絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二一三話

Re:

 

 

カプカプ。

俺は今、ストレス発散を終えた師匠に噛み付かれていた。

それはもう、一方的に虐殺?されちゃったよ。

何度も何度も、繰り返し繰り返し切り刻まれて散々な目に遇った。だけど、この身は【不老不死(?)】。

ちょっとやそっと、切り刻まれても直ぐに再生してーーー嘘です。【超再生】なんてスキル、持ってません。

死にかける度に、師匠に回復されて切り刻まれるっていう拷問を体験しました。ってか、誰だよ!?【不老不死】と【超再生】が、セットだとか言い出した奴は!?嘘、ブッこいてんじゃねぇよ!!

 

「あの……師匠、痛いです……」

 

カプ?

上目使いで、腕に噛み付いたまま首を傾げる師匠。

ハムスターみたいで可愛いなぁ……とは思ったけど、直ぐに思い直して困惑の意を伝える。

 

「いやいや、噛み付いたまま首を傾げられても……」

 

というか、さっきの上目使いって……魅了?

しかし、師匠の【真実の瞳】は『視る』事しか出来ないハズ。力を発する系の魔眼では無いと聞いた覚えがある。

それなのに、無理矢理に俺の意識を捻曲げられた様な感じがしたんだが……まさかなぁ?

 

ハムハム。

 

注意すると、師匠は噛み付きを止める処か甘噛みを始めた。いや、甘噛みなら良いって訳じゃなくて……あ、もう良いです。今一、良くわからない行動だったけれど、何を言っても止めてくれそうにないので諦めて救いの視線をリリィ達に向けた。

だが、目が合った瞬間、ササッと視線を外されて救いすらないのだという事を理解する。まあ、元々自業自得の面もあるし……諦めて甘受するしかないらしい。

 

「うっし!テオルグ、神崎に【縮地】教えてやれ!」

 

「【縮地】をですか?」

 

「ウンム。体も、ある程度出来上がっているみたいだし……そろそろ、瞬動術だけでなく【縮地】も使える様になった方が良いだろう。瞬動術と【縮地】が合わされば、更に速くなるからな!!」

 

えっと……まさかと思いますが、さっきまでのハムハムはそれを調べる為の方法だったのでしょうか!?スィと、テオルグさん?らしいオルタに視線を向けるがこちらを一度チラッと見ただけでスルー。仕方がないので、ラヴォルフさん?らしいリリィに説明を求める視線を飛ばした。

だが、その視線に気が付いたリリィはササッと視線を外してあらぬ方向に顔を向けてしまう。ちょ、おい!!

 

「ーーという訳で、神崎はしばらくプールにでも行って訓練してこい!」

 

「は?プール?」

 

「なんだ、聞いてなかったのか…………まあ、良いや。説明は、テオルグ達にさせるからその指示に従ってくれれば良い。じゃ、ついでだし……そこに転がってる、転生者も鍛え直してやれ!!」

 

「「わかりました」」

 

「じゃぁ、僕は【ダンジョン】に行くから……後、よろしくね?」

 

「「「「「【ダンジョン】!?」」」」」

 

魔法少女の世界では、ちょっと聞き慣れない言葉が師匠の口から出て来たので思わず聞き返してしまっていた。

 

「ある意味、【ダンジョン】だろう?無限書庫なんて……」

 

「まあ、ゴーストやゴーレム出て来ますもんね……」

 

警備システムや監視システムが、大体そういうモノを使っているので【ダンジョン】と言えばある意味【ダンジョン】な無限書庫だった。そして、師匠はユーノと共に無限書庫の奥深くへ発掘の旅に出掛けるのだそうだ。

 

「まだ、干渉を続けるんですか?」

 

