絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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二三〇話

凍真

 

 

凍真です。

今現在も、【組織】に軟禁?されています。

とは言え、拘束はされておらず今日も今日とて違う世界へ監視付きで社会見学に来ている訳ですけれど。

未だ、あの世界に舞い戻る事が出来てはいない。

まあ、あの世界に舞い戻る事はないだろうと無駄な行為でしかない【組織】の勉強を頑張っている凍真です。

頑張ってはいるのだが、モチベーションはずっと低空飛行状態で浮上する事はない。おかげで、周囲からは『やる気のないヤツ』として見られている凍真です。

そして、現在は前回と変わり【魔界】に来ている。

前回、次は【幻想界】だと言われていたんだけど……謎の事故によって、【鮮血の】さんの趣味格納庫と共に幻想界行きの次元港が消し飛んじゃったので急遽魔界へと連れて来られた訳だ。もしかしなくとも、双夜さんが何かやらかしたモヨウ。天界の状況をまとめたレポートを、メールで送り付けたからなぁ……多分、それに関する報復が行われたのだろうと思われる。でなければ、【鮮血の】さんの趣味とロマンを詰め込んだ格納庫が纏めて吹き飛ばされる事もなかっただろう。

ふふふ……ざまぁ!!

チクリは、【組織】のメンバーよりも双夜さんに言った方が良いという事を学んだ。理由は不明だけど、【始まりの魔法使い】よりも双夜さんの方が頼りになるらしいと俺は理解した。

 

「【始まりの魔法使い】って役に立たねぇなぁ!!双夜さん、万歳!!つか、依頼の話……断りたーい!!!」

 

次元港から出て、目の前に海?が広がっていたので俺は何となく叫んでいた。もちろん、【始まりの魔法使い】をディスる方向で双夜さんへの忠誠を仄めかしてみる。

まあ、当人が居ないので無駄なんだけど。

何はともあれ、目の前に広がる【魔界】の世界観を説明しよう。

 

 

 

……………………。

 

 

 

綺麗なパープルの空、イエローグリーンの海……広がる鮮血の様な真っ赤な大地。とても、カラフルで目に優しくない奇妙キテレツな世界が眼前に広がっていた。

 

「グフッ……キツい……」

 

そんな、目に優しくない世界で更に人のSAN値を削りに来る奴等が俺を出迎えてくれた。いや、まあ……ハッキリ言うと、居るには居るだろうけれど。その存在自体が、納得行かないだろう存在が目の前でクネクネしている。

目の前に居る……それは、『アラクネ』。

『アラクネ』とは、蜘蛛と呼ばれる虫の頭の部分……というか、上半身?が人間の女という怪物だ。

趣味趣向に至っては、裸だったり鎧姿だったりと様々だけれど。ああ、別に裸の女が良いと言っている訳ではない。

だが、今目の前に居るヤツは俺の常識に喧嘩を売っているとしか思えない存在だった。

 

「……なんで、筋肉ムキムキの()なんだよぉ!!」

 

「ウフ。今日のお客様は、とても元気なお客様ね♪」

 

「しかも、『オネエ』とか!?」

 

「あら。ありがとう♪」

 

「違う!あ、いや、違わないけど……違うんだ!!」

 

何故だ!?全く、一切、納得が行かないのに話だけがドンドン進んでいく感じがする。そういう意味じゃないのに、そういう意味で取られて引き摺られる様に本日のカリキュラムを消化されて行く。なんて、理不尽。

 

「あれが、彼の有名な『魔王城』よ。初代サタン様が作られたとされているわ。今は、魔界の王者第365代目サタン様である堕天使のゼファミィちゃんが治めているの」

 

「666なんじゃないのか!?つか、何故堕天使!?というか、魔族じゃないのか!?」

 

アラクネであるロッカさんの案内と説明に、俺は先程から絶え間無いツッコミを連発している。というか、半強制でツッコミをさせられていた。ああんもう!なんで、【魔界】を【堕天使】が治めているんだ!?傀儡じゃないのか!?天界の策謀だろう!?どう、考えても!!

 

「昔、【風紀委員】ちゃんが天界から連れて来た元天使のファミィちゃんを強引に堕天させてサタンの座に納めちゃったのよねぇ……」

 

「【風紀委員】!?天使を強引に堕天!?更に、サタンの座に納めちゃった!?」

 

ちょっと待て!何がどうなったら、天使を強制で堕天させて魔界の王の座に堕天使を納める結果になるんだ!?ツッコミ処が多過ぎて間に合わないんですけど!?

