異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか   作:のろし

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あまりにも異常なまでにうまく行き過ぎたから、現実を疑うのは普通だろう?

 さて、優勝者には副賞が出るということだったが、最終関門を終えて脱落者はゼロ。まさかの全員突破という、かつてない(第一回なのだから当たり前だが)結果となった。ただ、最終関門を突破したところでこの状況というのは若干宜しくないものがある。つまり、誰が優勝するか―――――。此処までチームワークで勝ち残ってきたことで、惰弱な絆、脆弱な信頼関係が築かれたわけであり、此処でそういった仲間割れが起こり得る事象が出てくるというのは強固な不信感と頑固な嫌悪感の火種になりかねないわけである。そんな場面に直面した時こそ真の信頼関係が試されると言うが、こんな短期間で(異常なまでの結束力を持っている中学生組はともかく)中学生と高校生がそんなに強固な信頼関係を築けるとは思えない。………あ、そうか。この学園は普通じゃなかったんだったな。

 

「なんで私、この学校選んだんだろう………」

 

「それを考えるにはちょっと遅すぎるんじゃないか!?」

 

 

 

 

 

 ともあれ、屋上に続く梯子がある廊下を歩いているわけであるが、私は冒頭にあげた疑問がどうにも解決せず、若干悶々としながら生徒会のメンバーと研修生の少し後ろにポジションをとっている。なんと言えばいいのか、やはりあの和気藹々といった空気の中はあまり得意じゃないな。私が得意なのはやはり一対一………。

 

「別世界の私がうらやましすぎるだろう!?」

 

「どうしたいきなり!?」

 

 突如可愛らしい女の子を凌j………愛でているビジョンが脳裏に浮かび、思わず叫び声をあげる私。今の映像は一体何だったのか。叫んだ内容も覚えていないし。

 

「いや、きっとなんでもない。恐らくG先輩とかの能力の副作用だ」

 

「都城先輩の能力に一体どんな副作用があるんだよ!?」

 

「多分壁とか歩き出す」

 

「いや、それは結構できる奴多いぜ、この学園………」

 

 そう言えばそうだった。そう言えばそうだった………ッ!

 

「……ていうかさ、そろそろお前もこっちに混ざれよ。後続っつっても、最終関門はお前のおかげで突破できたわけだしさ」

 

「だから私はそこで謙遜などしないと言っただろうが。思う存分ふんぞり返るぞ?」

 

「…………」

 

「ま、そんな私が輪の中に入るより、みんなで讃えあえる奴らが集まった方がいいさ。人吉君もそう思うだろう?」

 

「俺は………そうだな、俺はそう思う。けどさ、お前がその中に入ってくれた方が俺は嬉しいぜ?」

 

「何このイケメン、萌えない(笑)」

 

「テメっ……もういいよ!」

 

 そういって輪の中に戻る人吉君。そういうところがなんとも正義側な人間だが、生憎私は裏ボスである。人吉君たちを評価こそすれ、残念ながら仲良くなんかできないわけだ。嘘だ。

 

「………だから、成長してる姿は見てて楽しいんだって。輪の中に入ると見えにくくなるだろう?」

 

 まあ、当然ながら聞き返す人はいなかったわけだけれど。

 

 

 

 

 

 屋上で思い出すのは、小学校の給食である。私の数あるトラウマの一つなのだが、天気がいいからと当時の担任が屋上で給食にしようなどと言ってきたのだ。当時小学校の屋上は近隣にビルが建設中で、よく塵芥が飛んで来ていたのである。つまりはそういうことだ。給食用の金属容器に盛られた米飯とプレートに盛られた主菜副菜、その上に降りかかる塵芥………。それ以来私は屋上で昼食を、と教師が言いだす度に仮病を使い保健室でご飯を(これも結構なものではあるが)食べていたのだ。二年で担任が交代していたため、二年の間に腹痛にかかること数十回である。

 

「それ以来屋上というのはあまり好きではない。最近はG先輩のこともあるしな」

 

「『その当時はそれほど気にしてなかったけど』『今思えばおぞましい事をやらされてたよね』『僕も今はご飯に牛乳なんて無理だなぁ』」

 

「俺は世界の料理週間ってやつで出たロシア料理(という名目)のボルシチが苦かったのが………」

 

 給食でちょっとした談議になっているが、この話の本題は屋上、つまり現在の居場所である。とはいえそれほど見るべきものがあるわけでもないのだが。強いてあげるならば目の前でサッカーユニフォームを着ている会長様くらいだろうか?

