絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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四四話で、双夜が【鮮血の】達に『帰れ!』を選ばなかった場合のお話。

踏み台くん名募集中!!
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番外編 ifキチガイ共の軍行 前編

???

 

 

 

その日、全管理世界に衝撃が走った。

全管理世界通信で、ある宣言が行われたからだ。

その宣言とは……。

 

 

「我々は、この世界よりも遥か高位の次元からやって来た高次元精神生命体である!!」

 

 

ブリッジとは思えない様な緑溢れる森林の中で鮮血の様に赤く輝く髪を揺らし、一人の少年が大立ち回りを画面の向こう側でしていた。その更に奥には、頭の上に光輝く輪っかと純白の翼を持つ半透明の存在が威圧感を放っている。

まさに、人々が思い描く高位の存在そのモノだった。

だが、人々が釘付けになっていたのはそんな事ではない。

かつて、伝説の英雄とまで言われた三提督が頭を垂れ、その存在の足元にひれ伏しているという状況に釘付けなのだ。

 

 

「此度の下位次元への遠征は……君達が、【神】と呼ぶ愚か者達によってこの世界へと送り込まれた【転生者】なる者を探し出す為である!」

 

 

「見よ!」と赤い髪の少年が、ある者達を差す。

そこには夜鏡皇也が、ピンクのバインドで両手両足を縛られ宙ぶらりん状態で繋がれていた。

 

 

「こやつが、【転生者】と呼ばれる者達の一人だ。この世界で言うところの魔力ランク、推定SSSの魔導師……だが、そんな人間が存在すると思うか!?断じて否だ!!」

 

 

赤い髪の少年の演説は続く。

その後方で、ただ座りボーとしているのは幻でも何でもなく劣化術式を解いて、“本体”から余分なエネルギーを配給され本来の姿を一時的に取り戻した如月双夜である。

彼は、【鮮血の】の提案を受け入れ、具像の役割を全うしている所であるが……とても、暇だった。

ジャラリ……と、魔力の手で持っている鎖を弄ぶ。

その先は、ある少女達に繋がっていた。

面倒臭そうに、視線を一点に集中させつつ、言うべき言葉とヤるべき行為を頭の中で反芻する。

そして、その時は来た。

馬鹿……じゃない。赤い髪の少年が、【転生者】の説明やらなんやらを終えて彼に『御伺い』をたてる。それを受けて、出来るだけ気だるそうに……かつ、面倒臭そうに動きつつ、言うべき言葉を告げる。

 

 

『脆弱たる愚かな者よ……【神】に選ばれたと浮かれ、世界の理を歪ませる者よ……汝等の目的はわかっておる』

 

 

《手》に持っていた鎖を軽く引く。

それによって、その場に躍り出てくるのは赤い髪の少年が趣味で集めているボンデージに身を包んだ【原作人物】達。

更に、首輪を付けられて鎖に繋がれている姿が、全管理世界に放映される。

きっと今頃は、別室でブチギレているだろう彼女達。

この場にいるのは、如月双夜の使い魔(男型)達である。

 

 

『この者達であろう?フッ……だが、残念だったな?この者達は、我が先にいただいた。諦めるが良い…………等と言えば、汝等は世界を滅ぼそうと躍起になるだろう。そもそも、汝等の目的は『この者達を手に入れる』……もしくは、『全次元世界の消滅』だろうからな……』

 

 

「君達が持つ兵器を持ってしても、世界を滅ぼすのは容易ではない……例え、アルカンシェルの数千倍の威力がある、【時空消滅兵器】を撃っても世界の一つ一つを滅ぼして……全次元世界を虚無に還すことは出来ないと判断する!」

 

 

如月双夜は、適当に侮蔑の眼差しをカメラに向けて世界を全て見下すように……そして、絶対に鎖で繋がれている使い魔達には、視線を向けない様に固定した。

赤い髪の少年が、最終的に【転生者】に宣戦布告をして終了となる。カメラが止まったのを確認した赤い髪の少年が、クルッと振り返ってニヤリと笑う。

 

 

「はーい、お疲れ様ー♪」

 

 

「面倒……俺……怒られる……貧乏くじ……」

 

 

