異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか   作:のろし

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逆にこういうゲームは私の得意なところだ。

「ところで、今までの話の中で会話文から始まったことってあったか?ああ、前後篇は除いてだが」

 

「なにいきなりメタな発言してんだ!?」

 

「いや、ふと気になったんだ。ほら、やっぱり斬新なアイディアを試すのはライトノベルの醍醐味だし」

 

「何を言ってるのか分からねえよ!」

 

「ああでも原作は漫画だから会話文が最初に来るのは当たり前なのかな?」

 

「もうお前が何を言いたいのか俺には全然分からねえ!!」

 

「つまり何が言いたいのかと言えば、こういう斬新な方法でもとらないと読者諸氏は楽しんでくれないんじゃないかという漠然とした不安がだな………」

 

「あーもう本編行くぞ本編!」

 

「最後に一つ言わせてくれ」

 

「なんだよ!?」

 

「コミックスの十三巻、百八箱の表紙絵なんだが、十二巻の最初の分かれ道でそれぞれが選んだコースと左右が逆になってる気がするのは私だけか?」

 

「最後の最後までメタな発言だった!?」

 

 

 

 

 

 さて、冒頭で何やら会話の暴投が在ったような気もするが気にせずに次の関門を説明しようと思う。冥利君の関門を抜けてからしばらく、迷路のような回廊を進むとT字路のように二股の分かれ道があった。一と二という二つの文字がそれぞれ右、左に書かれており、どちらに進むかを暫し二人でディスカッションしたわけだが、結局どっちに進んでもきっと同じ場所につくだろうということで、二人して左に進むことにした。ばらばらに行くという案も出はしたものの、第一関門のような知恵比べだと人吉君が、第二関門のような規則性がマイナス要因にしかならないようなゲームだと私がそれぞれ詰んでしまうということで、最終関門までは協力プレイをしていこうと一緒に進むことを決めたわけである。

 

「で、次の関門なわけだが………第四関門は貴女でしたか、赤さん」

 

「…あら、四方寄さんじゃない♡いつも怪我人の応急処置をしてくれているおかげで私達は助かってるわ?」

 

 保健委員長にして、十一組(チームトクタイ)の赤青黄さんである。おかしな名前だと思った人は挙手。

 

「…なんでいきなり手を挙げてんだ?」

 

「こっちの事情だ、気にしなくていい。で、貴女が出してくる関門は?」

 

「あまりせっつかないでください♡私の主宰する第四関門(2)は痛みの殿堂、完全神経衰弱(パーフェクトメランコリー)。一風変わった神経衰弱です❤」

 

 一風変わった……?と人吉君が呟いている傍で、私は前から赤先輩に感じていた違和感の正体を理解した。なじみちゃんと会った時点で思いついてもよさそうなものだが。

 

「……あー、少し疑問を挟んでいいか?赤先輩」

 

「…ええ、構わないわよ?」

 

「貴女は悪平等(なじみちゃん)ですか?」

 

「………なるほど、安心院さんが警戒するだけのことはあるわね。そう、私はこの学園から死人が出ないように調整する事を安心院さんから任されている悪平等(ぼく)よ?」

 

 なるほど。

 

「余計な手間をとらせて申し訳ない。疑問は解決したので完全神経衰弱とやらのルール説明をお願いしたい」

 

「分かったわ♡」

 

 

 

 

 

「………なあ、人吉君。やっぱり君、バカだろう?」

 

「………面目ねえ……」

 

「イカサマに途中で気付いておきながら注意しかしないって……君のお人好し具合には頭が下がる思いだよ」

 

 人吉君と赤先輩の勝負は赤先輩の圧勝であった。終盤に差し掛かろうかという時点で既に赤先輩は200ポイント以上をとり、ジョーカーを1枚出してフィニッシュ。人吉君は途中でイカサマに気付き注意をしたが、その時点で既に勝負はほぼ決まっていたので意味はない。

 

「大体君は『欲視力』という異能を持っているのになんだって気付くのがあんなに遅れたんだ?しかも異能を使うまでも無いほどに単純なミスディレクションで」

 

「…いや、ホントに不甲斐ないとは…思ってるけどよ……」

 

「その上何故かは知らないがただの夏風邪が運悪く悪化するとか……あまり心配をかけさせるなよ。私の繊細な心は心労で張り裂けそうだ」

 

「…お前がそんなタマじゃないことだけはすっげえ理解してるわ…」

 

 おやおや、看破されていたらしい。四方寄ちゃんショック(棒読み)。

 

