絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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四一四話

Re:

 

 

用事を終えた師匠が、強大な闇を背負って(物理的に)戻って来た後でまったり秘密基地を満喫していた。例の二人も、秘密基地内で寛いでいるけど……その手に、デバイスは無かったりする。

現在、彼等のデバイスは秘密基地内にある技術室でフルメンテナンスをされているらしい。これまでのサバイバル生活で、酷使してきたツケを払っているとのこと。ぶっちゃけると、魔改造を行っているって事だ。アルトアイゼンは、アルトアイゼン・リーゼに……ヴァイスリッターは、ライン・ヴァイスリッターへと進化しようとしている。アルトは、通常の技術でもイケるらしいけどライン・ヴァイスリッターは魔工技術でじゃないとあの超分身が使えないとの事なのでガチ魔改造をされている訳だ。

多分、エゲツナイ事になるんじゃ無いかな?

 

「とりあえず、師匠……その背中の者は、どうするんですか?」

 

「…………背中?何を言っているんだい?神崎……僕の背中には何も存在しはしない……」

 

思いっ切り、現実逃避をしていた師匠に俺は何も言えなくなる。

そうか、師匠は背負っている暗黒物質の事を全力で無視してた訳じゃ無かったんだな。ならば、俺がやるべき事は然り気無くあの暗黒物質を廃除する事かな?うーん……無理。悪堕ちしてるすずかを、俺がどうにか出来るハズもないから諦める他無い。

 

「すずか、そろそろ離れて上げなさい」

 

「っ!?」(な、何ぃ!?)

 

意外な所に勇者!?いや、普通に勇者だったわ……翼って。だが、こうハッキリズバッ!と言い切れる貴女に痺れて憧れる!!

あんな、暗黒物質と化したすずかさんに『離れろ』とか言えるなんて……なんて、恐ろしい。普通に、その場に居た全員が翼に『おまっ!?スゲー!!』という視線を向けていた。師匠、除く。というか、師匠が死んだ魚の様な目をしている。

動きも、緩慢だし何時もの切れがなかった。流石に、あんな感じで管を巻かれると師匠でも気が滅入る模様。各言う俺も、あんな目に遭ったら師匠みたいになるんだろうなぁ……『きゃるーんグッガガガガ……』。

 

「所で双夜。今回、私は何をすれば良いんてすか!?」

 

「好きで、呼び出した訳じゃないし……魄翼で、引き剥がして貰おうと思っただけだし……」

 

「というか、この世界軸のすずかを助けに行かなくて良いの?」

 

「…………問題ない。既に、回収して自宅に送っといた……」

 

「でも、()()すずかを喚ぶくらい絶望に落ちたんでしょう?今、どうなっているかくらい確認しないの?」

 

「翼ちゃん、『この』ってどういう意味!?」

 

「あら?そのままの意味よ。そこで、私達のリーダーたる存在を拘束して行動を妨げている以上、『コレ』でも良いのだけれど?」

 

ズビシッ!っと、暗黒物質と化しているすずかに指を指し示す翼。

ホント、強くなったなぁ……そこに、痺れて憧れるぅ!!と冗談はさておき。翼の言う通り、そろそろこの世界軸のすずかをどうにかしないと色々面倒なんじゃね?まあ、だからと言ってこちら側に引き入れる訳には行かないけれど。

 

「ムー……わかったわよぉ。双夜くん、夜は一緒に寝ようね?」

 

「はぁ……すずかは、私と一緒に寝るのよ?ユーリ、行きましょう?私だけじゃ、引き留められそうに無いわ」

 

「…………わかりました。では、行きましょうか?すずかさん」

 

言って、二人はむくれるすずかを連れて奥の部屋へ行ってしまった。ある意味、ナイス!な行動だけど……ユーリまで、連れて行かれると戦力ダウンは否めない。まあ、居ても師匠にスルーされて拗ねるだけなんだけどね。どっちにしろ、使えないオチビさんだった。視線を師匠に戻すと、とても安心した様子でリラックスしている師匠がソファーに身を預けていた。お疲れ様です。