少しずつ、質量体に変化しながら双夜が拗ねている。

鎖を捨てて、使い魔達に役割放棄を命じ、七歳の姿に戻ってブリッジから出ていく。

その後を追うように、赤い髪の少年とキモヲタデブのロック・ウォーが続く。メディア系のPCに割込んでいたのが彼だ。

 

 

「何で、片言的な喋り方なんだよ?わかった、僕も一緒に怒られてやるから!」

 

 

「お前、トラウマ、無い。俺、女性、裸、怖い……」

 

 

【魂の改竄】によるトラウマは、未だに健在のままだ。

そういう仕返しが、待っているんじゃ無いかと怯える双夜に二人が生暖かい視線を向ける。

 

 

「その時は、八つ当たりして良い?」

 

 

涙目で懇願された二人は、思わず頷いて全力で首を横に振った。双夜が、舌打ちをしてゆっくりだが確実に進んで行く。

 

 

「悪かったよ!……まあ、でも……これで、【原作組】を奪い返そうと彼方さんが動くなら儲けモノじゃないか!」

 

 

「ちょっと前に、動きがあったよ?使い魔からの秘匿通信……何機かの戦艦を確認したって……この後で、艦隊戦が待ち構えているかも……」

 

 

「武装は?」

 

 

「現在、確認中」

 

 

思考を切り替えたのか、真剣な目で前を見据えた双夜を見て二人はホッと安堵の息を吐く。

 

 

「いやぁ……マジ便利だわ。空気に溶けるように浸透する使い魔ってのは……相手からは見えないから、情報収得したい放題だからなぁ……敵対していた時は、厄介だったけど味方になると超心強いね!!」

 

 

そんな事を言っているが……ナノマテリアルというナノマシンを使って、惑星を囲み……宇宙全体にまで手を伸ばしたのは、他でもないこの赤い髪の少年だ。

情報収集(収得)の為と言って、誰にも知られずに宇宙全体の弱味を握り、エイリアンを相手取りつつ恐喝紛いの交渉をしている悪魔。

 

 

「そんな事を言っていると、慣れ親しんだ頃合いを見計らって掌を反されてプチッと潰されますよ?」

 

 

「そうだなぁ……殺るとしたら、こいつが最も大事にしているコレクションの格納庫で反旗を翻す事だ。殺るよ(笑)」

 

 

ロック・ウォーと双夜が朗らかに笑い合う中、真っ青を通り越して蒼白になった赤い髪の少年が慌てて二人に詰め寄る。

 

 

「止めて!マジ止めて!!」

 

 

「おや、ここにいましたか……」

 

 

通路を曲がった先で、何故か現れた【風紀委員】に三人が固まる。

双夜が、一瞬【風紀委員】から目を反らして『俺、何かしたっけ!?』みたいな顔をするが……心当たりがなかったらしく、首を傾げていた。

ロック・ウォーは、蒼白な顔でスパイ任務放棄してないから大丈夫だよな!?的な顔をして顎に手を当てる。しかし、【風紀委員】は自分の事情に通じているので問題無いだろうと頷いて堂々と胸を張った。

赤い髪の少年が、蒼白なまま思考を停止させている。

半分、逃げ腰なのは……先日の件を、引き摺っているからでもあった。

三人が三人共、自分の状況把握を優先させるのもいつもの事なので【風紀委員】はスルーして用件を告げる。

 

 

「發春、貴方の謹慎を解いておきました。科学系世界へ赴き、歪みの元を廃除しなさい!」

 

 

「こっちが終わり次第、科学系世界へ赴きます!!」

 

 

ビシッ!と敬礼して、赤い髪の少年は任務を繰り返す。

 

 

「おい、総大将!何、命令されてんのさ?【風紀委員】も、態々出向かんでもメールで十分なんじゃないか?」

 

 

【鮮血の小悪魔】……本名、發春(ハツハル)。

天才科学者でもある彼は、正真正銘【組織】の総大将であった。なのに、基本的に下っ端扱いになっているのは、当人の性格にもよるが……一番の理由は、『馬鹿』だからだろう。

科学者としては、天才級なのだが……なんというか、人格面がアホの子なのである。

 

 

「ええ、普通であるならそうしますが……發春は、私からのメールを着信拒否しているので……直接会いに来た方が早いのです」

 

