOに別要素を加えてチート三昧をする予定だったらしい。

 

「最強の武具はもちろん……反則的なツールの持ち込み等、多岐に渡る反則的な要素を突っ込んだんだ……」

 

「例えば?」

 

「レベルを簡単に上昇させるツールとか、武具に超性能を付与するツールとかだな。いきなり、レベル999で俺TUEEEEとかヤろうとしたって訳だ……」

 

「えっと……SAOって、VR系のゲームなんだよね?なのに、いきなりレベル999とか……正気?」

 

「正気ではないと思うぞ?」

 

なんだろう?師匠達の話が、今一わからない。仮想現実の話、なんですよね?なら、戦えないなんて事があるはずがない。今一、師匠達の話に疑問が尽きなかったので小さく手を上げて質問してみた。

 

「あの、一つ疑問が……なんで、いきなりレベル999になると正気度を疑われるのでしょうか?」

 

『現実と現実の熟練度の問題』

 

「VR系のゲームって、TVゲームとかと違ってゲーム内に仮の肉体を造り、その肉体を操って戦うゲームなんだ」

 

「ええ、知っていますが……?」

 

秘密基地のVRゲームをやってるから、それなりにVRゲームについての知識はある。

それが、何だというのだろうか?

 

「うん。じゃあ、それを現実に変化させて実際に戦うんだが……当然、アバターと違って攻撃を受ければ痛いし、それなりのリスクが生じる……」

 

「そりゃ、当然でしょう?」

 

「じゃあ、質問だ。つい数時間前まで、引き籠り生活をしていた奴がその世界に転移させられて戦えると思うか?」

 

引き籠り生活をしていた奴が、数時間後に現実世界でモンスター相手に戦えるか?……引き籠り期間にもよるが、ちょっとは戦えるはずだ。まあ、痩せているなら兎も角、ぽっちゃり系だったら間違いなく瀕死だろう。レベルの低いモンスターに殺られて、逃げ帰ってくるのが目に浮かぶ。

 

「とりあえず、レベルアップ用のツールとかあれば普通に戦えるんじゃないですかね?」

 

だが、先程の話にあったイカサマツールがあれば問題ない様に思えた。レベルが高ければ、リスクも減るだろうという考えの元である。

 

「まあな。しかし、戦えるかどうかは個人によって異なるのはわかったと思う。ツールが無ければ、死んでしまう事もあるだろう。じぁ、条件を追加しよう……前提は、そのままで即席連携をしろと言われたら出来るか?」

 

「えっと、引き籠り生活をしていた奴が連携出来るか……ですか?それは、コミュ障含むって事ですか?じゃあ、無理じゃないかなぁ?」

 

コミュニケーション能力皆無の引き籠りが、即席の仲間と連携ってかなり無理があるように思える。そもそも、ソロで俺TUEEEEをしようとしていた奴が即席の仲間と連携とか……かなりの無茶っプリだ。

 

「うん。半々って所かな?」

 

「微妙に甘い判断するんだよなぁ……コイツ」

 

「えっと……」

 

何故か、師匠と共にちょっと辛辣な評価を受ける。

 

「正解を言ってやろう。ぶっちゃけ、どちらも不可能だ」

 

「戦えないし、連携も出来ない。それが、真っ当な判断だ。理由としては、ボタンをポチポチ押しているだけの馬鹿が、現実の戦闘で戦えるなんて事はないって理由だ」

 

「仮想現実ならば……半分は幻想だから、リスクなんて気にせずにガンガン行っても問題はない。それに、セミオート状態でシステムアシストが入る。しかし、現実という前提だと……システムアシストとか無いからな?」

 

言われて、俺は絶望的な気持ちになった。

システムアシスト……その名の通り、ゲーム内でプレイヤーの補佐を自動でしてくれるシステムの事である。

 

「ゲームのアシストを切って戦ってみ?レベルの低いモンスターが、如何に手強いか直ぐに理解出来るよ?」

 

「しかも、ターンなんて無いから下手をすると一瞬で撃破されるしなぁ……常にアクティブだからw」

 

「……ああ……そうか、そうだった……」

 

VRゲームの場合、操作キャラにシステムの補正が入るんだった。だから、普通に戦える訳なんだけど……現実にそんな便利な機能は無いから、何もかもを自分で再現しないとイケない。

