絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

184 / 592
一五九話

神崎

 

 

結果だけ告げよう。

フェイトがリニスに落ちて、プレシアが釣れた。

 

「……ってぇ、説明を要求されるっ!」

 

「何言ってんだ?お前……?」

 

「なんでもないよー?あで!」

 

師匠の真似をして、惚けてみたら殴られてしまった。

まさかの、自分は良いけど他はダメの鬼ルールとは……残酷過ぎる。

 

「そんな鬼ルール敷いてねぇよ……ただ、鬱陶しかっただけだ!」

 

「心を読まないでくださいっ……」

 

サラッと、心を読まれたので釘を刺しつつ思考を再開。

目の前で行われているカオスは、とりあえず横に置いといて俺は回想を始めた。

アルフが、漫画肉に落ちリニスに心を掴まれた数時間後……フェイトが目を覚まして逃げようとするも、やはりリニスによって捕縛された。まあ、捕まえたというより捕まえられに来たと言った方が正確だろう。一度逃げかけて、アルフとリニスの登場にビックリ。涙をポロポロ流しながら、リニスの胸に飛び込んで行った訳だ。

その後、師匠とリニスを交えて説得を開始。アルフまで加わって説得を続けた結果、ジュエルシード収集を断念させる事に成功。

その後、フェイトの身柄は高町なのはへと渡された。

そして、高町なのはと『お話』をしたフェイトは……無事、『名前を呼んで』をやって友達に。今は、高町家でパジャマパーティーなるモノを原作人物達とやっている頃合いだろう。これにより、無印……PT事件前半は終了した。

後は、翌日に身体を引き摺りつつやって来たプレシア・テスタロッサに関して。病状が悪化(はしゃぎ過ぎた?)していた為か、リニスとアルフの二人だけで確保完了。

師匠の前に連れて来られて……自分の立場も考えず、師匠を脅して来る始末。だが、師匠は見た目通りのチビッ子ではない為にバッサリ斬り捨てられていた。

 

「にゃはは。努力?死者蘇生に努力なんて関係ないよ?ぶっちゃけ、正しい知識と術式さえあれば一息程の魔力で可能だもん。あんたは、最初の段階で間違えちゃったんだよ。クローンなんてモノに走っちゃったんだし……なのに、それが使えるからって卑怯だなんて言われたくないなぁ……」

 

「……………………」

 

いやはや、師匠に自分の理想を押し付けようとするのがイケない。プレシアは、その最初の段階で師匠に対する対応を間違ってしまった。結果は、御覧の通り。

師匠には、感情で言葉を発してはイケないのだ。

初対面で、『私の娘を生き返らせて!』なんて言った所で師匠が動いてくれるはずもなく……プレシアは、馬鹿呼ばわりされた上にバッサリ斬り捨てられちゃいましたとさ。

 

「それに、クローンが本人と違うのは当たり前だろう?記憶を刷り込んだ所で、同一になるはずもない。そもそも、記憶なんて産まれたばかりの赤ん坊にあると思うか?記憶ってのは、『経験』と呼ばれるモノの一部だ。死者蘇生を目指すなら、『本質』を考えるべきだったんだよ」

 

「だったら、アリシアを確定付けるモノって何!?記憶じゃなきゃ何だっていうのよっ!?」

 

おや?サラッと教えてあげないんですね(笑)。

意地悪なのか、プレシアを焦らすつもりなのかはわからないけど師匠は答えを教えるつもりがないらしい。

 

「あんた達が推奨する、科学寄りの魔法では辿り着けないモノだよ。もしくは、技術力が足りない。そこまで、進歩していれば話は別だけど……『本質』が見抜けない以上、その程度のモノなんだろう。それをあんたは、勘違いしてしまったんだ。そんな魔法を完璧なモノだ……とね?」

 

「くっ…………」

 

「完璧でないモノで生まれる魔法なんて、たかが知れているから究極の一に辿り着かない。そんなモノで、あんたは死者蘇生をしようとしたんだ。成功するはずもない。因みに僕達の魔法の歴史は、それこそ創世記まで遡れる。何万、何億、何兆の歴史だ。比べるまでもないよね?」

