異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか   作:のろし

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料理の作り方くらい弁えてるよ普通に。

 さて、よく『棄てられる食材が可哀想だからちゃんと残さず食べなさい』なんていう教師がいたり、『世の中には食べたくても食べられない子たちだっているのよ!』なんていう教師がいたりするわけだが、私はその意見に違和感を感じている。棄てられるのが可哀想と言われても、そもそも味の好みは個々人で千差万別なわけで、その料理が嫌だ、という子はたくさんいるわけだ。それを我儘だと断じてしまうのは個の否定に通じ、子どもの個性を磨いていくなんて建て前に引っかかる。世の中に食べたくても食べられない人がいることは間違いないだろうが、そんな人たちがちゃんと食べられる世界に居るとしたら?それこそ好き嫌いは普通に出てくるだろう。そもそもの条件が違うものを等しく扱うこと自体がナンセンスだと思うわけだが。更に言うならば家庭での食事や飲食店で食べるときには自身の好きな物を選択してちゃんと残さないようにしているわけで、むしろ給食という画一的に確立された食事法の方がナンセンスであるとも思う。まあつまり何が言いたいのかというと。

 

「食材は唯の食材だし、人はただの人だ。どちらにも敬意を示す気はないし、特別視するつもりもない」

 

「いや、それを食育委員会の長の前で言うのはどうなんだ?」

 

 

 

 

 

 食育委員会。恐らく他の学校にそういった委員会があるところは少ないだろうが、なにをやっている委員会なのかと言えば、良く分からないが答えである。なにせWikiにも乗っていないため、一体何をするのかは謎のままな委員会である。まあ、きっと学食の食事提供なんかが主な内容なんだろうけれども。そういったことは外部委託で良いんじゃないのか?

 

「で、傍に汚れた皿が大量にあるわけだが、まさかこの関門の通過条件は皿洗いじゃないよな?だとしたらこの量を片付けるころには日が暮れていそうなんだが」

 

「流石にそれだったら来た道を戻って別ルートをいこうぜ?別に皿洗いが嫌なわけじゃねえが、時間の問題があるからな」

 

 まったくもってその通りだな、と二人の食育委員長がどんな対応をしてくるのかを待つと、二人は私を若干睨みながら此処の関門の内容について説明をしてきた。

 

 ああ、未だに二人の描写をしていないので此処で簡単に紹介させて頂く。男子生徒の方は飯塚食人。二年十二組所属で、食育委員長。女子生徒の方は米良孤呑。同じく二年十二組所属の食育委員長。一委員会一人が鉄則の委員長なのだが、能力に於いてまったくの互角であるという判断がなされ、異例のダブル委員長になった異色の委員長である。なんだか委員長という言葉がゲシュタルト崩壊を起こしそうであるが、まあ、そんなことはどうでもいい。飯塚先輩は『猟理人』、米良先輩は『超理師』という通り名を持っているのだが、なんともおかしな通り名である。あと、ロードとメアリー(笑)。

 

「というかこの学園、やたら通り名がついている人だらけだな」

 

「いや、お前が言うなよ、お前だって『徘徊する救命病棟』って通り名持ってるじゃん」

 

「全力で返上したいがね。どうせなら『村人A』とでも付けてくれればいい物を」

 

「むしろその通り名の方がどうなんだ……?」

 

 おっと、なんだか話しが逸れて結局課題の説明をしていなかったな。さて、この関門であるが、内容としては料理である。………いや、この一言以外に説明が出来るとは思えないんだが、まあ一応更に詳しく説明をしておこう。曰く、飯塚先輩が狩猟採集してきた食材を、我々が一食ずつ料理して、米良先輩に食べてもらい、『おいしい』と言ってもらう。一人一食で、チームの場合はチームで一食。なお、コース料理は一食に含まれるらしい。料理が出来れば簡単な課題だと思うかもしれないが、残念ながらそれは間違いだ。何せこの米良先輩、三大料理にこそ数えられていないものの、現代ではトルコ料理よりも良いと言われているイタリアで修行経験がある。料理人として問われるのは料理の技量だけではなく、当然ながら味覚が敏感である事も求められる。より平易に言うのであれば、料理人は得てして美食である場合が多い。特に料理人……シェフとして修業を積んだのであれば、当然ながら味覚に関してもプロフェッショナルだろう。それこそ一般生徒が彼女を唸らせることが出来るとは到底思えない。……にしても、飯塚先輩の存在意義が一切ない関門である。食材調達も別に外部委託すれば済む話だと思うのは私だけだろうか……?