だけど、転移させられる奴も転生させられる奴もそんな事は知らないから……知っていても、御都合主義でなんとかなると思ってるので……ゲーム感覚で戦うと痛いしっぺ返しが待っている訳だ。

 

「あー……確かに、戦えませんね……」

 

「で、更にゲームと現実の違いが……ポップしたモンスターの扱いについてだ。ゲームならば、負けてもなんの変化もないけど……現実は、負けたら経験値になるんだよ……」

 

「経験値?え?経験値!?モンスターのッスか!?」

 

『うん』

 

「……………………」

 

言葉すら無かった。しかし、考えたく無いのに頭が勝手にその結論を導き出す。止めて……マジで、止めて!その結論を導き出さないで!!

 

「レベル999で、モンスターに負けた場合……」

 

「やめて!言わないで!!もう、オチはわかったから!!」

 

「モンスターのレベルが、アップするんだよねー……だって、現実だから。モンスターは、倒されるまでポップしたままなので……プレイヤー……この場合は、転生者や転移者が該当。倒されれば、モンスターのレベルアップに繋がりますw」

 

導き出したくなかった答えを言われてしまった。

即ち、転移者もしくは転生者がモンスターに負けると、彼等の経験値がモンスターのモノになってしまうのである。

 

「ここで、更に追い打ちw『現実の熟練度』についてだ。ゲームなら、システムアシストがなんとかしてくれるんだけど……現実にそんなモンは無いから、雑魚モンスターには俺TUEEEEが可能だけど……ボスには、あまり役に立たないんだよねぇー……」

 

「うん。力やスピードがあっても、リアル戦闘経験が無いんだから間合いの殺し方やスキルの使い方が未熟な状態でボス戦なんて、殺してくださいって言ってる様なモノだ」

 

「それって、剣術とかがなってないって事ですか?」

 

「いや、もっと根本的なモノだよ?だからさぁ、ゲームってシステムアシスト頼りなんだよ。攻撃を当ててくれるのも、スキルを使う事も全部システムアシストがやってくれているんだよね!!」

 

「えっと……つまり、スキルも何も使えないって事ですか?」

 

『うん』

 

師匠達の返事に、俺は頭を抱えるハメになった。

師匠達が言っているのは、転移者や転生者がどれだけ熟練度を上げられるかの話である。言うまでもない事だが、剣の振り方やスキルの発動の仕方を理解していても、身体にその動きが染み付いていないと……初心者がいきなりボス戦で、戦闘して勝てるかと聞かれたら不可能としか答えようがない。基本的に戦闘というのは、身体に染み付いた動きなのである。何度も何度も繰り返し、身体に覚え込ませた動きで戦うのだ。それをせずして、俺TUEEEEは出来ないのである。

 

「あ……」

 

更に、最悪な現実に思い至ってしまった。

それは、『仲間との連携』で至った結論だ。

ズルして、強くなった彼等が群れた所で結果は変わらないという結論に至ってしまった。レベル999の初心者達が、大パーティを組んでボス戦とか……もはや、モンスターを強化する為に死にに行っているようなモノである。

 

「気が付いた?」

 

「あ、はい」

 

「じゃ、結論言ってみようか?」

 

「レベル999のモンスターが出来上がりますね……」

 

「…………それだけ?」

 

「え?あ、はい?」

 

『50点』

 

「へ?違うんですか?」

 

「あのね?現実世界で、モンスターが一所に留まってる訳ないだろう?」

 

「当然、町や村にやって来て……」

 

師匠達が、嬉々として軽率な御馬鹿共の愚行の末を教えてくれた。もう、頭が緩いとかいうレベルの話ではない。

特典で創のは構わないが、その世界に住まう人々の迷惑になる事だけは止めて欲しかった。

 

「もう、お腹いっぱいです……」

 

「聞きたくない……」

 

これはもう、そのSAOに類似した世界へ行かなきゃイケない様な雰囲気だった。セイビアさんは、何も言ってはいなかったけれど……師匠の様子を見る限り、その世界へ行くとか言い出しそうな感じである。まあ、師匠が『行く』と言うなら行かざるを得ないけど。

鉄やすずかの事もあるし……どうする予定なのだろうか?

