異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか 作:のろし
読者諸氏にちょっとしたクイズを出そうと思う。ああ、私がそういうことを言い出す碌な事がないとか言ってページを閉じようとしないでほしい。今回は本当に簡単なクイズなんだ。いや、問題の難易度ではなく、本当に答えが単純過ぎて、どこぞのテンプレな某少年誌掲載バトル友情育成恋愛コメディーシリアスものみたいな展開だというだけだが。うん、自分で言っていてそんな漫画があるのか?とか思ってしまったがそれはどうでもいい。前置きが長いとページを閉じそうになっている読者もいるだろうから、そろそろ本題に入ろうと思う。さて、クエスチョンだ。私は一体どこに居て、なにをしているでしょうか――――?
「答え。何故か知らないが生徒会室にて私を馬鹿げた理由でリコールした役立たずな生徒会諸君に拘束されている」
「「「「…………」」」」
「で、さっさと用件を話してくれないか?私はもうすでに生徒会長をお役御免になり、生徒会の乗っ取りを謀ろうとするも失敗して三日天下のごとく権威も人望も地の底へ落ちた一般生徒になっているんだが?…ああ、まだ敗戦処理が残っていたか。未だ残っている作業をやらせるつもりだったんだな。それならそうと早く言えば拘束せずとも私は喜んでやるぞ?お前たちと縁を切るためならな」
「どれだけ攻撃的に言葉を選べられるんだよ!?」
人吉君の反応はあくまで普通だな。だが、残りの三人は非常に厳しい表情をしている。
「で、さっさと用件を話してくれないか?あまりにも馬鹿げた内容なら、私はさっさと部活へ行きたいわけだが」
「………まあ、待て。海路口同級生。時間をとらせてすまないとは思うが、この間の戦挙、『過負荷』を下してくれたことに礼を言おうと思う。だが、何故奴らは未だに学校を去らん?」
「生徒会選挙に敗北すると退学せねばならないという条項などなかったと記憶しているが?」
「そういう事を言いたいのではない!あのように危険な存在を、この学校で野放しにして良いと……!」
ああ、やはり『過負荷』への悪感情は抜けていないのか。当然と言えば当然なのだが。
「つまり、『あんな化け物、さっさと私が統治する学園から追い出したい』と言いたいわけだな。じゃあ逆に、私は会長様を筆頭とする十三組生徒全員を 退学処分に処すよう、理事会に嘆願をするが、良いのか?」
「な!?」
「貴女が言っているのは、つまりはそういうことだ。私と彼らが戦ったのはあくまでも解職請求をされたからであり、生徒会役員の座をかけたものだ。負けた側が学園を去るなどという内容は盛り込まれておらんし、トータルでは勝ったが現役員の中で彼らに勝ったのは人吉君だけだろう?自分が勝ったわけでもない癖に偉そうに負けた側は学校を去れとでも?」
「だ、だが……!」
「第一、原因を作りだしたのも会長様、貴女の方だろうが。更に言えば、現在の『過負荷』が所属しているマイナス十三組は、既に教室も用意され、尚且つ理事会からの叱責という罰則もちゃんと受けている。これ以上を望むのであれば………私は再度貴女に解職請求を突き付けるぞ?」
「まあ、待ってくれよ海路口。めだかちゃんは確かにおかしなことを言ってしまった。それはめだかちゃんに代わって俺が謝罪する」
「善吉!?」
「人吉クン!?」
…ほう。
「めだかちゃんも、言い過ぎだぜ?球磨川達は元々俺らが日之影先輩を焚きつけちまったから動き出したようなもんだ。それに、先代の生徒会で既に決着はついてるし、その生徒会に所属していたのは俺らに他ならないだろう?」
「何を言ってるんだ、人吉クン!球磨川さんの恐ろしさを忘れたとは―――!」
「言いませんよ。だけど、この間会ったアイツは、どう見ても普通の男子だった。あれも海路口のおかげなんだろ?」
「私はそこで『いや、アイツらが頑張ったからだ』なんて事は言わない。私の手柄は私の手柄として評価するからな。結果的には私のおかげだ」
((((嫌な奴………))))
この場に居る全員の意見が一致している気がするのは気のせいだろうか。
「…もしそうだとしても、彼の能力が脅威である事は間違いない。何らかの措置をとらないと、とてもじゃないが一般生徒に安心しろなんて言えないよ」
「だったら、良い方法があるにはある。まあ、禊が了承すればだが」
「なに?」
「簡単なことだ。つまり――――――」
「というわけで、四方寄ちゃんのお願いだからと快く了承しました、球磨川禊でっす!」
全員がポカーン、という表情をしている。思わず写メをしてしまったが、あとで不知火さんに見せるとしよう。
「で、なんでそんなに驚いてるんだ?会長様は元々敵対関係にある人間にまかせたかったんだろう?それならコイツは適任じゃないのか?」
「なんでそれを知っているのかも疑問だが………確かに筋は通っているな」
「めだかさん!?」
「それに、もし何やら悪事を働こうものなら、基本ぶちのめしてくれて構わん。私がその分優しくするから私の好感度もアップするだろう?」
「海路口、お前はそれを言葉にした時点でダメだということくらい分かってるんじゃねえのか?」
「当然」
というかなんともダラダラした環境になりつつあるわけだが、一応私は拘束されてたんだよな?