 

「というか、何をやっているんだあの人達は!?」

 

「そもそも、天使を魔界の王者の座に納めたのは、当時のサタンが天界の傀儡だったからなのよねぇ……」

 

「真逆!?ゼファミィが、天界の傀儡じゃなくてサタンが傀儡だった!?」

 

「それを、【彼の者達】がズバッと解決させちゃったのよ。因みに、ゼファミィちゃんは【彼の者達】の傀儡じゃあないのよ?ちゃんと、魔界の為に身を粉にして働いてくれているわ。ただ、彼女の後任が【彼の者達】だっていうだけでね?」

 

背後関係がしっかりしているので、むしろ前人者よりも人気があるのだとか。マジか……。

 

「ゼファミィちゃんの背後に、あの人達がいるっていうだけですっごく安心感があるのよ?」

 

そりゃ、わからないでもないですが……それでも、魔界の貴公子としてのプライドとか色々問題ないんですか?それに、サタンが傀儡だったとするなら天界はどういう反応を?

 

「えぇー……天界とかは、大丈夫なんですか?」

 

「あら?先に天界に行ったのでしょう?なら、天界も【彼の者達】の領域だってわかってるんじゃないの?」

 

「あっちもですかー……」

 

なんというか、完全にあの【組織】が黒幕扱いなんですけど……これ、良いのかねぇ?単一組織に支配される天界と魔界。つーか、だったら堕天使さんの前任者であるサタンは誰の傀儡だったのですか?まさか……とは思いますが、《旧・神族》?でも、監視されているんですよね?なら、《旧・神族》は暗躍とか出来ないんじゃないんですか?ってアレ?だったら何で、前・サタンが傀儡になっているんだ?

 

「あのぉ……それだと、《旧・神族》が暗躍出来ない様に思えるのですが……」

 

「それは、魔界の後に行く場所でわかると思うわん」

 

「魔界の……後?」

 

「ええ。でも今は、魔界のお話をしましょう」

 

そう言って、ロッカさんは言葉を濁し気分を晴らすかの様に喋り出した。きっと、色々と込み入った事があるのだろうとその時は納得したのだが……後々考えると、とてもおかしな話だった訳だ。そして、それはロッカさんの言葉を信じるとすると次でわかるらしい。

 

「では、あちらを御覧なさい。あの湖が、見えるかしら?」

 

「はあ……」

 

ロッカさんが、指し示す方向に巨大な湖が確かに見える。

つか、ちょっとあり得ない位大きいって言うか……どう見ても、『海』の様に思えるのは俺だけだろうか?

 

「アレが、如月双夜が暴走していた頃に空けた……惑星を貫通する大穴ですわ(笑)」

 

「ブフォ!!惑星を貫通!?双夜さんが!?」

 

ちょっと待て!!なんでそこで、双夜さんの話が出てくるんだ!?つーか、惑星を貫通するとかどういう事だよ!?

しかも、ロッカさんが出す雰囲気のニュアンスからして……彼処から、双夜さんが突き出て来たかの様な言い方じゃんか!?まさか、『オギャー!』と生まれる様に現れた訳じゃねぇんだろう!?そうだよな!!

 

「彼処から、『オギャー!』と生まれたのよ……そして、その穴から溢れ出たガスのせいで青かった空は紫に染まり……降り積もった惑星の中身で大地は真っ赤に染まったの」

 

比喩か何かなんだろうけど……『オギャー!』って(笑)。

双夜さんが、現れるまでは普通に青い空で青い海に青い大地だったらしい。いやー、もうあの人は本当にスケールが違い過ぎる。ヤル事、成す事もう無茶苦茶だ。魔王暴走で、魔界の外環変えるとか一体どこの魔王だよ!?

 

「じゃあ、海は何かの化学反応なんですかね?」

 

「あら?正解!!スゴいわ!良くわかったわね?」

 

「マジか……。あの色、化学反応だったのかよ……」

 

「おかげで……それ以降、海水浴が出来なくなっちゃったのよ?今の海は、『H₂SO₄ 』の海だから……」

 

そう、ロッカさんは残念そうに溜め息を吐き出した。

『H₂SO₄ 』って……硫酸!?毒以上じゃないか!!