 

「……………………」

 

「そんな僕達から見たら、あんた達の魔法って初期の応用編辺りの技術レベルなんだよ?それで、中期後半辺りに開発されるレベルの蘇生魔法を創ろうって言うんだから正気じゃないよね(笑)」

 

魔法技術が、進んだ世界の歴史を紐解くと大体それくらいの間隔で『蘇生魔法』が開発されるらしい。

適当な統計らしいので、前後する事もあるらしいけど。

ただ、それを世界が許容していない場合は徹底的に蘇生魔法は創られないとも言っていた。つーか、蘇生魔法が許容されている世界があるって方が驚きである。

因みに、許容されている世界の蘇生魔法はというと……ネクロマンサー的な、ホラーワールドらしい(笑)。なんでも、魂の保管魔法が穴だらけで、生に執着する怨念がその穴に入り込んで当人の魂をダメにしてしまうらしい。

それとは逆に、魂の保管魔法が高レベルな世界では等身大の人形に愛する者の魂を定着させる方法が流行っているとのこと。ぶっちゃけ、良い年齢の大人が等身大のお人形遊びに興じている様にしか見えないらしい。

 

「そろそろ蘇生魔法が現状からして、どれだけ難しい魔法なのかわかっただろう?じゃあ、君の娘が蘇らかなった理由を説明しようか?」

 

ニンマリと、満面の笑みを浮かべて師匠は睨み付けてくるプレシアに視線を向けた。だが、怯んだ様子はない。

気が弱い奴なら、一睨みで殺せそうな殺気?敵意?が含まれる睨みだ。横から見ているだけの俺でも、ビビってるのに師匠はヘッチャラな顔でニコニコと話を続けていた。

 

「さて、死者蘇生の正しい材料から考えてみよう。当然、当人の肉体は必要不可欠の材料だ。じゃあ、記憶でない君の娘を確定する生きとし生けるモノの『本質』ってのが何かわかるかな?」

 

「……………………」

 

アリシアではないけれど、遺体の事を『材料』と師匠が口にした瞬間、プレシアの怒気が一気に膨れ上がった。

しかし、それを受けても師匠に変化は見られない。

いや本当に、いったいどんな心臓をしているのだろうか?

 

「わからないのかい?……まあ、だから君の娘は戻って来なかった訳だけど。じゃあ、わかる人はいるかな?」

 

「オカルト系で、【魂】と呼ばれるエネルギー体です!」

 

「知ってる奴が答えちゃったけど……半分正解かな?」

 

「え!?半分ですか!?」

 

あるぇ!?【魂】じゃないんですか!?

 

「今、君は【魂】を『エネルギーの塊』だと表現したんだよ?何のエネルギーなのさ?そんな言い方をしても、頭に血が昇ってる奴にはわからないよ。……ふぅ。【魂】ってのはね、【命】を生かす【命】の事を言うんだ」

 

成る程、なんの予備知識もない人にわかるように答えろって事だったんですね。勉強になります。

確かに、【魂というエネルギー体】と言われても、そういう知識がない奴には何の事かサッパリわからない。

あれでは、全く説明にもなっていなかった訳だ。

 

「命を生かす命……」

 

「つまり、生き物の大半がこの【魂】と呼ばれるエネルギーを【命】に変えて生きている。【魂】が、溢れ落ちれば……生けとし生けるモノは、【命】を抽出する事が出来なくなって活動を停止させてしまう。これが、【死】だ。……ついでに言うと、溢れた落ちた【魂】には肉体と魂を繋ぐ役割を持つ【精神】も引っ付いて行くので、肉体には何も残らないって訳だ」

 

「そう……何も残っていなかったのね…………え?」

 

「あ、気が付いた?ふふふ。そう、君が保存しているアリシアはからっぽの状態。中身が失われているんだ、アルハザードに辿り着いたとしても、中身がミッドチルダにあるんじゃあ……どう足掻いても、蘇生は出来ないって(笑)」

 

「どういう事!?」

 