「……神崎。状況は、刻々と変化して行ってるんだ。最初の方針では最小限の干渉を……と言ってはいたがそんなモノ実際には不可能だったという事だ。世界の調整をするにしたって、拠点を構えて根気よくコツコツとやらなければならないんだ。それに、【紫天の書】とマテリアルズの監視と調整役を買って出たんだ。しばらくは、管理局の連中と肩を並べる事になるのは仕方がない事だよ。まあ、流石に紫天の書を魔改造はしないけど……」

 

「しないでください……管理局の良い玩具にされてしまいます。紫天ファミリーは、出来るだけ自由にさせといた方が良いでしょう……」

 

「……リンディさんの計らいで、紫天ファミリーは私立聖祥大付属小学校に通う事が決定している。フェイト姉に加えて、更に四人も聖祥に通わせる事になろうとは……リンディさん、破産しなきゃ良いけど(笑)」

 

瞬間、俺は師匠がリンディさんを破産させようと動いているんじゃないか!?と疑ってしまった。といってもほんの一瞬、頭を過った程度のモノで永続はしない。もし、師匠が本気でリンディさんを破産させようとしていたとしても……俺が、周囲が、一切気が付く事なくやり遂げるだろう。

気が付かされたという事は、師匠にその気は全くないという事だ。今回の発言は、100%冗談のみで構成されているのだと思われる。そうして、師匠は邪悪に笑うと空間の切れ目に入って行った。

 

「転移じゃねぇんだ……」

 

まあ、転移なんて使ったら管理局に感知される恐れがあるもんな。とは言え、空間を割ったり歪めたりしても普通に気が付かれると思うのは俺だけか?

 

「それでは、兄様。プールに行きましょう」

 

「水着の女性が多いからって、ナンパ等してはならんぞ?兄様」

 

「しませんって!」

 

例え、俺がアニヲタだとしてもモブ女性に手を出したりはしない。と言うか、この師範コンビの監視がある中でナンパなんて成功するハズがない。囮として、転生者達を使ったとしてもナンパの『ナ』の字も出来ないだろう。声を掛ける前に捕まって、ドナドナされるだけだと思われる。

 

「というか、【縮地】ってプールで覚えるモノなんですか?加速系の技歩をプールって結び付かないんですが……」

 

「正確には、水中であるならどこでも良いんですよ?」

 

「それに、水中で覚える技歩とは何も加速だけに拘らん」

 

「へぇ……そうなんですかぁ……」

 

今一、何をするのか不明だが……この二人が、必須だと言うのであれば、それは必要な事柄なのだろう。

 

「一番良いのは、無重力空間なんだけど……そんな施設は、【組織】に戻らないとないだろうし……」

 

「兄様のダーティー・ニーズを使っても良いんだが……失敗して、空をフワフワ跳んで行くと管理局がうるさい故、二次案としてプールを推奨したんだろう」

 

「…………無重力空間ですか……」

 

「ええ。簡単に説明すると、()()()()()()()()()()()()()()()()()のが今回の主題ね?」

 

「その為の技歩を、重力下で得る為には水中が一番良いって言うだけだ。地面を足裏で()()()後方に()()()様に前へ進む……を身体に覚えさせる」

 

「身体にって、なんか工口いなぁ……」

 

「「ほぉ(へぇ)……」」

 

「Σ(´□`;)ハッ!?いえ、何でもないんです!!」

 

「しっかり、叩き込みましょう!オルタ」

 

「ああ。トラウマになるくらい厳しく行こう!リリィ」

 

うっかり、やらかしてしまった。おちゃらけた事を言えば、どうなるかわかっていたハズなのに俺はついにやっちゃぁイケない事をやらかしてしまう。その結果、師範コンビはお互いの手を取り合って恐ろしい誓いを口にしていた。

トラウマにって、そんな事をしたら【縮地】使えませんやん。言いたい事は山程あったけれど、俺は貝の様に口を閉じる。無言のまま、俺達は転生者達を引き連れて温泉プールがある海鳴市中央の繁華街へと向かった。

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………。

 

 

 

「死ね!」

 

「爆ぜろ!!」

 

