絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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三〇一話

Re:

 

 

「そう言えば、オルタは語尾を『のじゃ』にしないんですか?」

 

ずっと、『~の』とか『~だ』的な語尾にしているオルタなのだが……微妙に、何か言い辛そうにしている。

まるで、『~なのじゃ!』とか『~のじゃ!』と言いそうになるのを我慢しているかの様な感じなのだ。余りにも、サラッと言い切っているのでわかり辛いけど。希に、語尾へ近付くと会話速度がゆっくりになる事がある。多分、語尾が『~のじゃ』に成らない様にしているのだろう。

まあ、そこまで大きな変化はないけどな。でも、微妙に緩やかになるので気を付けているのだとはわかった。

なので、言い切ってからフと視線を師範代のいる方へと向けるとガパッと言う感じに口を開けたオルタがカッチカチに固まっている姿が見えた。あ、もしかして地雷踏んだ!?と思ったけれど……もう、言っちゃった後なので取り返しは付きそうにない。

助けを求めて、リリィの方へと視線を向けるがスィと視線が合わない様に逸らされてしまう。翼は、ここには居ないのでセイバーへと視線を向けるがセイバーは真剣な顔で巨大フラスコの中を泳いでいるデビルフィッシュ達に夢中だった。いや、過去の戦いを思い出して恐怖?から睨んでるのかも知れない。

セイビアさんは、既に逃げ出していて居ないし……孤立無援ですか!?視線をオルタに向けるが、未だにオルタは硬直したまま動かないので何も聞かなかった事にしてスルーしちまえば良いんじゃね?と思ったけど、気になるので再度聞く。

 

「オルタは、語尾を『のじゃ』にしないのか?」

 

「ちょ!?」

 

ぶっちゃけ、結末が変わらないのなら多少暴走しても問題はない……ハズ。仕方がないだろう?そういう、結論に至っちゃったんだから。だから、『仕方がないんだよ』と俺は再度地雷を踏んでみた。しかし、オルタは固まったまま動かないのでリリィに正気に戻せと指示を出す。だが、リリィはオルタを正気に戻す事を拒否って来た。そこは、了承し後頭部をハリセンとかで叩く場面だろ!?

 

「嫌です!」

 

「じゃ、僭越ながら俺が……」

 

「止めて下さい!兄様。と言うか、兄様はオルタを『のじゃ』ロリにしたいのですか?ハッキリ言って、かなりキャラが立ってしまいますけど?」

 

のじゃロリ……ってか、そう言えばセイバーってロリ枠のキャラだったっけ?なら、間違いではないんだろうけど。別に、『のじゃロリ』が欲しい訳じゃないので御免被る。つーか、師範は『ロリ』ってキャラでもないだろう?何をもって、己を『ロリ』と断定した!?そんなに、己を若く見積もりたいのか?はっ!?殺気!!

すいません、すいません!ちょっとした、出来心なんです!『ロリババア』とか思って無いんで勘弁してください!!

ぶっちゃけ、もうお腹いっぱいです。

 

「あー、そういう訳じゃないけど……何となく、『~なのじゃ!』って言い出しそうだったから?」

 

「何となくで、地雷を踏むんですね?兄様は。まあ、確かに言い出しそうではありますが……これ以上の色物は要りません」

 

色物って訳じゃ無いんだけど……コイツ、割りと辛辣だよな。

でもまあ、それは何時もの事なので気にはならない。とりあえず、話が横に逸れたけどオルタが頑張って『のじゃ』を言わない様にしていると言うのなら俺はそれに触れない事とする。

 

「結論も出だし、続きをするか……」

 

「ちょ、兄様!?地雷踏んでおいて、自己完結しないで下さい!!」

 

「でも、オルタは頑張って『のじゃ』と言わない様にしているんだろう?なら、訊かなかった事にしてスルーするのが一番だろ?」

 

「それは、そうですが……絶対、文句言われますよ?」

 

「全否定するから、話を合わせてくれないか?」

 

「…………不本意ではありますが、了承しました」

 

という訳で、オルタが『のじゃ』の話題を振って来てもスルーする事が決定しました。リリィの協力も得られるという事なので、当初の方針とは違うけど地雷は放置する事とする。ぶっちゃけ、バレたとしてもボコられるだけなので問題はない。

それよりも、『のじゃ』語尾で攻められる方が堪える。

その後、オルタが再起動するまで暫しの時間を必要とし……俺も、話の流れを大分忘れてしまった頃になって奇声を上げつつオルタは正気に戻った。

 