「おや、気が付いたんじゃないの?なら、簡単に説明するね?基本的に、溢れ落ちた【魂】は持ち主が死亡した場所に残りやすいんだ。アリシア・テスタロッサは、ミッドチルダの自宅だった場所で死亡したんだろう?ならば、死亡した自宅周辺を漂っていたはずだ。本来なら、その漂っている【魂】を回収して補完するんだけど……君は、クローン技術に走ってその魂を放棄。で、ジュエルシードを使ってアルハザードへ行こうとしていた。でも、アリシアの【魂】はミッドチルダにあるんだ。アルハザードに辿り着いたとしても蘇生は出来なかっただろうね……」

 

「なぜ、アルハザードの事を……」

 

「ああ、そっち。僕は、未来から来たんだ。プレシア・テスタロッサ事件。俗にPT事件とも呼ばれている、ジュエルシードを巡った君が犯すはずだった事件の内容を知っているってだけだよ。その結末もね?で、今回イレギュラーな事があって……未来のエースオブエース。『高町なのは』の精神が、魔法に始めて出会った頃の『高町なのは』に上書きされて未来が大きく変化してしまった……だから、変化したついでに結末を変化させちゃおうと思った訳よ!」

 

「未来人……それ、大丈夫なの?」

 

先程と違って、プレシアは真っ青を通り越して蒼白な顔でニコニコと原作ブレイク宣言をする師匠に話し掛ける。

 

「あまり、宜しくは無いねぇ……出来る事なら、積み上げられた歴史と同じ歴史を積み上げて欲しかったんだけど……『高町なのは』は、とてつもない『不屈』の精神を持った負けず嫌い。ワザと負けるのも嫌だったらしくって、フェイトねぇに負けなきゃイケない所で勝っちゃった(笑)。それによって、僕の知る未来と現在進んでいる時間が全く違う未来になってしまう可能性がある……」

 

「……………………」

 

「そうなると、この先の未来がどんなモノになるか予測が付かない。ならば、以前の未来よりももっと良い未来を手繰り寄せる必要がある。だから、こうして干渉しているって訳よ。ええ、そりゃあもう全力全開でブレイクしますとも!!さて、話を戻すよ?結論だけを言おう。アリシア・テスタロッサを僕の死者蘇生魔法で生き返らせる事は……出来ない!」

 

「ーーーっ、何故!?」

 

師匠の結論に、俺も含めて驚きを隠せなかった。

ええっ!?アリシアの蘇生、しないつもりですかっ!?

 

「魂が補完されてないから。じゃあ、今から補完しに行こうって話になるだろうけど……肉体から、抜け落ちた【魂】はあっという間にそのエネルギーを散無させて消滅してしまう。特に、強い感情に縛られていない剥き出しの【魂】は脆いからね。アリシアが死亡したのは、26年も前の話なんだろう?剥き出しの【魂】の寿命は、凡そ50日。なんらかの感情に縛られていたとしても、それ程長くは存在出来ないだろうね。怨念とか、憎悪の様な感情とは無縁の娘さんなんだろう?なら、可能性は低いかな?」

 

「…………そ、そんな……………………はっ!そう、よ。貴方、未来から来たって言ったわよね!?なら、過去に戻ってアリシアを救ってくれないかしら!?」

 

おおっ!プレシアさんが、段々冷静になり始めた様子。

師匠の言葉を拾って、反撃してきましたよ!?

 

「……………………無理じゃね?どう、説明しろと?今、君がやっている事業が失敗してアリシアが死ぬから止めろとか?当時のプレシアに、どう説明したらアリシア死亡説を信じて貰えると思う?」

 

「…………。…………っ…………。…………、…………」

 

師匠に問われ、最初意味がわからなかった様だが頭が回転し始めると百面相を始めるプレシア。そして、あーでもないこーでもないと首を傾げ始めてそのまま長考に入って……腕を組み、眉を寄せて考え続けるも最終的に沈黙。

良くも悪くも、自分の性格を知っているプレシアさんは最終結論を『無理ね』と判断したらしい。

 

「一笑されて終わりね……」

 

「だな。まあ、【魂】の性質上……外部からの感情に縛られ人にとり憑く事もある。だから、アリシアの魂が『時の庭園』に在る可能性もあるんだ」

 

「えっ!?」

 

唐突に告げられる一筋の希望。もとい、飴?

