絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一五二話

神崎

 

 

俺達が降り立ったのは、荒野と化した海鳴市だった。

最初、何処なのかはわからなかったし……目の前で、行われている凶行に意識が集中していて気にも出来なかった訳だけど。

 

「神崎!!」

 

師匠の呼び掛けで、気を引き締め直した俺は神速を使って一気に間合いを詰め凶行の主を吹き飛ばした。

その場に倒れていた、金髪の少年に目を向ける。

彼は、間に合わなかったのかと思うようにグッタリと目を閉じてピクリとも動かなかった。そこへ、師匠がやって来てその少年の傍らにしゃがみ込む。

 

「大丈夫。出血で、気を失っているだけだ……」

 

「良かった……間に合わなかったかと思いました……」

 

「まあ、それでも十分ヤバイ状態だけどな……僕は、この子の治療をする。お前は、アレを……殺してしまえ!」

 

「了解!!」

 

師匠の了承を得て、俺は吹き飛ばされてフラフラしている赤黒い獣を見据えた。そして、獣が回復するのを待たず一気に間合いを詰めて魔力で全力強化した拳を叩き込む。

俺の《堕ち神》初戦は、その一撃で呆気なく終わった。

 

「…………不完全燃焼ッス……(泣)」

 

「アハハハ。良かったじゃん、面倒じゃなくて(笑)」

 

きっと、この子達が超苦戦していたと思われる《堕ち神》を俺は不完全燃焼という形で終えた。段々、自分が本当にリアルラカンに成りつつある様な気がして辟易してしまう。全く、人の気も知らないで。

 

 

 

……………………。

 

 

 

上半身だけとなっていた少年は、師匠があっという間に治してしまった。意図も簡単にというか……手順としては、拾ってきた下半身を上半身と繋げる様に並べて胃袋に直接、造血魔法薬を放り込み超回復魔法でアッサリである。

みるみる内に、顔色や血色も良くなって彼はスヤスヤと眠るように気を失っていた。なんて、理不尽。

科学系の医療世界に、喧嘩を売っているとしか思えない理不尽プリである。とは言え、そうしなければこの少年を救う事は出来なかっただろう。

 

「師匠、あちらにも人が倒れてーーーって、何してるんですか!?」

 

何故か師匠は、《ルール・ブレイカー》を展開していてそれを少年に向けて突き刺した。そのまま、師匠は虹色の剣を半回転させる。すると、少年から黄金に輝く光がスルッと出てきて……金髪だった少年は、日本人らしい黒髪へと変化した。

 

「………師匠、この光は?」

 

「神通力だろうな。この少年を蝕んでいた……ああ、こりゃダメだ。蝕まれ過ぎて、完全には戻っていない……まあでも、これ以上の進行はないから放って置いても問題は無いだろう……」

 

「えっと……大丈夫なんですかね?」

 

「さあ?時空管理局からしたら、知性を持った珍しいロストロギア扱いになるかもだけど……プレシアか、リンディちゃんが何とかするだろう?」

 

「他力本願ッスね……」

 

「仕方があるまい。さあ、残りの者達の治療をしてしまうぞ?ああ、禍焔凍真は放置の方向で……」

 

「何故です?」

 

移動しながら、問いかけると直ぐに答えが帰ってきた。

 

「全く、情けないだろう。《神殺し》に転生した癖に、この程度の《堕ち神》に遅れを取るとか……」

 

「周りに人がいて戦いにくかったのでは?」

 

「例え、周囲に人間がいたとしても……ソレを護り切った上で敵を圧倒するのが《神殺し》だ!」

 

「圧倒ですか?では、彼は《神殺し》に至らないと!?」

 

「未熟な存在を、【組織】に取り込むなんてアイツ等は禍焔凍真を使い潰す気か……放逐する気なんだろう?……コイツは、《神殺し》なんかに転生しなければ良かったんだ」

 

師匠は、俺達の様な存在を【組織】に組み込む事を良しとしない派らしい。だから、俺にしても彼にしても【組織】と関わるのは余り好まないという考えを持っていた。

俺達は少年から離れて、見覚えのある少年少女の元に辿り着く。何処からどう見ても、俺が神様転生した第一平行世界にいた浅上兄妹だった。

 