 

「さて、僕達はこれから隠密行動を心掛けて動く事になるだろう。何故なら、原作ヒロインの半分がとある転生者の魅了によって敵対化させられている。なので、僕が問題の転生者を無力化するまで君達には囮役を頼みたいのだが……」

 

「つまり、《ニコポ・ナデポ》を成功させた転生者がこの世界には居るのか!?なんて、羨ま……けしからん奴がいたもんだ!!」

 

「本音が、駄々漏れだな?神崎……」

 

「欲望に忠実な奴(神崎の事)……」

 

「いや、ドストレートに第一特典が《魅了》なだけだ」

 

「……ho……」

 

「My……」

 

「Got!!」

 

仲良しか!?まあ、スレで『はひふへほ』が並ぶと気持ち良いけどさぁ!!だからって、『Ho My Got!!』は不味いだろう!?

 

「第一特典が、《魅了》と来たよ。他の特典は、第一特典の強化を願うモノだ。お陰で一応、機能はしているものの時空管理局が私物化されて一部の下っ端が過労ギリギリで保っているらしい」

 

「それ、大丈夫なんですか!?」

 

「にゃははは。何の為に、君達のISを強化していると思ってるのさ?しっかり、働いて貰うよ?ヴィヴィオの物語が始まるまでに正常化させて置きたいからねぇ」

 

「………………今、何年ですか!?」

 

「あ、半年くらい前にジェイル・スカリエッティが捕まったくらいかな?ヴィヴィオの物語まで、後四年程あるよ?」

 

遠藤が、今現在の状況を教えてくれたのでヴィヴィオの物語まで後四年はある事がわかった。わかったけれど、台所から好奇の視線がむけられているのがわかる。

 

「アオっち……四年、これを『まだ』と捉えるか……『しか』と捉えるか悩む所だな?で、師匠。襲撃でもする気ですか!?」

 

「これから、参戦して来る転生者達がブチギレしない結末を掴むしか無いだろうな?出来るだけ、広く浅く状況を拡散するしか無いからなぁ。飽和状態に持ち込めれば、何とか出来なくもない」

 

「でも、ヒロイン達は《魅了》特典持ちにゾッコンなんだろう?」

 

「いやいや、そこは魔導師補正でキャンセルってんじゃね?」

 

「……主人公補正だろう?」

 

「いずれにしても、面倒臭い世界である事は間違いない」

 

「「「デスヨネー!」」」

 

つか、ウチの師匠はまたも暗殺者よろしくコッソリ時空管理局に忍び込むという。ついでに、どっかの馬鹿が得た神様特典を《ルール・ブレイカー》でキッチリ消去してくるそうだ。いつもながら、鮮やかなお手前拝見させていただきます。とか言ってる内に、フッと消えてフッと戻って来たら終了したとのこと。早っw。

まあ、それでも面倒事はあるんだけど。

 

「フェアリー・マジック、《チェンジ・リング》って便利ですよね。でも、元は妖精の子と人間の子を取り替えるっていう魔法じゃなかったっけ?」

 

「まあ、確かにそうだけど……人間の声帯では、発音できないモノだからな。人間の声帯で、妖精魔法を使うと本来の効果とは異なる効果になるんだよ。だから、《チェンジ・リング》は転移魔法に変質しているんだ」

 

現実問題、妖精の発音で《チェンジ・リング》と聞こえたとしても、実際には全く異なる音感と発音でそう聞こえるだけで本来は全く異なる言葉らしい。一応、人間の言葉に変換すると《チェイジル・イリゥヴ》と発音するのだけれど……つか、大人には聞こえない音も混じると師匠は言ってたから細かくするともっと長い呪文になっている可能性があるとのこと。いやはや、奥が深いねぇ……妖精言語。まあ、早口言葉で略式語なんてのも含めると何て言ってるかわからないと思うけどなw。

