絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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一九七話

???

 

 

「くははははは!!これで……完成だぁ!!!!」

 

 

仰々しく、されどこの世を手に入れた王の様に【闇の書(偽)の主】は両腕を広げて【闇の書(偽)】の完成を喜ぶ。

そして、ゆっくりと視線を降ろし蹂躙され踏み潰される局員の無能さを嘲る様に嗤う。

相手を見下し、己こそが優越者なのだと誇示する様に……いや、儚い夢を唄う冒険家が本物の宝を手にしたかの様に完成した【闇の書(偽)】見せびらかす。

 

「クックックッ……無様だな、時空管理局。まさか、こんな幼子が【闇の書】の主だとでも思っていたか!?とんだ、お笑い草だ!!目の前で行われる【正義】と言う名の幼児虐待とは……それともよもや、幼子であるが故に与し易しとても思ったのか?犯罪者共めっ!!」

 

「くっ…………」

 

「幼女が持つ、【闇の書】に似た魔導書を確保してこれが【正義】の為なのだと色々策を講じていた様だが……それが実は、全て無用の長物だったとは思いもしなかったか!?全ての責任を、たった一人の幼子に押し付けて大の大人がなんと情けない事か……」

 

近付く者を排除して、『悲しむ者が居なければ……』等と自己満足程度のモノで己を騙し、八神はやてを孤独に追いやったその罪を犯罪者に語らせる事で更に自覚させる。

主役の使い魔には、如月双夜が口を酸っぱくするほどそう言い付けていた。なので、【闇の書(偽)の主】は徹底的に重役局員達をなじっていく。

その間も、周囲では守護騎士(偽)による武装隊の殲滅行為が進んでいた。次から次へと溢れ出てくる武装隊を圧倒し殲滅して行く。だが、その違和感に誰も気が付かない。

一対一ならば、最強と歌われるベルカの騎士。

それとは、似ても似付かない彼女等が一対多数の戦いに慣れた様子で戦っているというのに、局員達は違和感を抱く事なく……むしろ、悔しさを滲ませ歯を食い縛る。

中には、ギル・グレアムに全ての責任を押し付けて言い逃れを始める局員までもいた。何とも醜い、クズ共である。

それでも、武装隊達はそんな彼等を救出する為に次から次へと補充されて行く。どうやら、近くの空間に次元空間航行艦船が停泊しているらしい。

 

「…………フム。煩わしいハエが、ブンブンと飛び回っている様だな…………どれ、叩き落としてくれようか?」

 

言って、主役の使い魔が【闇の書(偽)】のページを捲り、とある魔法を発動させるとピタリと人員の送り込みが途絶えた。それに狼狽えたのは、ギル・グレアムに全ての責任を押し付け様としていた局員である。きっと、次元空間航行艦船に起きた事柄を理解したのだろう。

黙り込み、ワナワナと震えている。

それが、恐怖なのか怒りなのかはわからない。

周囲にいた、一部の局員達が自分の所属する艦船に連絡を取ろうと必死になっているが……返答は一向に戻って来ない。それどころか、艦船が常に発している識別コードも無くなってしまっていた。

それを知った局員達が、【闇の書(偽)の主】を見上げたまま力なく項垂れる。帰るべき船を失い……もしくは、愛する者を失って怒りや憎しみよりも悲しみの方が強いのかもしれない。雄叫びを上げたり、絶望に膝を付いたりと様々だが最も多かったのは憎しみに囚われて向かってくる武装隊局員達だった。しかし、その凶刃も守護騎士(偽)の刃に弾かれて【闇の書(偽)の主】までは届かない。

 

「さて、そろそろ……終わらせようか?」

 

【闇の書(偽)の主】が、【闇の書(偽)】を手に勝ち誇った顔で局員達に視線を向ける。そして、その蓄えられた力を解き放とうとした瞬間、【闇の書(偽)】から黒い触手の様なモノが伸び【闇の書(偽)の主】に絡み付いて行く。

 

「うぐっ!?な、何だ!?」

 