「爆発四散しろ!!」

 

訓練中なのに、転生者の餓鬼共は嫉妬と憎悪に彩られた目で俺を非難する。別に、師範コンビとイチャ付いてなんていないのに……解せぬ。

 

「クソッ!モテやがってぇ……」

 

「ここに、美少年がいますよぉー!!」

 

「なのに、女が群がるのはギルガメッシュのみ……って……」

 

恨みがましい視線を向けるだけ向けて、怨念の籠った怨嗟をブツブツと言い募る馬鹿達。その滲み出る、子供らしからぬ欲望が女性を寄せ付けぬ原因だと何故わからない!?

その結果、更に女性を寄せ付けぬオーラを強化して馬鹿共は怨嗟の叫びを上げ続けるのだった。

 

「死ね!」

 

「爆ぜろ!!」

 

「爆発四散しろ!!」

 

嘗ては、己も似た様な声を上げていたが……師匠に去勢されてからは、ずっと賢者タイムが続いている。とは言え、欲望が薄れた訳ではなくお目付け役が恐くて何も出来ないでいるだけなのだが。

 

「クソォ……俺も、キャアキャア言われたい……」

 

「逆ナンなんて……なんて、羨ましいシチュエーション」

 

「イケメン、男の娘な俺達が……ギルガメッシュに負けるというオチ……これは、金か!?金の力なのか!?」

 

「「キモい……」」

 

「「「ゴフッ……」」」

 

馬鹿三人は、リリィ達の一言で撃沈した。

その様子を見て、あの馬鹿達はリリィ達に任せた方が良い様な気がする。その毒舌で、馬鹿共の心をザクザク刺しまくればへし折れるんじゃないだろうか?

 

「仕方がありませんが、この者達は私達が預かりますね?」

 

「徹底的に心をすり潰して、その性根を矯正しておく。兄様は、引き続き鍛練を続けよ」

 

「へいへい……」

 

跳ねない、飛ばない、起伏しない……身体は固定で、移動は下半身のみで上半身を前方に投げる様に進め。

通常、重力がある場所で普通に歩くと頭が上下に動く。

これは、その人が地面を蹴る事で前へ進んでいるからなのだが……無重力空間だと、その歩き方では前方斜め上へと飛んで行く事になる。つまり、歩くだけなのに余分な力が加わっているのだと師範達は教えてくれた。

しかし、それは誤った事ではない。

重力下では、必要な力であり余分な力には該当しないとの事だった。だが、無重力下では必要のない力となるので前へと進む力だけが必要となる。だが、重力に慣れ親しみ身体に染み付いてしまったそれは早々簡単には抜け切れない。故に、このプールで擬似的に無重力空間を体感させつつ矯正する訓練をさせられる訳だ。

それが、なんで【縮地】に繋がるかというと無重力空間での歩き方が調度【縮地】の技歩に似ているんだと。

 

「えっと、身体を水に浮かべた状態で出来るだけ上半身を水から出さずに前へ進む……と」

 

地面を蹴るのではなく、上半身を前方に投げる様に……と水の抵抗を感じつつ前へと身体を投げ出した。

 

「兄様。そうではありません。上半身は、置物として足で前に投げるイメージで進んでください」

 

「ったってなぁ……」

 

「【組織】では、出来ていたではありませんか……」

 

「あれは、最初の一歩だけだったじゃないか……こう、歩く様に永続でやるとなると勝手が違うんだよ!!」

 

「それは、わかっています。しかし、それを習得していただかないと【縮地】は極められません。あ、上下運動になってますよ……」

 

「くっ……」

 

無重力空間では、最初の一歩さえ成功すれば問題なかったのだが……【縮地】は、それを永続させなければならない故に難しかった。出来るだけ、上半身を動かさないイメージで下半身だけで前に押し進める様に脚を動かす訳だが……微妙に上手く動かなくて苦戦する。