「師匠……これは…………」

 

師匠は、大怪我している彼女達を見て首を横に振る。

何故なら、彼女達はうっすらと透けていたからであった。

俺は居たたまれなくなって、浅上兄妹の耳元で叫ぶ。

 

「浅上っ!おい、浅上兄妹っ!!」

 

「……っさいなぁ……ちゃんと、聞こえてるよぉ……………………って、神崎じゃん……」

 

「お前等、何でこの世界に!?」

 

「…………お前こそ、なんでここにいるんだよ……?」

 

「俺は、師匠に拾われて《神殺し》に転生したんだ!」

 

『はああぁぁぁ!?』

 

グッタリしていたくせに……今にも消えそうなくせに、俺が《神殺し》となった事を伝えると二人はガバッと起き上がって、何時もの調子でツッコミを開始した。コイツ等、割りと重症のになんでこんなに元気なんだ!?

 

「ちょ、こんなのでも《神殺し》に転生出来るの!?」

 

「こんなの……」

 

「完全な馬鹿だぞ!?コイツ……」

 

「完全な馬鹿……」

 

ヤバイ、コイツ等の口を止めないと地味に凹む口撃をして来やがる。久し振りの再会だったんで油断していたが、そもそもコイツ等は俺の敵だった奴等だ。くそぉ……(泣)。

 

「誰にでも、チャンスはあるが……。それに、馬鹿は馬鹿のままで問題無い。コイツをこちらに引き込んだのは、アニメ知識の為だ……」

 

『…………ああ……そういう事……』

 

「なんだよっ!?」

 

何で、そんなに納得顔なんだ!?

アニメ知識だけって訳じゃないんだぞ!?

さっきだって、《堕ち神》を一撃で屠ったんだから文句を言われる筋合いはない!!

 

「そっかぁ……頑張ってるんだね……」

 

「ん?あ、ああ……」

 

そして、これである。

コイツ等と来たら、散々弄んだ後は絶妙なタイミングで真面目な合いの手を入れて纏めやがるから何も言えなくなってしまう。

 

「それで……俺達は、助からないのか?」

 

「ああ、助けられない。きっと、君達の役割が終わったら消滅する様に術式が組み込まれていたんだと思う……」

 

「そんなっ!?なんで!?」

 

「そりゃ、見付けられる訳には行かないだろう?罪を犯した神々が残した遺産だぞ?……きっと、神様ネットワークに漂っていた浅上兄妹のソウルデータを使ったんだろうな」

 

「ソウル、データ……」

 

「その名の通り、魂の情報だ。僕達に捕まる前に、神様ネットワークに君達のデータを流したんだろう。他の神々が、自分達の思惑に合った転生者を産み出す為に……ね?」

 

「ああ、流出って奴ですね……わかります」

 

「思惑?」

 

「まあ、色々とみんな掌の上って話さ……」

 

「…………成る程、ね。なら、俺達が消えたらみんなの記憶からも消えるって事か……」

 

「可能性としては、そうなるかもね……」

 

浅上兄と師匠は、そんな身も蓋もない会話をしていた。

つーか、浅上……お前、そんな風に自分を評するのはどうかと思うぞ?まるで、居なくても良いみたいな言い方をしなくても良いんじゃないか!?

しかも、浅上兄妹は存在がドンドン加速的に薄くなっている様にも見えた。

 

「浅上……」

 

「この世界に、来た時の記憶が曖昧なんだ……自分が、インスタント・ソウルになったと仮定したら納得だった……」

 

「だからって……」

 

そんな風に、自分を評するなんて悲しいじゃないか。

 

「兎に角、【組織】に報告を上げてサルベージ出来ないか掛け合ってみるよ。今は、人手がないから却下されるかもだけど……まあ、ダメなら僕の使い魔を使えば良いさ……」

 

ソウルデータのサルベージは、複製とかされていそうでとても簡単に回収出来るモノでもなさそうだ。

【組織】も、人手が無いっていうのにそんな事まで引き受けて大丈夫なのだろうか!?