慌てる【闇の書(偽)の主】だったが、ほとんど成す術なく触手に呑まれて行く。そのまま、黒い塊と化した触手は周囲の瓦礫や物質を取り込んで少しずつ巨大化して行き……管理局が、展開した結界をブチ壊して通常空間にて【闇の書の闇】と呼ばれる怪物へと変化して行った。

 

 

 

「時間の掛け過ぎです。てか、局員をなじり過ぎです……」

 

「にゃははは。興が、乗っちゃったかな?……と。おやおや、想定外の事に……」

 

パリン!と、管理局が展開していた結界が砕け散る。

それを見た神崎ズが、慌てて双夜の腕を掴み上下に揺さぶり始めた。

 

「ちょ、師匠!結界、結界!!」

 

「はいはい」

 

怪物を中心に、ミッド式でもベルカ式でもない魔法式で超規模の結界が展開されていく。その巨大を晒していたのは、僅か数十秒程度ではあったが一部の目撃した人々が騒いでいる様だった。

 

「どうしますか?Master……」

 

「放っておけ……」

 

「放置か!?」

 

「噂なんて、75日持てば優秀な方さ……携帯電話の技術も、そこまで警戒する必要もないし。まあ、誰が記録していたとしても出来の良いCG扱いされて終るさ……」

 

既に、CG技術が確認されている上に然程携帯の記録技術に労力が注ぎ込まれている訳でもないので問題にもならないと双夜は判断する。記録されていたとしても、画像が荒い上にズーム力や暗い場所での撮影に適したモードにしておかなければちゃんと録る事も出来ないだろうという考えだ。【闇の書(偽)の闇】が、通常空間に出現していたのは僅か数十秒。それまでに、携帯を取り出しモード設定を変えて被写体にレンズを向けられる人間がどれ程いるか。

良くて数人。設定中に、被写体消滅が大体。

何も写ってないのが、大半と考えるのが自然だ。

ましてや、設定が自動で切り替わる様な折り畳み携帯等は存在しない。この世界軸の西暦は、原作に従い【2005年】という時間軸設定である。

多少の技術革新はあるとしても……ぶっちゃけ、高性能カメラが携帯に組み込まれる様になっり始めた初期の頃だ。

それでも、モードの自動切り替えや高画質カメラが完全復旧したのはもっと後の時間軸だろう。

 

「いや、でも……」

 

「なんなら、その辺の携帯ショップに突撃して確認してくれば?すぐにわかる事だろう。僕は、フレールくんで確認済みだから行かないよ?」

 

「…………反論できない」

 

「実際、スマホの初期機種があるけれど……一番多く復旧しているのは、まだ折り畳み携帯だよ。居たとしても、ミーハーで新しいモノ好きが初期機種を手にしているぐらいだろう?」

 

「……否定は、出来ないか……諦めろ、翔悟。情報量で師匠には勝てんよ……」

 

リインフォースが、本来あるべき時間軸で【闇の書】と共に消え行く高台から様子を伺うのは《神殺し》の一派。

様子を見つつ、イレギュラーがあれば即修正が出来る様にと、そこにスタンバっていた。

そして、現在進行形で巨大化する【闇の書の闇】を眺めている。原作通りなら、100メートル級の大きさで打ち止めになるハズの巨体が、その倍……否、数倍に増して行く姿を眺めてじゃれあっていた。(温度差が……)

 

「にしても、デカイですね……」

 

「【闇の書】、10冊分の魔力の塊だからな……」

 

「最終的に、【闇の書】10冊分になりましたか……」

 

「朝の段階から、夜に掛けて団体さんが来たからな……」

 

「うわぁ!?こんなに隠れてたのかぁ……って、思いましたもん。もう、誰が主人公なのかワケわからねぇ(笑)」

 

「つーか、その人数で僅か数人のヒロインを取り合えと?そりゃ、StsやVivid合わせればもう少し増えますが……無理でしょう!?」

 

「だよな!その上、隠れてる馬鹿は出て行けばヒロインが勝手に惚れてくれると信じてるみたいだし……」

 

「「は?」」

 