地面を、足の裏で掴むイメージで……そのまま、後方に流れる様に投げるつもりで前へ。その際、出来るだけ上半身への影響を出さない様に……あ、足の主軸がおかしな事になっている気がする。しかし、両足でしっかり立つと身体が水から出てしまうので上手くいかない。逆に、身体を水に浮かべていると半分しゃがんでいる様な感じで力が正確に掛からない様な感じになっていた。

 

「うへっ……ムズ……」

 

「難しいのは仕方がありません。縮地は、技歩の極み……早々簡単に習得出来るモノではありませんから……」

 

「そりゃ、リリィは簡単だろうさ。このプールに適した肉体サイズなんだから。こっちは、立てば水から出て……浮かべば足が微妙にしゃがんだ状態。上手く動けないんだよ」

 

「…………私、チビではありませんけど?」

 

「チビだよ。どう、見ても背が低いだろう?」

 

「まだ、成長しますよ!?」

 

「誰も、リリィの成長状態の文句を言っている訳じゃないだろう!?てか……()()、成長なのか!?」

 

変身じゃなくて!?と、指摘を口にする前に目の前へと迫る拳が見えて……気が付いたら、プールサイドに引き上げられていた。どうやら、殴られて気を失ったらしい。

 

 

 

……………………。

 

 

 

とりあえず、俺はプールサイドで一休みしてから、再度鍛練をする予定で馬鹿共の楽しそうな行動を眺めている。

ぶっちゃけ、こうやって見ているだけならあの馬鹿共も普通の子供に見えて少しホッコリしてしまった。

 

「ヒャッハー!」

 

「水斬り最高!」

 

「あ、止めて!ぎゃあああぁぁぁ!!」

 

「あ……」

 

師範……と言うか、転生者達の遊びを真似てリリィが水斬りを実行。転生者の一人を巻き添えに、プールの水を真っ二つにブッタ斬り……続いて、戻って来た水をオルタが再度ブッタ斬った。

 

「へ?」

 

「ほ?」

 

「「うぎゃあああぁぁぁ!?」」

 

転生者のアホゥ共が、未来でヴィヴィオ達幼少組が無人世界カルナージの川でやっていた水斬りをやって遊んでいた。それを見ていた師範コンビが、真似して水斬りに参加。

その結果、プールの水を真っ二つにして周囲にいた人々を驚かせた上に巻き添えで濁流に呑み込んでいた。

そのせいで、溺れる一般人が多数。大惨事である。

ノーヴェが、川底が見えるレベルの水斬りをやっていた訳だが……ここに二人程、そのレベルの水斬りが出来る人材がいた事が事態の凄惨さを引き上げてしまった。

 

「こぉらぁあぁぁ!なにやっとんじゃあああぁぁぁ!!」

 

プールサイドを怒鳴りながら、数人のスタッフとプールに来ていた客達が集まって来る。それを見て、俺が思った事は『こりゃ、ブラックリストに載せられたなぁ……』という事だけだった。多分、二度とここには来られないだろう。

 

「何、やらかしてんでしょうね……師範達は……」

 

これでは、俺の訓練にならないではないか。

こりゃ、場所を変えて鍛練をしなければならないだろう。

プールサイドに正座させられ、お説教を受けている師範コンビと転生者共を眺めつつ、俺は今後の鍛練場所を思い浮かべながら他人の振りを続けていた。

ハッキリ言うと、師範達が悪目立ちを始めたので俺は空気になってコッソリ鍛練をするしかなかった訳だ。

お説教が終わった師範達が、こちらをチラチラ気にしながらスタッフの人達にドナドナされて行くのを見送ってから俺は一人黙々と鍛練を続ける。ぶっちゃけ、俺はあの水斬りに参加してなかったのでスタッフの方々に目を付けられる事はなかった。なので、師範達を放置して俺は鍛練を続ける。

後で、どんな目に遭うのかはわからないが問題を起こして捕まったのは師範達だ。俺が、責められる謂れはないので放って置いても問題にはならないと考えた。

 