 

「のじゃああああぁぁぁぁーーー!!!!!」

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

とりあえず、聞かなかった事にして奇声を上げるオルタをスルーする。それは、リリィも同様で奇声を上げるオルタを完全に無視していた。つか、何故『のじゃああぁー!』と叫ぶのか意味不明だ。何はともあれ、俺は何も無かったと言わんばかりに錬成作業を続行する。地雷を踏んだのは間違いないけど、タイムリーな話題でもないのでこっちから振る事はない。

 

「兄様。何で、妾が語尾に『のじゃ』を付けぬか知っておるか?」

 

「……………………」

 

「それはの、ロリで『のじゃ』はキャラが濃過ぎるだろうと思ったのじゃ!じゃから、頑張って『のじゃ』を使わぬ様に気を付けておったのじゃが……聞いておるか?」

 

「……………………」

 

錬成、錬成っと……やっぱり、幻想金属の抽出は難しいなぁ。特に、失敗したヤツの難易度が跳ね上がってる様な気がしてならない。一ランク程、跳ねているかと思ったが……最悪、二ランクは想定を上げなければ成らないかも知れなかった。

とりあえず、オリハルコンと銘打つ金属の鉱石を横に置いて未だ難易度の低いミスリル鉱石を手に取る。鉱石によって、難易度が違うのかも知れないけれど今は地道に熟練度を上げて行くべきだろう。つか、ヒヒイロカネを分段に含む鉱石は放置して未だ手の届く範囲であるミスリル抽出を完璧に仕上げる為に錬成を行使する。そうこうしている間も、積極的に話し掛けて来るオルタをワザと無視して錬成を続けていると、本当に錬成に集中しちゃってオルタが部屋の隅で拗ねるレベルで放置していた。

気が付いた時には、どんよりとした暗雲を背負ったオルタが部屋の隅でブツブツと陰湿な事を呟き鬱蒼と茸を生やしている。それを見咎めて、鬱陶しいとかウザッとか思ったけれど……そうしたのは俺なので、甘んじて落ち込んだオルタを受け入れた。

 

「オルタ、どうしたんだ?」

 

「つーん…………」

 

うわっ……ちょっと、イラッと来たんですけど!?

リリィに視線を向けて、オルタの状態を問うと処置なしのアイコンタクトが帰って来る。そうですか。処置なしですか。なら、このまま放置で良いですね?俺もまだ、課題が済んでないのでオルタに関わって居られるほど暇ではなかった。なので、声を掛けてみたものの返答は無かった事にして再度錬成へと集中する。

 

「…………って、放置!?放置なのか!?えぇい、リリィ!兄様は、一体どうなっておるのじゃ!?さっきから、全く相手にしてくれぬぞ!?」

 

「オルタ……貴女が、変に拗ねているから上手く噛み合わないだけです。素直に『のじゃ』『のじゃ』言ってれば良いものを……」

 

「のじゃぁ……リリィが、猛毒を吐いて来るのじゃ……」

 

「自業自得です。それと、無理に『のじゃのじゃ』言わないで下さいませんか?聞いていて、痛々しいですよ?」

 

「ガーン!き、気を付ける!!」

 

「はい。では、失礼します」

 

「……………………リリィが、辛辣だった……」

 

余りにも、辛辣な言葉の応酬に俺は思わず振り返っていた。

無惨なオルタは撃沈。ショックの余り、ペタンと床にヘタり込んでしまったオルタ。御愁傷様です。

仲が良いと思っていたけど、そんなに仲が良くないのかな?と思ってたらリリィが首を横に振る。つまり、仲は良いけどオルタの奇行は範疇外って事なのだろう。つか、ナチュラルに人の考えを読んで来るよなコイツらって……俺もだけど。

事は終わり、振り返っていた体を作業台に戻して抽出作業を再開する。目を閉じて、『金目のモノ……金目のモノ……』と唱えながら黄金律を補助として使いつつミスリルの抽出に挑む。こうしておけば、金目のモノであるミスリルを効率良く抽出出来る()()知れないのでやっているオマジナイだ。気持ち、上手く抽出出来ている様な気もしないでもないのでジンクス程度の気持ちでやっている。ぶっちゃけ、これで上手く行くなら世の中の錬金術師さん達が大挙として押し寄せて来るだろう。

俺のお説教を行いに。なので、()()気持ち成功率UP……だと、思っている。ただ、確実性はない!『おおよそ』的な成功率UPなのだ。言い訳完了。本当に、知らん。師匠に聞いてくれ!

