絶望を払う者~狂気の神々vs愉快で〇〇な仲間達~   作:葉月華杏

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踏み台くん名募集中!!
名前だけでも良いのでくださいませんか?
サブ登場人物の名前も募集中です!

そろそろ、平行世界飛ばししないと……平行1,2と続いちゃってるし……まあ、3も続くかもだから諦めるとして4以降は4で無いかもです!!いきなり、10まで飛ぶかも……wっか、飛ばしたい……。


四九話

凍真

 

 

 

 

 

あの事件から、早三週間経とうとしていた。

双夜の話では、彼の使い魔達が『凌辱系転生者』を全滅させたらしいが……まだ、残党が残っているかも知れないので要捜索中なんだとか。双夜と俺達、更には原作組+αの護衛を残して全員が捜索しているらしい。

その際、クロノが双夜の勢揃いした使い魔達を見てドン引きしていたのだが……やはり、敵には回したく無い人物的な感想を持ったのかもしれない。まあ、目の前にSランクオーバーの魔力を持った存在が数万もいたら俺だってビビる。

それが、百万もいるっていうのだからクロノ達管理局からしてみれば喉から手を出してでも欲しかっただろう。

なんで、そういう結論に至ったのかはわからないが、双夜には仲間ではなく従者が兆単位いるとのこと。

それから、その機動力を活かしてTAKE1の『時空消滅弾』も平行に捜索しているから時間が掛かって仕様がないと双夜がぼやいていた。それと同時に、世界の調整(二回目)も泣く泣くやっているらしい。本人は全力で否定していたが、仲間(?)の犯した不祥事(当人逃亡)の尻拭いをしなければならないとか俺も涙が止まらない。

まあ、妖刀の事とか色々言いたい事はあるけれど、彼と【組織】を同列に考えるだけは止める事にする。

決して、二度とGOパニを体験したく無いとかではない。

ーーって言うか、仲間(?)が残した呪いの残滓を洗い流さないとヤバイ等と愚痴っていた。無かった事になった未来の話だろう?と訊いたら、無かった事になった訳でも未来の話でも関係ないと断言される。

【呪い】というモノは、その程度で無かった事になるほど甘くは無いんだそうだ。例えるなら……しつこい油汚れ。

アレの如く、粘りが強くちょっとやそっとでは流し切れないモノなのだと言っていた。

 

なんて面倒な……。

 

前例の話を聞いて、思ったのが上の感想である。

その他にも、吸血鬼とサキュバスの在り方だとか見分け方だとかを聞かされた。なんでそんな事をと思ったが、話が中盤に差し掛かって漸く理解する。すずか達の一族とその話が、段々と近付いてーー中々どうして、双夜とドラキュラやサキュバスについて興味深い討論を交わしてしまった……とだけ言っておく。

 

 

「……………………」

 

 

いや、この論議に付いては彼の仕事が終わってから、再度時間を裂いて貰って論議してみたいところである。

ドラキュラとサキュバスを足して二で割ったんじゃねぇ?という彼の発言に付いても問い詰めて行きたい所だ。

 

 

「……と、余り時間はないか……」

 

 

腕時計を確認して、呟き歩みを速める。

今、俺は駅前へと急いでいた。

今日は、すずかとデートする予定で待ち合わせ。

忍さんとすずかは、二週間前に退院して今は普通に生活している。本当なら、月村家から一緒に出掛けたかったのだが……すずかが、いつまでも一人で町を歩けないのはダメになるからと言い出したからだ。

食い下がったら、双夜の使い魔も近くにいるからと言われ、渋々そのお願いを聞き入れた。

すずかには内緒でサーチャーを付けたんだが、途中でプツリと途絶えてしまう。最後に見えた映像からすると、双夜の使い魔に食われたらしい。と、言うことだけわかっている。

実際、あの使い魔は何でも口に入れるらしい。

たまーに、人間サイズのモノまでペロリと飲み込むと聞いた時は、余りの疑問度合いに実践して見せてくれと頼んでしまったぐらいだ。あの、手の平サイズの生き物が人間サイズのモノをペロリと一口で呑み込むとか訳がわからない。

