絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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閑話 仕事中4

双夜

 

 

 

「ほら、双夜。海だよ、海!」

 

 

バニングス家のリムジンに乗って、海の別荘にやって来た俺、アリちゃママ、八神はやて。

他の人達は、高町家の車か月村家の車に乗っている。

アリちゃママが、努めて明るく振る舞うのを横目に、ピンクのバインドでグルグル巻きにされた八神はやてと不貞腐れている俺。超不機嫌オーラを纏って、八神に殺気に近い怨念を向けている。そのせいか、リムジンの中は誰もが遠慮するほどの異界の地と化していた。

即ち、俺、八神、アリちゃママと運転手のおじいちゃん(鮫島)だけという状況だ。俺の怨念にさえ目を瞑れば、快適な空間と言えなくもない状態だったりする。

だが、どれだけ明るく振る舞っても改善される事のない空気が、アリちゃママの空回りを強調していた。

そこへ、更なる不快感燃料を投下する。

 

 

「チッ!」

 

 

「……………………」

 

 

全力での舌打ちをして、無言のまま八神を睨み続ける。

末代先まで呪うつもりで、合流して早々セクハラをしようとした八神を蔑みと侮蔑を込めて見下ろす。

ついさっきまで、アリちゃママと一緒に騒いでいたけど、ネガティブ口撃を永遠と続けていたら大人しくなった。

 

 

「そろそろ、機嫌治して……ね?」

 

 

「……原因がわかってないなら、黙っててくれないかな?」

 

 

「うぅっ……」

 

 

「あ、アカンよ?親に、そんな口訊いたら……」

 

 

「黙れ、変態……」

 

 

いっそうの事、GOGOパニックに落としてしまいたくなるのを必死に押し留める。もしくは、ふんどし一丁で走り回りたくなる魔法でも掛けて殺ろうかと企策していた。

まあ、それをするにしても術式を一から組まなければならない訳なんだが。やるとしたら、精神錯乱方面で抑止解放系辺りだな。個人が保有する、ビーチなのだからそこでしかできない事をするのが一番だろう。

やはり、全裸ふんどし一丁で走り回っていただこう。

ササッと術式を構築していく。デバッグと追加術式、それから軽量化は、【真実の瞳】でサクサク進めて行く。

効果の方も、【真実の瞳】があれば確認したい放題なので、割りと簡単に創れてしまう。

 

 

「後は……おじいちゃん!」

 

 

「はい。何でございましょう?」

 

 

「ふんどしってある?」

 

 

「ふんどしでございますか?」

 

 

「うん」

 

 

「直ぐに用意できますが……」

 

 

「なら、お願いなの♪」

 

 

ニパパと笑って、足をピョンピョンと跳ねさせた。

機嫌が治った様に見えたらしい、アリちゃママがホッとしようとして……直ぐに、異様な雰囲気を察する。

それが、表面的なものであることに気が付いたみたいだ。

流石……と関心しつつ、ニコニコと邪悪な雰囲気を放つ俺を見て「なんて、器用な……」という呟きを聞く。

 

 

「双夜、悪戯でも考えているの?」

 

 

「悪戯?違うよ。あえて言うなら、報復かな……」

 

 

「何に!?」

 

 

驚いたように、目を白黒させるアリちゃママを見て優しく微笑む。でも、邪悪な雰囲気は消さない。

 

 

「もちろん、僕が遠出する事になった理由に……だよ?」

 

 

ギラリッ!と、八神はやてに視線を向ける。

八神はやては、ギョッ!?とした顔で俺を見上げると「ごめん」とか「堪忍してぇ!」とか言い出すけど無視。

 

 

「双夜が不機嫌だった理由って……」

 

 

「もちろん、八神はやてだよ?」

 

 

キョトンとした顔で、アリちゃママを見上げると困った様な顔をされた。

 

 

「……許してあげてって言っても無駄よね……なら、何をするつもりか聞いて良い?」

 

 

「全裸で、ふんどしを着けて走り回って貰うよ!もちろん、精神錯乱状態で理性的抑止解放!!」

 

 

ついでに、使い魔に画像撮らせてデバイス拡散でもすれば、八神はやての社会的地位は失われ表に出る事もできなくなるだろう。

 