 

「「態々、怖い思いしたいん(ですね)だな、お前……」」

 

 

「したくないよ!ってか、メール読めばこんな恐怖感じなくて良いんだ!?」

 

 

「おやおや、本人の目の前でそんな事を仰られるとは……余程、死にたいみたいですね……」

 

 

冷気のような気配が、足元から這い上がってくる。

見れば、【風紀委員】が爽やかな笑顔をしていて、目だけが笑っていないという状態だった。

 

 

「あ、俺はパス。この後、【原作組】に会うので血塗れはマズイ……」

 

 

「「以下同文!!」」

 

 

ロック・ウォーと發春が、追従するように双夜に続いた。

 

 

「そうですか……では、また今度にしましょう。では……」

 

 

その場から、まるで幽鬼の様な動きでスススッと消え去っていく【風紀委員】。これで、笑い声が残ったら本物だったのに……なんて、無駄なスキルを身につけているんだろうと見送る三人だった。

 

 

「「「また、今度かぁ…………」」」

 

 

溜め息と共に出るのは、【風紀委員】が残した言葉。

それは、確実に行われる宣言でもある。

三人は、顔を青くしてガックリと肩を落とした。

 

 

「俺、今度会うの……いつになるかなぁ……」

 

 

「フリーな方は、楽で良いですね……まあ、私も当分先になるかと……」

 

 

歩みを再開して、話すのは今後の予定。

どうにかして、【風紀委員】との再会を遅らせるかの相談。

 

 

「…………スパ○ボ終わったら、直ぐ……」

 

 

「御愁傷様……」

 

 

「冥福御祈りしております……」

 

 

「酷いよ。二人共!!」

 

 

「「所詮は、他人事なので……」」

 

 

「うわああん!!」

 

 

二人の辛辣さに、發春は泣きながら走り去って行った。

それを見送って直ぐ、ウィンドを開いた双夜はある人物にメールを送る。それを見ていたロック・ウォーが苦笑いした。

 

 

「なかなか、残酷ですね……」

 

 

「一緒に謝ってくれるって言ってたのに……敵前逃亡は、重罪!!」

 

 

いつもの潰し合いをしつつ、彼は問題の部屋へと辿り着いた。Lockを解除して彼が中に入ると、その場にいた全員の視線が突き刺さるように感じられて視線を上げる事ができなかった。

 

 

「どうでした?」

 

 

双夜の代わりに、ロック・ウォーが話し掛ける。

 

 

「どうでした?や、あらへん!!何やの、アレは!?」

 

 

激昂するように怒鳴ったのは、八神はやてだった。

 

 

「ハルさんが、保有するボンデージですね。それが、如何されたのですか?」

 

 

「…………私等の姿で、あんな……あんな格好されて、怒っとらへんとでもゆうんか!?」

 

 

「いえいえ、ブチギレ状態だと思いますよ?ええ。敵を煽る為とは言え、使い魔達はやり過ぎかと……ですが、アレ以上に効果的な挑発は無いと思いますが……」

 

 

「わかっとってやったんか……なら、今から私等がーー」

 

 

「ええ。ノリノリで、ボンデージを着込む使い魔……カッコ男カッコ閉じ……達の撮影会は、中々に我々の精神を削るに長けておりました。こんな感じで……」

 

 

様々な画像が、空中に提示されていく。

ボンデージを着込んだデブ親父や、ハゲでマッチョな姿に変身した使い魔達の姿が……デカデカとアップされる。

その場にいた全員が、口元を押さえてドン引きしていた。

 

 

「そして、全次元放送が始まる瞬間まで我々の精神を削った彼等は……やっぱりノリノリで首輪と鎖を受け取り、自分自身の手で装着されておりました。きっと、今頃首輪を着けたデブ親父やハゲでマッチョな親父風に変身し直した使い魔達による撮影会が再開されている頃でしょう……」

 

 

「「「「…………………………」」」」

 

 

ドン引きした、【原作組】が……【転生者】が、真っ青な顔で視線を下に向ける。何故なら、彼女達の目の前に使い魔達の撮影会をイメージさせるに足りる画像がアップされていたからだ。

 

 

「ご、ゴメンね?ウチの使い魔、キチガイが多くって……」

 