なんで、そんな機能を付けたのかと聞けば『合体したかった』と良くわからない返答があった。なんでも、合体するロボットを見て自分もやってみたくなったとか。

だからって、ペロリと一口合体は駄目だろう。

余りにも疑問だったので、合体する瞬間を見せて貰った。

はっきり言って、突如大きくなったヌイグルミに幼児が食われた的なモノで見てる方は恐怖とかそんな感じにさせてくれる。容姿的には、幼子にキグルミ的なパジャマを着せてみた様な姿になっただけだった。

それで、属性が変化するとか聞いた時には『はぁ?』と聞き返してしまった訳だが。それに対し、双夜は数体のフレールくんを呼び出し実践して見せてくれた。

まあ、確かに属性(?)が変化していたが……色々と疑問は尽きない。

 

 

「聞いたら、別の返答がありそうだ」

 

 

空気に融ける様に消えるタイプと、そうでないタイプがいるらしい。納得は行かないが、色々と必要だったとのこと。

ある意味、何でも屋みたいな所があるのでそういう立場だったのだろうと予測する。どもまでも、損な役回りだ。

角を曲がり、駅前の大通りへと進んで行く。

 

 

「…………」

 

 

駅前通りに出て周囲を見回し、すずかの姿を探すのだが何時もの場所に彼女の姿は無かった。

すずかが先に出たので、先に着いていないとおかしいのだけど彼女の姿は見当たらない。

もしかしたら、本屋にでも寄っているのかもと踵を返す。

確か、駅前にある本屋からは待ち合わせ場所が見えるスポットがあったはずだ。と、言い様の無い不安に煽られながら、俺は近くの本屋へと足を向ける。

すると、何かフニッとした柔らかなモノが顔に貼り付いた。

視線を動かすが、青い空と駅前の通りが見えるだけでおかしな所はない。なのに、ソレはしっかりと俺の顔に貼り付いた感触を伝えて来ていた。

 

 

「なんだ?」

 

 

「きゅ、きゅきゅっ!」

 

 

ソレは、見えないのに俺の聴覚へと声だけを伝えて来る。

それだけで、俺の知識は該当する存在を上げて来た。

『フレールくん』と言う名の、蜥蜴をデフォルメしたヌイグルミの様な双夜の使い魔が俺の顔に貼り付いているらしい。

 

 

「人気の無い場所に行けば良いのか?」

 

 

「きゅ!」

 

 

少しだけ、周囲を見回してすずかが来てない事を確認した俺は、そのヘンテコリンな使い魔の指示に従って人気の無い場所へと移動する。すると、数匹のフレールくんが集まっていた。何をしているのかはわからないが、アスファルトに付いた真新しいブレーキ痕に群がっている。

顔に貼り付いていたフレールくんが姿を現す。

そして、空中ディスプレイを展開するとある画像を流し始める。便利だな……等と感想を思っていると、まず先に映ったのはすずかの姿だった。

すずかは、楽しそうに道を歩き駅前へと進んで行く。

そこへ、黒のワンボックスカーが突っ込んできて急停止。

 

 

「………………なっ!?」

 

 

中から出てきたのは、アースラで拘束中のヴェルハルド・ヴォーレンだ。驚くすずかに、ニヤリと邪悪な笑みを見せると無理矢理車に連れ込みそのまま走り去って行った。

 

 

「どう言うことだ!?何故、ヴェルハルド・ヴォーレンが、すずかを連れて行くんだ!?」

 

 

「きゅぅうぅぅ~……」

 

 

フレールくんは、頭を抱えてくるくる回っている。

そして、ピタリと止まったフレールくんはピッと空を指し示した。それに釣られる形で、フレールくんが指し示した方向に視線を向ける。しかし、何もない青空が広がっていた。

しばらく考えて、あることに気が付いた俺は悲しい顔で落ち込んでいるフレールくんが言いたい事を理解する。

 