「ふふふ……ついでに、ナンパとかやってみようかな?」

 

チラッと頭を過ったのは、お目付け役であるリリィ達が傍に居ない事。今こそ、積年の自由を謳歌するべき瞬間ではないだろうか?という思いが生まれたけれど近くに原作ヒロインが居なかったので諦めた。

 

「せめて、シャマルさんでもいたら……」

 

あの人は、チョロそうなので一言二言で落とせそうな感じがしていた。それに、転生者共によって『おばさん』だとか『××料理人』とか色々刷り込まれていそうだからな。

なので、ちょっと優しい言葉を掛けて近付けばコロッと堕ちそうではある。まあ、そう言われていればの話だけど。

 

「生前でも、色々言われてたからなぁ……」

 

自身の記憶はなくても、アニメに関する記憶はあるのでそういうネタには事欠かない。実際に、アニメよりも現実化したシャマルさんはとても美しい女性だった。

きっと、【少(幼)女の世界】だからという理由でアニメではそこそこ適当に描かれていたという風に言われていた訳だけど……普通に、美人さんだったよ?料理は、ダメダメだけど。でも、そんなモノはマイナスにもなりはしない。

何故なら、料理程度男でも普通に作れるからだ。

師匠を見てみろ……比較対象にするのはアレだけど、かなりの上級職人だぞ!?今の時代、男でも家事をする者は多くいる。男女平等を主張するのであれば、料理のバリエーションくらいは持っていて当たり前な訳だ。話が反れた。

現状、なにもしなくても言い寄って来る女は後を断たない。それを適当に回避しながら、俺は言われた通りの動きを続けていた。ちゃんと、出来ているかは不明だけれど。

 

上半身を、出来るだけ動かさないイメージで前へと投げる様に……地面を掴み、前へと身体を投げたら、次の足でまた地面を掴んで後ろに流す様に前へ……前へ。

それを、ある程度力を込めて行ってみた。

結果、ドバン!と水しぶきを上げて大ダメージで痛みに耐える事となる。水の抵抗が、これ程までにキツい事になろうとは……酷い目にあった。周囲には、何が起こったのかもわかっていないらしく……俺は、プカーンと浮かんで流れてるし、周囲は先程の水斬りみたく溺れる者も出ている。

ぶっちゃけ、第二次大惨事となっていた。ただし、俺も被害者とカウントされていたのでブラックリスト化はしていないのが幸いだ。リリィ達とは違うのだよ!リリィ達とは(笑)。……とまあ、ネタはそこそこに。

医務室を出て、更衣室へと行き……今日は、ここまでにして鍛練は持ち越し。リリィ達は、まだ事務所の方で怒られているみたいだったのでフレールくんを通して戻る事を伝えて貰う。ついでに、『ナンパに成功しました』という嘘と『これから、ホテルに行きます』という冗談も伝えて貰う。ちょっとした、異種返しだったんだけど……悪戯好きなフレールくんは、嬉々として了承。即時、何処からともなく誰かの悲鳴の様な怒鳴り声が聞こえた様な気がした。

 

「ふふふ……ざまぁ(笑)」

 

「きゅきゅ!」

 

「フレールくんも、協力ありがとうございました」

 

「きゅ!」

 

「悪戯は、楽しいですね……」

 

「きゅぅ~♪」

 

俺の監視を言い使っている、師範コンビ達には任務遂行不可という状態の現状は酷く辛いモノがあるのだろう。

それを突いての冗談は、彼女達の矜持を貫くにはそこそこ有効だった。俺は、隣で浮かんでいるフレールくんとほくそ笑みつつ、一度拠点としているハラオウン家のマンションへと向かう。本当は、ハラオウン家そのモノに転がり込むつもりだったんだけど……俺達は、空いている部屋へ入居する事となってしまった。まあ、紫天ファミリーもそのマンションに入居しているのでリンディさんの思惑通りなんだろうけど……中々上手く行かない。