「魅了特典があるのか!?と、全力全開で確認したけれど……御都合主義含めて、影も形もなかったよ。どんだけ、今世の自分に自信があるんだろうな?」

 

「自分が、主人公であると信じて疑わなかった奴がいるのか……面倒な話しになりそうッスね……」

 

転生者達の基本的な考えは、《主人公イコールヒロインは皆恋人!!》認識なのだと双夜が語る。だから、知り合ってしまえば恋人関係になれると信じていると言う。

心当たりがある神崎ズだが、今はもうそれがただの幻想である事を理解していた。なので、その場にいた《神殺し一派》全員が呆れ眼で視線を戦場に戻す。

心なしか、やる気が無さげだ。

神崎達が見守る中、結界内に取り込まれた魔導師……転生者達が、ワラワラと炙り出され【闇の書(偽)の闇】が雄叫びを上げる空へと昇りだしていた。

 

 

 

「誰か!動ける魔導師は、居ないか!?」

 

「くっ……誰でも良い。アレを……アレを何とかしろっ!!」

 

その頃、八神はやてを襲撃した局員達は大きく変わっていく戦況の中、【闇の書(偽)の闇】と戦える程の魔力が残っている者を探していた。既に、八神はやてや守護騎士達には助力を求めて断られている。まあ、襲撃して来た相手に助けを求められたとしても助ける義理も義務もない。

 

「それでも、人間か!?」

 

「そうだ!!魔力が残っているなら、戦え!!」

 

一部の局員は、動ける八神はやての守護騎士達を戦力に組み込みたい様だが、時空管理局に不信感を持つ守護騎士達は動こうとしない。当然の話なのに、一部の局員達はまるで犯罪者を見る様な目で守護騎士達を睨み付けていた。

因みに、八神はやては蒐集の衝撃によって気絶中。

彼女が起きていれば、局員達の自分勝手極まる『お願い』を快く聞いていたかもしれないが……今は、絶賛気絶中だ。

これは、仕方がない。(大爆笑!)

だとしても、一部の局員達のあの態度は守護騎士達に不信感を覚えさせるのに十分なモノだった。管理局のぞんざいな扱いに、守護騎士達は段々ムカ付いていく。

イライラする態度を全く隠していないのはヴィータくらいのモノだけど、穏和なリインフォースでさえ冷たい目を向けて睨み付けている程だ。

その間に【闇の書(偽)の闇】は、己の肉体を構築仕切り周囲に伸ばしていた触手を持ち上げ、向かって来る転生者目掛けて黒い魔力光のバスター系魔法攻撃を開始する。

向かって来る攻撃を、魔法障壁で防ごうとした転生者だったのだが……一瞬の拮抗の後、パリンと障壁が割れた様に見えて貫通?した。貫通した魔力波が消えた後、そこに居た転生者の姿が無くなってしまう。

 

 

 

「「「……………………」」」

 

神崎ズと、双夜の視線が魔力波の消えて行った方向に固定されるが、その遥か彼方まで誰の……何の姿も捕らえられない。とても、嫌ぁな沈黙が彼等の間に降りた。

 

「…………今の、蒸発してません?」

 

「……………………」

 

「避けた?でも、姿が見えないんだが……?」

 

「いや……多分、直撃だったと思うぞ?」

 

「転移で、逃げた?」

 

「……そんな暇無かった……よな?」

 

「……フム。死者が出たな……」

 

「「マジか!?」」Σ( ̄ロ ̄lll)!!

