異常者が集うこの学園で、普通であることは異常なのか   作:のろし

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一応この物語の主人公である以上、普通はこういう葛藤もしなければならないと思うんだ。

「さて、副賞に関してなんだが、以前にじファンで投稿していた際に頂いた意見から採用させていただいた。その際はたくさんの意見を頂き真に感謝している。と、土下座している作者が画面の向こうにいると思ってくれ。気持ち悪いだろう?」

 

「………なあ、一体何の話をしてるんだ?」

 

「メタになるから気にするな」

 

「その発言からしてもうアウトだからな………?」

 

 

 

 

 

「………もう一回だけ言ってみろ」

 

「いい加減覚えてくれないか?私の副賞は、『此処の候補者を含め、学園内の私の知人を、好きなときに、好きに衣装を替え愛でることが出来る権利』だと言っているじゃないか。ああ、一応会長様も入っているからな?」

 

「………よく聞こえなかった、もう一回言ってみてくれ」

 

「『学園内の知人を好きなときに好きな衣装で愛でる権利』が欲しい」

 

「………もう一度言ってくれ」

 

「『学園内の知り合いを、好きなときに好きな衣装で可愛がらせろ』と言っているんだ」

 

「もう一度」

 

「お前は冒険に出たくないひきこもり勇者を強制的に旅に出そうとする国王か?」

 

「…………どうやら夢ではないようだな」

 

 そういって崩れ落ちる会長様。珍しいものが見られたので写メをして不知火さんに転送してみる。しばらくして返信が来た。『何この光景(笑)マジで受けるんですけど♪』とのこと。まあ、私もお願いが通ってしまえばそれはそれで笑えるのだが。

 

 既に人影はない。私の副賞は今この場で言えるものではないから、と先に終礼を済ませ、候補生らを帰宅の途に就かせたのだ。そして、今この場には三人しかいない。一人は私、一人は会長様。

 

「で、どうするんだ?まさか会長様ともあろうものが副賞について異議を出すとも思えんが」

 

「いや……しかしな…」

 

「思いつかずギリギリになってしまったことについては会長様も同意した上のことであるし、今更反故にするのは人の上に立つ人間としてどうかと思うんだが」

 

「………」

 

 ………まったく、意外と遅いな。

 

「仮に反故にするにしろ、決断にこれほど時間をかけるなど、人の上に立つ者の裁量とは思えないぞ?」

 

「いや、だが実際生徒会メンバーだけで済まない事を私の一存で決めるわけには……」

 

「今までそういった場面は結構あったと思うが?フラスコ計画だって本当なら会長様の一存で潰すわけにはいかないものだったわけだが」

 

 と、私が会長様を虐めにかかろうとしたところで、人吉君が止めに入った。…漸くか。そう、三人目は人吉君だったのだ。

 

「なあ、海路口。もし副賞が出ないことに納得いかないんだったら、俺も副賞は辞退するからさ、そもそも副賞がなかったことにできないか?」

 

「……善吉、それはできん。私の不徳によって発生した問題に、貴様を巻き込むわけには…」

 

「けどさ、実際問題としてコイツの知人全員に許可してもらうなんて難しすぎるだろ。鬼瀬だって生徒会とは折り合い悪いし、マイナス十三組に至ってはめだかちゃんに良い感情を持ってるわけじゃない。不知火だって素直に言うことを聞く筈もないぜ?なら、むしろ俺が副賞を貰わないことで、コイツも無理してもらおうなんて思わないんじゃねえのか?」

 

「ぬ………」

 

 なるほど、中々に考えているじゃないか。私がどうすれば黙らざるを得ないか、その一部についてはちゃんとクリアーしている。まあ、及第点くらいは与えてもいいかとも思える。

 

「ふむ、確かに二人の優勝者の内、一方が副賞を貰えて一方が貰えないというのはあまりいいものではないし、そうなったら私は辞退もするだろうな」

 

「しかし、それは私の言葉に責任を持たないことと同義だ。海路口同級生がどういう難問を出してきたとしても、それが私の言葉を覆して良い理由にはならん!」

 

「…めだかちゃん、それはだめだ。それはいけないぜ」

 

 めだかちゃんの言葉にかなり顔を顰める人吉君。前々から言っていたんだが、私は人吉君を評価しているわけだ。そして、その真価が発揮される。

 

「今回無茶な要求をしてきてるのは間違いなく海路口だと俺は思う。球磨川の要求と同じくらいに。そんなむちゃな要求に、めだかちゃんはいま約束だからって理由だけで他人に迷惑を掛けそうになってるんだ。海路口の副賞を実現するために、そんなむちゃな要求を本気で実行しようとして、コイツの知り合い全部回って提案して無理にでもお願いするのか?海路口の願いをかなえるために、めだかちゃんは多数を犠牲にできるのかよ?」

 

「し、しかしな、善吉」

 

「しかしもお菓子もねえんだよ。めだかちゃん、お前はいま、生徒会長なんだぜ?生徒の安全と安心と平和な生活を守る立場の人間なんだぜ?お前が守るべきなのはなんなんだ?無茶な副賞のお願いをかなえるというプライドか?それともコイツらの知人を守って、コイツをなんとか説得するという黒神めだかという人間か?」