瞬間、超反応で明る気な表情を取り戻すプレシアさん。

 

「ただ、問題なのは生ける者が発する《穢れ》ーー憎悪とか負の感情が、剥き出しの魂に与える影響って洒落にならないから。【魂】が、真っ黒に染まって怨霊と化している可能性もあるんだよねぇ……」

 

「……………………」

 

「その魂で、死者蘇生をすると……アリシアの性格が、180度反転して別人みたいになる事も……。因みに、『負の感情』って、悲しみや怒り、絶望や憎悪等も含まれるから……さぞ、真っ黒に染まっているだろうね」

 

「……………………」

 

チラッと希望を見せて、一気に絶望へと叩き落とす師匠が極悪人に見えてちょっと嫌悪の対象に。

『上げて落とす』とは、よく聞く言葉ではあるが目の前で実践されるとこんなにも醜悪な行為だとは思わなかった。

ちょっと、止めて上げて下さい。

しかも、黒く染まってると性質が変化するとか……それが、自業自得だとか遠回しに言うのも止めて上げて!!

 

「嘆き続けて来たんだろう?26年間ずっと……それによって生じた《穢れ》が、アリシア・テスタロッサの魂に及ぼす影響とか。考えなくても、真っ黒だとわかるよな(笑)」

 

「そ、そんな事……そんな訳ないっ!アリシアは……いつも笑顔で優しい子だったっ!!」

 

「とりあえず、ミッドチルダは後にして『時の庭園』でアリシア・テスタロッサの魂を探してみるか?あんたの負の感情で真っ黒に染まったのが見付かるかもしれないけど……その時は、蘇生諦めてくれよな?僕も流石に、負の感情で病んだ者の蘇生なんてしたくないから……って事で、【魂】を視る事が出来るマジックアイテムを貸し出そう。後で返してね?」

 

師匠は、何やら眼鏡の様なモノをプレシアさんに手渡していた。半信半疑なプレシアさんは、首を傾げつつもそれを装着。周囲を見回して、使えるかどうかの確認をしている様だった。そして、何を見たのかある一定方向を見てビクッと怯えたと思ったら、慌てた感じで眼鏡を外してしまう。その姿がなんとも言えなくて、思わず吹き出してしまった。今は、ギロリと睨まれて俺はドキドキです。

そんなプレシアさんに、猛毒を持つ師匠が告げる。

 

「ああ、あれは悪霊だな。負の感情から生じた《穢れ》を受けて、元々の性質を反転させ生きる者に悪さをした霊だ。本来は、心優しい者だったはずだが……その優しさ故、生きる者の悲しみに囚われ、年月を得て逝き場を失い染まった被害霊だ。後は、周囲から呪いや憎しみを集めて巨大強力な悪霊へと成長していくだろう」

 

そう言いつつ、師匠は聖属性の魔法を発動。

悪霊を浄化して、排除してしまった。

 

「じゃあ、案内して貰おうか?」

 

「そんな事はない!アリシアは、とても良い子なんだからっ!……あんな風にはならない。そうよ。あんな風にはなってないわ。アリシアは、アリシアは、とても優しい子なんだからっ!!」

 

「師匠、変な事を吹き込まないで下さいよ。ループしてるじゃ無いですかぁ……」

 

「にゃはは。リニス、アルフ、悪いけど君達にも手伝って貰うよ?人手は、多い方が良いからね……」

 

「それは、構いませんが……幽霊なんて、本当にいるんですか?迷信ですよ?それは……」

 

「…………動物は、基本的に見えてるはずなんだがなぁ……使い魔化した事で、見えなくなったのか?」

 

「……………………」

 

そう説明して、不思議そうに師匠が首を傾げるのを見て、リニスとアルフが微妙に青冷めた顔をしていた。

もしかして、怖いのか?