 

「止めて!堪忍……堪忍や!!」

 

 

「知るか!貴様のせいで、僕が出向かないといけないとか……本来なら、GOGOパニックに落として殺るところなのに……」

 

 

「い、嫌や!黒い悪魔ワールドは、もっと嫌やぁ!!」

 

 

「ちょ、双夜。……………………もしかして、未来ではやてに苛め抜かれた事……根に持ってるの?」

 

 

「はあ?僕が!?」

 

 

「ずっと、気にはなってたのよ。はやてだけは、フルネームで呼び続けてるし……仲良くなりたく無さそうだったから……」

 

 

あれはあれ、これはこれと……ちゃんと、割り切っているはずだ。あの八神はやては、ここにいる八神はやてとは別人。

上書きされている様子もないし、普通に接していると思う。

まあ、ちょこっとはトラウマになっているだろうから、八神はやてを避けているかもしれないが……あの世界での出来事を、そのまま引き摺っていたりはしていないはずだ。

 

 

「確かに、仲良くは成りたくないな。こんな、変態とニコヤカに談笑する気は無いよ……」

 

 

「グフッ……」

 

 

「考えてもみなよ?自分の欲望の為に、誰かの為と言い訳をして友人の胸を揉みまくる変態と仲良くなりたいか?」

 

 

「カハッ……」

 

 

「同性だとか、そんなん関係無いだろう?セクハラは、犯罪だよ?控訴すれば、確実に勝てるレベルの話だ。そんな奴を友人にはしたくないね……」

 

 

「うぅっ……」

 

 

「まあ、確かにそうよね……」

 

 

「ガハッ……か、堪忍……堪忍や……」

 

 

「今は、謝ってても同じ事を繰り返すんだぜ?ぶっちゃけ、留置場に叩き込んでやりたいよな!」

 

 

「……………………」

 

 

八神はやては、号泣しながら沈黙した。

残念ながら、全て本音である。そこに、未来での怨念は含まれない。まあ、参考程度にはしているかもしれないけれど……未来の八神はやては、未来の八神はやてでしかない。

この八神はやてに関しては、無教養から来る的外れな事柄を言い訳にセクハラを働く犯罪者程度にしか思っていない。

 

 

「…………そう。双夜がそう言うなら、そうなんでしょ……で、どうするの?この変態……」

 

 

「……………………」

 

 

「言ったよ?本来なら、GOGOパニック行きだ。だけど、これから行く所はプライベートビーチなのだろう?なら、プライベートビーチならではの、お仕置きをしようよ……」

 

 

邪悪な雰囲気を意識しつつ、ニヤリと笑って見せる。

八神はやてから、小さな悲鳴が聞こえてちょっと楽しくなって来た。

 

 

「それが、全裸でふんどしな訳ね……」

 

 

溜め息を吐きながら、コップを手に取り麦茶を注ぐアリちゃママ。タイミングを計りながら、ぶっちゃけてみた。

 

 

「その画像を、デバイス拡散したら楽しそうだよな?」

 

 

「っ!?」

 

 

「ブッ!……はやてを、社会的に殺す気!?」

 

 

吹き出された麦茶は、重力制御魔法で八神はやてへ。

ちょこっと、軌道が変だったけど吹き出した本人も被った変態も気にしない。

むしろ、変態がニヘラと昇天したような顔をしているのが気になる。だから、【正直者の陣】を展開して聞いてみた。

 

 

「何、嬉しそうな顔をしているんだ?」

 

 

「我々の業界では、ご褒美ですのでっ!ハァハァ……」

 

 

「「……………………」」

 

 

「…………ハッ!ちゃう、ちゃうんよ!!」

 

 

「ガチ変態だ……」

 

 

「そうね。ちょっと、今後も友人を続けるか……考慮しないといけないかもね……」

 

 

「え?」

 

 

アリちゃママが、悩みながら額を指で押さえ八神はやてから距離を取る。まあ、当然の結果だ。

それを見て、八神はやてが本気の涙目になった。

涙を流すのは勝手だが、自業自得の事柄で相手に罪悪感を覚えさせるのはイケない。

 

 

「自業自得だろ?」

 

 