 

 

 

一人、一人と、ちょっとしたミスだったり、連係失敗だったりした転生者達が【闇の書(偽)の闇】からの攻撃により消失(ロスト)していく。それもそのはずで、【闇の書(偽)の闇】の攻撃に《非殺傷設定》なんて存在するハズがない。

段々、弱腰に成り始めた転生者達が『こんな一方的な戦闘、やっていられるか!!』等と捨て台詞を吐いて逃げ出していく。それでも、【闇の書(偽)の闇】を倒そうと必死こいているのは《主人公》を名乗る転生者達だろう。

中には、『高町なのはは、何時救援に来てくれるんだ!?』と下心丸出しの転生者もいる。

しかし、そんな彼等の奮闘はそう長くは続かなかった。

高々、【闇の書の闇】と侮っていた彼等は《神殺し》が集めた桁外れの魔力量に駆逐されていく。その中には、自分達の安全と命を優先させた一部の局員達の命令を受けていた武装隊の面々も含まれていた。

 

 

 

「あれ、不味くないですか?」

 

「つーか、なんで市街地戦になってんだよ!?原作だと、海上戦だっただろう!?」

 

翔悟が、今更なツッコミを入れているが始まりが始まりなので仕方がなかった。何しろ、【闇の書(偽)】の主役がその場から動かなかったあげく、その場で暴走のキーを押しちゃったのだから。

 

「始まりが、八神家周辺でしたからね……」

 

「あー、通常空間でも破壊活動してたよな……」

 

冷静な使い魔達のツッコミに、神崎ズがゲンナリとした表情で肩を落とした。二人のツッコミが、原作以上の被害を撒き散らしていると言っていたからだ。

 

「「原作を超える被害状況かよ……」」

 

「暴走侵食体を甘く見てましたね?」

 

「いんや。想定内だよ?あれだけの魔力量だもの、もっと通常空間にも影響を及ぼすんじゃないかなぁって思ってた」

 

「「ふぁ!?そこまで!?」」

 

「これ、想定内なんだ……」

 

双夜の想定が、予想以上に重いモノだと知って周囲の者達がざわめき出す。だが、これ以上となると双夜がどんな『想定』をしていたのかが気になってくるところだろう。

 

「うん。さて、そろそろ神崎ズの出番だよ?大悟、アレを海上までブッ飛ばせ!!」

 

「うぇ!?お、俺ぇ!!??」

 

唐突な御指名に、大悟がすっとんきょうな声を上げた。

 

「お前なら、殺れる。全力全開で、殴って来い!」

 

「よっしゃ!行け、リアルラカン!!」

 

煽りを入れてくる翔悟。

自分は関係ないとばかりに、どこ吹く風な態度である。

 

「ちょ!?おまっ、他人事だと思いやがってぇ!!」

 

そう言いつつも、【闇の書(偽)の闇】へと駆け出して行く神崎大悟。その背後から、セットアップした翔悟とテオルグ・ラヴォルフの師範コンビが追い掛けて行く。

それ等を見送って、双夜は己のやるべき事の準備を始めた。魔法陣を展開して、幾つかの魔法式を待機状態で並べていく。双夜が『やるべき事』は、あの巨体と化した怪物を特殊なフィールドで包み、無重力状態にして『重さ』を0にしておく事と……加速術式を海側に向けて展開しておく事だ。そうしなければ、神崎大悟でもあの巨体を吹き飛ばす事は不可能だろう。残りは、師範コンビがやってくれるので彼の役割はここまで。後は、命運を仲間に託すだけだ。

 

「全ては、タイミングです!わかっていますね?神崎大悟!!失敗は、許されませんよ!?」

 

「クソォ!こんなシビアな作戦、局員時代でもやった事ねぇぞ!?つーか、もっと確実な計画は無かったのか!?」

 

「そんな事は、主役だった馬鹿に言ってください!!」

 

「全ては、あのボケが動かなかった責なんだからな!!」

 

バッサリと、主役の使い魔に全ての責任を押し返すテオルグ達。例え、同じ使い魔で同胞だったとしても『責任』の有無に情けを掛けたり容赦したりはしない。

ちゃんと、当人に全ての罪と責任は返されるのである。

 

「良いですか!?巨体の真下に着いたら、我々が地面を魔法で盛り上げますので貴方は、しっかりと地面に足を着けた状態でアレを突き上げて下さい!!」

 

「《マジックハンド》と、《障壁魔法》は覚えたんだろう!?なら、大地の盛り上るスピードと《マジックハンド》で《障壁》を巨体に叩き込むタイミングは外すなよ!!」

 