 

「まあ良いや。君達にも、《視えるんデス☆♪》を渡すからちゃんと探すんだよ?まあ、プレシアちゃんが真先にアリシアを見付けてくれるかもだけど……見付けられなかったら、君達が見付け出すんだ(笑)」

 

「って、言われてもねぇ……」

 

アルフが、微妙に面倒臭そうな声を上げる。

 

「日頃の恨み辛みもあるだろう?真先にアリシアの魂を見付け出せば、プレシアちゃんに母親失格のレッテルを貼り付ける事が出来るよ?まあ、既に母親失格者ではあるけれど……それを明確には出来るかな?アリシアとの約束も忘れているみたいだし……」

 

「…………約束?」

 

おいおい、ここでその情報を与えるか!?

つーか、プレシアさんは更に思考を深くしてそれを思い出そうとしている様だが……あまり、芳しくない様子。

 

「まあ、何でも良いさ。あたいは、フェイトが笑ってくれるなら、それだけで良いんだから!」

 

「それは、なにょはママにお任せで……じゃ、『時の庭園』にレッツゴー!!」

 

 

 

……………………。

 

 

 

てな訳で、俺達はラストダンジョン『時の庭園』に転移した。おどろおどろしい、荒れ果てた『時の庭園』は雰囲気抜群。まさに、ホラーハウス的な場所と化していた。

そこで、悪霊と化しているかもしれないアリシアの魂を探すっていうんだからガチで洒落にもならない。

プレシアさんは、ヤル気十分って感じだけど……リニス達は、雰囲気もあってか逃げ腰である。

リニスが、変わり果てた『時の庭園』を見て『ちょっと、これは……』とか言っているけど気にしない。

俺達の任務は、この『時の庭園』にいるかもしれないアリシアの魂を探し出す事だ。気にせず、行ってみよう!と気合いを入れて俺達は動き出した。

師匠は、迷う事なくフェイト達が幼少の頃を過ごした子供部屋へ。リニスやアルフ、プレシアさんは、それぞれが思う場所へと向かって行った。俺は、師匠に付いて行って一緒に確認。結論を言おう、俺達はプレシアさんを母親失格者にしてしまった。

 

「師匠、ガチで真っ黒な何かがいるんですが……」

 

ベットに腰掛け俯いている様に見える、黒いドロドロとした塊がそこにあった。ぶっちゃけ、俺にわかるのはそれが良くない存在という事だけだ。危機感知能力というか、直感があれには近付くな!と警告を発している。

 

「師匠、アレが?」

 

「そうだ。アリシア・テスタロッサだ……」

 

師匠がそう断言した瞬間、真黒なアリシア?がピクリと反応。ゆっくりと顔を上げて、ゾッとする様な視線を俺達へと向けてくる。そして、パクパクと口を動かすと師匠が自己紹介を始めてしまった。

アレと会話が可能なんですか!?

 

「ーーーという訳でな、僕には君を生き返らせる事が出来る。君が望むならば、それを使わなくもない……」

 

「・・・・・・」

 

辛うじて、口が動いているのがわかるが話の内容は師匠から漏れ聞こえてくる言葉でしかわからない。

その内、フッとアリシアは消えてしまった。

 

「き、消えた!?」

 

師匠が言うには、移動したという事らしいが俺には一瞬取り憑かれた!?とか思ってしまう。師匠は、アレに詳しいけど俺は完全にノータッチなので得体の知れないモノでしかない。所謂、恐ろしい存在だ。

しばらくして、アルフのと思われる悲鳴が時の庭園に響き渡った。余り、女性らしくないそれは後から上がった女性らしい悲鳴によって掻き消される。

 

「今のは……リニスですかね?」

 

「だろうな……ヤバイ。悪戯したくなって来た……(笑)」

 

「止めてくださいよ?ホラーハウスなんて……」

 

「恐いのか?」

 

「側に女性が居ません」

 

「…………ブレないなぁ……お前……」

 

「師匠こそ……ブレないじゃないですかぁ……」

 

全く、似た者同士ですねとか言ったらペシッと叩かれた。

その後、別の意味合いの悲鳴が聞こえてプレシアさんがアリシアを見付けたのだと思われる。ただし、プレシアさんが悲鳴を上げたのは恐怖からではなく真っ黒に染まっていた事に対しての悲鳴だろう。