だから、ハラオウン家にお邪魔して管を巻いたら帰って来たクロノに絡みつつ嫌がらせの一つでもしておく。相手に気が付かれない程度の嫌がらせを。割りとアッサリ、やらかして置いたのでエイミィさんに見付かって一騒ぎすれば良いのだよ(笑)。それに、やったのはフレールくんであって俺ではない。アリバイは、完璧なのでバレる事はないだろうと確信しつつ自分達の部屋へと戻って来た。

 

「ふふふ……リア充なんて、爆発すれば良いんだ……」

 

恋人を作れない僻みを、クロノで晴らす俺。

ただの、八つ当たりだとわかっているけれど止める事は出来そうになかった。結局、俺もあの三馬鹿と本質は変わらないのだろう。それでも、前に進んで行かなければならないので、その本質と折り合いを付けつつ生活している。

いずれ、三馬鹿は五馬鹿になってその精根を叩き直されるのだろうけど、今は『種』を植える程度のモノにしておくとリリィ達は言っていた。

 

「治す精根は、怠惰の部分か?」

 

転生者の『怠惰』は、生前から続く部分なので早々簡単には治せない部分だ。それを、たった二年程でやらなければならないのでリリィ達は俺を含めて多忙だろう。

それに、他にも師匠の手伝いをしなければならないから使い魔達の仕事は多い。手伝えれば良いんだけど、手伝えば犯罪者になる確率が高くて修行中の俺に回って来る様な任務は存在しなかった。中々、面倒なジレンマである。

 

「兄様?」

 

「何!?兄様が、いるのか!?」

 

「あ、お帰り。早かったね?」

 

リビングで休んでいると、血相を変えて帰って来たリリィが俺をまるで幽霊を見たかの様な顔で呆然と見ていた。

更に、その後からオルタが慌てた様子で入って来て俺を確認するなりホッとした様子を見せる。

そう言えば、フレールくんに悪戯を持ち掛けたんだった。

クロノに絡んでいたから、うっかり記憶の彼方へ飛ばしていたよ。

 

「ん?どうしたんだ?ああ、夕食はまだ作ってないぞ?鍛練で、思いの外疲れてたからな……それに……」

 

お試しで、大ダメージを喰らって今尚鈍痛が残っている。

微妙に、動くのもしんどいのでもう少し休んでから夕食を作る予定だった。

 

「それは、構わないのですが……」

 

「兄様、ナンパでホテルに行くのではなかったのか!?」

 

「あ?そんなの無理に決まってるだろ……お試しで【縮地】を試したら、水の抵抗で大ダメージくらって今も気だるさが抜けないんだぞ?ナンパなんてしてないし、ホテルなんて夢のまた夢だよ……はぁ……」

 

「【縮地】を試したんですか!?」

 

「水の中で?」

 

「試したというか……力を込めて、やったら思いの外水の抵抗にあってなぁ……」

 

「「それは、兄様が馬鹿だっただけなのでは?」」

 

「くっ……」

 

「普通は、水の中でやりませんよ?」

 

「兄様は、おバカなのだな……」

 

コイツ等、人が苦しんでいるって言うのにそれを『おバカ』の一言で済ませる気だな!?『ナンパ』も『ホテル』も無かった事が、そんなに嬉しいのか!?

余り、ツッコミが過ぎると俺が悪戯をしたのがバレるので気だるさが抜け切らないのを建前に自室に戻る事とする。

それを伝えたら、回復魔法を進められた。だけど、休んでいれば治る様なモノなのでそれは辞退して部屋に戻る。

 

「はあ……こんな生活なんだな……」

 

モブ以下とは、良く言ったモノである。

確かに、充実した日々ではあるが……かなり、大変な任務だった。これを、もっと長く続けているのが師匠とテオルグ師範達百万と一千万と兆単位の使い魔達なんだな……と思いつつ、ベットに身を投げ出す。