だが、双夜の無双ップリはそれだけでは収まり切らなかったらしい。その後に続いた話に、俺は苦笑いを禁じ得なかった。つーか、何処までも予想からはみ出る人である。

 

「でもまあ、その代わりに……ゼファミィちゃんに、魔界の王者権を奪われた前サタンが嫌がらせをしてたんだけど……双夜ちゃん見て、心へし折られちゃったらしくって……」

 

ロッカさんは、言葉を濁し捲ってたけど明らかに前サタンを嘲笑っているのが伺えた。というか、前サタンの心をへし折るレベルの暴走ップリですか……ある意味、存在自体が最凶の権化なんですね。

 

「アレ以来、前サタンの行方も判らずじまいなのよ?」

 

「それ、混乱に乗じて暗殺されてません?」

 

「あら、そう?……でも、双夜ちゃんが正気に戻って魔界に来た時、ちゃんと生きてる姿が確認されたわよ?」

 

「あ、生きてるんだ……じゃあ、引き籠ってたのかな?」

 

「……きっと、今も引き籠っているでしょうね……」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。だって、あの人を見掛けたのって【ハプシエル事変】まっただ中だったハズだもの……」

 

んん!?い、今、とても不穏な言葉が聞こえた気がしたけど……気のせいだよね?一瞬、ピンクというか紫に近い色合いの光を感じたのだけれど……見間違いか何かだよね!?

 

「えっと……ハプ?」

 

「あら、知らないの?【ハプシエル】様の事……結構、有名な方だと聞いていたのだけれど……中級第三の天使で、ラブ&ピースをモットウに【福音を告げる者】と呼ばれている御方よ?私達も、あの御方を目標に日々邁進し続けているわ!!」

 

「ゴフッ……」

 

ああ、うん。これは、ほぼ間違いないだろう。

アレだ。【マジ・あか】の()()()が、この魔界で召喚されたと見て間違いないだろう。つーか、前サタン……間違いなく、ハプシエルの被害者だよね?でなければ、折角出て来たのにまた引き籠っている理由が不明過ぎる。

目の前の『アラクネ』の現状からして、この理不尽の理由が【ハプシエル】なのは間違いないだろう。

つーか、現実で女体として描かれているモンスターのほぼ全員が筋肉ムキムキの髭面おっさんなので間違いない。

ケンタウロスは良いとしても、メデューサやラミアが筋肉ムキムキの髭面おっさんなのはいただけない。

そして、それをやらかしてくれたのが双夜さんである事も理解した。

 

「へ、へぇ……も、目標なんですか……」

 

「ええ。だって、この姿だと変態に襲われる事もないのよ?私達、()()に取っては最高の姿だわ!!」

 

「……………………女性?」

 

女性……え?女性!?ほわい!?女性なんですか!?『男』じゃなくて、マジ『女』なんですか!?頭の先から、爪先まで視線を上下させマジマジとその風貌を見詰めるが……どこからどう見ても何度確認しても『筋肉ムキムキの髭面おっさん』でしかないモンスターが佇んでいた。

 

「そうよ?性別は、普通に『女』ね。でも、愛する人にしか真の姿を見せる気はないわよ?」

 

つまり、普段は筋肉ムキムキの髭面おっさんで過ごし、本当に愛する人にしか真実の姿を見せない様にしているとのこと。そうする事で、不埒な輩から自身を守っているのだそうだ。そこまでしなきゃならない程、美人なんですか?

 

「へ、へぇ……(視線逸らし)」

 

「信じてないわね?でも、見せないわよ?うふふ……」

 

どうやら、魔界の女性は身持ちが固いらしい。

悪魔なのに、身持ちが固いってどういう事だよ!?

もっとこう……軽いイメージがあったんだけど、実際は全く真逆だったモヨウ。もしかすると、『七つの大罪(色欲)』や『淫魔』のイメージが先行するが故のモノだったのかもしれない。とはいえ、悪魔ってもっと堕落した生き物だと思っていたのだが……どうも、真実は違うらしい。

 

「悪魔って、堕落してないんですね……」

 

「堕落?ああ、それって《旧・神族》共が流した流言よ?神々や天使の清廉潔白さをアピールする為の……」

 

「ああ……そっちか。そういやぁ、俺の知るそれも相手を貶める為の流言だったっけ……はあ……」

 