涙目の八神はやてに、何かを言おうとして身を乗り出してたアリちゃママに手を向けて、『待て』のジェスチャーを続けつつ変態に語りかける。

 

 

「せやけど……こんなん……」

 

 

「犯罪者の末路だな……セクハラは、犯罪なんだよ」

 

 

何かを言いたそうにしているアリちゃママを抑えながら、八神はやてにセクハラは犯罪であることを言い聞かせる。

 

 

「うぅっ……」

 

 

ちゃんと、その意図を理解してくれたアリちゃママが、深く座席に身を預けた。こちらに任せてくれる様なので、手を下ろし続ける。

 

 

「前にも言ったろう?『親しき仲にも礼儀あり』って。それを考慮しなかったのは君自身だ……」

 

 

「じ……慈悲を……」

 

 

「慈悲は無い!判決。僕の仕事を邪魔して、世界の人々を危険にさらし……自己中心的な理由で、友人達の嫌がる行為をした罪として『裸ふんどしの刑』に処する。社会的に死ぬが良い!!」

 

 

閻魔大王的判決を演出しつつ、ズビシッ!と八神はやてを指差す。真っ青な顔で、ショックを受けている八神はやて。

 

 

「……もっと、重い罰でも良いんじゃ無い?」

 

 

それを見ていたアリちゃママが、異議申し立てをしてきた。

もっと、重い罰をと言い出す。それを聞いた八神はやてが、凄い勢いで振り返り目を見開いて硬直していた。

 

 

「あ、あ、あぁ……アリサちゃん!?」

 

 

「残っていれば良いんでしょ?」

 

 

「……………………」

 

 

何を指して、『残っていれば』なのかはわからないが、ここで『何が?』とは聞けない状況だ。今は、八神はやてに恐怖心を刻む場面だから。腕を組み、今以上の罰を考える。

とは言え、考慮しなかった訳じゃ無いので『裸ふんどし』以上の罰は直ぐに思い付いた。

例えば、『旅行中、ずっとシャマル先生の手料理を食べる』とか、『ポイズン&マジカル☆クッキングで血祭』とか、『耐久冥土の刑(マカナイはポイズン☆クッキング)』とか、色々思い浮かんでは消えていく。

 

 

「なら、旅行の間……シャマル先生の手料理しか食べたらダメ!!とか?」

 

 

「ゴフッ!!しゃ、シャマルの手料理……だけ……っ」

 

 

血を吐く真似をしながら、悶絶する八神はやてとは裏腹に車は少しずつ速度を落とし始めた。

どうやら、目的地の別荘に着いたらしい。

俺は、八神はやてからデバイスを取り上げニヤリと笑う。

術式も完成したし、後はふんどしを受け取って八神に渡し魔法を掛けるだけとなった。

 

 

「デバイスは、預かっておくな?ああ、アインス達にも所在認証をガッチリ付けて置かないと……ユニゾンして、別次元でお食事してましたなんて……お仕置きにならないし……」

 

 

「あ、犬小屋あるわよ?」

 

 

「じゃあ、八神の部屋は犬小屋で!」

 

 

「ホンマに、申し訳ありませんでした!!」

 

 

頭をゴンゴンと車の床に打ち付けて、平謝りを始める八神はやてだが……先も言った通り、慈悲は無いのである。

 

 

「なら、次に胸揉みしたら……犬小屋にしない?」

 

 

「神様仏様アリサ様!!」

 

 

「仏様……か……」

 

 

余り言いたくはないが、神仏関係に良い思い出はない。

人間には、戒律を押し付けておいて……自分達は完全無視なんてザラだし。その欲望の為に、どれだけの知的生命体が犠牲になったことか……考えただけでもゾッとする。

 

 

「お待たせいたしました」

 

 

「にゃ!?」

 

 

おじいちゃんが、いつの間にか外にいて車の扉を開けてくれる。驚いていると、アリちゃママが笑っていた。

 

 

「にゃ……って、幼い頃のなのはみたいね」

 

 

「むー……」

 

 

「さ、行きましょ?」

 

 

アリちゃママに急かされて、俺は八神をチェーンバインドに巻き直しズルズルと引き摺って行く。

それを見た、守護騎士連中に咎められるが「セクハラを働いた犯罪者の連行中だ!」と押し切った。誰も何も反論しなかった事と、ハンマー娘が八神の暴挙をセクハラだと認めたからである。