 

「「「「…………………………」」」」

 

 

何のフォローになってもいないフォローを始める如月双夜。

その隣で、使い魔達の撮影会の様子を伺うロック・ウォーがニヤニヤと選別した画像をアップし続けている。

空中ディスプレイのメインに、目隠しをし猫耳を着けボンデージを着込んだキモデブ親父風の使い魔が、脂っぽい汗をダラダラと流しハアハアと息を荒くしている姿を映し出していた。

 

 

「どうです!?厳選された、キモ画像ですよ!?」

 

 

「うわっ!?って、何やってんのさ!?」

 

 

「ええっ!?これ、良くないですか?良い感じに、吐きそうな画像ですよ!?」

 

 

「違うだろ!?何、精神を削りに走ってんだよ!?」

 

 

双夜が、ロック・ウォーの行動を咎め始めた。

しかし、ロック・ウォーは飄々とした感じで彼の話を聞き流している。止める処か、更に凄まじい画像をアップして楽しんでいた。

 

 

「…………【風紀委員】に、セクハラで訴えーーー」

 

 

画像が一瞬で消えて、素知らぬ顔をしたロック・ウォーが爽やかな笑顔を浮かべて誤魔化している。

 

 

「セクハラは、極刑だもんなぁ……」

 

 

「……木端微塵以上の拷問ですからねぇ……」

 

 

「僕のGOGOパニックに匹敵するレベル!」

 

 

「……………………それも、嫌ですね……」

 

 

GOGOパニック……隔離空間いっぱいにGを突っ込んだ、ゴキ牧場に放り込まれる拷問である。各食糧店裏を回って、残飯漁りと共に隔離空間に捕まえたGを放し育成している双夜。そのG達には、隔離空間内に落ちて来たモノに群がる習性があるので、お仕置きしたい人物等が落とされるのである。

当然、落ちて来たモノに群がる習性を持つG達が見逃すはずもなく、叫び逃げる人々の後を追い回すっという。

最近は、品種改良を加えたGまでも存在するらしい。

 

 

「色々、文句はあるだろうけど……アホゥ共を誘き出す為だと思って、今は黙っていてくれ……お叱りは、後でちゃんと受けるから……さて、ロック・ウォー」

 

 

「はい。何でしょう?」

 

 

「ブリッジで、他の奴等と共にサポートを!」

 

 

「貴方が、それを望むのであれば……」

 

 

「艦内全域通信。とりあえず、人手が足りないから人形を貸してくれ。ああ、戦艦に関しては構わない。俺の保有戦艦を使うから、後……【対時空消滅弾無効フィールド】って、造れるか?」

 

 

艦内通信を切ってしばらく待つと、双夜自身に対し通信が来た。そこには、半泣きで血塗れの少年と返り血に染まった青年が映し出される。

 

 

『うぅっ……痛い……』

 

 

「できそうか?」

 

 

『設計図って、この間送って来てたアレだよね?なら、数パターンの【時空消滅弾】にしかならないから1日も掛からないよ?』

 

 

「なら、任せた。【風紀委員】、聞いていたな?その馬鹿は、こちらで身受けするから許してやってくれないか?」

 

 

『……まあ、良いでしょう……ですが、余り一つの世界に入れ込むのは感心しませんよ?』

 

 

「……………………えっと、入れ込む?どこら辺が?」

 

 

双夜が、首を傾げて【風紀委員】に聞き返す。

 

 

「………………………………」

 

 

『ぶっちゃけ、八つ当たりしているようにしか見えない……』

 

 

「デスヨネー……」

 

 

口々に告げられるのは、否定の言葉。

実際は、八つ当たりなんてしてない上にこの世界に入れ込んでいるようには見えない。世界の運営システムを調整しつつ、適当に馬鹿をブチのめし……日々を謳歌(?)しているだけである。

 

 

『……………………仕事、馬鹿……?』

 

 

「八つ当たりなんてしてないぞ?」

 

 

当人は、それを否定する。

しかし、報告書を見ていた【風紀委員】も認めてしまっているので信憑性が低くなってしまっていた。

 

 

『…………なら、お前にとって【転生者】ってなんだ?』

 

 