そう言えば、堕落云々や悪魔云々って相手の教えを貶める為に始めた宗教同士の足の引っ張り合いだったっけ。

そうやって、信者を削って自分達が信仰する宗教に引き込むんだよな?確かに、その辺りの考察を含むと【善】も【悪】もねぇよな。気付かなくても良い事に、気が付いてしまった憐れな子羊の如く俺は頭を抱えた。

ああ……【神】=【善】とか、【悪魔】=【悪】とか言っていた頃が懐かしい。それで済めば、面倒がなくて良かったのに……なんで、こんな事に巻き込まれているのかと遠い地平線を見ながら嘆いた。

 

 

 

……………………。

 

 

 

そして、魔王城のある城下町に辿り着くとそこはそこそこ発展した……現代ッポイ光景が広がっていた。

 

「わああぁぁぁ……ハイテクぅ(笑)」

 

「ここは、魔界でも屈指の先進都市よ。殆どが、【彼の者】達から譲渡された技術だけど……それでも、独自の進化を遂げたモノもあるのよ?」

 

「へぇ……」

 

俺は、ロッカさんのガイドを受けながら電車?バス?……浮かんでるんですが?えっと、重力制御系の技術ですかね?

それを、電車ないしバスに組み込んだ感じの乗り物に乗り込み移動を開始。流石、モンスターも運ぶ為か内装は広めに設計されているーーに乗り込んで、次の見学地へと向かう。向かうんだけど、目の前に広がる無言の阿鼻叫喚に俺は、冷静なツッコミ待ちをしているのではないかと思ってしまった。というか、ツッコンデ良いの?これ??

目の前に広がる光景に、思わずツッコミを入れそうになったがツッコミ切れない事柄については放置する事にした。

というか、吊り輪に掴まりながら男を物色する筋肉ムキムキの髭面おっさん達がズラリと並んでいて……その目の前には、物色されている事に怯えてプルプルと震え身を寄せ会う魔族の男達がとても可哀想に見える。つか、怖ぇよ。

何なんだろうな?この魔界と呼ばれる場所は……?

 

「と言うか、あるぇ?」

 

「おや?どうかしました?」

 

「いや……前にセイビアさんが、魔界は地獄に吸収されたとか何とか言ってた様な……?」

 

「ああ、吸収されたわよ?この大陸ではないけれど……ここも、かなり大きな惑星だからね……ただ、こんな海だから船は浮かばないし、空から行くとしてもその特定の大陸まで数ヵ月は掛かるから……行けなくはないけど、誰も大陸間移動しようとは思わないのよ」

 

「海を渡るのに数ヵ月?空でも?」

 

「空で……ね。海では、数年掛かったと言われてるわ」

 

余り、食事を必要としない種族が船乗りとして大陸間移動をしていたそうだが、今では海に船が浮かばないので空から行けるらしいが誰も行きたいとは思わないらしい。

 

「じゃあ、大陸間での交流はないんだ……」

 

「あるわよ?転移魔法で、移動が可能だから空港に行けば跳べる様になっているわ」

 

「へぇ……」

 

成る程。それを作る為に、頑張った人ーーこの場合は、悪魔ーーがいたのだろう。海は無理だから、空から大陸間移動をして転移魔法を刻んだんだと思われる。そう、思ってたら……ロッカさんが、何気ない顔で『通信機で座標を調整したのよん』と教えてくれた。

 

「なんて、夢のない話なんでしょうね……」

 

「その頃には、【彼の方々】がガッツリ介入してたんだからわかりそうなモノでしょう?なんで、そこでファンタジーに思考が飛ぶのよ?」

 

「ロマンですよ……」

 

「男のロマンって、理解できない時があるわね……」

 

見た目、その辺の男より男らしいロッカさんに言われたくはない。それにしても、こんなに……カラフルではあるけれどファンタジーなんだから男のロマンくらいは成就されていても良いと思う。

 

「ーーーと、あるぇ?」

 

「どうかして?」

 

「いや、女性は大体セクハラされるのが嫌でロッカさんみたいな姿をしてるんだよね?」

 

「ええ、そうよ?」

 

「だったら、普通の女性って居ないんじゃ……」

 

「?……ああ、あの方は『ウォーティア・トレントレット』様よ。【始まりの魔法使い】の娘様ね」

 

「へぇ……」

 

俺の視線を辿ったロッカさんが、後ろを振り返ってその人物を見付ける。そして、彼女の事をサラッと教えてくれた。そうか、【始まりの魔法使い】の娘様か……。

 