 

「そうしてくれると助かる……」

 

それだけ言って、浅上兄はニヤリと笑うとスゥッと消えて行った。二度と、悪用されない用にさっさと回収して下さい。割りと早めに、でないとアイツが浮かばれない。

 

「あーあ、今度こそ兄妹でお笑い芸人になるはずだったのになぁ……」

 

「慰めにならないかもしれないが……俺がいた世界で、俺がいた時代では、お前等お笑い芸人になってたぞ?」

 

「え?…………ああ、成る程ね。神崎って、私が知る時間軸の神崎じゃないんだ……って事は、シグナムさんと?」

 

「結婚初夜に呼び出されたよ……(凹)」

 

「あはははは!結婚初夜!?そりゃあ、良い事聞いたや!!あはははーーーーー」

 

浅上妹は、最後の瞬間まで笑って消えて行った。

その姿を見送って、俺は悔しさに涙ぐむ。

 

「………………師匠。こんな事をするのが【神】ですか?」

 

「そうだ……」

 

「……浅上兄妹が、何をしたっていうんですか!?」

 

「…………何もしていないさ……」

 

「…………畜生がっ!!」

 

やるせない怒りが、俺の中で渦巻いている。

人間の人生を、ここまで無茶苦茶にして何が【神様】かっ!?俺達は、テメェ等の玩具じゃねぇんだぞ!?

 

「何はともあれ、【組織】は神様ネットワークのサルベージに乗り出してくれるそうだ。ついでに、禍焔凍真を押し付けられたがな……まあ、禍焔凍真に関しては【組織】に強制送還だけど……」

 

「強制送還?」

 

「ああ。《堕ち神》程度に負ける《神殺し》は僕のパーティーにはいらないからね。修行のし直しかな?」

 

うわぁ……キッツイお言葉が禍焔凍真という奴に下された。

でも、事実だけにフォローは出来ないので彼は強制送還されて行く。師匠達が、《時空石》と呼んでいる小さな赤い石が魔力を込められて輝き始め、気絶している禍焔凍真を包み込んだかと思うといつの間にか消えていた。

 

「さて、僕達はSAOモドキの世界に戻るよ!」

 

「ふぇ?でも、アリシアがいるなら修正と調整が必要では!?」

 

「問題ない。《堕ち神》が出た事で、自分が管轄している世界にまで影響が出たのか……この世界は、この世界を創った神によって調整が進んでいる。だから、僕達のやるべき事は神の断罪ではなく注意と警告だけとなる」

 

「あー……それは、つまり……仕事をするなら、犯罪ではないという事ですか?」

 

「まさか……後で、ちゃんと捕まえるよ?」

 

ああ、成る程。師匠達、《神殺し》の苦労を知らしめてから捕まえるんですね?わかります。

苦労して調整し終えた所で、罪を問い捕まえて神権剥奪といったところか……えげつない。

師匠が、何時も通りの鬼畜であることがわかったところで、俺達はSAOモドキの世界に戻った。

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

…………………………

 

 

 

………………。

 

 

 

SAOというか、ALO世界樹の麓……アルンに戻ってきた俺達は、翼達と合流して世界樹攻略に乗り出した。

まあ、俺はその前にお仕置きされた転生者達を見て回り、師匠が撒き散らした悪夢の爪痕を確認した訳だが。

正確には、彼等を苦しめているのは行為そのものではなくてハプシエルとのスキンシップを“喜んで受け入れていた自分自身”にある。それを思い返す度……もしくは、記憶がフラッシュバックする度に彼等は地獄の絶望という名の悪夢に沈むのだ。奇声を上げる者。引き籠る者。

あれから、数日が経過しているという話だったが、未だ回復した者はいなかった。

みんな、特別病棟なる仮設病院で一纏めにされてカウンセリングを受けている。カウンセリングの先生は、原作人物達の中にいた本物の(男性)精神科医が担当していた。

募集はしていない。有志で、当人が名乗り出たらしい。

実は、師匠があの凄惨たる阿鼻叫喚お仕置き風景を原作人物達の避難した場所でライブ放映していたらしい。

それはもう、散々人権を侵害されまくっていた原作人物の方々が、転生者に超同情してしまう程に衝撃的なあのお仕置き風景をだ。その結果、原作の人物達は転生者に対してそこそこの抵抗感や嫌悪感はあるものの彼等の治療をしてくれている。

 

「因みに、スイルベーンにも流した!!」

 

「…………何で、ですか?」

 

「サクッちやリーちゃん、厨二病の被害にあった女性達にお仕置き風景を見て貰う為だよ?」

 

サクッちとは、サクヤの事だとしても……リーちゃんって、まさかリーファの事か!?つーか、そんなに仲良くなっていたのだろうか?この人は……?