感覚的には、かなり微妙な所。成功すれば、『手応え』というようなモノがあるにはあるけど……今一、曖昧なモノでしかない。

故に、『できたー♪』と明確に断言出来るモノではなく『多分?』とか『おおよそ』とかが頭に付く感じだった。

 

「とりあえず、明日までの課題は終了。……鑑定能力でもあれば、視ただけで成功か失敗がわかるんだけどなぁ……」

 

ぶっちゃけ、歯痒い。前回の世界で、『勇者』と呼んでいた転生者が鑑定能力を持っていたけど……あれさぇあれば、この歯痒さから脱却出来るというのに。とりあえず、成功?の箱に入れて後でセイビアさんに確認して貰う。失敗してたら、失敗したヤツから再度ミスリルを抽出してインゴットにするまでだ。

因みに、不純物のみを抽出する事は出来ない。つか、不純物って別の鉱石だったり水晶等だったりするんだぞ?まあ、多くは銀だったりするんだけど。ぶっちゃけ、見た目はミスリルと変わらない。

じゃ、何が違うのかというと鉱石に内包される魔素の量である。

それが、均等かつ満全に混ざっているのがミスリル銀。で、不安定なのが魔鉱銀。何も宿していないのが、銀である。ここで、単純に魔素が混ざっていれば良いんだよな?と魔力を流すと場合によっては爆散するとのこと。まあ、爆散系の鉱石は意図的に排除してあるらしいけど……俺が流した時は、額に孔が空いた。鉱石の中に、火系の魔石も混ざっていたらしくその効果によって収束した魔力がレーザー状になって額を貫通したらしい。

 

「爆散した方が、まだマシだった……」

 

「ん?ミスリル銀の作り方か?それなら、簡単だ。銀鉱石を、一面に敷き詰められた場所にドラゴンを誘い込んで煽るだけ煽りブレスを吐かせれば良い。高温と高魔力で、混ぜられた銀鉱石はミスリル化する」

 

「何故、ドラゴンブレス!?」

 

「アイツ等のブレスには、高出力の魔力が含まれているからな。まあ、流石に波動砲を穿つ奴は使いにくいけど純度の高いミスリルが出来ると重宝されているよ」

 

「…………師匠も、その方法で?」

 

「アイツは……別。アイツは、伯爵級のドラゴンに知り合いが居てな?そいつの協力の元、安定したミスリル銀を供給して来やがる」

 

純度も高く、量も確保されているので重宝されているとのこと。

あの人ってば、どんだけ常識ハズレな事をやらかしてくれるんだろうか?大体、師匠さえ居れば何でも出来そうなんですけど!?

 

「師匠ェ……ってか、何時戻って来たんですか?セイビアさん」

 

「え?俺、ずっと居たぞ?」

 

「はぁ!?今まで、居なかったじゃないですか!?」

 

「奥の薬剤庫に行ってた。よって、逃げた訳じゃない!!」

 

「それ、屁理屈って言いません?」

 

「言わない!!」

 

言い張れば、それが真実だ!的な感じでセイビアさんは言い続けた。なので、そういう事にして奥に逃げたと言う事にする。

 

「ところで、奥には何があるんですか?」

 

「工房の奥?あー……色々?」

 

「何故、疑問系!?」

 

「ま、まあ、色々だ。薬品は元より、錬金術で作られたモノが色々詰まってたり……薬草や鉱石が保管されてたりするだけだ」

 

「……………………失敗作でも封印されてるんですか?」

 

「ぐふっ……べ、別にそういう訳じゃ……」

 

セイビアさんは、とても普通な表情で声だけが焦ってるというポーカーフェイス?をする。リリィに視線を投げ確認をすると、苦笑いが帰ってきた。こりゃ、間違いなく失敗作等が保管されているのだろう。いや、()()されているのかも知れない。俺も、ワザと【封印】なんて言葉を使ったからなぁ……もしかすると、そっちに反応しただけなのかも知れない。つーか、何が【封印】されているんだろうなぁ?なんか、かなりヤバ気なモノの気配がプンプンするんですけど!?キメラとか、ホムンクルスとか。

 

「そう言えば、ホムンクルスとかも造れるんですかね?」

 

「ひぃ!?ほ、ほほほ、ホムンクルスだって!?」

 

あるぇ?何だろう……ホムンクルスとか、造れないんですかね?