因みに、師匠はありとあらゆる手段を用いて妖精本来の言語でそれを発動させた事があるらしいけど……『二度とヤらない』とのこと。現在は、元あった妖精魔法の一部とオリジナルの魔法を掛け合わせた悪戯用魔法を運用する程度にしているらしい。

 

「それで、《魅了》のスキルを消せば直ぐに正常な状態に戻るのか?それとも、時間が掛かったりするのか?」

 

「もちろん、時間が掛かるだろうね。流石に、《魅了》スキルが無くなったからってそれまでの時間が無かった事になる訳じゃ無いからねぇ。《魅了》スキルを利用して、腐敗し膿の温床になっている奴等も居るだろうし……」

 

「成る程。それが、《魅了》スキルだと知らずともその影で色々やらしている馬鹿共が居るんですね?ファンタジー漫画で良くあるあるな展開ですね?」

 

「金持ちや貴族、良くぞ彼処まで腐敗出来るなぁ……と思った事はあるけれど、まさか自分の目で確かめる事になろうとは……」

 

「ファンタジー系恋愛小説だな?」

 

「何故、恋愛小説縛りなんだ!?」

 

「別に、恋愛小説に絞ってる訳じゃねぇよ。ただ、王立学園に視線を向けさせといて罪を重ねるDQN貴族とか割りと居たからなぁ……」

 

「他にも、私腹を肥やそうとした馬鹿とか……」

 

「金儲けしたいのなら、真っ当に働けば良いのに横領に手を染める馬鹿とか?会社の金は、無限だぜ!?」

 

「うわっ!ここに、犯罪者が居る!!」

 

「まあ、俺の場合は《黄金率》で稼ぎたい放題だからな?」

 

「チッ……チーターめ!」

 

「ケッ……ゴミが!!」

 

「止めろ!唐突に、ナメクジを見掛けた風に此方を見るの禁止!」

 

「別に、そんな風に見たい訳じゃねぇよ。ただ、調子に乗ってるチーターキメェ……って思っただけさ……」

 

「もしくは、ウゼェ……だね♪!」

 

「昔の友人が辛辣な件。まあ、ギルガメッシュがチートなのは今に始まった事じゃねぇけど……」

 

その身体に、“俺”という異物が入って慢心王から脳筋へと進化?したけど……退化かも知れない。一応、自分自身と融合して宝物庫の中身も取り戻したけど使う予定は無かったりする。完全に、宝の持ち腐れだ。それに、師匠達から宝具の使用を制限されている。故に、今は自前の魔力で作った砲丸を撃ち出すだけの能力になっていた。そして、今回も砲丸作りに精を出す。

 

「くっ……師匠ぉ、今回はどの様な罰を与える予定ですか!?」

 

「話、逸らしてんじゃねぇよw」

 

「ま、ま、満男くんも色々あるんですよw」

 

「先の一日で、収集出来る情報は回収済みだ。アカシックレコード経由で、過去から馬鹿がどんな事をして来たのかを確認済み。必要なら、録画もしてあるそうだ……そして、現在。彼の者は、失脚しつつある」

 

「はい?ちょ、師匠。なにやったんですか!?」

 

「僕()、何もしてないよ?」

 

「OK。じゃ、何を命令したんですか!?」

 

「……フフ。神崎も、わかって来たじゃないかw」

 

邪悪な笑みを浮かべて、師匠はニヤリとした視線を俺に向ける。瞬間、背筋をゾワゾワっとした悪寒が駆け巡った。直後、『ヤバい事をしている!!』という直感が閃き俺は再度師匠に訊ねる。

 

「使い魔に、何を命令したんですか!?」

 

「…………アカシックレコードから得た情報から、ちょっとした物語を作って本人の知らぬ所で強制的に放送させただけだよ?」

 

「それは……社会的に抹殺するつもりですか!?」

 

「ソイツ、今……《魅了》スキルを失ったんだろう!?」

 