 

「で、使い魔経由でクレームが来てた(笑)」

 

「感謝じゃなくて、クレームが来たのか……」

 

「気持ち悪いモン見せんなっ!!だって(笑)」

 

正論故に、反論はないが……ハプシエルが刻んだ、精神汚染の爪痕は大きいという事だろう。俺も、秘密基地で過去の映像を見た時にハプシエルが出て来た時はドン引きしたものだけど…何の予備知識もなしに、アレを見せられたSAO原作人物達はどれ程の衝撃を受けただろう?

アレは、見る者全てに精神的嫌悪感(パッシブ)を与える存在故、召喚時には事前に警告が必要なモノだったはずだ。

そうでなければ、敵も味方も全滅してしまう。

まあ、師匠なら殺りかねないけど。

そして、スイルベーンから連れてきた厨二病は仮設病院で壁にラクガキされた、体して可愛くもない二次元のイラスト(女)に夢中になっていた。余りの痛いたしい姿に、俺は涙が溢れて止まらない。

彼は、もう二度と『王様』には戻れなかった。

 

閑話休題。

 

 

 

何はともあれ、俺達は世界樹攻略に乗り出した訳だ。

しかし、ここで問題が持ち上がった。何というか……こんな事って、有りなの!?と思う様な問題が世界樹には横たわっていたのである。それは、世界樹内部天井にある門なのだが……妖精が辿り着いても、開かないのだ。

しかも、守護モンスターの無限ポップも健在で。まるで、Gの様に涌いてくる白い妖精騎士に辟易する事になった。

 

「あれ、黒くても良かったんじゃないかしら?」

 

「ヤメレ…………そう言えば、アレって原作ではGMの管理者権限で閉じられてましたね……」

 

「未完のゲームだったのか?」

 

「いえ、そうではなくて……主催者が、その先で300人の人間を使って人体実験をしてたんですよ……」

 

「……………………」

 

原作にあった、ストーリーを含む内容を少し話すと師匠は目頭をモミモミして大きな溜め息を吐き出した。

 

「成る程。そんな、話なのかSAOって……」

 

「主は、フルダイブ系のVRMMOを主題にしたアニメなんですけどね。その悪役が、そういう事をヤってたんですよ。確か、人の記憶や意識を書き替えて支配する的な技術……だったかな?」

 

「ああ……あるには、あるな……」

 

「あるぇ?もしかして、【組織】にその技術が!?」

 

「いや、手を焼かされた側だな。《旧・神族》がその技術で、天使を洗脳してとんでもない戦争が起こったと歴史の授業で習った事がある」

 

「まさかの被害者か!?」

 

「むこうの主張は、無茶苦茶なのにそれがさも当然の様に語られて、話は噛み合わない上に誤解が誤解を重ねて神魔創成戦争が再度起き掛けたらしい。最終的には、天使達が自壊して終了したらしいけど……面倒この上ない無駄な時間を永遠と繰り返させられたとセイビアが嘆いていたよ」

 

それはもう、最悪な対話と交渉だったらしい。

主張はバラバラなのに、最終的に纏まる天使が訳わからん状態だったという。要は、勘違い踏み台が『主人公に常識は通用しない!』と言いながら、部が悪くなると常識で倫理武装してくるといった感じの事柄と言えばわかるだろうか?常識は通用しない癖に、常識で物事を考え語る踏み台が意味不明だという事だ。常識が通用しないのなら、常識で自分達を正当化するのは止めて欲しい。

 

「ああ、それは色々と面倒で厄介な話ですね……」

 

「全くだ。後、自分で矛盾点に気が付くのは良いけど自壊して自爆するのは止めて欲しいかな?」

 