「…で、これで私を拘束してまでどうにかしたかった案件も解決できただろう?二学期初日まで仕事はないから、帰れ」
「…え、なに?まさか四方寄ちゃんを拘束なんてそんな羨まし…バカな真似をしてたっていうの…?」
「落ち着け、禊。本音が漏れつつある」
「お前ら結構お似合いなんじゃねぇのか……?」
「………ねえ、海路口?」
「なんだ、喜界島さん」
「………私、役立たずだったから…ごめんね」
…どうしたものか。まあ、目的は達しているわけで、既に書類の受理も終わっているし、何より。
「…可愛い女の子が申し訳なさそうにしているのは萌えるが、原因が私なのはいただけないな。良いんだよ。気にしないでほしい」
「…え?」
「さてさて、既に書類の受理まで終わっている事だし、ネタばらしと行こうか。すまんな、会長様。なりたくてなったわけでもなく、人気もそちらにあるという二重苦は、私には少々退屈に過ぎたんだ。だから、人吉君に頼んで辞められるようにしてもらった」
「………それは本気か?」
「答えは私の中だけにある。無論、解釈は自由だ」
正直これくらいが外向けの理由には丁度いいだろう。私の株が下がるだとか、そんなことは気にしない。
「どちらにせよ、私は二学期初日に正式に失脚する。それまでは造反組の人と仲良くしない方が良いだろう。なので、これからの作業はとりあえず一人でやる。最後の仕事くらい、一人でさせて欲しいんだが…ダメか?」
「あ…、ああ。良いだろう。分かった、我々は帰るとしようか」
そう言って、会長様達は帰っていった。………とおもったら、人吉君と喜界島さんが戻ってきた。忘れ物か?
「…ねえ、やっぱり変なんだ。黒神さんに会長の座を取り返させたのって…本当に退屈だったから?」
「同じ生徒会でも聡さは違うな。阿久根先輩も聡いのは聡いが…それ以上に会長様に依存しきっている」
「…まあ、俺が言えた義理じゃねえが、阿久根先輩のそれは最早崇拝レベルだからな」
「…まあ、良いだろう。喜界島さん……いや、もがな。これは絶対に会長様には他言無用だ。その約束が守れるかい?」
「ッ………は、はいぃッ!」
「四方寄ちゃんはホントに女の子が好きだね。嫉妬しても良い?」
「その前に私にふさわしい男になるんだろう?」
いろんな花が咲いてるぞ!!?と叫んでいる人吉君を少し放置して、私はもがなに事の顛末を話し始めた。
「じゃ、じゃあ海路口は黒神さんを………!?」
「他言は無用だぞ、もがな。ただでさえ新生生徒会で知っていていい人間は人吉君に限るつもりだっんだから」
「う、うん………」
「さっきの内容だってギリギリ会長様が不快に思うラインを越えさせるのが目的だったんだ、私を敵だと認識してもらうための布石がまだ必要だとは思わなかった」
「仕方ねえよ。めだかちゃんは人を信じることを知ってる…いや、疑うことが出来ないって言うのがこの場合は正しいんだろうな。…なあ、海路口」
「ダメだ」
「やっぱ心苦しいから……って最後まで言わせろよ!?」
「どうせ「めだかちゃんをサポートしながら成長を促す形に出来ないか?」って聞きたかったんだろう?ダメに決まっている。彼女が未だ知らないことは人を疑うことだ。人を疑わないのは美徳だが…生徒会長をやる上では弊害でしかない」
「……」
「禊が入ったのも、コイツは大丈夫なのか?という疑念を持つことを覚えてもらうためでもあるしな」
「……でもよぉ、それじゃあまりにも…お前に申し訳ねえっていうか」