「じゃぁ、ソイツが《魅了》スキルを持っている事を証明出来ないんだから無理なんじゃ……」

 

「ねぇ?誰が、馬鹿の《魅了》スキルを廃除したって言ったの?」

 

「え……ちょ、ちょっと、待って下さい。廃除、して、ない?」

 

「する訳がないじゃないか……僕が、消したのは第一特典を強化している特典の方だよ。それさえ消せば、彼は普通に失脚する」

 

は?それって、どういう事!?何で、第一特典を強化している特典を消したら失脚する事になるんだ!?訳がわからないんですけど!?ちょっと、説明してくれませんかねぇ!?

 

「そもそも、その馬鹿の特典が《魅了》だったとして……どこまでが、可能範囲だと思う?」

 

「え?……そりゃ、なんでも出来るんじゃないですかねぇ?」

 

「あのねぇ……第一特典は、そこそこ強力な特典にはなるよ?でも、絶対では無い。じゃ、それを絶対にしているのは何?」

 

「…………第二、第三特典?」

 

「まあ、そうだね。ぶっちゃけて言うけど、イケメンに成りたいのなら『美形にして下さい』でも『イケメンに成りたい』でも構わないんだ。それは、特典ではなく願望としてその魂を転生させる際に形創られる肉体に手を加えるだけで行使可能だから。特典には成らないけど、それくらいなら特典でなくても問題ないんだよ。それに……『カリスマ性を上げて下さい』でも、『自分の魅力を上げて下さい』でも、効果は同じだ……」

 

「は?」

 

「いや、待て……造形は、転生させられる際に形創られる?」

 

「簡単な話さ。パラメーターに干渉する訳じゃ無いから、【特典】に該当しないんだよ。ただの願望でしか無いからねぇ……」

 

「願望……神々特典は、数値を操作するモノなのか……」

 

つまり、『イケメンになりたい』という願いは数値の変化では無いから【特典】に成り得ないって事?でも、それをカウントしていた神様だって居たハズだ。

 

「待って下さい、師匠。なら、『イケメンに成りたい』と願った者の特典ってどうなっていたんですか!?」

 

「いや、答えは言ってるじゃないか。即ち、『カリスマ』と『魅力』だよ。イケメンイコールカリスマ&魅力値が変化していた訳だ。カリスマなら、人望が……魅力なら、イケメン度かな?」

 

「へぇ……数値変換されていたんだ……」

 

「じゃあ、ここで質問です。彼の者の特典が、第一《魅了》。第二が《第一特典の強化》。第三も《第一特典の強化》だとするなら、そのデメリットってなんだろうね?」

 

「「「え゛!?」」」

 

そうだ!第二、第三の特典には、デメリット特典が付くんだった!

だけど、そのデメリットってどうなるんだ?第一特典が、《魅了》だったとしても第一特典なのでデメリットは付かない。第二特典は、《第一特典の強化》なので《魅了》というスキルを無効化させるデメリットを付ける事は不可能。唯一、第二、第三特典には【強化】という言葉が使われているのでそれを弱体化させる事は出来るけど……そんな感じはしないから弱体化されてはいない。

 

「《魅了》スキルの弱体化!」

 

「もしくは、人望が無くなる!とか?」

 

「《魅了》スキルそのものは弱体化しない。それと、人望や魅力のパラメーターは下がらない。わからないかい?神崎君は?」

 

「数字的な話では無いんですよね?」

 

「数字的な話ではあるかな?」

 

「え?……えっと、造形的な話ですか?」

 

「いや、普通に数字的な話だね」

 

「………………強化率が、違ったとか?」

 

「うーん。ま、良いとしようか?簡単な話、第二特典の強化は2.5割。第三特典の強化は1割だった。で、3.5割増しに成っていたんだよ。普通なら、第二で2倍。第三で1.2倍になって無きゃおかしいんだけど……そこを、弱体化させたみたいだね」

 

「…………それ、何の数値が3.5割増しだったんですか?」

 