「何故ですか?楽で良いと思いますが……」

 

「自壊したら、狂化して襲って来るんだよ……」

 

「うわっ……最悪だ……」

 

そういう風に、プログラミングされていたらしい。

違和感に気が付いて、それを突き詰めて行くと自壊プログラムが起動。精神を汚染し、塗り替えて暴走するらしい。

 

「何処までも、面倒な存在ですね。《旧・神族》ってのは……」

 

「奴等に取っちゃ、自分達以外は所有物認識だからな……奴等からしたら、生物は生物では無いんだろう?」

 

全く持って、害虫でしかない《旧・神族》に怒りが湧いて来る。滅べ!!でもって、二度と復活するなっ!!

 

「兎も角、原作ではどうやって開けてたんだ?」

 

「マスターキーで、ユイっていうAIが開けてましたけど……どっちも、手元に無いんですよねぇ……」

 

「ふむ……しょうがない、《ルール・ブレイカー》で無理矢理開けるしかないか……」

 

という訳で、再度世界樹攻略に向かい……見事、世界樹を攻略した。え?どんな、攻略かって?

そんなん……師匠が、五万機のBビットを整列させてディバインバスターを乱射した結果楽々攻略出来ましたが?

ただ、その後が問題で……妖精城謁見の間で狂った妖精王のオベイロン(須郷?)が、何故かラスボスとしてポップして……王の間で、対決するはめに。謁見するだけで、良かったはずなんだけど……どうしてこうなった!?

黄金の剣を振り回し、奇声を上げながら襲って来るオベイロン(須郷?)。ぶっちゃけ、剣技は素人のままで強力な魔法を主にする魔法系軽戦士モドキだ。

しかし、理不尽の塊である師匠には勝てず……割りとアッサリ、リメインライトと化した。

 

「もしかして、プレイヤーなの!?」

 

「逃がすなっ!捕まえろ!!」

 

「はいはーい!」

 

師匠が、俺の言葉に反応してガッシ!とリメインライトと化したオベイロンを掴み取る。えっと、そんな方法でリメインライトを掴めたりするんだ?

すっごい、疑問が残ったものの師匠のお陰?で俺達はオベイロン(須郷?)を捕まえる事に成功した。

 

「で?これが、何?」

 

「多分、ソイツがVRMMOを使って、記憶の書き込みを目論んでいた主犯だと思います……」

 

「…………そうなのか?」

 

「……どうするのよ……それ……」

 

「とりあえず、廃人にしちゃってください。生きてても、ろくな事を仕出かさないでしょうから……」

 

師匠は頷くと、漆黒の《ルール・ブレイカー》をリメインライトと化したオベイロン(須郷?)に突き刺して半回転させたと思ったら《ルール・ブレイカー》を抜き去ってしまった。その後、須郷と思われるオベイロンは何処かに転送?されて消え、俺達は妖精王の謁見の間に残される。

 

「師匠、あの抜いちゃっても良かったんですか?」

 

「問題はない。《ルール・ブレイカー(メイカー)》は……本来、抜く事で“理”を確定する事が出来るんだ。抜かずに押し込むのは、その“理”を確定させない為だよ。確定させなかったモノは、アレを解除する事で元に戻せるからね」

 

「あー……成る程。様子を見る為ですね?」

 

「それもある。それと、自分自身の能力に制限を掛けたりもするから確定出来ない方が便利だったりもする」

 

「おぉ……成る程!それは、便利ですね!!」

 

「まあね。さて、翼……この後は、どうするんだい?」

 

「……そうね……この城を探索しましょう。アインクラッド城への、直通転移門を探さないとイケないんでしょう?」

 

それはそうなんだけど、その『直通転移門』は俺達の願望であって、ある『かも』しれない程度の眉唾存在だ。

ぶっちゃけ、無い可能性の方が圧倒的に高い。

それでも、可能性はあるので俺達は二手に別れて妖精王の城を探索する事にする。メンバーは、俺と師匠。翼とすずかと鉄と護衛の四人となった。

 

「偏ったわね……」

 

「偏ってないよ?僕と神崎なら、ちょっとやそっとの事では倒れないし……先行して、罠や脅威が無いかを確認してくるだけだし……」

 