自分の悲しみが……絶望が、あの純真無垢な少女を真っ黒に染め上げたのだという事を正しく認識したらしい。

 

「…………鬼ッスね!流石、鬼畜ッス!あでっ!」

 

「誰が鬼畜か!?ああいう手合いは、自分から反省させた方が良いんだよ。それに、きっと今頃『約束』の事も思い出して二重の意味で頭を抱えているだろうさ……」

 

ある意味、走馬灯的な何かを見ているって訳ですね?

 

「うわぁ……残忍だぁ……」

 

無慈悲と言える行為に、俺はドン引きです。ですが、そこに痺れて憧れるので俺も毒されているのだろう。

 

「真っ黒に染まったアリシアを見れば、過去を振り返らずにはいられまい。そこで、アリシアの『妹が欲しい』という約束を思い出せればフェイトを邪険に扱って来た馬鹿な行為に頭を抱える事に。ついでに、アリシアに『ママなんて大ッ嫌い』とでも言われればお仕置きは終了だ」

 

「お仕置き含む残酷な方法を思い付く師匠が恐い……」

 

「これで、フェイトねぇを虐待していた事をネチネチと責められる状況は整った。さあ、虐めに行こう!」

 

「いずれにしろ、虐めるのは決定事項なのか……」

 

という訳で、俺達はプレシアさんがいるであろう玉座の間に移動した。途中、腰を抜かし這いずっている使い魔二匹を回収してから移動。眼鏡は回収された。

そして、玉座の間に辿り着くと頭を抱えたプレシアさんが玉座の間の中央で蹲っている。余程、堪えたのか息も絶え絶えだ。そこへ、嬉々とした師匠が近付いて行く。

 

「フェイトちゃん、呼ぼうか?」

 

「ウグッ……」

 

ド直球で、急所を抉る師匠。

トドメ刺さないで上げて下さい。

最早、先程までの気力すら失って涙目となったプレシアさんがこちら……師匠に振り向く。そこに浮かぶ表情は、色々と思う事があった人の表情だった。(経験談)

 

「アリシアとの約束、思い出したんだろう?」

 

「……………………ええ。思い出したわ……」

 

「そう。…………母親失格だね。アリシアにしても、フェイトねぇにしても……」

 

「あぅっ……」

 

「ダメ人間」

 

「うぅっ……」

 

「こんなんじゃあ、『ママなんて大ッ嫌い』って言われてもおかしくないよね?」

 

「…………カハッ……」

 

師匠から言われた一言を、イメージで補っちゃったプレシアさんが吐血して倒れ伏してしまう。今ので、完全に気力が尽きたプレシアさんはピクリとも動かなくなった。

 

「プ、プレシア!?」

 

それを見たリニスが、慌ててプレシアさんに駆け寄って行く。それを呆然と見詰めるのは、アルフ一匹のみ。

 

「どうだ?ウチの師匠は、相手の弱い部分をつついて虐めるんだぞ?あははは……はぁ……」

 

「あんなプレシア、見た事ないよ。何なんだい?あのチビッ子は!?あのプレシアをあそこまで追い詰めるなんて‥」

 

デスヨネー。

プレシアさんのイメージを、ガラガラとブチ壊し別のプレシアさん像を造っていく師匠の手腕は恐ろしく残酷だ。

きっと、次にフェイトに会う時はプレシアさんも以前より優しく出来るだろう。いや、ホワイトママになって親バカ化する可能性も否定出来ない。

今は、師匠に病を治療されているけど、元気になった頃には時空管理局が到着するだろうから自主的に出頭するかもだけど。それは、師匠が許さないだろうなぁ……。

 

「全く、こんな身体で無茶をするからショックを受けた時に崩れる事になるんだ。ってか、こんな姿を見せてアリシアを更に追い詰めるなんて……酷い母親だよね!」

 

「ちょ、プレシアに追い討ちを掛ける様な真似は止めて下さい!」

 