「ふふふ。神崎くんは、鋭いなぁ……」

 

「誤魔化しは、要らないです。結論だけを言って貰えますか?ああ、言葉遊びも止めていただけると幸いです」

 

「神崎君てば、遊び心が足りないよ?もしかして、余裕が無いのかな?全く、そんなんだからいつまで経ってもDTなんだよ?」

 

「良いから、話を進めて下さい!!」

 

「はいはい。じゃぁ、先ず……《魅了》のタイプからだね。結論から言うと、彼の《魅了》スキルは『パッシブ』だった」

 

「は?…………情報の隠蔽ですか!?」

 

「にゃははは。まあまあ……例えば、君達が良く知る《ニコポ・ナデポ》はアクティブ系の魅了だけど……知ってた?」

 

「相手に微笑み掛ける……相手の頭を撫でる、と言った条件を付けて発動させるタイプのスキルだからアクティブなんでしょ?」

 

「はぁ……神崎、君には失望したよ」

 

え!?ちょ、どういう意味ですか!?

 

「まあ、いいや……」

 

あ、ちょ……もう少し、詳しく!!

 

「神崎君が言った通り条件付きのスキルはアクティブタイプのスキルとなる。だが、彼の能力は常時発動タイプなのでパッシブだ。で、ここからは数字的な話になるんだけど……アクティブの場合、《魅了》スキルはそのスキルを持つ者の『魅力値』もしくは『カリスマ値』の数字にバフを付けて放つ単機用のスキルだ。つまり、一対一の状態で特定の人物のみに働く能力……とでも言えばわかるかな?」

 

えっと、詰まる所……『魅力』&『カリスマ』というパラメーターを強化し特定の人物に放つって事?《魅了》が、どんな数値なのかはわからないけど『魅力』や『カリスマ』を強化してくれるなら問題でも無いんじゃ?

 

「ウンウン。判ってないな、特に神崎君が……」

 

「え!?ちょっと、どういう意味ですか!?」

 

「パッシブとアクティブの意味が判ってない。良いかい?アクティブは、個人に対して行われる単機用のスキルなんだよ?つまり、『魅力』&『カリスマ』かける《魅了》かける《強化》なんだ。じゃ、例えば……『魅力』を100として、スキル《魅了》がプラス100。スキル《強化》が2倍とするなら合計二万の『魅力』を叩き付けられる様になる」

 

「うわっ……思ってたより、キツイレベルだった……」

 

そんな、《魅了》の集中こ攻撃食らったら普通に惚れますって!

 

「その点、パッシブの場合は『魅力』が100。《魅了》が100。強化が二倍だけれど、常時拡散だから全方位で割る事になる」

 

つまり、二万を360度で割ると?ワンポイント方向、『55』程の《魅了》ですか……あれ?弱くね?『55』程度の《魅了》なら、そこそこの魔力持ちでも簡単に弾けると思うんだが……例えば、ランクBでもイケそう。だって、人間の肉体が器で魂と肉体を繋げるのが精神だとするなら、人間の精神は銅線一本分位なモノじゃ無いですか……そうなると、一点集中で『55』の《魅了》しか当たらない計算になる。なのに、この被害……なんで?

 

「はぁ……神崎君は、本当に御馬鹿さんだね?人間の精神が、まさか紐状の線だとでも思っているのかい?」

 

「え!?違うんですか!?」

 

「だとするなら、転生した者が新たな肉体に精神を引っ張られる理由はなんだ?そして、そんな線状のモノだとするならちょっとし事で簡単に切れて精神崩壊になるだろうね?」

 

「うぅ……。つまり、もっと太い……と?」

 

「はぁ……言うだろう?『精神は、己が体で現す』……と。即ち、肉体全てが『精神』って事になるな」

 

「肉体全てが、精神、ですか?」

 

「そうでなければ、PTSDなんて起こらないだろ?」

 

PTSDとは、自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因で時間が経っても、その経験に強い恐怖を感じる心的外傷後ストレス障害の事である。言われてみれば、身体全体で経験した恐怖は中々忘れられるモノではない。成る程、肉体全部でそれを受け止めて居続けるなら現状も不思議ではない、のか?