「私のことは気にしない方が良い。何せ、会長様が負けた相手を屈服させた『化け物』だからな。そう簡単にへこたれやしない。さて、久し振りに喫茶店デートでも行こうか、もがな。なんだったら人吉君も来るか?」
「…うん、行く!」
「…カッ!今回くらいは俺に奢らせてくれよ?別にお前の為じゃねえ、自己満足の為だからな!」
「「ツンデレ乙」」
「テメエら!」
「良いじゃないか、善吉ちゃん。僕なんか一切会話に加われてないんだよ?」
「その分お前は海路口に抱きついてるだろうが!あとお前には絶対おごらねえからな!」
というわけで、喫茶店である。いつもここにきている理由は二つほどあり、一つは元々価格設定が高校生には有り難い場所であること、もう一つは…。
「おや、今日はシフト入ってなかったと思ったけど?」
私のバイト先だからである。学校からはちゃんと許可をとっているのだから問題はないだろう?
「今日はただの客ですよ。この間入荷してたマンデリンの良い奴、飲ませてくれる約束でしたから」
「そう言えばそんな約束してたっけね。後ろの子達もだろう?」
「それは払いますよ。そこまでしてもらっては悪い」
「いやいや、君が来てくれてからお客さんの入りもよくなったからね。それくらいはサービスだよ」
いやいや、いえいえとしばらく応酬をしてみたものの、この店長には必ず押し切られてしまうのでキリのいいところで諦め、四人掛けのテーブルに掛ける。しばらく談笑しているとコーヒーが運ばれてきたので、みんな一息入れた。
「……で、別におちゃらけた会話だけで終わるつもりはないぜ。なんで球磨川を生徒会の副会長にしたんだ?」
「わ、私も気になる!」
「『実は僕も』」
「…まあ、一つの理由としては、禊がいることで会長様がより成長しやすい環境を整えたかったからだな。禊という内憂と、私という外患がいることが、会長様の人格面での成長を見込める。もう一つの理由としては…」
そこで一旦言葉を区切り、コーヒーを口に含む。うん、店長の豆選びは毎回失敗しないからすごいと思う。
「…禊と会長様の相互理解だな。既に禊は『過負荷』と折り合いをつけている。勿論内憂で在ってくれればとは思うが、それ以上にこの二人には和解が必要だろう」
「…まあ、分からないじゃねえけどよ。でも、そう簡単にいくのか?それこそめだかちゃんは…俺たちもだけどさ、球磨川とは浅からぬ因縁がある。今の球磨川が危険じゃねえのは俺も分かってるけどよ、めだかちゃんは…」
「…そうだね。私はそんなに球磨川さんとは付き合いも長くないけど…」
「むしろ時間はかかってくれたほうがいい。直に和解する事の方が、成長の阻害になるだろうからな…。なんだ、その目は?」
「「「………海路口(四方寄ちゃん)ってさ…過保護だろ(でしょ)?」」」
…………はぁ?
「何故そうなる」
「大体、なんだかんだで黒神さんが良い方へ向かうようにしてるし」
「もうおせっかいとかのレベルじゃねえよ」
「『ついでに僕にも過保護だろ』『そんなところも大好きだぜ』」
「好きな人の前では括弧つけたいからか、それともキャラがそうでもしないと立たないという危機感からかは聞かないでおいてやろう。………まあ、成長する人間というのはどうしても世話を焼きたくなる…私の一族ではそんなものはないからな」
「「「………」」」
何も言えなくなっている三人。我が家が異常なことは理解しているが、そこまで黙りこむこともないだろうに………。
「まあ、そんなわけで、眩しくもあり、自分が成長できない分他人に注ぎたくなる気分もある。所詮は私の自己満足でしかないんだろうけどな」
そう言って、私はすっかり冷めてしまったコーヒーを啜った。