「悪いが、そうは言ってられないんだ。さて、プレシアちゃん。君には、選択して貰わなければならない。選択肢は二つ。このアリシアを蘇生するか、送るかの二択だ……」

 

「……………………お、くる?」

 

「死者を天に送るって事さ。つまり、アリシアの死を認めろって事……(邪悪)」

 

「い、嫌よっ!折角、会えたのに……また、アリシアを失うのは嫌っ!!」

 

ここで、プレシアさんを我が儘だなぁ……と思ってはイケない。26年分の悲願が、目の前にぶらさがっているのだ。

 

「ってもなぁ……この状態で蘇生したら、確実に悪堕ちしたアリシアになるのは間違いないぞ?プレシアちゃんに優しくない暴力的なアリシアにしたいのか?」

 

「抉ってくなぁ……」

 

「それも嫌っ!……何とか出来ないのっ!?はっ!そ、そうよ。貴方達の魔法は類をみない程発展しているんでしょう?なら、何とか出来る魔法とかあるんじゃないの!?」

 

「……………………あるよ?でも、なんで僕が君の為にそんな事までしなきゃならないのかな?」

 

「ーーーーーえ?」

 

邪悪な笑顔で、待ってましたと言わんばかりに鬼な発言をする師匠。本当に、残酷な事をサラッとする人ですね。

……あ、人じゃねぇや(笑)。

『じゃあ、そういう事で……』と言いつつ、霊体を視る眼鏡を回収して立ち上がった師匠はニッコリ笑顔で来た道を戻ろうとする。プレシアは、黒く染まったアリシアが見えなくなってか更に慌てた様子で師匠の足にしがみつき、師匠を止めるべく言葉を尽くす。それを、のらりくらりと受け流しつつ進む師匠が中々鬼畜である。

 

「お願いっ!何でもするから、アリシアを助けて!!」

 

「えー……どうしようかなぁ~。僕には、なんのメリットも無いんだけどなぁ~♪」

 

確かに、師匠にメリットはない。それどころか、世界の調整というデメリットが発生するので死者蘇生なんてしない方が良い。そうとはわかっているのだが、アリシアが生き返ってくれる方が俺的には嬉しかったりする。

別に恋人にしたいとか、そういう事ではなくて純粋にバットエンドよりハッピーエンドの方が気分が良い。

だからと言って、師匠にそれを強要する訳にも行かずただ黙って成り行きを見守る程度に留めていた。

 

「本当に何でもしてくれるの?」

 

「え、ええ!約束するわっ!!」

 

「じゃあ、アリシアをこちらが指定する人の所に養子に出して?」

 

「え……」

 

言われた意味がわからなかったのか、プレシアさんが一瞬茫然とした顔をしたが、すぐに嫌悪感に顔を歪めて首をブンブンと横に振る。

 

「なんでもするんでしょう?」

 

「い、嫌っ!そ、それ以外でお願いっ!!」

 

「えー……どうしようかなぁ~。じゃあ、同じ条件でフェイトねぇでも良いよ?あ、アリシアにはちゃんと紹介してね?妹として(笑)!!」

 

「……………………」

 

変えられた条件に一瞬、パアァっと表情を明るくしたプレシアさんだったが……追加の条件に表情を暗くして、涙目で首を横に振る。きっと、フェイトを養子に出した後のアリシアを想像して拒絶したのだと考えられた。

 

「あんたの友達は、残酷なんだね……」

 

「友達ではないです。師匠は、俺の先生です!」

 

アルフが、いつの間にか俺の側にいてそんな事を言い出した。即行で否定したけれど、常に一緒にいるので忘れがちだが師匠は本当に悪魔みたいな人(人外だけど)なんです。

 

「アレもダメ。これもダメ。だったら、何をするって言うの?何でもするって言ったのは君だよね?」

 

「む、娘の事以外なら、何でもするわ!だから、私から娘を奪うのだけは止めてっ!!」

 

「んー。でも、君の娘を蘇生すると世界に歪みが生じるしなぁ……それを直すのに、数百年(【真実の瞳】無しで)掛かるんだよ?流石に、不老不死と言えどこの世界にそれだけの時間縛られるのは、ちょっと困るんだけど……」