 

「アースラに行けば良いんだな?」

 

 

そう聞いた瞬間、フレールくんがパァア!!と笑顔になって「きゅっきゅっ、きゅきゅっ!」と俺の周囲を飛び回った。

どうやら、『アースラに行け』で正解かいだったらしい。

状況把握できないまま、兎にも角にま俺はアースラに向かう事にした。まず俺は、クロノに連絡を取ることにする。

しかし、地球圏内にいないのか忙しいのか通信に出てくれない。その次に、連絡を入れたのはエイミィさんだ。

それでも、やはり出ない。アースラに何かあった様で、順をおってアースラクルーの知り合いに連絡を入れる。

中々繋がらず、繋がったと思ったら切れたりして、イライラしながらも電波状況(?)が悪いのかと何度も繰り返して……最終的にランディとの通信に成功した。

しかし、通信画面に映ったランディは頭に包帯を巻いていて、少し顔色が悪く目の下には隈が浮かんでいる。微妙に憔悴しているようにも見えて、不安が加速していく。

 

 

「何があった!?」

 

 

『拘束中の囚人が逃げ出しまして……今、負傷者やら何やらでてんてこ舞い何ですよ!!』

 

 

拘束中の囚人が逃げ出した!?やはり、映像のヴェルハルド・ヴォーレンは間違いとかでは無かったらしい。

アースラ内部では、逃げ出す際に暴れたヴェルハルド・ヴォーレンのせいで負傷者まで出てしまった様だ。制圧に向かった武装隊から三人の死者が出たらしい。

バリアジャケットを身に纏っていたにも関わらず、何処に隠し持っていたのか不明だが銃で撃たれて倒れたという事だった。

 

 

「BJを貫通しうる武器を持っているのか!?」

 

 

『わかりません。ただ、防御魔法展開も確認されたらしくて……BJを含む防御魔法も貫通されたのではないかと……』

 

 

それは、最悪の報告だった。

奴の能力で、どうやって転送魔法を使ったのかわからないが、今奴は自由の身で逃走中との事だ。様々な考えが思い浮かぶが、情報が少な過ぎて考えが纏まらない。

今わかっている事は、護送予定の犯罪者が逃げ出したあげく……またしても、被害者であるすずかを拉致って行方不明っていう事だ。

 

 

『ーーーーー』

 

 

ランディが、まだ何か言っている様だが俺の耳には全く届かなかった。頭が真っ白になって、周囲の音も景色も入って来なくなる。まだ、何も終わってもいないのに心の奥底から沸き出してくるのは後悔という念。何故、一人で屋敷を出したのかとか、無理矢理にでも着いていくべきだったとかの思いだ。そして、今すずかが置かれている状況が更に俺を不安にさせていく。

 

 

『《聞け!》この馬鹿っ!!』

 

 

精神を無理矢理引き戻される様な感覚を得て、俺は繋ぎっぱなしの通信に視線を戻す。すると、いつの間にかランディではなく如月双夜が画面に映っていた。

 

 

『正気に戻ったか?』

 

 

「なんで……アースラに!?」

 

 

『事が起きた時にハラウオン家にいたんだよ!で、負傷者の救助と輸血パックの在庫が心許ないって言うから手術を手伝ってたんだ……文句あるか?』

 

 

手術を手伝ったって……このチビッ子、そんなこともできるのか。っていうか……輸血パックの不足が、何故チビッ子の手伝いに繋がるのか今一わからない。

 

 

『それよりも、月村すずかがヴェルハルド・ヴォーレンに拉致られたらしいな?』

 

『なんだって!?』

 

『凍真。こちらには上がらずに、ヴェルハルド・ヴォーレンを追ってくれるか?』

 

『ちょっと待て!勝手に決めないでくれないか!?』

 

「だが、場所が……」

 

『おい!』

 