「成る程ね。私達は、その後を安全に探索って所かしら?確かに、それを目的とするなら偏ってはいないわ……」

 

「じゃ、先に行くね?神崎」

 

「はい!」

 

こうして、俺達は罠や脅威の探索に乗り出した。

 

 

……………………。

 

 

城内を隈無く探索していく。

師匠が、石像を拳で打ち砕いているが……多分、美しい造形の石像はオブジェクトでガーゴイルやゴーレムではないと思われる。あのオベイロンが、本当に須郷であるならもっとわかりやすい造形の石像が該当するだろう。

まあ、師匠の場合は石像が動き出す前に砕いてしまうだろうけど。

 

「……………………」

 

つーか、師匠が片っ端から石像や壁などを破壊して回っている。それは、どういう角度から見ても探索からは程遠い行為だった。

 

「し、師匠……何やってるんですか……(焦)」

 

「あ?探索だよ!た・ん・さ・く!!」

 

「えっと……ただの破壊活動の様に見えますが……」

 

「…………そうだよ?何か、イケなかった?」

 

「いやいや、そうだよ?って、何ばしよっとか!?」

 

「八つ当たり……」

 

師匠は、呟くようにそう告げると『チョイサー!』という掛け声と共にジャンピングキックで壁を抜いて行く。

というか、八つ当たりとはどういう意味なのだろう?

何を持って、師匠はそんな感情を得たのか俺にはわからなかった。もしかして……と、心当たりは思い至ったが臆測の域を出なかったので首を振って忘れる。

しばらく進み、鍵の掛かった扉を破壊すると外へと出てしまう。師匠は、踵を返して城の中へと戻ろうとしたがそれを俺は阻止する。何故ならば、外へと通じるその場所が俺の記憶にある場所だったからだ。

 

「この先に、人がいるかも知れないってどういう事だよ?」

 

「あのオベイロンに、囚われていた少女がいたんです。その娘は、原作ではメインヒロインでした。もしかすると、オベイロンに捕まって洗脳されている可能性があるんです!!」

 

「原作知識か……だが、ここがその原作にピッタリ嵌まっている訳じゃ無いんだぞ?ただ、似通っているだけの世界なんだからな?」

 

「わかっています。一応ですよ、一応!」

 

一応、誰かいるかも知れないので確認の為にその奥へと進んでいく。すると、道の先に鳥籠の様なモノが見えて来て……中に、人らしき影が見えた。

 

「ほら!見逃さないで、正解でした!!」

 

そう言って、鳥籠に駆け寄っていくと中にいたのは、思っていた通り原作のメインヒロイン結城アスナだった。

ただ、少しだけ違和感がある。そこにいた結城アスナは、現実世界と同じ茶髪の結城アスナだった。

原作通りであるなら、結城アスナはウンディーネ種で髪は水色に変化しているはずなんだけど……目の前にいるのは、SAO時代のままのアスナである。

 

「あるぇ?」

 

「どうした?神崎……?」

 

「あ、いえ……えっと、失礼しまーす!」

 

少し、戸惑いがあったけど俺達は鳥籠の扉を破壊して中へと入って行く。先に声を掛けた為、こちらに気が付いたアスナは俺達と同じ様に困惑した様子で視線を向けて来ていた。兎も角、名前は呼ばない様にしつつ話しかけてみる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「…………貴方達、何処からここに来たのですか?」

 

「ん?んん!?」

 

「世界樹を攻略して上がってきた」

 

「……そうですか。では、オベイロン様との謁見は済んだのですね?ならば、ここから立ち去りなさい」

 

「…………あるぇ?えっと……アスナさんですよね?」

 

「アスナ?誰の事を言っているのですか?私は、ティターニア。オベイロン陛下の后です」

 

「へ?…………あー、そうッスか!すいません。ちょっと、世界樹の上なんてチョクチョク来れるモンじゃないんで珍しくって散策してたら道に迷ってしまいまして……!すぐ、来た道を戻ります!」

 

それだけ告げて、困惑する師匠を連れて来た道を引き返す。良くわからないが、何となくその場にいるアスナが俺の全く知らない女性に見えて逃げ出す。師匠は、何も言わずにされるがまま俺に連れられて来た道を引き返した。