 

 

「ヴィ、ヴィータ……な、なんでや……」

 

 

「……………………」

 

 

「そういえば、ハンマー娘が揉まれてる所見たこと無いなぁ……拗ねてるんじゃ無いか?」

 

 

「そ、そうなんか!?ヴィータ!」

 

 

拘束された状態で、ハンマー娘に詰め寄る八神。ハンマー娘は、フイっと顔を反らして別荘の方へと走り去った。

 

 

「仲間外れな気分じゃないか?」

 

 

「揉んで上げれば良いじゃない……」

 

 

「そうだぞ。いくら、ハンマー娘がペッタンコでも仲間外れはイケない……」

 

 

「そうよ。揉むモノが無くても、揉んであげなきゃ……」

 

 

「……………………」

 

 

シグナムが、眉間に皺を寄せて額を指で押す。

何かしら、引っ掛かるモノがあったらしい。

だが、あえて言おう。何の意図も悪意もない。

 

 

「せやな、仲間外れはアカン。ヴィータも、私の可愛い子や……ペッタンコだろうが何だろうが、揉んだるでぇ!!」

 

 

「……でも、揉んだら犬小屋な?」

 

 

「そうね。帰ってからにしてね?」

 

 

「ハゥアッ!」

 

 

八神はやてが、orzの状態に崩れ落ちる。

残念だが、この旅行中はこちらの指示に従って貰う事にした。指を指して、「ざまぁ!」と笑っておく。

 

 

「あ、そうだ!ついでに、アイツも出してやるか……」

 

 

どうせ、何もする事がなくて拗ねていそうなオチビさんを、八神達に紹介がてら出してやることにする。

基本的に出番が無くて、いつも本の中で膝を抱えているもう一つの夜天の書。こういう時くらい、遊ばせてやらないとストレスが天限突破しかねない子がいる。

予備程度に、手にしたけれど使う機会の無い魔導書が、隔離ポケットの中でホコリを被ってしまっていた。

 

 

「来い!【蒼天の書】!!」

 

 

俺のすぐ目の前に、小さな魔導書が現れる。

 

 

「む……それは?」

 

 

「【夜天の書】の後継機、【蒼天の書】だ……リインフォース、出てきて皆に挨拶を……」

 

 

『ハイです!』

 

 

【蒼天の書】の中から、15㎝程の幼い少女が現れた。

そして、彼女(Ⅱ)は彼女(Ⅰ)を見て硬直する。

 

 

「なんや!?この子、ちっさいリインフォース?」

 

 

「いや、未来の……リインフォース・アインスを失った八神はやてが生み出した、【夜天の書】の後継機。【蒼天の書】とリインフォース・ツヴァイだ……仲良くしてやってくれ、アインス……」

 

 

「……………………初め、まして、だな。ツヴァイ……」

 

 

「は、ハイッ!は、初め、まし、て……アインス……」

 

 

涙をポロポロと流しながら、ツヴァイが自己紹介を始める。

それを優しく、見詰めるアインスにツヴァイと【蒼天の書】を渡した。感動の出会いは、荷物を置いてからシッカリとヤって貰うとして……八神はやてを拘束しているチェーンバインドを、思いっきり引っ張った。

 

 

「さて、お前はコッチだ……」

 

 

「そんなっ!私も、あの子の事知りたい!!」

 

 

「だったら、犯罪なんて犯さなきゃ良かったんだ……ああ。後悔、先に立たずだったな?」

 

 

「うぅぐっ……嫌やぁ!私も、リイン達とあの子の事知りたいッ!お話ししたいっ!!」

 

 

「ハッハッハッ……諦めろ。お前はこれから、ふんどし一丁で浜を駆け抜ける苦行が待っているんだから!」

 

 

泣き叫ぶ八神を引いて、俺はおじいちゃんの後を付いて行く。

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

その後、砂浜を一心不乱に走る上半身裸でふんどし姿の八神はやてが目撃されたとかなんとか。

 

 

「フッ……有言実行!!」

 

 