「…………ん?え?娘!?」

 

「そうよ?正確には、違ったかも知れないけれど……娘だと、私達には紹介していたわね」

 

「ちょ、その辺が一番知りたいところなのに……」

 

だけど、ロッカさんは【組織】の人じゃないので知らなくても仕方がない。クソゥ!セイビアさんなら、アッサリ教えてくれるのに……なんでここにいるのがセイビアさんじゃないんだ!?まあ、戻ってからでも良いんだけど……普段、すぐにわかっていた事がわからないままにされる事に少なからずイライラする。何故なら、研修は後数日残っているからだ。その間、このモヤッと感を抱いて過ごさねばならない。

ハッ!そうだ、端末!端末ないですか!?

周囲を見回すが、目の届く範囲内に端末の影も形もなかった。クソゥ……肝心な時にないとか最悪である。

それにしても、魔界は天界と違って誰かさんの手が入っていない。双夜さんが、『オギャー改変』してから一切介入されていない様子だ。故に、一日でアッサリ終了となったりはしなさそうなので、モヤッと感が消える理由もない。

 

「そんなに知りたいのなら、本人に聞いてみれば良いじゃない。多分、アッサリ教えてくれると思うわよ?」

 

「ええ!?あんな、美人に声を掛けろと!?」

 

そんな、ナンパみたいな事出来るハズ無いじゃないか!!

 

「美人……まあ、確かに気後れする美人ね……しかも、二つ名が【絶対零度の女王】ですもんねぇ……」

 

「あ、それ、絶体死ぬヤツじゃないですかー……」

 

「骨は、拾ってあげるわよ?」

 

そんな感じで、半ば無理矢理ナンパに送り出された俺は覚悟を決めて、上(髪)から下(服)まで真っ白な美人に声を掛けるハメとなった。とりあえず、無難に『コンニチワ』と声を掛けてみる。

 

「こ、コンニチワ……」

 

「はい、こんにちわ。どちら様ですか?」

 

「えっと……依頼で、如月双夜さんの監視を任された禍焔凍真と言います。今は、【組織】に軟禁状態で勉強中なんですが……。貴女に聞きたい事がありまして……」

 

あるぇ?『絶対零度の女王』って言われてる割りには受け答えが柔らかい気がするのですが……気のせい?

 

「あら、またとんでもない方の監視役を引き受けましたわね。しかも、【組織】に軟禁状態ですか……それで、私に聞きたい事とは?」

 

気のせいじゃない。誰だ!?【絶対零度の女王】なんて言い出したのは!?全然、絶対零度じゃないじゃないか!!

 

「あー……さっき、ロッカさんから聞いたんですが……【始まりの魔法使い】の娘さんなんですか?」

 

「…………厳密には、違うけれど……一応、そういう事になっているわね」

 

「と言うと?」

 

「私は、【始まりの魔法使い】が創った人間の試作品なのよ。創世記で、あの人が神王と魔王にした事は知っているのよね?なら、その後に再度創世記をやったのも聞いているでしょう?」

 

「はあ、まあ……かなり、無茶苦茶な話でしたけれど」

 

「無茶苦茶……まあ、否定はしないわ。でね、あの人は『人間』を創ろうとしたのだけれど……事もあろうに、自分を劣化させれば人間が出来ると思ったらしいのよ……」

 

「は?」

 

【始まりの魔法使い】を劣化させれば、『人間』になる?

それ、どんな冗談ですか?あんな化け物を、劣化させたところで『人間』なんて生まれるハズもないじゃん。

 

「ははぁ……無理な話ッスよね?」

 

「ええ。それで、生まれたのが私。『人間モドキ』のプロトタイプ。あの人の娘と呼ばれてるけれど……ただの失敗作ってヤツよ……」

 

「ごめんなさい。知らなかった事とは言え、軽く聞いて良い話じゃなかったッスね……」

 

「いいわよ。実際、歴史の教科書にも載っているレベルの話ですもの。まあ、あの人にも苦手な事があるってだけの例だけれど……まさか、動物の創造が苦手だったなんて笑い話にもならないわ」

 

成る程。【始まりの魔法使い】でも、苦手なモノがあったのか。ただ、それが致命的なモノで人間の誕生秘話を聞く事になろうとは思わなかった。

 