『場所に関しては、フレールくんに聞いてくれ。まだ、追跡中のようではあるが……直ぐに、割れるだろう』

 

『それなら、こちらにも情報を……』

 

「お前の使い魔って、本当に便利だな……」

 

『人の話を……聞いて、くれ……』←(涙目)

 

『それ専用に作っているのに……使えなかったら、意味無いだろう?』

 

 

確かに、その通りだった。

何故か、このチビッ子には時空管理局という後ろ楯を得た時以上の頼もしさがある。むしろ、管理局を辞めてこのチビッ子の下に就きたくなるくらいだ。

 

 

『待ってくれ!そう簡単に、言わないでくれないか!?』

 

 

先程から、俺達の会話に割り込もうとしていたクロノが漸く画面範囲に入って来るが、それを押し退けてチビッ子は「邪魔」と邪険にクロノを扱っていた。

 

 

『別に待つのは構わないが……ヴェルハルド・ヴォーレンが、月村すずかに何をするかわかっているのか?間違いなく、自分の性欲を処理する為だけに弄ぶんだぞ?前回は、皇帝の『魅了の魔眼』で洗脳されてたから精神的に軽くなっていたけど……今回は、正気のままで犯されるんだ。できうる限り、スピーディーに救出しないと……下手すれば、すずかが死ぬぞ?』

 

 

『そんな事はわかっている!』

 

 

クロノとチビッ子が、言い争いを始めた。

何となく、この争いは長引きそうである。

 

 

「お待たせしました」

 

 

「え?」

 

 

振り返れば、銀髪と黒髪の青年が立っていた。

アニメの世界だとか、造形美なんて言葉が霞む位の美しい顔立ちの青年達である。話し掛けられた俺に、こんなきらびやかな知人はいない。誰かと、間違っているのでは……と考えて、彼らの口からチビッ子の名前が出たところで使い魔の方々なのだと理解する。

 

 

「今の内に行ってください」

 

 

一人が、俺に変化して通信画面の前に立つ。

そして、何かアクセサリーの様なものを取り出し、俺の迦楼羅にコツンと重ね合わせる。

それだけで、通信回線が乗っ取られてしまった。

 

 

「では、護武運を……」

 

 

「凍真様は、こちらへ……先程、フレールくんから報告がありました。相手の居城は、確認していますので今すぐ乗り込みすずか様を救出してください。我々も、最大限バックアップさせていただきます!」

 

 

銀髪の使い魔に案内されて、俺は先にすずかが待つ敵の居城へと行く事になった。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

……

 

 

 

 

使い魔が、運転する車に乗って数分。

俺達は、海鳴市の港……倉庫街へと来ていた。

そこで、乗り捨てられて居る黒のワンボックスカーを発見し、周囲の探索をフレールくんに頼んで隠れ潜んでいる。

本当なら、セットアップして早々に乗り込んでいるのだが、チビッ子からの追加報告が俺達に二の足を踏ませていた。

 

 

「……つまり、アイツが手にした武器に奴の神様特典である魔力無効化が付与されて、プロテクションもBJも無力化されてしまうと!?」

 

 

「はい。マスターが、映像を確認した感じでは……その可能性が、一番高いとの事でした……」

 

 

こんなところで、足止めを食らっている時間は無いのだが、ちゃんとした作戦が無いと殺られてしまう可能性が大だ。

通信画面の向こう側で、バインドによって亀甲縛りにされているクロノを背景に俺とチビッ子は作戦を練っていた。

 

 

『お前が召喚できる青龍に、レーザー級のブレスとか無いのか?こう……波動砲的な……』

 

 

だいたい、チビッ子の言いたいことがわかって更に頭を悩ませる。青龍にそんな技があったとして、式神に何をさせるつもりなのか……そして、その後の事が予想出来て鬱だ。

 

 

「マスター。防弾コートを使ってもよろしいのでは?」

 

 

『んー。ああ、ハルコンの……なら、一式渡してやれ。BJ展開無しで、ヘルメットを被った方が良いかも知れんが……』

 