 

「ちょっと意味が解らないな。確かに今はW杯のアジア最終予選でちょっと熱くなっているが………」

 

「時事ネタを盛り込むな!あとから初めて読む人がなんのことか分からなくなるだろう!?」

 

「どこぞの作家は連載・単行本・文庫で時事ネタを入れ替えているというが………」

 

「此処の作者にそんなことが出来ると思うか!?唯でさえめんどくさがりなあいつが!」

 

「というかそもそも初見の読者の一体何割がここまで来れるのだろうかと考えると………」

 

「言わせねえよ!?」

 

 …ちょっと話が逸れたが、とりあえず理解できたのはどうやらここが所謂ボーナスステージとは名ばかりの、優勝決定戦であるらしいことである。奥からなじみちゃんがサッカーゴールを片手で持ってきたため、人数などから類推するに、PK戦らしきものをするつもりなのだろう。……あ、やっぱりそうらしい。あと、研修生諸君はもう少し違和感のない誤魔化しという物を覚えるべきだと思う。

 

「なじみちゃんの左手に関してはどうせ真面目に主人公サイドが触れるだろうから特に触れない」

 

「もうお前この研修回メタ路線でいくつもりだろ!?」

 

 最早人吉君もメタ発言路線で行くつもりなのではないかと思いつつ、聞くともなしに会長様の説明を聞く。PK勝負…ねえ。

 

 真っ先に挑戦しそうなのは阿久根先輩か?何気に真面目に対立していなかった禊も可能性としてはあるし、人吉君は阿久根先輩と禊への対抗心だけで挑戦しそうだな。恐らくその三人の後に研修生組が挑戦するだろうし、喜界島さんは陸上での競技はあまり得意じゃないから挑戦自体なさそうだ。私もまあ、此処まで来たのだから挑戦くらいはしてもいいかと思うのだが、何せ順番がなぁ。どうせ挑戦するなら勝てるところで勝負をかけたいし………。

 

「…とか考えてるうちに、最初は禊だったか。そういえば未だ和解は為されていないわけだが………」

 

 

 

 

 

「『…さて』『始めようか、めだかちゃん』」

 

「………いきなり貴様とはな。よかろう、かかってくるがいい!」

 

 そういうと、会長様の髪は白く染まった。乱神モードかとも思ったがそれにしては目に理性が感じられる。だからその染髪スキルはどうやって出しているのかと。

 

「『…でね、めだかちゃん』僕の真面目な一発を、できれば正面から受け止めてほしいんだけど?」

 

「……漸く貴様の心に触れた気がするな。今のお前なら好きになれる気がするよ」

 

「残念だけど、僕の心は四方寄ちゃん一筋だからね。じゃ、思いっきり…!」

 

 人のことを好きな会長様にとって、括弧つけない言葉は心に響くんだろうなぁ、と思いながら私はその場の流れを見届ける。禊が蹴ったボールは言葉通り真っ直ぐに会長様へと向かい………見事にキャッチングされた。会長様が少し後ろに下がったのはあれか、流石に本気を出した禊相手に身じろぎもしないほど人間を辞めているわけではないアピールか。

 

「……また勝てなかった。四方寄ちゃんに教えてもらった感覚とはまた違った感覚だな。めだかちゃん、君も君で、好きだぜ?」

 

「まさか後ろにずらされるとは思わなかったよ。…体よりもむしろ、心にキた」

 

 そういう少年誌な展開はやはり本誌でやって欲しいものだと思う。

 

「めだかちゃん、改めて、副会長の立場を全うさせてもらうよ。いつか君の寝首をかくために」

 

「……来るがいい。私はそれをいつでも待っているぞ?」

 

 黒神めだか対球磨川禊、対戦結果………挑戦者球磨川禊、敗北。

 

 

「次は俺がいきます」

 

「ほう、阿久根書記が次の挑戦者か」

 

「黒神めだかに挑戦するには、丁度いい前哨戦だと思いますよ。手加減なんかしないでくださいよ?俺は譲られた勝ちなんかに価値を見いだせない」

 

「バカを言うな。貴様相手に手加減をするほど私は甘くも慢心もしておらん!」

 

 そういって会長様の髪が黒く染まる。正直あまり好きな色ではないな。これならまださっきの白髪の方が綺麗だった。まあ、なじみちゃんにはかなわないのだけれど。

 

 とか言っている間にどうやら勝負は決着していたようだった。人吉君の善意による解説曰く、あの状態は『改神モード』といい、会長様の異常である、『完成(ジ・エンド)』と呼ばれるスキルを完成させるスキルの、その極致であるという。な、なんだってー(棒読み)。

 

「つまり、阿久根先輩はその完成されたモード(笑)の、唯一の弱点である、観察に重きをおいてしまう条件を見出して、魅せつけるシュートを放ったものの、副会長戦の際にはどうしても修得しきれていなかった黒神ファントム(ちゃんとした版)を使われてパンチングで弾かれてしまったと。どんだけ大人げないのかは知らないが、その負けず嫌いさは一体どこからくるものなのだろうな」

 

 会長様のネーミングセンスのなさに、人吉君の影響を感じるのは私だけか?