 

「とりあえず、我々はチームで挑戦させてもらいたい。共にあまり料理は得手ではないからな」

 

「構わないぞ。だが、不得手な者が二人集まっても良い料理が作れるとは思わんな。まあ、この関門に当たってしまって残念だというところだろうか?」

 

「有り難い。では、早速調理に入る」

 

 そういうと私は、人吉君を食材が並べられた棚の処へ呼び寄せ、相談を開始した。

 

 

 

 

 

「でもよ、実際問題どうなんだ?俺もそんなに料理が出来るわけじゃねえし、突破できる可能性は低い気がするけど」

 

「特に問題はない。私は料理が得手でないだけで、料理が出来ないわけでもないからな」

 

「…どういう意味だ?」

 

「結局、万人においしい料理など作れるわけがないんだ。人の味覚というのは曖昧だからな。同じ人間でもその日の体調や外的要因で味覚は変わってくる。常においしい料理を作るのが難しいだけで、料理自体が出来ないわけじゃない。私が得手だと言えるモノはそういう意味で殆どないな」

 

「……で、具体的に何を作るんだ?」

 

「米良先輩はイタリアで修業をしている。馴染みがある分判断が甘くなってくれればいいが、むしろ慣れた料理だから余計に厳しくなっている可能性もあるから、イタリア料理は選ぶべきではないな。同じ理由で、日本料理の類も出せるものは限られてくる」

 

「……カレーとかは論外ってことだな」

 

「まあ、カレーはそもそも誰にでも作れるが、一定以上に美味く作るのが難しい料理ではあるな。何より時間がかかり過ぎるから、もっと時間のかからない料理が良いだろう」

 

「パンとかをこねるのも時間がかかるから無理か……それこそ焼くか炒めるか、茹でる程度の工程じゃねえといけないってわけか」

 

「まあ、時間を短縮しても味が問題ないくらいの調理は出来るが……それも彼女に通じるレベルにできるかは別問題だ」

 

「…となると作れる料理は…」

 

「ああそう、揚げるという工程も意外と時間はかからないな。下準備の間に油をある程度温めておけばいいし、油を大量に使うから敬遠されるだけだしな」

 

「……で、一体何を作るんだ?」

 

「皿が片付けられていなかったところを見るに、恐らくは前のメンバーが通ってそこまで時間もたっていない。十三階に最終関門があることを考えると、先行組に追いつくため試食までに使える時間は最大四十五分といったところだろうな。そうなってくると作れる料理で、尚且つ先ほど言った条件に合致しない料理は……」

 

 

 

 

 

「実際問題料理の工程を事細かに説明するなんて読者に対する拷問だと思うわけだ。料理漫画は別だけれど」

 

「メタい発言禁止!」

 

「で、此方が完成したものです」

 

「三分クッキングも驚きだな!?」

 

「実質本当にそれくらいしかかかってないからな。それこそなんで態々行間を空けたのかも理解できないくらいだ」

 

「俺が悪かったからメタ発言はやめてくれ!」

 

 我々が作った料理を米良先輩に出す。

 

「………なんだこれは?」

 

「何って、唯のオムレツだが?」

 

「…まあいい、これも立派な料理だろう…さて、試食させてもらおう」

 

 そう言って一口食べる米良先輩。食べている最中に顔は驚きへと変わり、そのままもう一口、更に一口と食べ進め、すべて食べ終わった。

 

「一体どうやって作ったんだ?私が作るものが決して劣っているとは言わないが、それでもこのレベルを得手でないと言ったお前が作れるようには思えない!」

 

「酷い偏見だな。私にとってそのレベルは得手ではない程度のものだ。人によって価値観は違うだろう?それに、まったくできないわけもない」

 

「……まさか卵を割るだけしか俺の仕事がねえとは思わなかったよ」

 

「……合格だ。通っていい」

 

「メラリー!僕は反対だ!食材も料理人も冒涜するような発言をする奴が、ここを通っていいはずがない!」

 

 飯塚先輩が何やら喚いている。どうやら私がこの部屋に入って来たときの発言を言っているようだが。

 

「…まずは人吉君を通してやってくれ。彼は問題発言をしていないんだからな」

 

「オイ、海路口!」

 

「構わないよ!だが、お前のその考え方は俺たち料理人への冒涜だ!僕はお前を通す気なんかないからな!」

 

「なら交渉は成立だ。彼を先に進めさせる。…人吉君、気にするな。どうせすぐに追いつくからな」

 

「…カッ!分かったよ!絶対来いよ?」

 

「勿論だ」

 

 そう言って次の関門へ人吉君を送り出し、私は二人の食育委員長と対峙した。

 

 

 

 

 

「…で、私の発言が気に入らないというだけで通行を許可しなかった狭量な飯塚先輩、私はどうすれば通してもらえるのかな?」

 

「なんでそんなに上から目線な態度を出来るのかな!まあ、発言の撤回と謝罪、それから今後考えを改めて、定期的に僕たちの処で食の教えを受けることに同意すれば通してあげても良いよッ!」

