異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか   作:のろし

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異常がどうした。誰が相手でも私は普通に怒る。

 黒神めだかには『真骨頂』という物がある、と人吉君は語る。曰く、その壱「上から目線性善説」、その弐「ツンデレ」、その参「行きすぎ愛情表現」と、それが真骨頂なのか?と疑いたくなるようなものなのだが、その四を聞いた時、私は「ああ、やっぱコイツ人間じゃねえわ」という結論に至った。黒神めだかの真骨頂その四。それまでの真骨頂はこれを登場させるためのただの数合わせなのではないかと思うほど、人間離れした内容。曰く、「乱神モード」。髪が白くなるのが特徴で、会長様が激昂した時に現れる状態。全ての身体能力が跳ねあがり、怒りにまかせて暴力的になる。また、気休め程度ではあるものの、怪我の治りも早くなるのだとか。

 

「こうなったらもう誰もめだかちゃんを止められねえ。雲仙、お前終わったぜ」

 

 いやいや、終わる終わらないの問題以前に、まずは止める必要があるだろう。というかなんなんだ、私の言葉をガン無視して説明モードに入りやがって。そんなに私の疑問はおかしかったのか?そんなことを考えている間に、喧嘩は激化し、某龍玉集めファンタジー漫画の無印編中盤のような状況になっていた。正直無視して生徒会室の修繕に戻りたいところ……ん?

 

「…なあ、今日処理した書類の類は、既に安全な場所へ保管していたのか?」

 

「んなわけねえだろ。そんなことする暇もなかった……って、おい、海路口!どこ行く気だ!?」

 

「そんなの決まってる。処理がもう少しで済んだ書類全部燃やしやがって……あの餓鬼、一回ぶちのめしてやる」

 

「それはめだかちゃんの役割だか…なんでもない、なんでもないからこっちにその目を向けるな!!」

 

 ふむ、会長様を止めないとアイツをぶちのめすことも、謝罪、後に強制労働させることもできないのだな。よくわかった。

 

「じゃあ、会長様を止めてくる」

 

「はぁ!?一体どうするってんだ、あの状態じゃ俺でも止められねえかも知れねえってのに…」

 

「うん?怒りには甘いものだよ。というわけで、チョコレートでも持っていくか」

 

 バカじゃねえのか!?と言う人吉君の言葉など気にも留めず、私はそのまま校舎に入る。…ぬ?会長様の動きが止まっているようだが…?

 

「その名も『アリアドネ』!この防護服『白虎』を縫製してんのと同じ糸だぜ!」

 

 確かに何やら細い糸のようなものが光っているのが見えた。どうやら先ほどの爆発でむき出しになった鉄骨に引っ掛けているようだ。

 

「これを切るなんてことは不可能だぜ!勝負あったな、黒神!」

 

「おーい、会長様。とりあえず怒っているのだったらチョコでも食べて落ち着け。ほれ、あーん」

 

「もがッ!?」

 

「所詮怒りなんてその場限りの感情なのだから、いつまでも持続させたら糖分が足りなくなるだろう?それに、態々動こうとするんじゃない」

 

「さっきから一体何なんだよ、てめぇは。アリアドネにも引っかかってねえし、一体どういうこった!?」

 

 雲仙先輩が何やらわめいているが、気にしない。会長様に絡まっている糸がどこから伸びているのか確認し、元となっているところへスーパーボールを弾く。うん、命中。

 

「な!?」

 

「会長様、とりあえず怒りは収まったか?人吉君達は無事であるし、貴女にはこの後の書類の再作成に尽力してもらわねばならん。見る限りにおいては擦過傷だけにも思えるが、骨やら内臓にはかなりダメージがあるだろう?ここは私に任せろ。なに、所詮は子どもを躾けるだけだ、そんなに時間はかからん」

 

「…四方寄?」

 