 

「……ハルコン?」

 

 

「特殊金属です。オリハルコンという、架空金属はご存知ですよね?それを特殊な方法で加工すると、ハルコンとハオルコンと呼ばれる金属の二種類が精製できます。ああ。名前の方は例によって、【鮮血の】様が付けられました」

 

 

ハルコンの特性は、大剣でもうぶ毛の様に軽く丈夫だとか。

高々、0.5㎜でも銃弾を完全にシャットアウトし、一㎝もあればミサイルを防ぐと言うから頭がおかしい。三㎝で、シェルターにすらなるんだそうだ。核兵器や放射能も防ぐと言われても、実感すら湧かなかった。

 

 

「架空金属なんだろう!?加工って、どういう事だよ!?」

 

 

「そうですね……異端技術の中でも、もっともイカれた技術ですね。空間を歪めたり、空間断裂をもってでなければ破壊できない金属です……」

 

 

なんだそりゃ……もう、架空云々よりもそっちの特性の方が気になるわ。最早、最強の金属じゃねぇか。

つーか、この使い魔の中で常識ってどうなってんの?

『そうですね』って、架空って言葉の意味知ってる?

現実に存在しない空想の産物って事だよ!?

ハオルコンの方は、ハルコンの特性に似たり寄ったりだけど加工しやすく超重いんだそうだ。一平方㎝で、100㎏あるとか……どんだけだ!?つーか、何に使っていやがる!?

 

疑問は果てしなく、技術はキチガッていやがった。

 

そして、そんなキチガイ防弾コートと防弾ズボンを着込み、特殊加工ハルコンバイザーと同じくハルコンシールドを持たされる。これで、頭を守れということらしい。着心地としては、伸び縮みしないサラッとした衣服だ。普通に柔らかいし、これ本当に金属!?みたいな感じの良い着心地である。

俺は、ヴェルハルド・ヴォーレンが隠れているという倉庫へと突入した。迦楼羅のみを展開して、奴が召喚しているであろう自動人形戦に備える。

目で見える範囲に、自動人形は数体程。

物影からは、ワラワラと自動人形が現れて襲い来る。

そこに、待ち伏せや戦術的な動きは無いのでヴェルハルド・ヴォーレンは奥の部屋でお楽しみらしい。

そう考えた瞬間、頭に血が登り邪魔をする自動人形が煩わしく思えてイライラしてくる。一体一体、相手するのが面倒になりこのまま捨てて置いてすずかの元へ駆け付けたくなってしまう。だが、今この場にいるのは俺とチビッ子の使い魔の二人だけだ。退路を考えず、先を急いで仕損じる訳にもいかない。

 

 

「くっ……」

 

 

自動人形の重い一撃を防いで、頭に登っていた血をゆっくりと下げていく。剣を振るいながら、息を整え大きく深呼吸する。自分でも、割りと器用な事をしている自覚はあるが……チビッ子との地獄の特訓よりかはマシだ。

 

 

「だからっ!水中じゃあ、人間は息ができないんだよっ!」

 

 

重りをくくりつけられ、水槽に放り込まれて息を整えろとかゆっくり深呼吸しろとか……アホか。死ぬわ!

実際は、周囲の霊気を感じて集束するように己の内に取り込む修行だった訳だが……先に言って置いてくれないとわからないって話だ。まあ、お陰で霊力の回復率が上がってきたけど……納得いかない。

叫ぶ声と共に、自動人形を真っ二つに切り捨てる。

基本的に、デバイスの剣の部分は模造刀になっていてこんな風にバッサバッサ自動人形の様な硬いモノを切り裂いたりはできない。が、チビッ子の魔力操作技術は俺にこんな事も可能にしてくれた。