 

「言葉の端々に棘がある気もするが、一応その通りだよ」

 

 つまるところ、原作どおりなので全面カットだ。

 

「だからメタな発言はやめろと!」

 

 地の文が読めないんじゃなかったのか………?

 

 

 

 続いてはどうやら中学生五人による連携戦であるらしい。省略。

 

「某十万歳の悪魔閣下がセルフカバーした楽曲の冒頭みたいにしてんじゃねえよ!?」

 

 どうやら今回(も)人吉君は突っ込み役に回ってくれるようである。流石にやる気がなさすぎたか、と反省しよう。まあ、簡単に描写させてもらえば、五人によるチームプレーで視線を右左に翻弄させ、シュートを上手く決めようとするも、黒神ファントム(ちゃんとした版)により阻まれ、PK戦ではなくPK勝負である以上阻まれてもインプレーであると主張して(喜々津さん発案)ヘディングシュートを決めようとするも(鰐塚さん)、今度は普通にパンチングで阻まれ終了、という結果だった。

 

 次あたりに出ようかとも思ったが、どうやら喜界島さんが先に蹴るつもりであるらしい。まさかやるつもりになるとは思わなかった。副賞がそれだけ魅力的なんだろうけれども。

 

「だが残念だなぁ。改神モードを使うまでもなく止められてしまったか………」

 

 当然と言えば当然である。喜界島さんの運動能力の真髄は先程解説した通り、水中でこそ発揮される。無論基本的な運動能力がないわけではなく、少し複雑な陸上におけるスポーツ………、例えば球技だな。そういったものが苦手であるだけなんだが。むしろマラソンなんかは得意なはずだ。だが、残念ながら今回のボーナスステージはPK勝負。喜界島さんの最も苦手とするところである。蹴っても上手くボールが飛ばず、会長様の前でワンバウンド、きっちりとキャッチングされてしまった。

 

「………いよいよもって私が出なければならないか……ん?よし、良い事を思いついた」

 

「どうしたんだ海路口、いきなり悪そうな笑みを浮かべたりして」

 

 ………コイツはあとでお仕置きだ。

 

「…まあ、それはいいとして。人吉君、ちょっと頼みがあるんだが………」

 

 

 

 

 さて、私が何を思いついたのかというと、単純な話である。勝率を上げるためには協力プレイが必要不可欠だ、というのは喜々津さんが既に思いつき、実施したわけだが、そこから少し発展させてみた。というか非常に馬鹿げたものではあるのだが。

 

「私と人吉君は同時挑戦にさせてもらってもいいか?」

 

「うん?無論構わんが………随分と仲良くなったようだな」

 

「は?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

………………………………………………………。

 

「さて、それじゃあ人吉君、手筈通り頼んだぞ?」

 

「お、おう」

 

 そういって、私達は中央にボールをおき、そこから左右にそれぞれ分かれる。まったく同じだけ距離をとり、丁度ボールを集中点としたY字になるような感じの立ち位置につく。人吉君と目を合わせ、相手の呼吸を確認する。走り出すタイミングを完全に一致させ、まったく同じスピードを保ち、ボールに集中する。蹴る位置は左右対称に、力の入れ方も全く一緒に。言葉で表すのは簡単だが、実際に行動するのは難しい所業を、しかし私達は完全に遂行した。

 

「なッ!?」

 

 両サイドから同時に蹴ったボールは、生まれるべき回転がなく、所謂ブレ球として会長様の少し右を狙って突き進む。阿久根先輩が魅せた見事なシュートと、どちらが先に蹴るか、或いはどちらがフェイントであるかをミスリードさせるという候補生たちの作戦、その両方を兼ね備えたシュート。観察を主眼に置いた会長様の改神モードにおける弱点を極限までついた一発。ついでに。

 

「ちゃんとした黒神ファントムなんて言うが、質量のある物体が光速で動くなどということは『不可能だ』」

 

 自然界、というか人間の作りだした規則を、G先輩の能力で上乗せした言葉。黒神ファントム(ちゃんとした版)を放とうとした会長様は、しかしそのままその場で動けない。どうやらまだ会長様は人間を辞めていなかったようで何よりである。そのままサッカーボールはゴールネットを揺らした。

 

 

 

 

 

「――――という、夢を見たんだ」

 

「夢でも何でもなく現実だよ!!!?」

 

「じゃあ、幻想」

 

「現実だって!!!」

 

「人吉君、たまにはカッコいいところを見せたいからって、妄想を吐露するのはよくないんじゃないか?」

 

「お前こそ今までちゃんと流れてた話をぶった切って終わろうとしてんじゃねえよ!!?」

 

「まったく人吉君は叫んでばかりだなぁ。そんなことばかりしていると喉を壊すぞ?」

 

「………やっぱり貴様ら、仲がいいんじゃないか?」

 

「「………え?」」

 

「………ん?」

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