 

「……ロードの発言はともかくとして、私も決してあの言葉は愉快でなかった。発言の撤回は求めたいものだな」

 

「まあ、発言の撤回くらいならいくらでもして良いと思っているのだが。言葉は所詮刹那的だからな。謝罪するのも別にかまわない。だが、貴方達の考えを無理矢理押し付けられるのは気に入らない」

 

「…お前にはわからないのか?『生きることは食べること』だと」

 

「それくらいは分かっているし、そもそも態々言葉にする必要すらないと思っている。そもそも私は食育委員長が二人いること…というか、飯塚先輩が委員長である事は反対なんだ」

 

「なんだって!?もう一度言ってみろ!」

 

「飯塚先輩が食育委員長である事は反対だ。理由はちゃんとある」

 

「…言ってみろ」

 

「予算が飯塚先輩の猟理のせいで歴代最高値を叩きだしているんだよ。厳選するのは構わないが、ちょっとは金勘定のことも考えろ。それこそ採算が取れない」

 

「!?」

 

「食材費が高くついているせいで、部活に回せる予算、学園の維持管理に回せる予算が圧迫されている。実際に部活からは予算不足の陳情が何度も来ていたからな。今でこそ私は生徒会関係者ではないが、それでも前生徒会長だ。必要以上の予算を出すことがどれだけ愚かしいかはわかっている」

 

「最良の食材を旬のタイミングで提供して何が悪い!」

 

「予算をとり過ぎているのが悪い。しかもその日の食材があまったらたとえ消費期限前であっても棄てるだと?ゴミの処理にも金がかかることくらい知っているだろう?おかげで会計の仕事がやたら増えてるんだが?」

 

「…なんだ、結局は『棄てられる食材が可哀想』ってだけかよ!」

 

「人の話を聞いていたか?棄てられる食材が可哀想なのではない。使えるにもかかわらず棄てるのが無駄だと言ってるんだ。貴方の傲慢のせいで無駄に金がかかり、無益に食材が棄てられる。そんな人間が食育を語るんじゃない」

 

「なっ……!?」

 

「第一、結局は食べるんだろうなんて言うわりに貴方の方がえり好みをしているじゃないか。使い回しを許さないのなら、それこそこんな量を用意するな。貴方が委員会に居ることで、無駄が増える」

 

「………予算予算って、お前は守銭奴かよ!」

 

「金銭感覚を持っていないバカに言われる筋合いはない。私は別に食材に感謝を、なんて言う偽善者ではないし、既に食材となった物に命を感じることもない。だがな、必要以上の無駄を許せるような人間でもないんだよ」

 

「………ロード、お前の負けだ。彼女が言っている事は私達と相容れないとしても、間違いなく正論だ」

 

「だけど………!」

 

「海路口、これでもロードのおかげで学食のレベルが保たれているのは間違いないんだ。…といっても、理解しあえることはないのだろうな。通行権は与えるから、さっさと次の関門へ向かってくれ。それが双方にとって最善だと思うが?」

 

「…まあ、そうだな。最後に一つだけ。別に私は貴方達の考えを否定するつもりはない。『生きることは食べること』という言葉は正しいと思うし、料理人である以上旬の食材提供を心掛けるのは正しい。ただ、人生は食べるだけではないし、旬の食材を提供するだけが料理ではないと考えているだけだ。では、失礼する」

 

 

 

 

 

「お、来たか。意外と早かったな」

 

「米良先輩が取り成してくれたのでな。………十三階から結構大きな音がしたな。銃撃音のようだ。十三階の関門は随分と荒っぽいみたいだな」

 

「おいおい、それはさっさと行かなきゃいけねえだろ!銃撃なんて普通の人間なら死んじまうぜ!?」

 

「この学園の関係者…というか生徒会関係者に普通の人間なんかいたかなぁ………?」

 

「それを言っちゃあおしまいだろ!?」

 

 

 

 

 

 前回入れ忘れたというだけの話。

 

「ところで、その陶片追放だったか?」

 

「うん~。それがどしたの~~?」

 

「いや、ものすごく単純な疑問なんだが、高校生組と中学生組で別れられる可能性は考えなかったのか?それこそ相談する必要もないくらいに分かりやすい区分けだと思うんだが」

 

「あ…………てへっ!」

 

「まあ、解決方法を聞くに、そこまでは思い至らなかったんだろう」

 

「そうそう~」

 

「……ところで」

 

「なに~?」

 

「私の膝枕は楽しいか?」

 

「心地良い~~~」

 

「それは重畳」

 

 あと、前回の冒頭で入れ忘れたんだが、十階の扉を開けてなんで十一階につくのかを教えてほしい。

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