恐怖をなんとか我慢して、あのバカを外へと放り出す事に成功した。危機感迫る勢いで、砂浜を駆け抜けるバカが、そのままなのはさん達のいる場所に飛び込んで行く様を眺める。次の瞬間には、ピンクの極光が空を切り裂いて行った。

きっと、抑制力を失ってしまったのが原因か……と考えて、元々そんなモノが存在してない事に気が付く。

もし、そんなモノがあったならば……セクハラ行為が行われる事も無かったのだ。

 

 

「平和だなぁ……」

 

 

クラールヴィントを使って、シャマル先生に連絡を入れた。

最初は凄く驚かれたけど、未来云々の話はしていたので大きな問題になることなく約束事を取り付ける。

今晩、八神に手料理を作ってやらないか?というお誘いであった。理由は、適当に……栄養のあるモノをお疲れ気味の八神に食べさせよう!……的なモノにしておく。

あくまで、苦行等ではなく八神の身を案じての行為であるとの説得である。二つ返事で、了承して貰った。

 

 

「さあ、マジカル☆クッキングの始まりだぜ!」

 

 

別荘の屋根から飛び降りて、キッチンの方へと足を向けるとおじいちゃんとノエル達がバーベキューの下準備を始めていた。

 

 

「おや?双夜様は、海へ行かれないのですか?」

 

 

「子供じゃ無いからね。それに、ショッパイだけの海へなんて行かないよ?甘いならともかく……」

 

 

ファリンが吹き出して、慌ててノエルが、それを諌めようとしている。おじいちゃんは、破顔して「そうですか」とだけ言った。

 

 

「それに……【真実の瞳】が告げてくる情報を見る限り、海に入りたいとは思えなくって……」

 

 

ん千万分の一程度に薄められているとは言え……有害物資や有害毒素等々、様々なモノが溶けている水に自ら浸かりに行くなんて発想はない。ちょっとやそっと、取り込んでも何の問題も無いだろうが……それでも、気分的に嫌なモノは嫌なんだ。

 

 

「……………………はぁ……」

 

 

巨大な冷蔵庫を開けて、こちらも下ごしらえを始めた。

胸の中心から、虹色に輝く剣を抜き大人モードに変化する。

って言っても、12歳程度にしか成れないんだけどね。

しばらくすると、普段着に着替えたシャマル先生がキッチンに顔を出す。

 

 

「お待たせしましたぁ♪」

 

 

「大丈夫。まだ、下ごしらえ中だから……」

 

 

「じゃあ、手伝いますね?」

 

 

エプロンを着けて、俺の隣にやって来る。

そして、洗剤とお米を取り出した。その時点で、完全に間違いなのだがあえて何も言わずに洗剤を取り上げる。

その代わりとして、同じ銘柄の容器に砂糖水を入れただけのモノと取り替えた。

 

 

「ドジっ子メイドのファリンと同レベル……」

 

 

「ええっ!?しませんよ!私は!!」

 

 

「……そう?やってそうに見える」

 

 

「ガーン……」

 

 

話している間にも、シャマル先生のポイズン☆クッキングは進んで行く。「泡立ちませんねぇ……」という発言に、「自然に優しい高級なモノだからね」とだけ答えておいた。

その受け答えに疑問を感じたのだろうノエルさんが、コッソリあれが何かを聞いてきたので砂糖水と答えておく。

何故か、凄く驚かれた上に吹き出していた。

あのノエルさんが、口元を押さえて笑っている。

そんなに、面白い事をした覚えは無かったんだけど……人のツボというのは良くわからない。

 

 

「次は、メインディッシュですね!」

 

 

出てくるのは、何故か漂白剤。

ササッと、通常の調味料と変更する。

次いでに醤油等の味が濃いモノは適量を渡して一息。

それ以外は、さっさと片付けてしまう。

 

 

「なんて、的確なサポート……」

 

 

「素晴らしいです!!」

 

 

