異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか   作:のろし

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普通に考えてじゃんけんが異常なまでに弱いのは間違いないだろう?

 賢明なる読者諸氏に質問である。いい加減にしろと言われそうだがそれはそれとして、早速質問に移らないと段々質問だと聞いた時点でページを閉じる読者諸氏が増えている気がしてならないわけである。さて、質問の内容なのだが、ちょっと変な質問になってしまうので、メタではあるが、実際に答えを募集する事になる。つまり…。

 

「私も特別企画に参加する事になったんだが、副賞はなにが良いと思う?」

 

 読者諸氏の答えを募集する。その中から一番良い答えを採用させてもらおうと思うので、どんどん応募してほしい。(既にアンケートは〆切っている事をすっかり忘れてたらしい。この文が入っている事を忘れていた作者はいま土下座をしているので、許してやってくれ)

 

 

 

 

 

 箱庭学園生徒会執行部主催、次世代育成プログラムの肝は、参加者が短期間とはいえ『飛び級制度』を使用し、高校一年生として箱庭学園の学び舎で過ごすことだろう。よくもまあ許可を出したものだとは思うが、それのおかげで実際に数年後の光景を思い浮かべつつカリキュラムを受けることができ、参加者のモチベーションを下げずにすむ。参加者は毎日を生徒会の補佐と高校生としての授業に励み、そして―――。

 

「月に一度開催される会長様プレゼンのオリエンテーションが、恐らくは参加者の中弛みを防ぐ企画として機能しているんだろうな」

 

 そして今日は第一回目のオリエンテーション。参加者が入学してから一週間という、ある意味節目になるこの日に行われるこの企画だが、今回は宝探しである。会長様曰く「とても素敵な物」を用意したらしい。まあ、よくありがちなメッセージ性の強い紙切れ一枚だとは思うが、副賞がえらく豪華になってるからそこは良い。あと会長様、この学園の荒れ様の原因の半分は貴女だ。貴女個人が気をつければ済むことだからな?

 

 さて、副賞の内容なのだが、『各自の欲しいもの、もしくはお願いを聞く』という、確かにモチベーションは上がりそうなものだった。で、参加者は生徒会の腕章を欲しがり、それを阻止すべく生徒会メンバー(会長様除く)と何故か私も参加する事になったわけである。私はホントに何故参加するのか分からんが。なお、各人の副賞は次の通りだ。

 

 人吉君、副会長の腕章(実権込み)、喜界島さん、お金…会長様に言うと額がえらいことになりそうだが。阿久根先輩、会長様への挑戦権(鰐塚さんが勝手に決定)、禊、女子の裸エプロン及び、その状態で傅くこと…女好きめ。

 

「…で、海路口同級生、貴様は何か欲しいものはないのか?」

 

「現時点で欲しいものは特にないな。今決めねばならないか?」

 

「いや、別に今でなくても構わない。まあ、せめてこのオリエンテーションが終わるまでには決めておいて欲しいがな」

 

 了解、と言ってその会話を打ち切ると、会長様は第一関門だと言って各自に一枚の紙を渡してきた。片面には学園の見取り図が、もう片面にはおかしな暗号文が書いてある。禊に紙を見せてもらったが、特に個人で差もないようだった。暗号文である以上はこれを解読する事で何らかの目印、ヒントが出てくる仕組みだろう。まあ、パッと見て分かる人は分かる程度のものだな、と思いながら周りを見る。ピンときているのは喜々津さんか。他の人はまったくといったところだな。会長様は五分考えて分からなかったら帰っていいと言っているが、それもヒントか。難易度はBであるらしい。

 

「オッケイ!分~かった!」

 

 ここまでの時間、紙を渡されてからおよそ二分。やはり最初に解いたのは喜々津さんだった。流石にこういう謎ときはお手の物らしい。どうやらこれで中学生組は第一関門突破だな。こらこら人吉君、いちゃもんをつけるのはあまり行儀がよくないぞ?

 

「何やってるんですかー?せんぱいたちも行きますよ~!」

 

 やはりその辺の考え方もゲーム好きならではだろうと思いつつ、私は敢えて残る方を選択した。まあ、既に問題は解けているわけだが、残ったメンバーに人吉君がいる以上、ぶっちゃけキリのいいところで耳を引っ張ってでも連れてく役目が一人は必要だろうし。残ることを選んだもう一人――――阿久根先輩は自力で解けるだろうし。あとなじみちゃんが関西弁使って会長様と話してるし。

 

「…にしても、関西弁も結構似合うな、なじみちゃん」

 

 誰にも聞かれていないことを確認して、私は独り呟いた。

 

 

 

 

 

「…で、いい加減解けたか?」

 