全く、大変な契約を結んだモノである。

あの時は、強く成りたいが為に頷いたが……肉体は強く成れど、心の方がへし折れそうだった。

 

「健全な身体には、健全な精神が宿る……か。これ、大嘘なんじゃね?健全な身体を作ってるのに、欲望一杯。性欲拡大……なんてしてるぞ?」

 

「そりゃそうだろ……」

 

「………………ふぁ!?」

 

振り返れば、誰もいなくて周囲を見回せば適当に用意したテーブルの上にフレールくんがいた。

 

「し、師匠ですか?」

 

「そうだ」

 

「えっと……」

 

「健全な肉体には、健全な精神が宿る……とは言うが、既に歪み切った精神があるのに……肉体を健全にしたからと、精神までもが健全になる訳がないだろう?」

 

「…………おぉう……」

 

なんて、ぶっちゃけをするんだ……この人は。

 

「それに、既に出来上がってしまっている精神を矯正するには、その精神が生きた時間分の時間が必要なんだ……早々簡単には、精根なんざ真っ直ぐにはならんよ……」

 

「オフッ……ぶっちゃけ過ぎだよ!?」

 

「それでも、やれる事はある。そして、それを僕達はやっているだけだ。心が折れそう?にゃはは。そんなモノは、一貫性のモノでしかないよ。乗り越えてしまえば、なんでそんな事で悩んでいたのか……と、笑える程度のモノだ」

 

「そんなモノなんですかね?」

 

「難しく考え過ぎだ。僕達の時間は、無限に等しく有限だから考える時間は多いよ?高々、数年程度でグダグダ言い過ぎだよ?神崎大悟。もっと、気楽に考えたまえ……」

 

「はあ…………」

 

「それが出来ないのは、君が真面目だからか?もっと、いい加減な性質だったらお気楽になれたのにな?」

 

「は?俺が、真面目?」

 

「…………君は、かなり真面目だよ?もしかして、自分の性質を完全に理解してないのかい?ああ、そう言えば自分を客観的には認識出来ないんだったか……所謂、自分の事(心)はわからない……だっけ?」

 

「はぁ……」

 

「まあ、客観的に自分を見るなんて事は出来ないだろうけれど、周囲の者に話を聞いて統合する事は出来るよ?」

 

「……………………」

 

「一人で悩むのなら、周りを巻き込みたまえ。そうすれば、悩みなんてあっという間に解消されるよ」

 

それだけ言って、師匠の意識はフレールくんから離れて行った。それを見送り、俺はまた考え始める。

師匠は、真面目に考え過ぎていると言っていたが俺はそうは思わない。元より、俺はこの世界の主人公達である高町なのはを含む三人娘達の助けになりたかった。

でもそれは、神々の娯楽の為に叶わず……思いを歪められてハーレムとか恋人とかそんなモノへと変えられてしまう。

そして、歪められた想いは師匠によって救われた訳だが……もし、師匠に出会えなかったルートが存在するとしたら俺はどんな未来を迎えていたのだろうか?

決して、ハッピーな終わりでは無い予想が立つ。

ほぼ、間違いなく『バッドエンド』だったハズだ。

他の転生者……この場合は、世界を自分達の支配下に置いて利益を貪ろうとしたあのテロリスト共が、俺を殺すという予測が立てられる。いや、俺だけではない霧島や隠れ潜んでいたアイツ等も該当するハズだ。それだけ、俺達の世界軸の転生テロリスト達は強大な存在だった。

だがしかし、師匠の『美醜逆転』劇で根底が覆させられ……一つの世界軸に、転生させられる人数が少数へと変更決定された今となっては、俺達の世界軸の様なテロリスト集団が生まれる事はない……多分。師匠は、それを狙って『美醜逆転』劇をしたのだろうが……良くもまぁ、あんな事をポンポン思い付いてくれるモノだ。『美醜逆転』なんて、俺達みたいな者には良く効くだろう。それこそ、『死んでも良いから、美しいモノを見ていたい』という欲望によって絶対的存在に特攻くらいしそうである。