 

「そうなると、原作ヒロイン達は無事なんですかねぇ?」

 

「一部、主人公補正の薄い者が引き摺られてはいるが……まだ、何とか出来るレベルだ。まあ、主人公補正と言うより重要存在だからそこそこの補正が掛かっているという者も居る」

 

つまり、リンディさん達みたいに主人公に近い場所に居る重要性の高い人達は無事で、重要性の低い人達が次々に餌食となっているらしい。ん?あれ?じゃ、ちょっと待って……なら、なんですずかは絶望に落ちたんだ!?だって、すずかが絶望に落ちない限り翼と一緒に居るすずか(闇落ちママ)が召喚される事はないんだろう!?だとするなら……高町なのはが、ミッドチルダに移住したから『すずか達』地球残留組の重要性が薄れた!?

 

「あ……!」

 

だから、最初師匠は原作ヒロインの半数が転生者の手に落ちたって……そうか、補正が掛からないって事は『vivid』のヒロイン達が原作始まる前に落とされたって事か?

 

「し、師匠。だとするなら、この世界軸のすずかさんはーーー」

 

「ちょっと、ここ、どこよ!?」

 

「…………はぁい。アリちゃママ?」

 

唐突に響いた声に振り返ると、そこには空中に浮かぶ『紫天の書』と地べたに転がるアリサ(大人バージョン)の姿があった。師匠が、ニッコリ笑ってヒラヒラと片手を上げ振って居るのを見て、一瞬驚いた表情をしたけど直ぐに事情を察したのか大きな溜め息を吐き出す。それを見て、俺は『お疲れ様です!』と挨拶したくなったけど、その言葉を飲み込んで師匠を睨み付けた。

 

「フン。そんな、怖い顔をするなよ。大体は、想定されていた事なんだから……それに、これで動き易くはなっただろう?」

 

「当人達では無いにしろ、同一人物ではあるんですよ!?」

 

「わかってるよ。だけど、確認はしておかなければならないだろう?そうでなくても、色々と邪魔されているんだから……」

 

「ですが!!」

 

「つか、早く駆け付けなくても良いのか?」

 

「っ!!…………行きますよ!行けば、良いんでしょ!?」

 

そう啖呵を切って、俺は秘密基地から飛び出して行く。

だが、行き先がわからなかったので俺は手懸かりを知る存在に声を掛けた。もちろん、その存在とはフレール先輩である。

 

ホント、いつもお世話になっております!!

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

結論から言うと、アリサが絶望した理由が判明した。

ああ、師匠の『ママ』ではなくこの世界軸のアリサ・バニングスが絶望した理由である。と言うか、その場にすずかも居たので一緒に保護して師匠の元に連れて行った所だ。つか、俺達ではどうにも出来なかったからなぁ……流石に、精神的なモノは未々未熟者なのでどうにもならない。一応、その場に居た馬鹿は全員縛り上げたけれど……さぁ、どうしたものか?

 

「てか、俺達も必要だったか?」

 

「一応、慣らし運転して来いと言われてミラージュコロイドでこっそり飛んでみたけど……ちょっと、吹かしただけでシルクロード中間まで行っちゃったんだが……」

 

「「お前だけな?」」

 

つか、ライン・ヴァイスリッターへと進化した機体の機動力を舐め過ぎなんだよ。だから、ちょっとブーストに火を入れる程度にして置けば良いモノをフルブーストするからそんな目に会うんだ。

 

「いやいや、アレ、原作以上の性能だろ!?」

 

「アイツ等に、魔改造されて予想出来ない方がおかしいから!」

 

「満男も雪も、俺の敵か……」

 

「「前世の名前で呼ぶな!!」」

 

「フッ。中二病共め……」

 