「飯ネタ。あ、や……助けるべき存在です!!」

 

 

本音が、駄々漏れだ。

 

 

『では、この世界の方々はどうでしょう?』

 

 

「仮宿?保護者……?」

 

 

『何でしょう。えっと、認識違いと言うべきでしょうか?』

 

 

困ったような顔で、【風紀委員】が珍しく悩んでいる。

赤い髪の少年は、遠い目であらぬ方向を見上げているし、ロック・ウォーも双夜とは別の方向を見ていた。

 

 

『【家】ではないのですね……』

 

 

『ダメだよ!それ、禁句!!』

 

 

『わかってはいますが……全く、この方と来たら……』

 

 

『仕方ないよ!トラウマが、デカ過ぎる。それに、下手をするとアレが出て来るし……そうなったら、僕達終わりだよ!?』

 

 

『中級第三位天使ですか……アレは、濃すぎる上に色々とリスクが高いですからね……』

 

 

被害者達がガタガタ部屋の隅で震える中、【風紀委員】が真っ白に煤けて行く。当時行われた強行の数々を思い出し、それぞれがその絶望と恐怖に震える。

 

 

「喚ぼうか?」

 

 

『『「止めて(ください)!!!」』』

『隔壁閉じます!』

『住居エリアにいるクルーは退避してください!』

『止めて!ここから出してぇー!!』

『いやあぁぁーーーく、来る……来るぅ……!!』

『こんな閉鎖空間で、中級第三位天使は止めてぇ!!』

『外だ!!外に逃げろぉおぉぉぉ!!!』

 

 

「喚ぼうか?」の一言で、各エリアに混乱が巻き起こっている。隔壁が下ろされ、逃げ遅れた奴等が泣き叫んでいた。

彼の【風紀委員】も冷静そうだった顔を崩し泣き叫んでいる上、赤い髪の少年等は既に走り出していた。

 

 

「召喚!」

 

 

『『ぎゃあぁぁぁぁーーーーー!!!!!』』

 

 

「冗談だ。一度出したら、アイツの気が済むまで戻せない上……送還しようとするだけでも、被害が出るアレをそうそう簡単に召喚できないよ……」

 

 

『人騒がせな……』(;`ω;)✨

 

 

『全くです』(・`ω・)✨

 

 

キリッとした赤い髪の少年と、【風紀委員】が正気を取り戻して冷静な顔で文句を言う。なんて、変わり身の速い。

 

 

「ああ、もう!話が進まないだろう!?全軍に通達!!敵は、すぐにでも動く。実際、ミッドを挟んだ向こう側に陣取って……ってか、レーダーに映って無いか?」

 

 

『映ってますよー?現在、20艦程機影がありますね!』

 

 

「……狙える?」

 

 

『ええ。普通にロックできる範囲ですね♪まあ、ミッドチルダが邪魔で撃てませんけど……』

 

 

ブリッジの反応が、微妙に緩い。

何というか、全力で油断しているというか……気が抜け切っているというか……この雰囲気は、弱い者苛めをする時のソレである。

 

 

「お前らの射程は、何処までが範囲内なんだ?」

 

 

『ジャンプ攻撃を含むなら……座標計算ができる範囲内なら、何処までも範囲内だな!レーダーの索敵圏内は全てだ!』

 

 

『えっと……この艦のレーダーは、亜空間内からでも索敵可能でしたよね?一体、何処までオーバーキルですか?』

 

 

『えー?殺るなら徹底的に!が、科学科のスローガンなので……♪』

 

 

「一発、当ててみるか?」

 

 

『殺らないよ?それは、殲滅戦時まで取って置いて!!逃げ出した奴から順に落とすんだからー♪』

 

 

「鬼か!?あ、もしかして……ミラージュコロイドで、他の艦が隠れてるのって……」

 

 

「いつもの八百長戦ですか?」

 

 

八百長戦とは……相手が有利に戦況が進んでいる様に見せつつ、誘い込み白兵戦へと持ち込ませる。その後、戦況をひっくり返しての殲滅戦を行う事を八百長戦と言うのだ。

戦況をひっくり返す方法としては、双夜達の様な怪物の能力を使っての力付くが主だが、今回は必要無さそうである。

双夜の【瞳】を使って見る限り、ミラージュコロイドで隠れてる艦はダミーで主力は超高性能迷彩術式で隠れている艦隊だろう。しかも、レーダーに映りにくい鉱石を使って造られている様だった。