 

「えっと……造れないのか?」

 

「兄様、ホムンクルスの話は止めて上げて下さい」

 

「何故?」

 

「以前、浮気をしていた、としてちょっと……」

 

「おぉう……」

 

女型を造って、浮気騒動に発展したのか……そりゃ、トラウマにもなる。特にセイビアさんは、愛妻家でも有名だからな。そんな人が、ホムンクルス造って浮気三昧とかあり得なさそうだけど。奥さんには、全く関係ない話だ。てか、ちゃんと伝えておけよ(呆)。

何をしたかったのかは、理由や動機を聞いてないからわからないけど。それにしても、ホムンクルスかぁ……工口方面だったら、交配しないと存在を維持出来ないなんて事になるんだろうけど。【組織】の技術なら、そういうのを克服した存在が生まれて来そうだ。

 

「ホムンクルスの維持って、どうやってるんですか?」

 

「体液か、血液を与えます」

 

「……………………」

 

「もしくは、魔法で精気を送り込む等の方法も……」

 

「…………ワザとか!?ワザとなんだな!?」

 

「何の事でしょう?私は、訊かれた事に答えただけですが?」

 

「こ、こんにゃろぉ……」

 

コイツ、ワザと旧式の方法を言った上で俺をおちょくりに来やがった!!そりゃ、工口方面の答えも気になってはいたけど……まさか、『体液』とかが必要とか言い出すとか思わないだろう!?

一瞬、言葉を失って続けられた方法に納得したけど……別の納得が行かなかった。糞ウゼェ……。

 

「…………セイビアさんは、何がしたかったんですか?」

 

「…………子供が、欲しかったんだ」

 

「作れば、良いでしょう!?」

 

「異種交配が、上手く行かなくてなぁ……」

 

「…………お嫁さんは、他種族だったんですか!?」

 

「いや、人間だけど?」

 

「同じ、人間なんですよね?」

 

「あ、俺は元人間だけど今は違うモノだよ?」

 

「あ、セイビアさんが別でしたか……」

 

「うん。つか、生殖能力を《邪皇石》に食われた」

 

「はい?《じゃおうせき》?」

 

「俺を、人間ではないモノにしたアイテムだよ」

 

セイビアさんは、元々人間だったけれどそのアイテムのせいで人間ではない力ある種族に変質しているらしい。そして、その《邪皇石》を取り出さない限り人間には戻れないんだそうだ。

しかし、本来ならば取り出せば戻る種族らしいんだけど、それをセイビアさん本人が望んだ訳じゃないので取り出せないとのこと。

事実上、二度と人間には戻れないそうなので【組織】に所属しているという。

 

「【組織】の技術で、取り出せたりは?」

 

「俺をこんな風にした奴が望めば、【組織】の技術でも取り出せるらしいぞ?まあ、どっかの誰かさんには関係ないけど……」

 

「…………どっかの誰かさん?あ、師匠の事か……」

 

一瞬、『お前には、関係のない話だ』と言われているのかと思ったけど、そんな事を言う人がこんなに親切にしてくれる訳じゃないだろうから、きっと師匠の事を言っているのだと思われ。

《ルール・ブレイカー》の前じゃ、如何なるモノも何の意味も価値も無くなりそうだもんな!この《次元の果て》にアクセスして来た時みたく、超簡単にセイビアさんと同化しているとされるアイテムも取り出してみせてくれるだろう。

 

「そうそう。あの能力は、反則過ぎる……アレで、何の代償も対価も無いとか言われたらブチギレしちゃいそうだ(笑)」

 

「ああ。それは、わかります」

 

つか、師匠の能力って魔力さえあれば何でも出来る万能能力なんですよね。それが無かったら、ただ無敵な全能の【魔王】様が出来上がるので勘弁願いたい。勝てないだろ?