「おい、神崎。コイツ、殴って良いぞ!」

 

「OK。グッチャグッチャにしてやるぜ!!」

 

「待て。話し合おう!暴力は、反対だ!!」

 

「大丈夫。一瞬だから……」

 

「あ、ちょ、グフッ……」

 

遠藤の馬鹿を、一撃のもとに下した後は適当に転がして置く。

全く、自業自得の癖に文句ばっか言うから面倒な事になるんだ。

とりあえず、アリサとすずかを襲っていた馬鹿共の親指をコードホルダーで締め上げて転がして行く。途中、目を覚ました奴等がギャーギャーと騒ぎ出したけど近場に転がっていた鉄パイプを顔の真横に突き刺してやったら静かになった。

 

「良く当てずに、投げられるよな……」

 

「ハハハ。指豆が出来て、潰れるくらい練習させられたからな。ある程度は、当てずに突き刺せるぞ?」

 

まあ、当てる方が得意ではあるんだけどな?

 

「貴重な情報源だ。精々、死なない程度に痛め付けて情報を吐かせてみせるよ?ええ、そういう訓練も受けさせられているから」

 

「ドンドン、神崎が一般人離れをして行く件」

 

「つい、この間まで『リアル・ラカン』とまで言われて居たからな?まあ、今はこれ以上……筋肉質にならない様にしているよ」

 

未々、細マッチョの域を出られていないんだけどね?だが、これ以上に筋肉が成長するとイケメンでは無くなってしまう気がしてタンパク質は取らない様に気を付けている。まあ、翼がサラダばかり食べるのでそれに付き合っているとも言うけど。

 

「とりあえず、コイツ等には誘拐と暴行の現行犯だから法の裁きを受けさせたいんだけれど……無理かな?」

 

「その前に、入国管理局が出庭って来るんじゃないか?」

 

「出て来るだろうな。不法入国に、不法滞在と、届け出とか一切されてねぇだろうからな。どこの国の者か、探られるんじゃね?」

 

「お、おい!俺は、日本人だ!!」

 

「でも、転生者って親が居ない奴は不法入国者扱いになってるんだぜ?戸籍も無ければ、住民票も無いからな?」

 

「まあ、成人する前にミッドチルダへ渡る事を想定されているから無くても問題は無いからなぁ……お疲れ様~」

 

「………………マジか!!捕まったら、ちょっとやそっとでは出て来られない予感……」

 

漸く、現実が見えて来た奴が居たのかそんな呟きが聞こえて来る。

だから、足元に転がって来たソレを拾い上げてニヤリと邪悪な笑顔をして見せた。それと、おもむろに絶望的な事を告げてやる。

 

「お?デバイス発見!回収、回収w」

 

「は!?」

 

「ああ……捜査中に、転移魔法で逃げられても困るもんな?OK。デバイスは、こっちで回収しておいてやるよw」

 

「そして、戸籍も住民票も無くて更には国籍不明で中々出て来られないんですね?わかりますw!!」

 

「ハハハ!下手をすると、施設行きで国の監視下の元生活ですか?お疲れ様ですw。頑張って下さい」

 

「その前に、誘拐と婦女暴行で刑務所行きだろう?一体、何年出て来られないんだろうな?ちょっと、気になる所……」

 

「ちょ、止めてくれ!頼む!同じ、転生者だろう!?」

 

「そうだ!同じ、転生者のよしみでデバイスだけは残して行ってくれよ!な?な?」

 

必死に訴えて来る馬鹿共を横目に、俺と有栖川は黙々と作業を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




《魅了》を持つ転生者のデメリット特典が、余り追及されていない点について……まあ、追及した所で《第一特典の強化》なんざ……『強化』の部分しか追及できないからどうにもこうにも。これが、《魅了の強化》とかだったらもう少し融通が通ったんだけど、ねぇ?