 さて、イカサマの仕様についてはよく分かったんだが、人吉君は勝負に負け、赤先輩の保有する(なじみちゃんから借り受けた)『五本の病爪(ファイブフォーカス)』によって夏風邪程度の高熱に苦しんでいる。流石にそれを見て見ぬふりが出来るほど私は冷淡な人間ではないため、当然私も勝負に参加する運びになるわけだ。

 

「私がこの勝負に勝ったら人吉君の夏風邪を治し、二人分の通行権をくれ。私が負けたら鬱病でも癌でも白血病でも好きな病気にしてくれて構わない。二人分の請求だからな」

 

「そんなことを言ってしまって、負けたら貴女、おしまいよ♡」

 

「イカサマなら既に私も対処できるからな、条件は完全にイーブンだ。……そうだな、流石に通行権と治療だけでそんなリスクの高い病気になるのもアレだ、もうひとつ追加しようか」

 

「………なにかしら?」

 

「私の愛妾になってもらう!」

 

「さっきの球磨川せんぱいより酷いじゃない!!なんなのよ貴女!」

 

 ということは禊はこのルートを通ったわけか。意外なところで意外な情報を入手できたな。…え?冗談だろうって?私は冗談を言うのは得意じゃない。

 

「尚更ひどいわよ!…いいわ、私が勝てばいいだけだもの♡」

 

 そう言ってカードを配置し始める赤先輩。殆どの人は勝つために相手が用意したカードを使うなんて暴挙はしないだろう。それこそどんなイカサマが仕込まれているかもわからないのだから。だが、生憎とトランプを二組も持ち合わせているほど私はカードゲームが好きでもないし、そもそも相手のトランプだからこそ、相手に油断が生まれるというものだ。既に彼女は私の術中に嵌まっている。残念だがこのゲーム、もうこの時点で私の勝ちである。

 

 

 

 

 

「貴女、真面目にやってるの?」

 

「これは心外だな。こう見えて私は至極真面目にこのゲームに取り組んでいるよ。まあ、ゲームは楽しむものであるという意見もあるが、この場合は私の命と人吉君の快癒、それから通行権に貴女を愛妾として愛でる権利がかかっているから真剣勝負と言って良いだろうし」

 

「でも、この状態からの逆転は難しいのではないかしら?…ハートの7とスペードの2、はずれだわ♡」

 

 まあ、確かにそういいたくなるのも理解はできる。全52組中(ジョーカーを除く)、赤先輩が引き当てたのは26組、絵札は既にすべてをとっているので、この時点で216点以上は確定している。対する私は……未だ0組。ノーポイントだ。既に数ターン前で決着がついているはずのこのゲームが未だ続いている理由…それは当然ながら、未だにジョーカーが1枚も出ていないからである。

 

「どうやら貴女も球磨川せんぱいと同じようにジョーカー狙いみたいね。だけどそんなにうまくいくかしら?」

 

「そうか、禊もこの手で来たのか。アイツのことだから最初からジョーカーを抜いておくくらいのイカサマはやっていそうだが、私はそういうイカサマに詳しいわけではないのでな。場には普通にジョーカーもあるし、まだ勝負を諦めるほどにゲームも進んでいない」

 

「……今のうちにそうやって強がりを言っておきなさい。次に貴女がめくったカードがジョーカーでなければ、私がジョーカーを一枚引いて終わりよ?」

 

「さて、それはどうかな?」

 

 そう言って私は一旦目を閉じ、熟考に入る………ふりをする。実際こういうのは熟考など意味を為さない。記憶は自然と淘汰されていくものであるし、そもそも一度もめくられていないカードくらいは私でも覚えている、そしてそこからジョーカーを引けるかどうかは()()()()()()()。私は静かに、まるで独り言でも呟くかのように赤先輩へ語りかけた。

 

「………私が『規則』という、少々特殊な異能を持っている事は知っているか?」

 

「…ええ」

 

「私に限らず一族の人間はみんな『規則』という、普遍的なルールに縛られて生きている。それを仕方ないと諦めて流されながら生きる奴もいれば、そんなのは嫌だと某アンパンの人のようなことを言いながら、結局規則に押しつぶされた奴もいる」

 

「……なにが言いたいのかしら?」

 

「私は考えたんだよ。『規則』という物を利用できはしないかと。つまり、全てのものに規則があるのなら、それこそその規則を逆手にとれはしないかと」

 

「………」

 

 未だによく分かっていないようで、不機嫌そうな顔で首を傾げる赤先輩。そんな姿も可愛いのだが、どうせなら絶望に歪む顔を見てみたいと思うのは私がドSだからだろうか。

 

