絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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ストック分は、これでお終り。




序章4

Side アリサ

 

 

 

 

 

 

私達……私、なのは、すずか……は、三ヶ月前一人の子供を拾い三人で育てる事にした。

最初の一週間は、初めての体験でてんてこ舞いだったけど、二、三週間も経てばある程度落ち着いた。

そして、今恒例となった《反省会》をしているところだ。

 

 

「はぁ……それにしても、早三ヶ月かぁ……」

 

 

「うん。なんだか、あっという間だったね……」

 

 

「そうだね。もう、時間が過ぎるのが速く感じるよ」

 

 

私達が、双夜と出会ってから三ヶ月も経った。

そして、今や季節は夏。

しかし、海には行けない。

行ったとしても、今年は水着になることもないだろう。

『裸』に近い水着は、双夜に悪影響を及ぼす。

この三ヶ月で、双夜に関してわかったこと。

双夜のトラウマ、《『裸』の女性が駄目》というものに関して……追加情報がある。『裸』もしくは『肌』を見せると、幼児後退が悪化して今まで教えた事がリセットされてしまう。それに加えて、『裸』の女性が複数いると魔法を使って排除しようとすることも判明した。

 

 

「じゃあ、私からだね。双夜くんの事で、新しい事がわかったよ?雫ちゃんの裸を見たらしいんだけど……何も起きなかったってお姉ちゃんが言ってた……たぶん、女性らしい『裸』が駄目なんじゃないかな?」

 

 

「……女性らしい『裸』かぁ……じゃあ、大人は完全に駄目なんだね?」

 

 

「そうだね……残念だけど……」

 

 

「…………」

 

 

双夜は、私達三人が持ち回りで世話している。

家にいられる期間は、二,三日程度が限界だ。

できるなら、一週間置きにそれぞれの家で世話したいのだが……私もすずかもなのはも、学校があったり仕事があったり習い事があったりでなかなか一緒にいてやれない。

 

ーーってか、すずか。なんでそんなに積極的なのよ!?

 

 

「……私、双夜を家に連れて行った初日。アレだけは忘れられないわ。……お風呂爆破事件……」

 

 

「あー……うちも、やっちゃったんだよね……」

 

 

「私も……お母さんとお姉ちゃんが……ね……」

 

 

双夜のトラウマ、『裸』の女性が駄目というのは聞いていた。だから、気を付けていれば大丈夫だと思っていたけど……それを知らないメイドが一緒に入っちゃって、お風呂場が無くなってしまう事件が起きた。

一応、箝口令は出しておいたけど……魔法が実在するって話は家中に広まってしまう。それどころか、うちの執事やメイドはもちろんパパやママもみんなに知れ渡っていた。

また、エイミィさんを泣かせてしまいそうだ。

 

 

「双夜って、魔法を秘匿する事をあまり理解してないわね……」

 

 

「そうだね。割と頻繁に使っているよね……」

 

 

「なんでかなぁ……言い聞かせてはいるのに……」

 

 

「もしかして、まだ双夜に『肌』を見せてる人がいるとか?」 

 

 

「「……あり得るかも……」」

 

 

なのはとすずかの声がハモル。

二人の様子を見て、思い浮かぶのは忍さんや美由希さん……桃子さん辺り。三人が、楽しそうに双夜をお風呂に連れ込む姿がありありと思い浮かんで苦笑してしまった。

 

 

「最近。鮫島が、双夜を孫認識したらしくって……ものすごーく、甘やかすのよ……」

 

 

「「あー」」

 

 

「目を離すと、すぐお菓子持ってたり……見たこともない玩具を持ってたり……とか」

 

 

「想像が付くよ…… 」

 

 

「家は、お姉ちゃんが双夜くんを構い過ぎてる感じかな?」

 

 

「うん。わかるわかる。双夜くん、可愛いもんね!」

 

 

確かに、双夜は可愛い。

たまに、何かーー女性?ーーに怯えているけどそれ以外では、笑顔の絶えない普通の子供だ。

それに、ただ魔法という要素が加わるってだけ。

 

 

「そういえば、双夜の魔法には《若返る魔法》があるみたいで、家のメイドの何人かが子供姿で走り回っていたわ……」

 

 