迦楼羅に纏わせた魔力を、刃の様に鋭く尖らせて敵の表面に当てた瞬間に膨張。切り込みが入った所で、一気に振り切るという訓練を一週間丸っと訓練させられた。

その休憩の合間に、水槽に放り込まれたり、瞬動術だとか言って衝撃吸収マットに体当たりとか……酷い目に。

まあ、そのお陰で多少の状況には動じなくなってきたくらいだ。戦いながら、回想を終えた俺は冷静になったものの、気分が下がってしまっていた。下がったと言っても、すずかを助け出すまではヴェルハルド・ヴォーレンを殺る気満々ではある。だが、九体目を切り払った所で一度剣を下げた。

 

 

「終わりましたね」

 

 

振り返って見れば、二十体程の自動人形がバラバラに切り捨てられている。流石、チビッ子の使い魔。速い上に強い。

 

 

「すずかは……」

 

 

「この上ですね……ああ。大丈夫ですよ?この辺の音は、上に聞こえない様に無音結界で防いでいましたので……」

 

 

「……………………」

 

 

いや、本当……コイツら、優秀だわ。

その手際と行動力に、惚れ惚れしてしまう。

 

 

「中の状況は、わかるか?」

 

 

「はい。偵察フレールくんと繋がっています。見ますか?」

 

 

空中ディスプレイを展開して、無遠慮にこちらへと向けて来る使い魔に少し引く。敵に拐われた被害者が、俺の恋人だとわかっているのか疑問だ。これを見て、俺がブチ切れたりするとか思ったりしないのだろうか?

覚悟を決めて、その画面を覗き込んだ。

 

 

「……………………何してんだ?コイツ……」

 

 

「抵抗されて、なんとか抑え込んで縛り上げた所……って、感じですかね?」

 

 

「ああ。成る程……………………すずかが、拐われたのって何時だ?」

 

 

「貴方が駅前に到着する数分前ですね。タイムラグは、それ程大きくは無いですよ?」

 

 

タイムラグが、ほぼ無いという事だから……俺達が足踏みしている間と、自動人形と戦っている間ずっとすずかを拘束する為に抑え込んでいた事になる。

 

 

「もしかして、コイツ……弱いの?」

 

 

「魔力無効化(付与)と無機物召喚……魔法生物や魔力に関わるモノは呼べないみたいですから……後一つ、どんな特典があるかわかったモノではありませんが……頑張って下さい」

 

 

「魔力無効化で、他の特典はダメになっているんじゃ無かったのか?」

 

 

「たまーに、ウチのマスター……面倒になったら、嘘言いますよ?捏造したりしますし……」

 

 

「……………………」

 

 

だったら、あの強さは何だったのだろう?

普通に俺と同レベル……もしくは、それ以上の実力があるように見えた。もしかすると、皇也の様に戦闘に関する特典なのかもしれない。様々な予想が、頭の中を通り過ぎて行く。

しかし、どれも違う様でその通りな気もして核心出来るようなネタが思い浮かばなかった。

これが、生前の世界であるならパパッと思い付いたかもしれない。だが、この状況で思い出せるスキルで魔力関係無く……戦闘に関する特典……それだけのキーワードでは、数が多すぎて絞り込めそうに無かった。

 

 

「とりあえず、突撃しましょう。違法薬物を使われてしまえば、マスターのお手を取らせる事にもなります」

 

 

「……心配なのか?」

 

 

「ええ。ですが、マスターには内密にお願いします」

 

 

「…………何故?」

 

 

「……………………色々とありますので……先攻します!」

 

 

銀髪の青年が、先に扉を蹴破って中に突撃する。

その後を追って中に入ると、使い魔の腕がヴェルハルド・ヴォーレンに当たる前に消滅してしまった所だった。

 

 

「くっ……やはり、我々では……」

 

 

カランッ!と足元で、金属音が鳴ったかと思いきやヴェルハルド・ヴォーレンの顎を、何かが殴り飛ばし尻餅を着かせた。かなり、鈍い音がしたような気もする。

銀髪の使い魔に目を向ければ、鉄パイプを手にしていた。

成る程。魔力を一切使わない、鉄パイプならヴェルハルド・ヴォーレンにダメージを叩き込める訳だ。っていうか、魔法戦では絶大な効果を発揮する魔力無効化だが……鉄パイプ等の打撃戦では、むしろ命の危険性があるのでは?