賛美の声を聞きつつ、鍋の中を見て眉をひそめる。

良くわからない、碧色に輝く液体が入っていた。

ザッと周囲を見回して確認するが、ヤバそうな食材も薬品の類いも見当たらない。なのに何故、こんなポイズンになるのかどれだけ考えても思い当たらなかった。

ぶっちゃけ、コレを口にするのは八神はやてなのでポイズンであろうがなかろうが構わないが……疑問だけは尽きない。

とりあえず、後で“エリクサー”(凄まじく臭い)でも突っ込んでおけば大丈夫だろうと頷いておく。ついでに、“神水”(とてつもなく苦い)を入れて、“ガッシュの炭”(臭い・眠れなくなる)と“千年樹の密”(濃縮激甘)でも叩き込む事を胸にシャマル先生を見上げる。臭くて苦甘い出汁の出来上がりだ。

効能は、元気になって眠れない出汁だが……今晩は、誰も眠らないだろうから問題はないだろう。

 

 

「ハイ、出来上がりです!」

 

 

「じゃあ、八神呼びに行かないと……」

 

 

「じゃあ、呼んで来ますね♪」

 

 

「あ、味見して良い?」

 

 

「良いですよ♪後で、感想聞かせてくださいね?」

 

 

おじいちゃん達も、バーベキューの準備で外に出て行ってしまう。それを見送って、お玉で鍋の中をかき回し……まず、“千年樹の密”を入れる。それだけ加えて、小皿によそって一口含み吐き出した。

 

 

「…………甘っ……」

 

 

次に、“神水”を入れてかき回す。

碧色が、ピンクの液体へと変化した。

どうやら、何かが反応しあってしまったらしい。

小皿に取って、ペロッと嘗める。

 

 

「グホッ!?」

 

 

凄まじい、パンチの効いたなんとも言えない味になってしまっていた。慌てて、“ガッシュの炭”をパラパラと振り掛ける。しばらく煮込んで、緋色の液体になってホッとした。

もう一度、小皿によそって嘗めてみるとシャッキリポンみたいな味に変化してしまう。

最後に、“エリクサー”を流し込んでシッカリかき混ぜる。

凄まじい臭いが、キッチンと周辺に広がって……小皿に取って、嘗めてみるとスパイクでパンクなパンチの効いたガツンとした刺激物になってしまった。

 

 

「見た目は、激辛風なのに……」

 

 

とりあえず、臭いだけでも消臭したかったので、変化の魔法を掛けて臭いを消す。ついでに、周囲の臭いも消すのを忘れない。最終確認として、最後の味見をする。

 

 

「ウワッハァッ!!スッゲー、ちょ、マジで!?」

 

 

思っていたよりも、凄まじい味に口元を押さえてドン引きしてしまう。この何とも言えない……だけど、いくら食べても死んだりはしない……むしろ、元気になること間違いなしな鍋の中身を見ながら黙り込む。筆舌を尽くしても、言い表せられない味に思わずニヤリと邪悪な笑みを浮かべてしまう。

 

 

「……………………ちょっとだけ、サンプルを……」

 

 

試験管に、その液体を分けて貰ってその場を後にした。

試験管には、時間停止の魔法を掛けておく。

そして、隔離空間に放り込んでおいた。

 

 

「いやー……良いものをゲットしたぜ……誰に、食べさせてやろうかなぁ……♪」

 

 

この仕事を終えて、【組織】の奴等と合流した頃の状況を思い浮かべながら屋根の上へと避難する。そろそろ、水着姿の女性達が別荘の方へと戻って来る頃合いだ。

モタモタしていると、幼児後退化してしまうので急ぐ。

その後、使い魔の目を通して様子を伺っていると、八神はやてが悶絶しながらもあの食べ物(?)を口に運んでいた。一口食べる事に、身体全体を使ってソレの味を表現している。

 

 

「不味くはないんよ……不味くは無いんやけど……なんやコレ、こないな味……初めてや。明確に言えへんけど……不味くはないんよ……食べられへんこともないし……アカン!自分の表現力の無さに愕然やっ!!」

 

 

頭を抱えて、ジタバタしている変態がいた。

 

 

 

 




八神はやて、虐めの回。
でも、八神はやての変態プリがヤバイ。
『我々の業界ではご褒美です!』は、一度やってみたかった話。まさか、八神はやてが言うとは思いもしてなかったw
まあ、はやての変態っプリはまだまだ続きますがw

シャマル先生のポイズン☆クッキングと如月双夜のマジカル☆クッキングは、本当の意味でポイズン&マジカルだったという話w

誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m

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