「わかってます。全身の身体強化をして、筋力バネで出せる全力の一撃を《マジックハンド》に乗せて突き上げる。《障壁》は、【点】ではなく【面】で敵を穿ち上げる為に使用する……ですよね!?」

 

「つーか、それ……上手く行くんですか!?」

 

「行くかどうかではありません。行かせるんですよ!【運任せ】ではなく、自力で掴んで引き寄せるんです!!」

 

「無茶苦茶だぁ……」

 

「賽は投げられました!後は、掴むだけです!!」

 

別段、その役割を入れ替えて神崎ズが補佐を……師範コンビが、ブッ飛ばしを担当しても良いのだが神崎大悟の諸事情により不可能となっていた。

 

「まさか、補佐系が全滅とかw……唯一、使えるのが身体強化の魔力操作系だけとか笑える!!」

 

「うっさいなぁもう!!翔悟、お前は黙ってろよ!!」

 

「や~い、脳筋!!あー……リアルラカンが、普通に脳筋だったから大悟が脳筋でも違和感はないのか……」

 

「悪巧み大好き師匠がいるから、バランスは取れてるんだよ!?つーか、集中させろよ!?」

 

「「翔悟、黙ってなさい!!」」

 

「うッス!!」

 

「……………………」

 

大悟を弄り倒していた翔悟は、師範コンビに睨まれて黙り込む。その間にも、間合いは詰められて行って……ついに、指定ポイントに神崎ズが辿り着く。

 

「「大地よ。起伏し、立ち上がれ!!《ガウォンテッド》!!」」

 

二人の師範コンビが、完全なシンクロでその起伏魔法を唱える。すると、大悟の足元が盛り上がりズアアァ!!と天に向かって勢い良く延び上がって行く。

 

「広域障壁展開!《障壁陣》!!……見えざる手よ、我が意思に従え!《マジックハンド》!!」

 

ギリッと歯を食い縛った大悟は、両足を肩幅に広げて中腰で両腕を引き構える。眼前に迫る、巨体の横っ腹を睨み付け練り上げた魔力を身体全体に行き渡らせ身体強化を最大にした。そして、巨体との距離がゼロとなる前に全身のバネを使って……足裏から、足首、膝、腰、背骨を通して、肩、肘、手へと力を練りつつ伝えて一気に爆発させた。

 

「我皇流、秘技《双壁掌》!!」

 

解き放たれた力は、《マジックハンド》に伝えられ《障壁》を押し上げるかの様に静止状態から瞬間的に突き上げる。

結果、無重力状態で足を取られていた巨体は下から押し上げる様にゼロからトップスピードへとシフトした。

その上、双夜の《加速術式》の範囲に入り込んだ事で加速度を上げてその巨体を海上へと吹き飛ばす。

 

「あ……津波が…………」

 

双夜が、神崎達の作戦成功を喜んでいる姿をみつつ、どうでも良いけど余り宜しくない事に気が付いた。確かに、結界がある限り外への影響等は無いが……結界内は、モロに影響されるだろう。故に、その視線が八神家の方へと向けられるが……フレールくんに『お願い』して、守護騎士達だけに警告を発する様に言っておく。

 

『きゅ?』

 

「そう。局員には、気が付かれちゃダメ」

 

『きゅ!きゅきゅきゅ?』

 

「え?ああ……お仕置きだよ。お仕置き!だって、ムカつくじゃん?自分達が生き残りたいからって、他の人々に押し付けちゃダメだろう?」

 

『きゅ!』

 

「じゃあ、よろ~♪」

 

という訳で、守護騎士達への伝言はフレールくんに『お願い』した双夜は着水した【闇の書(偽)の闇】の周囲を確認していた。予想通り、とてつもない質量の着水により周囲には巨大な津波が発生している。そして、それらはゆっくりと確実に海鳴市の方へと向かって来ていた。

 

「10メートルくらいかな?……ん?あ……」

 