 

「す、数百、年!?」

 

「僕が、人間でない事は薄々わかっていたんだろう?そして、世界の外部から来ている事も本能的に理解していたはずだ。それでなくても、平行世界からの影響を受けているはずだし……否、原作人物だからそれは無いのか?兎に角、26年も前に死んだ人物を生き返らせるのって物凄く面倒な事になるんだよ?君達からすれば、市役所で復帰手続きをするだけで良いのかも知れないけれど……僕達は、それだけの時間この世界に縛られるんだ。デメリットの方が大きいよね?」

 

「……………………」

 

「だから、等価交換の原則に従い君に求める代償はそれと同等の何かになる。そして、君の最も大事なモノは娘だ。となれば、娘に関する代償になるのは必然だろう?……そうだなぁ。じゃあ、記憶をいただこうか?もちろん、アリシアから君の記憶だけをいただくってのはどうだい?『おばちゃん誰?』とか言われてみる?」

 

「い、嫌っ!」

 

その後も、アリシアを題材にした嫌がらせという名の押し問答を繰り返した師匠は、最終的にアリシアの死を認めれば代償は軽いモノで済むよ?と悪魔の囁きをした。

疲れ果てていたプレシアさんは、何も考えずにそれを了承しようとして正気に戻り拒絶する。

 

「なら、どうするつもり?どんな代償を持って、君はアリシアの命を補うのかな?当然、死者を蘇らせるんだ……同等の代償になるのは仕方がないだろう?ねぇ、何にする?」

 

「私の願い……死者蘇生……命を補う……同等の代価……」

 

おや?プレシアさんの呟きに、俺の直感がこれは誘導では?と囁いてくる。師匠が望む代価を、プレシアさんを疲れさせ思考が鈍った所に刷り込む様にして言わせようとしてないか?と閃きに似た直感が俺を撃ち抜いた。

俺は、即師匠を止める為と口を開こうとするが、ギロリと殺気含む視線を向けられて口を閉じる。だって、それだけで十分師匠がやろうとしている事が理解出来たから。

そもそも、【等価交換の原則】って事は『自分が持ち得るモノ』しか代価として差し出す事が出来ない。

物品は元より、自分以外のモノは代償になり得ない。

他人はいうに及ばず、己から生じたナニカでなければ受け付けられない。それを原則とするなら、アリシア云々は元々代価としては不十分。アリシアでは、プレシアさんの代償にはならないのだ。代価として、価値があるのはプレシアさんそのモノから生じるモノに限定される。

つまり、プレシアさんの“誠意”と共に師匠はあるモノを代償として得ようとしているのだろう。

 

 

 

 

 




プレシアさんイジメが、とっても楽しい件!!
また、殺ってしまいました(笑)。
同じ事の繰り返しですが……それでも、【魂】と【命】のお話は楽しいモノです。(作者の偏見と思想が多分に含まれていますので悪しからず(笑))
つーか、そんな事をある時期ガチで考えていた事があるんですよ(笑)。黒歴史に分類されるのかな?
まあ、そんな感じです(笑)(笑)。
さてはて、次は誰をターゲットにするかなぁ……ニヤニヤ。
ついでに言うと、この結末はある意味予想外の結末に収まります。予想できたら、感想までお願いします!楽しみー♪
そして、一期終了のお知らせです☆♪
原作的には、五話目で終了です(笑)。スピード解決ですね(笑)
まだ、時空管理局すら来てませんよ?どうするのかねぇ……リンディさん達を(笑)(笑)。ってか、それまでに【闇の書】事件も終わってそうで怖い(笑)。このペースで、続けるとね。
ここは、やはり……【紫天の書】の出番ですね!!
早く、ユーリvsユーリが殺りたい(笑)(笑)。
天然ボケ×2によるコント、見たいですよねー?
そして、バカ×1と(笑)(笑)。
後、イノセントにも行きたいなぁ……(笑)。

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

感想もあれば、お願いします!
いつも読んでくれる方々に感謝を……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。