更には、その転生者の容姿についても追及してないw。
『イケメンに成りたい』が、特典にならないとは言っているけど『イケメン』に成っているとも、見目麗しいとも言及してない件。
ただ、《魅了》スキルについてのみ説明されていた。

更に、その転生者のステータスも公開されてない件。
一応、魅力値が百とするなら……とは言ってるけど、それは例えであって実際の数字ではない。どう考えても、転生者の容姿になんらかのデメリットがある風に読める事について……ツッコミは、無しの方向でオナシャス!多分、気が付いてないとは思うけどw。

後は、転生者の国籍について……まあ、想像にお任せするよw。
ウフフ……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

前回のあとがきで、書き忘れたヤツ。
【組織】と、その敵対勢力達の勢力図を紹介した訳ですが……途中で、面倒になったので適当な注釈しか書いてなかったツケをここで晴らして置こうかな?という感じです。【組織】関連の勢力図は、同時に政治関連の勢力図でもあります。まあ、本編でもフワッとした説明しかされていませんでしたが……《旧・神族》、保守派、平和党、強硬派と《神殺し》の五大勢力が其々の主張を言い張っている訳ですね!等と言っても、本当にガチ争いをしているのは《旧・神族》と《神殺し》だけで残りの勢力は我れ関せずに……時々、思い出したかの様に嫌がらせしてくるだけの存在だ。例えるなら、日本の周辺にある国々と似た様な感じですかねぇ?ぶっちゃけ、面倒臭い存在です。保守派と平和党は、中庸系ではありますが……時折、あっちこっちと手を組んで【組織】にちょっかいを掛けて来るので本当にウザい。その癖、【組織】の庇護を受け様として来るので目障りな存在である事に代わりはない。強硬派は、《旧・神族》と一部が手を組んでいるので時折【組織】の厄介になっていますが……蜥蜴の尻尾切りに使われる存在なので《旧・神族》と混合して考えられる事があります。だが、アレとは別組織なんだと主張してくるので面倒臭い存在でしか無かったりします。面倒さで言うと、《旧・神族》と同レベルですかね?他にも、『金魚の糞』だったり『取り巻き』とか下位の集まりが強硬派に絡まっているから超複雑に面倒臭い政治体制が出来上がっちゃったよw。
強硬派なんて、強欲な商人や政治家が集まった利益を追求する組織なのに、ね?保守派は、我れ関せずの集団だし……平和党は、中庸と言って置きながら自分達の都合の良い世界を目指しているメルヘンな馬鹿共だ。【組織】は、比較的にまともだけれど『悪の組織を名乗る』悪い奴等なので大義名分を相手に与えやすい。そういう側面があるので、いつでも勝利をもぎ取れる訳じゃなかったりする。
それでも、【最善】をもぎ取って来るので周囲からの支持率は高いんだよねw。御都合主義なんてねぇから、全体的に等しく絶望しか得られない世界で自分達の都合の良い様に世界を動かそうとした馬鹿共のクソッタレな末路の成れの果て。ソレが、一般人達にのし掛かって来てるけど気にせず自分達の都合の良い世界を目指している派閥達だった。
例えるなら、一国の一組織が暴走して《神殺し》に不利益をもたらしても蜥蜴の尻尾切りをすれば何事も無かった事の様に貿易が出来る……とかね。普通なら、某国の様に経済的制裁とかされるんだけど。国主導で、不利益を与えた訳じゃねぇから国に制裁を加える事は出来ない。例え、したとしても不利益を被るのは一般人のみ。
なので、国そのものが疲弊する訳じゃないので意味は無し。
何時だって、不利益を被るのは一般人だけなんだよ。え?なんで、経済的制裁で国が疲弊しないかって?《神殺し》からの支援が無くても国として成り立つからだろう?《旧・神族》には、簡単に支援を求められるからね。まあ、その見返りはエグいモノがあるけど……国としては、それほど影響はないんだよ。精々、一般人が玩具にされるくらいかな?正に、クソッタレな世界でしかないね!!
【組織】が、国であればまた違ったんだろうけど……ねぇ?

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m(_ _)m

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