 

 

「相手側が、揃うのを待っているのか?」

 

 

『もちろん!潰すなら、一度に纏めてが一番だからね!!あ、白兵戦はしないよ?』

 

 

「……この世界の転移魔法の解析は済んでいるか?」

 

 

『解析済みです!』

『対転移魔法フィールドを形成完了!』

『AMFの展開も終了しています!』

『エネルギー反転フィールド……出力安定!』

『通常シールドの出力安定しています!』

 

 

『追加で、対時空消滅弾フィールドも出力安定!!いつでも行けるぜ!!』

 

 

「え……もう?」

 

 

『ウンム!そっち方面の報告を受けた時に、既に準備をし始めていたから繋げばすぐだったんだよ!!』

 

 

『近くにいた次元航行艦から、次元航行システムを確認。解析。対次元航行システムの構築とエネルギー充填しつつ、現状維持。敵を誘い込んでからの展開となります!!」

 

 

つまり、逃がすつもりは無いらしい。

魔法戦になろうが……艦隊戦になろうが……思い付く限りの対策が立てられている。遠方からの攻撃ではダメージを与えられず、近距離戦になれば逃げられない様に囲んでタコ殴り。下手に逃げたとしても、超長距離の転送攻撃が足を潰し動けない馬鹿共を殲滅。

 

 

「……鬼畜かよ……」

 

 

『なら、お前はどうするんだよ?』

 

 

「んー?誘い込み戦は、するかもだけど……苛めはしないよ?もちろん、空間ごと『握り潰す』!」

 

 

『『「……………………」』』

 

 

ほぼ、全員が股間を押さえてドン引きしている。

それが何を意味するのか、誰が見ても明らかであった。

ウズウズする悪戯心を抑え、テクテクと頭を抱えている【原作】・【転生者】達の元へと行く。

 

 

「数時間後には、キチガイ共の軍行が始まる……君達【原作】・【転生者】組は、どうする?」

 

 

「どうって、言われても……私等に、何ができるん?」

 

 

彼の問いに答えるのは、八神はやてだ。

だけど、その顔色は余り良いとは言えない。

他の【原作組】も沈黙している。

 

 

「戦力差が、こんなにもあるのに……敵が、仕掛けて来るとでも?撃ち合えば、必ず逃げられるぞ?」

 

 

【転生者】組で問いに答えたのは、禍焔凍真。

しかも、戦術の穴……問題点に対しての問い。

だが、アイツ等が立てる戦術に穴なんてモノは無い。

問題点は、多々あるだろうが……それは、人道的では無いという事一点に絞られる。

 

 

「…………わざと、被弾する予定なんだろう?」

 

 

『もちろん!』

 

 

「その被弾したのが、【時空消滅弾】でないと良いな?」

 

 

『…………なんて鬼な発言を……』

 

 

『問題ない!光皇翼に防げない攻撃は無い!メインユニットさえ残れば、良いのだ!!』

 

 

「あ、やっぱり天地○用なんだ……それ……」

 

 

転生者の一人が、何かを悟った様にガックリ肩を落とす。

 

 

『敵影30!更に、転移反応多数!!』

『エネルギー反応!出力、上昇!!』

『時空間レーダーに反応!【時空消滅弾】と思われます!』

『シールド出力最大へ!』

『戦域拡大!ミッドチルダを盾に、【時空消滅弾】を撃つようです!!』

 

 

「『盾』じゃなくて、もろともだろうな……」

 

 

「ちょぉ、待ち!そんなことしたら……!!」

 

 

「ミッドチルダ消滅ですね……双夜さん、どうしますか?」

 

 

ブリッジからの戦況報告に【原作組】が色めき立つ。

先程までの沈黙が嘘の様だ。

 

 

「超長距離防御」

 

 

劣化術式を解除して、胸から虹色に輝く剣を抜き取る。

通常モードから、戦闘モードに切り替えて彼はミッドチルダに手を向けた。

 

 

「完全空間遮断」

 

 