 

「効果範囲も、効能も全能と言えるレベルだからな……もう、アイツが居れば良いんじゃね!?と思わない事もない」

 

「あの能力は、結局何なんですかね?」

 

「…………さぁな。【世界の卵】の《殻》と聞いてはいるが……」

 

「卵の《殻》?…………師匠も、似た様な事を言ってましたね」

 

アレの元は、【世界を内包していた外側の幕】らしいけど……だから何だ!?と言いたい。『世界』を覆っていたから、【世界の理】を何とか出来る的な能力という解釈らしいけど……それだけでは無い様な気がしてならない。

 

「ぶっちゃけ、釈然としないですよねー?」

 

「まあ、本人が言ってるだけの何が元となっているかわからない能力だからな。得体が知れなくて、恐ろしい能力だよ」

 

それが、セイビアさんの……強いては、【組織】の見解だった。

だからこそ、【組織】は師匠に監視の目を付けたがっている訳だ。

まあ、師匠はそれが嫌で【組織】から抜け出した訳だけど。

その能力に関して、得体が知れないのは俺も感じた事ではあるのでわからなくもない。流石に、『世界の卵の《殻》』なんて言われてもピン!と来るモノではない。

 

「あ!」

 

「ん?」

 

「なんだ?リリィ」

 

唐突にリリィが、何かに気が付いたかの様に声を上げた。

 

「Masterが、【魔王化】しました」

 

何か合ったのかな?と訊いてみれば、師匠が【魔王】になったと言う。つか、何で!?……あ、でも、先の【アレ】ほどでもないかな?ちょっと前に、師匠の恋人だった人の外見をした性奴隷を神様特典としていた転生者がいて、師匠がマジギレしちゃった時よりかは全然マシの様な気がする。あの時は、真横でそれをやられちゃって一瞬で意識を刈り取られたけど……目が、覚めてからのゴタゴタが一番記憶に新しい。あ、いや、何でもありません。

 

「は!?反応ないぞ!?」

 

「あ、はい。本気の【魔王化】ではないので……」

 

「はぁ!?【魔王化】に、本気とかあんのか!?」

 

「ありますね。今回は、Masterが正気のままの【魔王化】です」

 

「そんなモードがあるのか……」

 

「普段は、無理ですよ?ですが、Masterの中にいらっしゃるMaster達が正気のままなので可能なのです」

 

つまり、意識統合されてない【魔王化】だから正気を保てるって事らしい。これが、意識統合された状態での【魔王化】となると師匠の精神が《混沌の渦》となっているので正気を保てないとのこと。まあ、何百人分の意識が融合しているのかはわからないけど、そんな中で其々の意識が一定方向に一斉爆発すりゃあどうなるかなんて考えるまでもない。つか……憎悪。憤怒。悲観。それらが、濁流の如くごちゃ混ぜになった精神に耐えれる人って居るのかねぇ?

 

「…………居ないなぁ……」

 

「どうしたのじゃ?兄様」

 

「……………………」

 

クソッタレが!うっかり、舌打ちとかしそうになっただろう!?

ここで、舌打ちとかしたら色々と面倒事が増えるだけなので沈黙して嵐が過ぎるのを待つ。だからと言って、ずっと黙っているのもそれを肯定している様で悪手だ。なので、適当に合いの手を入れて止めさせる方向へと導く。

 

「オルタ?今、何か変な事言わなかったか?」

 

「…………いや、何も言っておらんの……」

 

「そうだったか?何か、一瞬オルタというキャラが濃くなった気がしたんだが……」

 

「……知らぬ」

 

「そ、そうか……?」

 

とりあえず、オルタから離れて首を傾げておく。口元には、口を塞ぐ手。こうしておかないと、俺の場合呟く恐れがあるからな。それに、下手なツッコミは悪手になる。なので、オルタが否定しやすい様に誘導せざるを得ない。それにより、オルタは俺の目論見通りそれを否定してくれた。いやホント、オルタが恥ずかしがり屋で良かったよ。これが、恥を知らぬ者なら堂々と赤恥を撒き散らしてくれるんだが……そうじゃないヤツはチョロい。ついでに、リリィも『のじゃ』否定派なので後押ししてくれている。味方がいると、こうも簡単に事が進むとはありがたや~ありがたや~。そんな感じで、手を合わせたらオルタを胸に抱いた状態のリリィに睨まれてしまった。あ、ごめんなさい。

何はともあれ、俺が踏み抜いてしまったオルタの地雷事件はこうして有耶無耶にされたのである。後でリリィには、借り一として覚えて置く様に言われたけれど。それでも、十分な成果だったので良しとする。

 

 

 

 

 




まさか誰も、語尾(のじゃ)一つで一話を綴る奴が居るとは思わんだろうというお話。いや、ありそうだな(笑)。つか、たった三文字に永遠と書ける恐ろしさが語尾にはある!ある意味、恐怖の対象だな語尾って(笑)。

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m(_ _)m

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いつも、読んでくれてありがとうございます。

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