「妖精魔法……だよね?双夜くんが、《悪戯専門魔法》だとか言ってた……?」

 

 

「あー……私、その悪戯で胸が一時的にペッタンコになったことがあるかな……」

 

 

「「…………」」

 

 

なのはが、胸がペッタンコになったとカミングアウト。

それはそれで、微妙な悪戯だ。

余程、胸にコンプレックスがあれば効果的だろうが……元に戻る事がわかっている私達には通じない。

それどころか、「肩が楽だ」とか言いそうなのが一人いる。ついでにいえば、《女性らしい身体》でなくなったと言って一緒にお風呂に突撃しそうだ。……すずかあたりが。

 

 

「でも、双夜くん……私には、かけてくれない(胸ペタ魔法)んだよね……どうしてかな?」

 

 

「それだったら、家のお姉ちゃんもぼやいてた(胸ペタ魔法)」

 

 

本能的に双夜は、魔法をかけて良い人とかけてはイケない人を選別しているって事なのだろう。

確かに、人選は間違いではない。

何故かはわからないけど、『肌』を見せることに積極的なすずか。きっと、その辺りを気にしないであろう可愛いモノに目がない美由希さん。

 

 

「前途多難ね」

 

 

「「???」」

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

【双夜育成記録ノート】に今回わかった事を書き込みながら考える。

 

 

「ねぇ、双夜のトラウマの原因ってなんだと思う?」

 

 

「性的虐待?」

 

 

「他に何かあるかな?」

 

 

「女性にまつわる事だとは思うんだけど……」

 

 

いくら考察しても、このトラウマの原因だけはわからない。すずかが言う通り、女性にまつわる何かであることは間違いない。

だけど、それが何なのかは不明だ。

その怯える様子から、余程怖い目にあったのはわかるのだけど。

 

 

「そういえば、双夜の使い魔は何処へ行ったのよ!?」

 

 

「わからないよ。音信不通のまま……犯罪とか、犯してないと良いんだけど……」

 

 

なのはが、心配そうに呟く。

 

 

「そうね。確認の仕様がないし……」

 

 

「双夜くん、他に使い魔いないかな?」

 

 

「無理だよ。一人の魔導師が、維持できる使い魔の数は大体一体か二体くらいだし……」

 

 

「そうなんだ。あれ?でも、双夜くんヌイグルミみたいな使い魔使役してたよね?」

 

 

「あ、そういえば……」

 

 

「いっぱいいたよね?カラフルなヌイグルミくん達……」

 

 

「最近は見ないわよ?」

 

 

「何処へ行っちゃったんだろうね?」

 

 

なのはの心配はもっともだが、現実は世知辛でつらいもの。

双夜に関しても、私達は何もわかっていない状態。

ほとんど、手探りで育てていると言ってしまっても嘘ではない。使い魔からの情報で、今の状態を悪化させないでいるだけ。たまに、最初からやり直しになるけど……。

だけど、私達が知り得たこの【ノート】の内容が消えてしまう訳じゃない。

 

 

「なにょはままー」

 

 

トテトテと双夜が、私達がいるテラスに走り寄る。

そして、テーブルの上に草花を並べていく。

 

 

「プレゼントなの!」

 

 

「うん。ありがとう、双夜くん」

 

 

なのはが、双夜の頭を撫でる。

双夜は、気持ち良さそうに目を細めていた。

 

 

「ところで……なんでなのはだけママなのよ!?」

 

 

「え?えっと……」

 

 

「私達だって、ママって呼ばれたいのに……」

 

 

「にゃ、にゃはははは……」

 

 

「笑って誤魔化すんじゃないわよっ!!」

 

 

最近、双夜がなのはを『ママ』と呼び始めた。

私は、『アリちゃ』ですずかは『しゅずか』と舌足らずではあるが名前で呼ばれている。

 

 

「「じー…………」」

 

 

「ううっ……」

 

 

そんな感じで、なのはをからかっていると狼狽え始めた。

そんななのはを見ていると、『やっぱり、なのはは可愛いなぁ……』と思えて微笑ましくなってしまう。

 

 

「アリちゃ、なにょはママにいじわるしてる?」

 

 

「違うわよ! 双夜が、なのはをママって呼ぶから、どうやったのか聞いているだけよ……」

 

 