背中から、バサリと薄く半透明の翼を展開する。

頭の上には、金色に輝く輪が浮かんで歪に変化していく。

 

 

「全リミッター開放。全力……全開!!」

 

 

惑星の半分を囲む、約五万枚の障壁が展開されていく。

 

 

『前方に高エネルギー反応!』

『……空間歪曲確認!【時空消滅弾】発射を確認!!』

『エネルギー反応から逆算!』

『【時空消滅弾】エネルギー出力、80%!』

 

 

『ショート・ジャンプ準備!!後方部隊は、ミッドチルダを迂回しつつ……戦況に応じて臨機応変に対応!』

 

 

『ショート・ジャンプ準備!』

『転移システムにエネルギー充填!』

 

 

「ショート・ジャンプ位置、ミッドチルダの向こう側。衛生軌道上!ロック・ウォー、ブリッジへ……ショート・ジャンプ後、俺の保有艦隊を展開して適当に叩く。どうせ、次元航行艦アースラを解析して造ったハリボテだ。落ちても構わない」

 

 

『【時空消滅弾】空間遮断に接触!』

『起爆を確認!』

 

 

『良くそんな暇があったなぁ?』

 

 

『衝撃波発生!』

『衝撃波、来ます!』

『対衝撃防御!』

 

 

「本体と部隊は、【外】にいるからな……適当に解析して、データを送れば勝手に造ってくれる」

 

 

艦全体が、大きくブレる。

しかし、誰も転んだりはしない。

 

 

『うわ、便利ぃ♪』

 

 

『エネルギー充填完了!』

『ショート・ジャンプ実行します!』

『ロック・ウォー。ブリッジに、到着しました!』

 

 

ロック・ウォーが、ブリッジに到着すると同時に艦はショート・ジャンプに入った。

 

 

「ジャンプ・アウト後、直ぐに敵艦に電子攻撃!ロック・ウォー、任せるぞ?『お任せあれ!』……アルカリア、準備は良いか?」

 

 

『はい。全員、配置に付きました!』

 

 

『ジャンプ・アウト……三……二……一……』

『ジャンプ・アウト!』

 

 

艦前方に、敵影を画面越しに確認する。

ザッと見る限り、50はいるようだ。

 

 

『妨害電波……照射!!』

『割り込み成功しました!』

『電子戦開始!』

 

 

「アルカリア、全軍展開!」

 

 

『ジャンプ・アウト……全艦完了。攻撃を開始します!』

 

 

『敵影確認』

『妨害電波……照射!』

『弾幕展開』

『電子戦開始します!』

『システム同期……完了しました』

『副砲、ならびに主砲スタンバイ……』

 

 

『副砲は前方に向けて照射!当てる必要はありません!エネルギー出力もLowで構いません!!主砲出力30%で連続照射!!』

 

 

『副砲エネルギー出力10%』

『主砲エネルギー出力30%、連続照射!』

 

 

準LL級の戦艦の周囲に出現したM級艦数機の船から弾幕が展開されて行く。副砲と呼ばれた砲から、大量の光弾が撃ち続けられる。

 

 

『發春!ブリッジに戻りました!!さあ、撃って撃って撃ちまくれぇ!!!』

 

 

唐突にブリッジに戻って来た赤い髪の少年が、ヒャッハーしている。彼がブリッジに戻った数秒後、M艦の主砲が敵の艦を撃破してしまった。敵の艦隊には、シールドが存在しなかったみたいだ。それだけではない、管理局の次元航行艦よりも装甲が薄いのである。

どうやら、建造段階でケチッたみたいだった。

 

 

『艦旗にシールドを確認!』

『指揮艦のみシールドがあるようです!』

 

 

「アルカリア!シールドエネルギーを砲撃に回せ!」

 

 

『了解!!一般シールドを解除して、魔法シールドのみで防御!その他のエネルギーは、全て攻撃に回して下さい!』

 

『左舷M艦に被弾!』

『大丈夫です!まだ、ヤれます!!』

『各員は退艦をお願いします!』

『見よう見まねですが、我々使い魔が担当しますので!』

 

 

「見よう見まねで、できるか!せめて、情報のダウンロードをしてからにしろ!」

 

 