津波の規模が、書段階でそれ程のレベルなのだが……陸地に到達する頃には、その数十倍にもなるだろう。となると、海鳴市の様な平坦な土地では呑み込まれる可能性が高い。

結界内の出来事とは言え、管理局のアホゥ共が津波に呑まれるのは時間の問題だろう。と、思っていたのにアホゥ局員達が転移魔法陣に消えて行くのが見えた。

 

「……………………ざっと計算して、30分後くらいか?それまでに、神崎ズを高台に避難……は、無理だな」

 

お仕置きが無理なのはわかったので、その考えをバッサリ切り捨てて次の問題へと視点を移す。

その時には、神崎ズが次の作戦を実行する為に海岸へ向かって移動し始めていた。今からでも十分間に合うが、それでは次の作戦に支障を来す。

ならば……と考えて、双夜は決断した。

 

「全部だな!」

 

管理局への報復は後回しにして、今は作戦の方を優先にする方を選ぶ事にする。その上で、向かって来る海水『全て』を【凍らせる】手法を取る事を決めた様だ。

 

「大規模だな。海底までもとなると……神崎ズにまで、影響を及ぼす可能性があるが……テオルグ、なんとかしろ(笑)」

 

無責任過ぎる呟きに、絶対的な信頼を乗せて双夜はとある氷結魔法を組始める。両腕を広げて、平面ではなく立体の魔法陣を展開して行く。それは、まるで意味を成さないと見る者を思わせる螺旋を描く魔法式。球体の内に、上下左右斜めと複雑奇怪な線が描かれて行く。

 

ーー静止せよ。素は、悠久の時にたゆたうモノ。基は、目覚めを知らぬ留まりしモノ。礎は、ありとあらゆる生を拒絶する。我、真理に至りし者……己が心に訴えるは、《永遠たる静止世界》!!

 

その詠唱が、完成させ解き放たれた瞬間『世界』が静止した。ありとあらゆるモノが、白い氷に閉ざされる。

超大規模氷結魔法、《コキュートス(強化)++》。

それが、『世界』規模で使用された結果だった。

 

「死ぬかと思った……」((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

 

「うわぁ……世界が白い……」(恐怖)

 

町も、大地も、木々も凍っている。

全てが、冷たい霜に覆われて真っ白な世界を演出していた。しかも、木々や海に至っては凍っていない場所なんて無いくらい真っ白である。

 

「何とか、防ぎましたが……直撃したら、粉々に砕けていたかもですね!!間一髪でした!!」

 

「「怖過ぎるわっ!!」」

 

「多分、完全詠唱ですよ!完全詠唱!!」

 

「Masterの完全詠唱による《コキュートス》……世界が、永久の氷土に変わってしまいます……」

 

「問答無用かよ……」

 

「……流石、このレベルになるとあの巨体ですら動けなくなるんだな……ただの、魔力の塊なのに……」

 

「Masterの《コキュートス》は、魂すら凍らせる魔法ですからね。霊体でも、氷結しますよ?」

 

「「マジか!?」」

 

そもそも、この世界の魔法とは基礎部分が違い過ぎるので氷結具合もレベルが上になる。どんなに頑張っても、表面だけを凍らせる程度しか出来ないこの世界の魔法では対抗手段も練る事は出来ないだろう。

 

「《神殺し》の魔法ですから。構想からして、別物ですよ……ええ、あの【始まりの魔法使い】ですら解凍するのに時間が掛かったらしいですから……」

 

「「誰に使ってんの!?」」

 

「ですから、【始まりの魔法使い】にですよ?」

 

「「どんな状況だよ!?」」

 

「つか、何やってんの!?」

 

「作戦、続行だ!後にしろ!!」

 

とても気になる情報だったが、氷結し切った海だったモノの上を走って行くラヴォルフを見て神崎ズも足を動かし始める。まだ、作戦中なので私語は避けるべき事だった。

神崎大悟は、後でしっかり聞き出そうと心に誓いつつ師範コンビの背中を追い掛ける。

 

「おや?」

 

「どうしたんッスか?」

 

「いえ、局員達の姿が見当たらないそうです……」

 

「へ!?見当たらないんですか!?」

 