「さて…、どうにもこのチビッ子は選民意識が強いらしい。ただの分別を選別であると勘違いしているなら、十三組(ジュウサン)というモノがどれほどちっぽけなものか、彼曰く普通(ノーマル)な私が見せつけてやるとしよう」

 

 と、口上が終わらないうちに此方へ飛びかかって来た雲仙先輩。どうやらチビッ子発言か選民意識への暴言、十三組をバカにされたことのどれかにキレてしまったらしい。まったくもってお子チャマである。

 

 向かってきた雲仙先輩を右手で掴み、その場に叩きつける。そんなに驚くことでもないだろうに、目を白黒させる会長様と正役員。

 

「私も当然ながら、会長様のような奴が万全な状態のときに殴ろうとは思わない。だがね、最早コレは弱っている。さっき二発も会長様の怒りにまかせた拳を受けてるのだから当然だな。つまり、ノーマルでも状況次第でアブノーマルに勝てるってことだ。そして、今まさにその状況である、というわけ」

 

 あいた口がふさがらない様子の四人と、なにをされたのかいまいちよくわかっていない様子の雲仙先輩。ああ、コレだから理解力の乏しい奴らは困る。

 

「さて、雲仙先輩。いや、冥利君とでも言っておこうか?君が悪戯をした所為で、お姉ちゃんたちは仕事が増えてしまったんだ。それを私はとっても怒っている。別に君が悪戯したこと自体は構わない。けどね、その悪戯の結果、学園の風紀や平穏を脅かす以上、生徒会の臨時役員として見過ごすわけにはいかないし、何より…私の仕事を無駄にしやがって。ぶち殺すぞ、餓鬼」

 

「がッ…!?」

 

「仕事を増やしてんじゃねえよ。テメエが学園の風紀云々言ってる間にな、こちとらその学園を上手く回すために頑張ってんだ。それがなんだ?相容れないからって会長様に挑むならまだしも、私まで巻き添えにしやがって。ピーピーギャーギャーと喧しく邪魔して、なにが風紀委員の委員長様だ、テメエのせいで風紀が乱れてんだよ、そんなふざけた委員長、即刻辞めちまえ。いいか、餓鬼。お前が今すぐできることはな、その場で土下座して謝って、少しでも元の状態に戻すための手伝いだ。それが分かってんのか、あ!?」

 

「ぎぃッ!?」

 

「さっさと謝ればいいんだよ、その場で土下座でもしろってんだ。仮にも組織の長が、その組織の職権濫用してんじゃねえよ。ほら、別に会長様に謝れなんて言わねえよ、私に謝れ」

 

「ごめ…、なさ…」

 

「よし、謝ったならいい。では雲仙先輩、貴方が焼失させた書類の再作成と、決済の手伝いをお願いしますね?」

 

 …ん?どうしたんだみんな、そんなにいきなりずっこけて。

 

 

 

 

 

「…で、この状況は一体どういうことなんだ?」

 

「よくわからないね。海路口さんが一体どうしてそんな状況にあるのか、俺には理解できない」

 

「俺にも無理。多分めだかちゃんでも無理なんじゃねえのか?」

 

「…いいなあ、雲仙先輩」

 

「なあ、四方寄、貴様の膝というのはそんなに気持ちのいいものなのか?できれば私も上に座りたいのだが」

 

 現状。雲仙先輩が私の膝の上で書類仕事をしている、以上。…いや、そういうしかないのだから、疑問は挟まないでほしい。私も十分チンプンカンプンなのだ。

 

「女性組二人の不穏な発言はむしろバッチ来いだとして、そろそろ雲仙先輩は離れてくれませんか?」

 

「えー?いいじゃねえか、ここ気に入ったんだから。柔らけぇし、頭を後ろにやると丁度いいところに丁度いいサイズの胸が…」

 

「餓鬼、さっさと降りろ」

 

「っと、悪ィワリィ。じゃあ、冥利君って言ってくれたら降りてやるよ」

 

「さっさと降りろ、冥利君」

 

「…マジで言っちまった。そんなに俺が座ってんの嫌か…?」

 