『了解!操作方法をマスターの知識からダウンロード!』

『……ぉおぅ……わかる……わかるぞぉ!!』

『お、俺達が、機械を操作している!?』

『馬鹿とかキチガイと呼ばれた俺達が!?』

 

 

とても怖い会話が繰り広げられる中、何機かのM艦が被弾する。適当に、クルー達の会話を聞き流しつつ戦況を確認していく。何故か、ロック・ウォーが電子戦の手を緩めているのに彼が気が付いた。

 

 

「ロック・ウォー、どうした?なんで、手を緩めるんだ?」

 

 

『いえ、それが……あちら側からの抗電子攻撃が、全く無いのです。彼等、電子攻撃を知らないのでは?』

 

 

「ダミーとか?」

 

 

『あ、それはないです。ちゃんと、確認しました』

 

 

「……あれかなぁ?エネルギージェネレータと兵器を運搬するだけの船で艦隊戦は想定外とか……」

 

 

『あり得ますね……戦艦は、高い(¥)ですから……』

 

 

様々な精密機械を乗せて、装甲を分厚く沢山の兵装を乗せるので最小限でもそこそこしてしまうのである。

 

 

『あちら側の兵士も、それ程洗練されていませんし……電子戦に至っては、紙防壁ですね!』

 

 

「なら、相手の船乗っ取っちゃえよ!で、ある程度の距離と向こう側の戦術に沿った……でも、こちらの有利になる布陣を組ませろ!で、時が来たら何も出来ない様にしてやれ!」

 

 

『残忍だなぁ……』

 

 

「アルカリア、M艦何機か捨てろ。自爆だ(笑)」

 

 

『……わかりました。相手にバレない程度に偽装します!』

 

 

『よし、被弾したみたいに煙幕を出せ!』

 

 

アルカリアが指揮するM艦の一機が、更に被弾した上で自爆すると向こうの攻撃が苛烈さを増した。戦況を確認する為に、観測カメラ巡回を始めて気が付く。

それは、敵艦内に管理局の次元航行艦がチラホラ見受けられるという事だった。

管理局の次元航行艦が、映っている画面を小さくして横へと集めて行く。それらを纏めた上で、メインにはそれ等が映らないように調整した画像を乗せる。チラッと背後を見て、誰にも気が付かれていない事を確認した。

要は開示して良い情報と、秘匿しなければらならい情報の振り分けである。とは言え、最終的には開示するんだけど……今は、必要ないので見なかった事にする。

 

 

「……もう、テロとかやあらへん……一つの軍隊やないか……」

 

 

メイン画面に映し出される戦況を見て、八神はやてが呻くように言った。管理局の巡回の目を掻い潜って、これだけの数を準備させてしまった事を悔いているのか……それに気が付きもせずにノウノウと日々を謳歌していたのを悔いているのかはわからない。だけど、その表情からは後悔の念が感じ取れた。

 

 

「…………おやおや?これは、なんでしょう?」

 

 

メイン画面に先程見付けた、時空管理局の次元航行艦の画像をアップする。

 

 

「あらあら、時空管理局の次元航行艦ですね……敵に寝返ったか、奪われたのかは不明ですが……アルカンシェルとか、搭載されてませんよねぇ……」

 

 

そう、言った瞬間だった。

 

 

『後方、管理局の次元航行艦に高エネルギー反応!』

『バレル展開を確認!』

『アルカンシェルのもようです!』

 

 

「ああ、うん。とりあえず、口は災いの元だな……」

 

 

 

 




ちょっと、書きたくなったので書いてみた。
遊び回です。ぶっちゃけ、艦隊戦です!思ったより、難しかった(笑)オペレーターで誤魔化しつつ、行き当たりバッタリで書きたいことも書いているので長くなりました。

戦術としては、味方艦を自爆させる意味があるのかがミソ。
敵を逃がさないためと言いつつ、いらないモノを破棄しているだけの様な気もしないでもない。
次元航行艦……造ってみたけど、やっぱりいらなかったんじゃないかな?戦力的にアルカンシェルは、【鮮血の】が創る兵装では中ランクに相当するけれど……加減(エネルギー効率)が利かない上に、そこまで執着するまでの兵器では無いってことだと思われる。まあ、頭数程度の扱いに……w

後編に続く!!

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