地面をサッと見て、迦楼羅をアクセサリーに戻した俺は鉄パイプを拾い上げた。

 

 

「使い魔、自動人形は任せた!俺は、ヴェルハルド・ヴォーレンを殺る!!」

 

 

「了解です!」

 

 

サッと立ち位置を入れ替わり、俺は鉄パイプでヴェルハルド・ヴォーレンに飛び掛かる。前回と同じ様に……だけど、チビッ子に教えて貰った技術を使って鉄パイプに霊力を纏わせて刃とした。

あれから三週間、ミッチリとしたスケジュールにより俺は霊力を成長させるトレーニングをチビッ子から受けている。

前回のような、霊力切れで負けかけるなんて不様な真似はしたくなかったからだ。

チビッ子が言うには、魔力を成長させるやり方と霊力を成長させるやり方が全く異なると言っていた。そしてそれは、その通りだった訳である。トレーニングを受けて、俺はその違いを理解した訳だが……そのチビッ子のトレーニングによって、俺の霊力は成長し続けていた。ついでに、霊力をコントロールする技術も飛躍的に向上している。むしろ、魔力よりも霊力の方がコントロールしやすい気もするくらいだ。

 

 

「また、お前かっ!!」

 

 

俺を見たヴェルハルド・ヴォーレンの顔が醜く歪む。

お楽しみを邪魔されたからか、俺をギロリと睨み殺気を向けて来る。だが、チビッ子の背筋を凍らせる様な殺気に比べればチョロイレベルの殺気だ。問題外である。

 

 

「くっ!このぉっ!!」

 

 

前回と違って、何故かヴェルハルド・ヴォーレンは鈍かった。いや、もしかしたらそういう風に見せた作戦なのかもしれない。慎重に相手の出方を見つつ、鉄パイプを腕や足に当てて行く。その際、霊力の刃で相手の霊体を傷付けておく。

コイツは、霊力なんて代物事態を知らないだろうから出来る取って置きの秘策。(考えたのは、チビッ子だけど……)

何たって、ここは【魔法少女リリカルなのは】の世界。

魔力がモノを言う、そういう前提の世界だと思い込んでいるはずだ。だから、霊力の刃で相手の霊体を傷付けて起きる痛みが何であるかなんて理解できない。可能性があるとしたら、魔力ダメージを受けている的な勘違いをしているかもしれないがそれはそれで俺的には儲けものだ。

霊体が傷付いた事により、奴は痛みを感じて目を向ける。

たけど、自分の肉体が傷付いて無いのを見て安心し……だがしかし、激痛を感じているから得体の知れないモノを見るような目を俺に向け始めていた。

 

 

「凍真様!すずか様を確保しました!!」

 

 

「何ぃ!?」

 

 

戦闘中に背後を振り返り、すずかを確認するヴェルハルド・ヴォーレン。本当にコイツ、前回戦ったヴェルハルド・ヴォーレンと同一人物なのかわからなくなってきた。

だが、油断してくれるというのなら最大のおもてなしをするまでだ。全力で鉄パイプを下から上へと振り上げる。

狙うは一点。股間にあるであろう、男最大の弱点を穿つ!

イメージされる擬音は、『きぃーーーーん!』。

十分な手応えと共に、ヴェルハルド・ヴォーレンの体が傾斜していく。それを逃さず、俺は更に踏み込む。

 

 

「獲った!!」

 

 

そう思った瞬間、俺は壁に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 




続く!!
時空管理局の警備態勢wwwwww
マジ、ザル。魔法に頼りきり良くないwwwww

ヴェルハルド・ヴォーレンの特典は、魔力無効化。と無機物召喚(回数制限)。それから、戦闘能力の上乗せ。正確には、相手の全能力を自分のステータスに上乗せするという特典だ。

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