 

「……………………」

 

「畜生!アスナが、洗脳済みだったとかキリトは何をしているんだ!?彼女専属のヒーローだろう!?」

 

外と城を繋ぐ扉付近に戻って来た俺は、ブツブツとここにいない主人公に文句を言う。

 

「神崎……」

 

「あ、すみません。逃げちゃって……」

 

「それは構わないが……彼女、洗脳なんてされていなかったぞ?それに……アレ、人間じゃ無いな……」

 

「は?人間じゃない?」

 

「ああ。魂が入って無かった。きっと、オートマタ(自動人形)か何かだろうな……」

 

その話を聞いて、俺は別の意味で混乱する。

えっと……オートマタ?って事は、アスナ本人じゃない?

俺をジッと見上げる師匠の赤い瞳を見てある事を思い出す。そう言えば、師匠の瞳は魔眼の一種で【真実の瞳】と呼ばれるモノだった。その瞳が、アレを人間じゃなかったと結論付けるならその通りなんだろう。

 

「えっと……じゃあ、アレはいったい……」

 

「さあ?でも、マトモな方法で手に入れたモノでは無さそうだから、もしかすると転生者の神様特典かもしれないぞ?メインヒロインのオートマタが欲しいとか……」

 

「オートマタって……誰得だよ!?」

 

しかし、だとするならオベイロンは誰からアレを奪ったというのだろう?そして、アレを奪われた転生者は何処に?

 

 

 

 

 




神崎が、ガチチート化し始めてます(笑)。
みんなが、アレだけ苦戦した《堕ち神》を一撃撃破とかw
凍真達の頑張りは何だったんだ!?って結末です☆!!
浅上兄妹は、ソウルデータ流出っていうのを書きたかったので消滅。記憶も何もかも補完されて、主人公?の幸政だけが覚えてるだけに。残酷だよね……でも、まだ《旧・神族》には届かない悪辣さなんだよ?
作者が、覚えてるだけでも……死者を売り買いして細胞からクローン化で玩具へ。産まれてきたばかりの赤ん坊を母親の目の前で殺して食って感想を述べ、泣き崩れる母親に感謝させる外道っぷり。自分達以外の奴隷化に、娯楽と称して抱き飽きた奴隷を野に放ち狩る狩人ゲーム。
脳髄(意思あり)だけを生体ロボット(壊れた肉体の代わり)に移植して、本来無い器官を虐めて愉しむとか。発情した雌の群れに雄を一匹落として反応を見るとか……逆もあり。⬅これ、拷問で最終的に死亡するから。
他にも山程、思い至った残酷なゲームが……その上、最近は神様ゲームとか人狼とかあるからネタには事欠かないし。
残虐非道残酷無慈悲冷徹無情。それらを一纏めにしたのが、《旧・神族》である。そんな奴等が、一回使用しただけの転生者を解放する訳が無いだろう?奴等は、自分達さえ愉しければ良いっていう快楽主義者なんだ。
後、【神】が動いてるのは自分達が納める世界の【理】にメトロダウンが起こった結果。正確には、引き摺られた(笑)。
それでなくても、《神殺し》(神殺した経験有る)が“内側”に入ってくるにも準備が必要なのに、“内側”で《堕ち神》が発生したらどうなるかくらいわかりそうな話(笑)。
寧ろ、メトロダウンで済んで良かったね!世界瞬間崩壊とかでなくて(笑)。って感じwwwww

因みに作者は、ファンシーなモノの方が好きです。
《旧・神族》の設定の為に色々考えましたが……(笑)。
実際、趣味で描く漫画は動物モノが多い。癒されるからねw
特に、殺伐としたモノを描いた後はMobageのマイアルバムにも載っけているけどホンワカ動物モノが多いw

前回の分で、大将軍への変身が一部おかしいという指摘を受けました。が、黄金の果実は取り込まないとロストロギア化は出来ないのでそのまま。あれは、取り込んでこそのモノなので。エネルギー的にも必須だった。
変身に関しては、時間があれば書き直して掲載します。
以上ーー

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m(_ _)m

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