「はあ……あれ?じゃあ、あの人はどうやって動物(人間)を創造したんですか?」

 

「【希羅】に会ったのよ」

 

「キラ……?」

 

「神々の産みの親が【聖母神】なら、【聖母神】の産みの親が【創造主】。まあ、要するに【神々】よりも上に位置する存在と出会って人間創造を手伝って貰ったって事よ」

 

「成る程」

 

彼女は、その話をしたところで目的地に着いたと言って電車?から降りて行ってしまった。残念な事ではあったけれど、貴重な話が聞けたので良しとする。とは言え、彼女の説明では、今一判らなかったけれど……後で、セイビアさんにコンコンと説明して貰って理解する事になった。

キラと呼ばれた存在が、最上位の【創造主】の事でウッドローさんを寵愛して縛り付けている元凶の事。

その下に、【破壊神】や【聖母神】がいて、【聖母神】は【神々】の産みの親らしい。ああ、木に成る卵な《新・神族》ではなく古い方の神々を産み出した存在が【聖母神】である。わかり辛いかも知れないけれど、《新・神族》ではなくて《旧・神族》の方の産みの親らしい。

因みに、《旧・神族》っていうのは中二病と化した貴族な神々とは別物。ではなくて、周囲に煽られて《堕ち神》となってしまった神々の方。今尚、絶望という名の嘆きに沈み声にできない慟哭(悲鳴)を上げ続けているらしい。

 

「ところで、どこら辺が【絶対零度の女王】なんだよ!?全然、普通だったじゃないか!!」

 

「機嫌が、良かったんじゃないの?」

 

「本当に『絶対零度の女王』とか、呼ばれているんだろうか?全然、そんな風には見えなかったんだけれど……?」

 

「そりゃ、【絶対零度の女王】ってのは物理的な意味ですもの。性格や態度とかではないから……」

 

「そうなんですか!?……つか、物理かよ!?」

 

「絶対零度系の魔法を使うらしいわよ?」

 

「そっちかい!!」

 

いずれにしろ、【始まりの魔法使い】が創り出した存在だ。危険だろうが、そうでは無かろうが俺には関係ないので今まで通りとなるだろう。まあ、関わるのであればその内向こうからやって来ると思われる。

だが、先ずはこの研修を終えてから。

 

 

 

 

 




という訳で、魔界での研修でした。本当は、幻想界の予定だったんだけど……忘れちゃってて。なので、前回の話から通報メールがあったのでそれを使っちゃいました(笑)。
で、魔界は双夜がガッツリ改変しちゃってました!!というか……災害?として関わってたよ?っていう話に。イエローグリーンな硫酸の海……とか、大気の状態大丈夫?と聞きたかったけれど、まあそれはファンタジーって事で(笑)。気にしない事にした。つーか、その話を入れると一話に収まらなかったんだ。まあ、ルール・ブレイカーが関わってるんだよ。
だからこそ、【組織】の頭がおかしい奴等が介入出来なかった訳なんだけど。暴走魔王の時に、関わらなかったからねぇ……天界は。

ウォーティア・トレントレット登場!!
プロトタイプ(仮)の『人間』で、【始まりの魔法使い】の娘……ってのは本当。再創世記で、【始まりの魔法使い】が『人間』を創造しようとして失敗した結果生まれた少女。大体、数百兆年前の落とし子。それから、全く成長すらしてないから見た目16歳位の女の子のまま現在に至ってる。
というか、【始まりの魔法使い】が己を【元人間】と認識してた事にも驚愕だったんだけど……まさか、自身を劣化させたら『人間』になると思ってた事に大爆笑モノ。あり得ないから(笑)。それなら、簡単に人間に戻れるって(笑)。
まあ、彼が自分を『人間』だと認識してたのは記憶の一部を取り戻していたからなんだけどね。でなければ、自分が生まれた世界(時代)に戻ろうとは思わないから(笑)。その結果が、双夜という悲劇な訳だけど。
因みに、『ウォーティ(愛称)』は氷系の魔法が得意。
《絶・絶対零度》という、何もかもを氷結させる魔法をガンガン使う子です。なので、【絶対零度の女王】とか呼ばれてるんだけどね。被害者は主に、【鮮血の】とか【始まりの】とか【初(ウイ)】とかかな?まあ、巻き添えで取り巻き共が一緒に凍るけど(笑)。それ以外では、普通に柔らかい感じのお嬢様風な女の子です。

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