「ええ。でも、次元空間航行艦船はもう無いはずなんですが……どこに、収容されたんでしょうか?」

 

「あ、それなら……リンディさんの【アースラ】があるはずです!今は……誰が、指揮しているのかはわかりません」

 

山程、問題を抱えていたはずなのにどういう経緯を辿ったのかは不明だが、問題行動の多い局員達は次元空間航行艦船アースラへと収容されたらしい。

 

「…………Masterから、通信!やはり、局員はアースラに収容されたもようです!!…………え?アルカンシェル?」

 

「「い゛!?」」

 

ラヴォルフの報告に、走りながら器用に顔だけを硬直させた神崎ズ。理解が、頭に浸透するに連れて青冷めて半泣きとなり現場ーー【闇の書(偽)の闇】の元へーーに向けて走りながら叫ぶ。

 

「えぇい!次から次へとっ!!」

 

「今更、逃げられんし……チャージ終了まで、後どれくらいだ!?タイムは!?」

 

「えっと…………ざっと、600秒くらいですかね?」

 

「フッ……詰んだ……」

 

何をやっても、どうにもならない事態に大悟が早々に諦めてしまった。残り、10分もない状況で【闇の書(偽)の闇】を打ち倒し……その上、アルカンシェル発射を食い止めなければならないというミッションが発生する。

しかし、ミッションの難易度が高過ぎて誰もが頭を抱える事態となっていた。それに、現場到達までにちょっとした『山』を越えなければならない。

 

「つーか、なんで海に山があるんだよ!?」

 

「…………これ、『山』ではないですよ?多分、津波じゃないですか?」

 

「ああー……ツナミかぁ。……『津波っ!?』」

 

翔悟は、一度言葉を呑み込んでそれを理解した瞬間に声を裏返して問い返す。そして、周囲を見回してゾッとした。

何故なら、ちょっとどころではないレベルの津波が出来上がっていたからだ。こんなモノが、海鳴市に到達していたかと思うとひとたまりもなかっただろう。

 

「Masterが、《コキュートス》なんて大規模魔法を使った理由じゃないですかね?あのままだと、我々も呑まれていたと思いますよ?」

 

「何で、そんなに冷静なんだよ!?」

 

「「慣れだ!!」」

 

「「慣れかよ!?」」

 

上空に、一際高い魔力の塊があるのを感じて大悟が瞬動術を用いて先行し始めた。例え、慌ててもより良き結末は得られない。それでも、大悟は【闇の書(偽)の闇】を倒さんと山と化した津波の頂上を踏ん破した。

 

「って、うえぇぇ!!??か、回避っ!!!!」

 

「テオルグ!!」

 

「了解!!」

 

「ふぁ!?」

 

大悟の指示に従って、全員が左右に瞬動術を使って飛び退く。そのすぐ後を、漆黒の砲撃魔法が通り過ぎて行った。

 

「動き出しましたか!?」

 

「《コキュートス》の効果が、切れた!?いや、無限再生で無理矢理解除したのか!?」

 

ウネウネと、取り巻きの触手が一斉に動き出し周囲に向かって無差別に攻撃を開始した。その結果、近場にいた神崎ズ達へと余りある力を行使し始めたのだ。

 

「とりあえず、間合いを詰めて蹴り上げてください!!」

 

「わかりました!テオルグ、本気で行きますよ!!」

 

「おうよ!任せろ!!」

 

言った次の瞬間には、ラヴォルフとテオルグの二人が取り巻きの砲撃触手を蹴り上げていた。

 

「速っ!?つーか、移動速過ぎるだろ!?」

 

人外というか……《神殺し》の補佐を担当している、使い魔達の『本気』を垣間見た様な気がして大悟は怯えた様な表情を浮かべる。きっと、今は届きもしないが……いつかは、あのレベルに至り、一人でも戦える様になると思っていたのだろう。しかし、師匠達の『本気の一部』を見せられて本当に届くのか不安にかられていた。とは言え、神崎はまだ《神殺し》の世界に足を踏み入れたばかりの初心者である。彼が持つ技術だって、まだ初級レベルのモノばかりなのだ。師匠達から見れば、ちょっと戦えるからと言って有頂天になっているおバカさん程度でしかならない。