 

「まぁ実際、特攻して粉砕された訳だけど……」

 

正に、あっという間でしたね……なーんて、言えるレベルのスピード解決だった。これに慌てたのが、『転生』を娯楽と称する神々で……一つの世界軸に、たくさんの転生者を送り出しても割りとアッサリ処理出来るぞ!と示された結果である。その結果を経て神々が取った対策は、複製世界を更に量産して一つの世界軸に纏めて送り込んでいた転生者を拡散させるという方法だった。

ぶっちゃけ、こちらの手間が増えたあげく並列世界の数は変わらないけれど、全部を確認する必要があるので大変さは変わらないというオチ。

全く、面倒ばかり掛けよってからに……と思ったのが最後。

気が付いたのは、リリィが夕飯だと起こしに来た時だった。

 

 

 

 

 




神崎くんの修行回でした!後、リリィとオルタの口調を調整した件。リリィ……令嬢ッポク。オルタ……男ッポク?。
後は、転生者とリリィ&オルタの絡みネタですかね?
水斬りに至っては、やらかすだろうなぁ……みたいな予想が直ぐに立ったので追加した分です。

神崎が、双夜に食われてますが気にしないで下さい。
意味はないので(笑)。

一つ、殺りたいネタがある。
それは……『風紀委員』召喚。『風紀委員』を召喚!!
その為には、《神殺し》の落ちこぼれ集団を【リリなの】の世界に来させないとダメなんだけど……まあ、一応練り物はあるにはある。召喚方法は、超シンプルで幼子にセクハラすれば来るから(笑)。ユーリじゃなくて、別の誰かを予定しているんだけど……はてさて。
そこまで、ストーリーを進められたら良いなぁ?

次は、INNOCENTですね!
中途半端なので、直ぐにはイケないけどね!!


最悪の物語は、今思えば……『痛みと悲しみと最後の希望(希薄?)』的な【リリなの】と似た様なテーマの物語だったんだよ(結果論)。まあ、最悪の物語の方はバットエンド寄りで、希望なんて殆どないんだけど(笑)。
むしろ、困難オンリー(笑)。
キャラ達を全部纏めて、ラストバトルでは古から続く呪いや悪意の集合体的な塊が怪異化して、怪物となり人々を襲う的なモノに立ち向かう話だった訳だけど……オールキャストで、夢の共演!?的な総合戦だった(笑)。まあ、負け掛けて人々の心が絶望に染まりへし折れて諦め掛けた所を『沢木雄真』が、その絶望を笑い飛ばして周囲の戦士を鼓舞。魔法の源である精神を奮起させて、折れ掛けた心に力を与えた……的な?
それでも、暴れる怪物を最後は、次元の狭間に追い込んで封印する。ただ、その封印の為に『沢木雄真』が自分を人柱にして行った訳で……彼の一族の血が絶える事になった。
そして、その六百年後。如月双夜(光・聖系最強)が生きる時代に、封印されたハズの呪いの塊と沢木雄真が共に当時のままでタイムスリップ。結果、呪いや悪意の塊は双夜に容赦なく綺麗サッパリ浄化されましたとさ。めでたしめでたし。
…………あの最終決戦では、死者がたくさん出たというのに。『沢木雄真』の絆を纏めて力とする魔法で、封印しかできなかったのに……アッサリ、浄化しきりやがって!と憤慨したんだけど……実際、双夜の御先祖樣が作った組織は壊滅してるし……出雲家は、一族の半分を失ってる。他にも、協力してくれた国や魔法使いがジャンジャン死んで倒し切れずに封印するに留まった訳だからなぁ……ガチで、最悪の物語だよ。
まあ、双夜みたく光と聖系の属性持ちが一人も居なかったのが原因だった訳だけど……なんか、納得がいかない。

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