「…もうちょっとだと、思うんだけどよ…」

 

「大体どの辺まで?」

 

「………ごめんなさい、全然です」

 

 あの後十分ほどたって阿久根先輩も目的地へ向かい、更に十分後。残るは私と人吉君だけとなった。それにしてもこの善吉、ダメダメである。

 

「……ハァ」

 

「…別に、先に行ってくれて構わないんだぜ?」

 

「残念だが、わっるいこと考えてる可愛らしい女の子から人吉君を守るのが私の仕事のようでな。いい加減ノーヒントクリアーに拘る必要もないだろう?」

 

「………ヒントだけ、くれ」

 

「生徒会の正規メンバー、会長様を除いて何人?」

 

「…四人」

 

「これで分からなかったらただのバカだ。今ので難易度は一気に下がったぞ?」

 

「………四、よん…し?…!そっか!じゃあここをつなぐと………」

 

「そうそう……」

 

 しばらくの作業の後、人吉君は見事に時計の際に使われるローマ数字の四をだし………。

 

「梯子だな!」

 

「お前はバカだ」

 

見事に理解の仕方を間違えてくれた。……まあ、時計でも使われる機会は最近少なくなって来てるし、仕方がないのか?

 

 

 

 

 

「――――つまり、そのローマ数字が使われるのはここ、で、形がおかしいことからも裏から見ている、つまりは建物の中ということだな」

 

「………お前、ずっとわかってたのかよ」

 

「知識は成長しない私にとって武器だからな。推理力という知識も必要なものだ」

 

「だったら先に行けば………!」

 

「だから言っただろう?人吉君をわっるいこと考えてる可愛い女の子から守るため、と。会長様を狙うときに、絡め手を使うなら一番最初に人吉君を使うことを思いつくのは容易だと思わないか?」

 

「………安心院なじみか?」

 

「ま、その通りだ。なんせ一番口車に乗せられそうで」

 

「うっ!」

 

「更に意地を張りそうで」

 

「なっ!」

 

「ついでに真っ直ぐすぎるバカを使うのは定石だからな」

 

「やめてくれ!俺のライフは既にゼロだ!」

 

 意外と軟だな、と軽口をたたきながら、時計塔の中に入る。そこには見慣れぬ本棚と、漆黒の長髪を靡かせる、可愛いというよりは綺麗という言葉が似合うだろう女子生徒がいた。図書委員の腕章をしているところを見るに、どうやら『移動図書館』こと、十二町矢文先輩のようだ。

 

「これはこれは……どうやら会長様は随分研修生たち……まあ、生徒会のメンバーもか…に目をかけているらしい。まさか委員長様が直々に門番を務められているとは…」

 

「ぅ私以外にも全委員会の委員長が参戦しているわ。『常に最悪の事態を想定しろ、奴は必ずその斜め上を行く――――』(富樫義博『レベルE』)――――というけれど、流石にこの事態は想像できなかったかしら?」

 

「いや、十分だ。それと隣に居るのは…やあ、キルちゃん!今日も可愛らしいパジャマ姿だな!」

 

「ヤホ~~~~」

 

 どうやら本当にこの企画、ゴージャスな仕様であるらしい。まさか学園史上最も働かない委員長が働いているとは。それだけで十分に私は驚きである。

 

 そんな思考を張り巡らせているうちに、十二町先輩のルール説明が終わった。なるほど、読書対決ねぇ。

 

「じゃあ、まずは人吉君、頑張れ。私はちょっとキルちゃんd…キルちゃんと遊んでいるから」

 

「お前の隠しきれていない腹黒さが怖いよ………」

 

 

 

 

 

「なあー、そろそろ諦めて服を返してもらったらどうだー?」

 

「まだまだだってんだよ!最後の一枚まで諦めねえぜ!」

 

「見苦しいからやめろと言っているんだが。……どうやら人吉君のネックはその諦めの悪さと熱血漢なところだな。それはある種美徳でもあるが、付け入る隙にもなる」

 

「だからその俺を微妙に貶めるような発言をやめろ!」

 

 パンツ一丁で凄まれても一切威厳を感じない。

 

「いい加減選手交代だ。どこまでいけるかは別にしても、流石にここで止まっては会長様に申し訳が立たないだろう?まあ、ちゃんと人吉君が頑張れるような場所だってあるさ」

 

「まあ、誰が相手でもぅ私は気にしないのだけれど」

 

「それはありがたいな。たとえ貴女が絶対に負けるとしても気にしないとは、流石委員長、豪胆だ」

「……なんですって?」

 

 私は一旦人吉君を後ろに下げ、改めて十二町先輩と対峙する。

 