「…さて、こういったゲームには確率という規則性がある。記憶力の他に、一度も出ていないカードがその場で揃う確率という、いわば運もゲームの要素になってるんだ」

 

「………いい加減めくってくれないかしら?貴女の御託なんて聞くほど委員長は暇じゃないの」

 

「どうせ今日は一日此処に拘束されているのだろう?私達が最後の二人だし、この後はいないんだったら十分暇じゃないか?」

 

 私がそう答えると、彼女は露骨に顔をしかめて舌打ちをした。やはり基本的にSな人を苛めるのは楽しい。

 

「私が未だ一組も揃えていないのは、どうしてだと思う?」

 

「運がなかったからじゃないの?……ッ!!?」

 

「残念ながら少し違う。確率という規則性に縛られ、利用していたんだよ。赤先輩は知らないかもしれないが、私は前にもこの手を使ったことがある」

 

「まさか………!?」

 

「流石に100%にするのは不可能だったがな。さて、一枚目をめくろう」

 

 私がめくった一枚目のカードは言うまでもなくジョーカー。さて、読者諸氏は既に理解できていると思うのだが、私は規則に縛られている事を利用して、わざとカードが合わないように調整していたわけだ。当然ながら確率という規則に縛られている以上、二枚のカードが合う確率は上がっていく。更に、カードはだんだん少なくなるわけだから、合致する可能性は飛躍的に上がるというわけだ。それだけではなく、私はもう一つのタネを明かす。

 

「私がひいた二十六回に、違和感はなかったか?」

 

「………嘘……!?」

 

「その通り。すべてのカードが一回ずつ出ている。1から13まで、4色すべてのカードがね。さあ、では二枚目をめくるとしようか?」

 

「球磨川せんぱいよりも性質が悪いじゃない……!ひ、引き分けにしましょう!」

 

「断ろう」

 

「人吉君の治療も、通行権も渡すわ!」

 

「残念だが、勝てば確実に貰えるのでな。むしろもう一つの条件の為に勝利しようと思っている」

 

「貴女は球磨川せんぱいよりも性質が悪いわ!」

 

「最高の褒め言葉だな。好きな男よりもレベルの高いものがあるというのは案外喜ばしい」

 

 狂ってる!と一言叫ぶ赤先輩。そんなことを言っても、二枚目をめくってゲーム終了だ。そしてめくられたカードは………。

 

 

 

 

 

 

「さて、通行権も得たし、人吉君も回復した。次の関門へ行くとしようか?」

 

「………容赦ないな、お前」

 

 当然ながらめくられたカードはジョーカーで、その時点で私の勝ちが確定した。ついでに赤先輩の行く末も、である。残念ながら私は禊のように最後の最後で甘さを出す性格でも、真黒さんのように意外と純粋でもないので完膚なきまでの勝利である。

 

「当然だ。私は名ばかりと言えども敵に容赦などしないからな。まあ既に赤先輩は敵ではなくなってしまったので、思いっきり虐めr……愛でるが」

 

「もういい加減お前の腹黒さにも慣れてきたよ………」

 

「そこまで腹黒いつもりはないけれどな。どちらかというと欲望に正直だと言って欲しいのだが……」

 

「それが褒め言葉だとは思えねえよ!!」

 

 叫びながら階段を上っていく。先程の赤先輩が門番を務めていた第四関門以降、大した障壁があるわけでもなく唯々階段を駆け上がるだけであるため、通常ならそろそろ退屈になってきたりするのだが、そこは何かと人吉君がリアクションや会話で楽しませてくれているので今のところその兆候はない。

 

「…人吉君は誰かの隣というポジションがとてもよく似合う人間のようだな」

 

「何か言ったか?」

 

「いいや、何も。さ、どうやら次の部屋にはちゃんと人がいるらしい。漸く第五関門についたようだよ。…まあ、いくつ関門があるのかは知らないが、此処も既に十一階だ。恐らく十三階か屋上に最終関門がある筈だから、他のルートにも均等に委員長を割り振るとすれば此処は最終関門一歩手前ってところじゃないか?」

 

「お、おう!ようやく終わりが見えてきたな!」

 

 そう言って扉を開ける人吉君。そこには溢れんばかりの食材と、二人の人間がいる空間が広がっていた。

 

 

 

 

 

「……まさか後続組の為にもう一度食材をかき集める羽目になるとは………」

 

「…まあ、お疲れと言っておくよ、ロード」

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