 

 

 

 




神崎くんの武器名は……『ほったいもいづんな』さんからいただいたモノとなりましたwww!!
両刃の長剣で、全体の長さは130センチ程。
イメージとしては、【Fate】のエクスカリバーみたいな感じですかね?アレよりも、ちょっと長いくらい。
重力と土系の魔法の補助が出来る様になってます。因みに、飛行魔法も可能だ。重力操作系の飛行魔法だけど……馴れれば、遜色のない飛行が可能。虚空瞬動は必要になるかもですが……ww神崎なら、それくらい習得しそうだ!

SAO?ワールドに至っては……作者の妄想の産物です(爆笑)
ぶっちゃけ、SAOの世界観をそのまま現実にした感じ……ですかね?細かい所まで突き詰めると、ソードスキル全般が使えない……アルヴヘイム併合も案件に入っていたので、何とか魔法で戦える世界を想像して貰えればOK。
ソードスキルに至っては、SAOみたいにゲームのシステムがアシストしてくれる訳ではないので自力で再現するしかないという鬼畜仕様w魔法は、ターゲットを設定……もしくは、意識していれば使えるので問題は無かった。
その上で、『俺最強!!』とか『俺TUEE!!』とかをする為のチートツールが持ち込まれた上に楽して遊ぶ予定の馬鹿が、SAO世界に別の要素を組み込んだので馬鹿げたクソゲーレベルの世界にw
大まかには、超級レアアイテムを報酬にくれる大富豪とかw
〇大富豪が出すクエストをやると信頼度に応じて超級レアアイテムが報酬として貰える。大富豪が出すクエストは、基本的にレアアイテム出現確率が高くなり、良いアイテムがドロップしたからといって自分のモノにすると大富豪の信頼度が下がっていってクエストを受けられなくなるというオチw
〇一撃必殺(即死系)のアーティファクト(?)。クリティカルが出ると即死。ボスにも有効。しかし、耐久性能が一しかないので耐久性能をどうにかしないと役に立たない。
他には、限界突破。上限撤廃。レベル・ステータス等を変更するツール。アイテム・鍛冶等のカスタマーツール等々、言い出したらキリのない便利アイテムがわんさかと持ち込まれた世界だw……もう、予想が付いたかな?
イキナリ、レベル999とかになったとしても連携も出来ないマトモに剣も振れない……ソードスキルは使えない馬鹿が量産されてwフィールドに出て、そこそこ戦えたけどHPがいくら高くてもモンスターハウス等で削り切られて終了w
因みに、モンスターは無限にポップするけど……ポップしたモンスターは、退治されるまでポップしたままになります。
でもって、ゲームであるならばプレイヤーを殺してもレベルが上がったりする事もなかったけれど……現実化したSAO?ワールドでは、転生者を倒したモンスターはレベルアップします。下手に高レベルだったバカを喰っちゃったモンスターハウスがあると……異常レベルのモンスターハウスが、出来上がっちゃったりw敵を倒す=周囲にいる全てのモンスターに経験値が振り分けられる。敵が、レベル999の転生者なら100体に振り分けられてもレベルアップが可能性。
結果、通常より高レベルのモンスターハウスの出来上がりw
討伐は、不可能……だろうね。
まあ、言うまでも無い事ですが、SAO?ワールドに転生・転移した者達は皆引き籠りになりましたとさwwwww

ん?何で、だって?……『剣術レベル低』で、マトモな連携すら出来ない転生者達。そもそも、協力プレイとか出来ると思いますか?『俺様最強!』や『俺TUEEE!!』を主張する馬鹿達ですよ?しかも、徐々に強くなる事を拒否して楽々チートツールでレベルを上げようとする愚か者達です。
その世界で、生きているモンスターの敵じゃありませんw
ゲームの様にアシストシステムでソードスキルや動きに補正が入る訳でもないのに……レベル999になったからと言って、ゲームの様な動きが出来るはずもなく……上手く、身体を動かせずにモンスターに殺られて、モンスターのレベルアップに貢献するだけのアホとなる。一万人も転生・転移させられたというのに、誰も『アシストシステム』を望まなかったという知識の無さに呆れるだけだよw
アシストシステムより、自分の強化を優先させてクソゲー呼ばわりだからなぁ……もう、どうしたら良いものか。

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。