彼自身は、気が付いていないかも知れないけれど。

そして、それ等の技術は次の段階へと到達しつつあった。

 

「だらっしゃあああぁぁぁ!!」

 

漸く、神崎ズが戦場へと到着した。

魔力運用にて、大ジャンプをした大悟は魔力強化した拳で【闇の書(偽)の闇】の巨体をぶん殴る。ただの拳にだって、様々な技術が注ぎ込まれ巨体の身体を粉砕していく。

 

「我皇流・虎歩(コホ)!!」

 

掌底を叩き込み、次いで魔力を爆発させ衝撃ーー二重の極みに似た攻撃ーーをほぼ同時に叩き込む。攻撃が成功したら、即行で離脱して相手の反撃砲を回避していく。

一ヶ所に留まっていると、転生者をも蒸発させる砲撃で集中放火を浴びるのはわかりきっているので、兎に角動き回る必要があるのだ。狙いを定めて、狙撃するのはラヴォルフと翔悟に任せてテオルグと大悟は接近(物理)戦で戦う。

チマチマした攻撃ではあるが、《コキュートス》によって氷結した巨体にはかなりのダメージとなっていた。

更に、双夜の使った《コキュートス》には無限再生能力を封じる様な作用があるらしく、【闇の書(偽)の闇】の再生スピードがかなり遅くなっている。アニメ等では、ほぼ一瞬で再生していた【闇の書(偽)の闇】だが、目の前の巨体はアレよりも幾分か遅かった。

 

「くっ……ダメージが、通っている様には見えないか!」

 

「後、何分だ!?」

 

「多分、一分程じゃないですかね?」

 

「「終わった!!」」

 

「おい!集まってたら、ヤバくないか!?」

 

「「「あ゛!」」」

 

うっかり、追い込まれた感じで集まってたら凄まじい魔力の奔流が【闇の書(偽)の闇】から流れて来る。慌てて見上げれば、幾つかの触手が集まって巨大な砲撃を準備している様子が見えた。たった一撃でも、転生者の一人や二人簡単に蒸発させる砲撃を複数で複合するとか正気の沙汰なのではない。しかし、【闇の書(偽)の闇】は破壊衝動のみで攻撃してくるので完全に問答無用だった。

慌てて、神崎達は散り散りに逃げていく。

タッチの差で、その砲撃が神崎達に突き刺さる事はなかったが……双夜のいる海鳴市に向けて放たれてしまった。

しかし、海鳴市にそれが着弾する寸前で『カアァン!!』と甲高い音が鳴り響くと海鳴市に向かって行った砲撃が90度近く曲がって(跳ね返った?)空へと消えて行く。

 

「一分、経ちましたね……」

 

「「ひぃ!?」」

 

しかし、アルカンシェルが打たれる事はなく……戦闘は、引き続き続行されていた。しかも、その後も管理局はアルカンシェルを打つ事はなく……神崎ズが、リンディさん達が説得してくれたんだろうと納得して戦闘に集中する事にする。だが、後に打たれなかった事が大きな問題となるのだが……今は、知るよしもなかった。

 

 

 

 

 




どんな感じでしょう?コロコロと状況が変わっていくという最悪の事態を演出してみました(笑)。とりあえず、管理局と《神殺し一派》の温度差が激し過ぎて笑えるのは間違いないかと。後、転生者共が雑魚過ぎる(笑)(笑)。
その上、一部の局員がクズ過ぎて八神家が管理局から離反する可能性が出て来ました。色々と、とてもヤバイ状況です(笑)。なにょはママに頑張って貰いましょう。
あ、RHとBDも回収しないと……(笑)。
因みに、ツヴァイは八神家が捕まった時点で回収されてます(嘘)。全く、一文字も回収場面なんて書いて無いからね!!
なら、なんで戦闘に参加してないんだか……。
局員共が、アースラに乗り込む前の事だよ(笑)。
暗躍している子もいるみたいだし(笑)。

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