「改めて自己紹介をさせてもらおう。一年ゼロ組所属、前生徒会長の海路口四方寄だ」

 

「………二年十組所属、図書委員長の十二町矢文よ」

 

「私が賭けるものは自身の右腕。某錬金術師の漫画ではそれで命が助かってるんだから、十分だろう?貴女が賭けるのは私達二人の通行権だ」

 

「………貴女、正気かしら?」

 

「無論。それに、勝てる勝負だと言ったはずだ。こういう勝負はどれだけ読みこめているかを見るものだが、それこそ私には意味がない」

 

 その言葉に再度顔をしかめる十二町先輩。やはり自分の得意分野であるだけに、負けず嫌いな面も持ち合わせているんだろう。

 

「この場にある本すべての中から、貴女が一番良い本だと思った一冊を出してくれ」

 

「…………………!!!」

 

「…どうした、出来ないのか?」

 

「…無理よ。『一番』なんて選べるわけがないもの」

 

「では、貴女の棄権による此方の勝利だ。さて、パンツ一丁の人吉君と一緒に歩くなんて拷問は受けたくないので、人吉君の衣服と通行権を渡してくれ」

 

「…………仕方ないわね。いいわ、通りなさい」

 

 本は常に同じ内容を見せてくれるが、人は同じ内容と感じない。その時々による感情の変化や体調によっても感じ方は変わるわけだ。つまり、常に最高の一冊なんて本は存在しない。特に彼女のような読書家なら尚更だ。正攻法ではないが、反則に関するルールなんか言われてないし問題ない。

 

「そうそう、ところで先行組はいつごろここを通ったんだ?流石に一時間以上たってると逆転の芽が出そうにもないんだが」

 

「そうねぇ……ぅ私の処を通ったのは四十分くらい前かしら。でも、大刀洗の処を突破したということは、結構先を越されているわよ?」

 

「そうか。ならまだ追いつけるだけの余裕はあるな。さて、いくぞ人吉君」

 

「お、おう……!」

 

さてさて、先には一体どんな試練が待ち構えているのやら。

 

 

 

 

 

「CはチャイルドのCだったか」

 

「いや、クレイジーのCだろ」

 

「四方寄姉ちゃんので合ってるよ!」

 

 冗談のつもりだったのだが、合っていたらしい。で、此処の勝負内容は?

 

「人吉がいるのは気にくわねーけど、姉ちゃんがいるから素通りでいーぜ?」

 

 …それで良く関門の番人が務まるなぁ。あ、鬼瀬ちゃんだ。ヤホ~。

 

「やほー」

 

 …さて、風紀委員特選部隊の別名を思いだした。『雲仙冥利を愛でる会』。………こんな生意気なクソガキを愛でるとか、お前らさては

 

「ショタコンだな?」

 

「「「「「「グハァっ!?」」」」」」

 

 …あ、全員崩れ落ちた。どうやら後ろめたい部分はあったらしい。

 

「………鬼だ、鬼がいる」

 

「何か言ったか?」

 

「言ってません!」

 

「まったく……しかしなぁ、素通りしてくれと言われて後ろからグサッというのも可能性としてはある。やはりそこは簡単な勝負でもしてからにして欲しいんだが」

 

 私の提案に、冥利君は暫し考えを巡らせる様子を見せながら、しかしそれほどの時間もかけずに案を出してきた。

 

「じゃあ、俺とじゃんけんで遊ぼうぜ?一回負けるごとに姉ちゃんは衣服を一枚……「クソガキ、地獄を見る準備は良いか?」…じゃなくて、一回抱っこな?」

 

「…まあ良いだろう。勝つまで何回でも挑戦していいんだな?」

 

「おう!じゃあ始めるぜ?じゃーんけーん……ぽん!」

 

 その掛け声に私はパーを出し、冥利君はチョキを出した。うん、一回目は負けか。仕方なく抱っこをしてやる。数分間抱き上げた後、二回戦を開始した。

 

「じゃーんけーん…ぽん!」

 

 私はグー、冥利君はパー…。先程の繰り返し。

 

 

 

 

 

「お前があそこまでじゃんけんに弱いとは思わなかったよ!」

 

「いやぁ、面目ない」

 

「まさか十回連続で負けるとは……俺が代わってじゃんけんしなかったらまだ長くかかったんじゃねえのか?」

 

「可能性としては否めないなぁ。私は順番通りにしか手を出せないから」

 

「なんで勝負を受けたんだよ!?」

 

「一手で決まる可能性に賭けたんだが…まあ、ああやって純粋に抱っこを求められると断れないだろう?」

 

「カッ!お前の前では雲仙先輩も形無しだな!」

 

「さて、次の関門のようだ。……おや、彼女は………」

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