 

「…………みゆねぇから、たしゅけてくれたよ?ももちゃんもおこられてた」

 

 

「…………なのは。あんた、頑張ったのね……」

 

 

「なのはちゃん……」

 

 

あの桃子さん(ラスボス)や美由希さんから、双夜を守っていたなんて……つい、ホロリと涙が溢れる。

隣に座っているすずかも、似たような状態だった。

 

 

「え?ちょ、なんでそんな反応なの!?」

 

 

「……だって、ねぇ?」

 

 

「……ねぇ?」

 

 

私とすずかが、顔を見合わせて苦笑いする。

すずかも、似たような顔をしているので考えている事は同じだろう。

 

 

「高町家最終兵器・高町桃子。恭也さんも士郎さんも頭が上がらない最強存在。それを叱るって……ねぇ?」

 

 

「そうだね。私なら、出来ないかな?」

 

 

「怖くて」と続く声は、聞き取ることが出来ないくらい小さかった。私が聞けたのは、隣にいたからだけど……対面に座っているなのはには聞こえなかっただろう。

 

 

「ちょ、今のは酷いよ。二人共!?」

 

 

当人も、微妙に笑っている様な……困った様な笑い顔をしているので私達と似た様なものだ。

 

 

「ももちゃん、へいき、なの?」

 

 

「……これ、どうなのかな?」

 

 

「これって?」

 

 

「双夜くんが、「へいき」をどう捉えてるかで返答が変わるじゃない?双夜くんは、どう受けとめたのかなぁって思って」

 

 

「「…………」」

 

 

 

確かに……ここで返答を間違えると、桃子さんに今の話が伝わる可能性もある。それに思い至って、さあ……と血の気が引いた。色んな意味で、危険度ギリギリの会話。

 

 

「お母さんは、大丈夫だから……「へいき」だよ?」

 

 

そんな危険極まりない状況で、なのはが無難(?)な返答を始める。それを私達が、固唾を飲んで見守った。

 

 

「……ももちゃん、ぶき?」

 

 

『正確に伝わってたっ!!』

 

 

無難(?)な返答のはずが地雷となった瞬間、私達は頭を抱える。この次の選択は、絶対に間違えられない。

双夜を言いくるめなければ、私達の未来は『桃子さん特製アイアンクロー』まっしぐらである。

 

 

「……双夜、黙ってなさい!!」

 

 

「「あ、アリサちゃん!?」」

 

 

「いい?桃子さんには、黙っているのよ?」

 

 

「にゅ?」

 

 

「良いわね?」

 

 

「……にゃ!!」

 

 

少し、強く言い聞かせる。

ちょっと、怯えていたけれど勢い良く手を上げて返答をする双夜。それを見て、不安ではあったけど私は納得したのだと思った。だが、私達はもっと双夜を理解して考えるべきだったのだ。

そもそも双夜は、どれだけ言い聞かせていたとしても魔法を秘匿しない。それはつまり、どれだけ強く言い聞かせたところで双夜が何も言わなくなるはずがなかった。

後日、私達は『最高の笑顔』の桃子さんに『最凶のおもてなし』を受ける事になる。

双夜の口から、『高町家最終兵器』が漏れた結果だった。

「何故話したの!?」かと聞けば、双夜はとてもその言葉を気に入ってしまって良く口にしていたという。

それを聞いて、私達は双夜が男の子なんだという事実を実感する事となる。

桃子さんと恭也さんからの助言として、『男の子』はそういう言葉を好んで覚えるのだそうだ。

私達は、その助言を後悔と共に聞く。

 

 

「これがほんとの“あとのまちゅり”なの!!」

 

 

「うるさい!!」

 

 

 

 




《妖精魔法》
一応、《人間》が使える様にアレンジされた魔法。
元々は、人外の魔法で《人間》には使えなかったのだが、それを可能にしたのが主人公の魔法だ。

因みに、本来の妖精魔法は半永久的効果を持つので使えば間違いなく恨まれる類いの魔法だろう。
一生、ペッタンコな胸とか……
一生、超爆胸(立ち上がれない)とか……
一生、子供のままとか……
他には、《人間》の子供と《妖精》の子供を取り替えっ子とか。白知(何もわからなくなる)になることが、決定します。
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