いやというか、邪魔である。書類仕事をしてくれているのは良いのだが、私が作業できないだろう。その通りに伝えると、じゃあ終わったらもっかいな!と元気よく私から降りて、別の椅子に座り作業を再開する雲仙先輩。一体何がどうなってこんなに懐かれたのか。それと喜界島さん、会長様。何故にあなた達は私の方へにじり寄ってるのか。

 

「…さっさと仕事を終わらせねばならんのだが?この後鬼瀬ちゃんと不知火さんとで喫茶店デートをする予定なのでな」

 

「わ、わたしも行っていい?」

 

「ぬ?財布と相談してみるから少し待ってくれ…うむ、一緒に行こうか」

 

「な、なあ、四方寄、私も行っても」

 

「会長様、貴女はまだまだ仕事があるのだろう?私と喜界島さんの仕事はあと少しで終わるが、会長様はどうなんだ?」

 

「ぬ…まだ途中だ。仕方あるまい、諦めるか…」

 

「そうか、なら会長様の決済印が必要ない書類をよこせ。その分については手伝ってやる。早く終わらせなければ喫茶店にもいけない」

 

「よ、四方寄……!」

 

「…なあ、人吉クン?」

 

「…何すか?阿久根先輩」

 

「気がつかないうちに女子組がとっても仲良くなってないかな?そして俺達が思いっきり忘れ去られてる気が…」

 

「…気のせい、だといいっすね…」

 

 その後、会長様が怪我をしていたことを思い出し、ダダをこねる会長様を病院に行ってからだ、と押さえつけ、計四人で病院まで連れて行ったわけだが、そんな日常を読者諸氏は期待していないだろうから、割愛させていただく。

 

 

 

 

 

 

「雲仙君がしばらくの間戦線離脱ですか…コレは少し困ったことですねぇ。『十三組の十三人』は一人もかけてはいけないというのに。これでは私の計画が破綻してしまいますよ。ねぇ、どうすればいいと思いますか?袖ちゃん」

 

 

「どうもこうも、別に悩む必要なんかないんだよ、おじいちゃん…いや、箱庭学園理事長、不知火袴総帥!困った時には迷わず選ばず、目安箱に投書すればいいんだよ!」

 

「それもそうですねぇ。でしたら、早速お手紙を書くとしましょうか。…ところで、袖ちゃんと最近とても仲のいい普通(ノーマル)の子がいるそうじゃないですか。しかも、『私ですら気付かずに入れてしまった』B型の子だとか。普通科に所属してこそいますが、もしかしてその子も…」

 

「…コレが善吉の事なら、アイツは普通(ノーマル)だ!っていうかもしれないけどね。四方寄は正直、あたしでも分かんないかな♪もしかしたら、普通でも特別でも異常でも、なんでもないのかも知れないですよ☆」

 

「それはそれは。その人吉君という子にも若干興味が出ましたが、彼女にはそれ以上に、いや、異常なまでに興味をひかれてしまいましたねえ…。さて、それでは彼女にも試してもらうとしましょうか、『サイコロ占い』を!」

 

 

 

「クシュンッ!…なんだろう、誰かが噂でもしているのか?しかも、相当悪質な勧誘を受ける類のいやな予感までするし…」

 

「大丈夫?四方寄。なんなら今日はやめにしても…」

 

「そうだよ、海路口。別に喫茶店は今度でもいけるから…」

 

「いや、言い出したのは私だからな。それに、二人も、いや、この後三人になるか。三人もかわいい女の子を連れてデートが出来るなんて贅沢、体調不良程度でフイにしてたまるか」

 

「「………」」

 

「やーやー、お待たせ☆…って、アレ?どうしたのかな、そんな同性愛者から面と向かって告白されたみたいな顔をして♪」

 

「不知火さん。時間丁度なあたり、君も結構真面目だね。さて、それじゃ行こうか」

 

「「……ハァ」」

 

「~~~♪」

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