 

 ………うむ、やはり間近で人の成長を見るのは楽しいものだ。私には起こり得ない事態をどんどん見せてくれる。

 

「まったくもってその通りだな。人吉君はどうやら非常に成長してくれていたようだ。会長様、私は確かに副賞にとんでもない物を要求している。だが、それは本当に与えるべきものなのか?貴女の立場で、約束だからと許可して良い類のものか?なるほど、確かに約束という物は非常に重いものだと思う。私も自身が守れる約束であれば、全力を賭して守るという人間だ。社会的規範だからな。だが、貴女が受けたそれは、守れる約束で、かなえられる願望なのか?かなえるとして、一体どれだけの人に迷惑をかけるんだ?自分の言葉にとらわれるあまりに、他者をないがしろにする、それは貴女の本意ではないはずだぞ?」

 

 私は此処まで一気呵成に言い、会長様の言葉を待つ。会長様は混乱しつつ、しばらく沈黙を守っており、これはもう一言必要なのだろうか、と思ったところで人吉君が会長様へ語りかけた。

 

「…もし、めだかちゃんがそれでも自分の矜持に固執しているなら、めだかちゃん。お前は間違ってるぜ?ちょっと前までの俺ならこの言葉、直に撤回する事になったかもしれねえが、俺はめだかちゃんに嫌われてもいい。めだかちゃんがそんな人間になり下がるのを阻止するためなら、それくらいは安いと思ってるんだ」

 

「………善吉ぃ…」

 

「…さて、敢えて空気を読まずに言わせてもらうぞ?いつも読んでないだろうなんて言われても答えないからな。黒神生徒会長、私の副賞、受理するか、否か」

 

「……申し訳ないが、私にはそんなことはできん。お前の副賞は、受理しない」

 

「人吉君の副賞も一緒になくなるが?」

 

「…善吉?」

 

「カッ!構わねえよ。俺が原因で女子がコスプレして海路口に愛でられなきゃいけなくなったとか言われたら嫌だしな!」

 

「…そうか。では、今回の優勝者への副賞は無しだ。すまない」

 

「ふむ、わかった。…会長様、いや、黒神めだかさん。会長として、その解答こそがベストだと思うよ。良い決断だ。そして、これで私はちゃんと貴女を生徒会長と認められる」

 

 その言葉に怪訝そうな顔を浮かべる会長様。無理もないだろう。実際もうすでに会長職は彼女の手にあり、私が認める必要もないんだから。

 

「人吉君には無理してお願いしていたんだが………。私のリコールを頼んだときからだから随分ハードにお願いを続けてしまったな。めだかさん、私が会長であったころ、生徒会の機能はどういったものだった?」

 

「事務的な意味ならば、きっと私以上の働きが出来ていたはずだ。そもそも私はリコールをするつもりなどなかったんだから。善吉と周りから説得されたからこそ、立ち場的に一番上に名を連ねただけだしな」

 

「そりゃあ乗り気になるとも思えないよな。実務は私も普通にこなしていたからな。いいか、会長職というのは本来調整役だ。学園内で起こるいろいろな事象をあちらこちらにお伺いを立てて解消していく。実際そんな書類が多かったのは言うまでもないだろう?そして、リーダーシップ。本当なら生徒会の長に必要な能力じゃない。私でも務められたんだからな。だが、リーダーシップは生徒会に必要なのではなく、生徒に必要なんだ。自分たちを守り、引っ張ってくれる存在。それが必要だから、生徒会長にはリーダーシップが求められる」

 

 此処までは分かるよな、と聞くと、会長様は当然だとばかりに頷く。

 

「そう、私に足りないものはリーダーシップだった。残念ながら人望はなくてね。だが、それでもマイナス十三組の暴挙を止めた、というところで一応の評価は受けてしまった。あの時に解職しておかないと、しかも私が解職した貴女が奪還しないと、生徒会は形骸化していっただろう。あの時点では未だに私の方が事務能力も高かったしな。人吉君にお願いして、署名を集めてもらっていた。私のスキャンダルをネタにしてね」

 

「……あれは、貴様の自作自演だったと?」

 

「私には成長がない。貴女には成長しかない。貴女には人望があり、私にはない。高校というちっぽけな箱庭の中で、安心して生きるには心優しいリーダーが必要だ。そのために、私は会長様に育って欲しかった。会長職を通じてね。今回が仕上げだ。これで貴女は、ちゃんとNOが言える存在になった。約束に固執する人間ではなくなった。貴女は………会長として最高の人物になった」

 

「………!」

 

「私に成長を見せてくれて、本当にうれしく思うよ。これで生徒会長になるための成長は完了した。後は……」

 

「…ああ、より良き生徒会長として、成長していくことを約束しよう、四方寄」

 

「ん~…最後の最後で残念だったな」

 

「何がだよ。十分な意気込みがもらえたじゃねえか」

 

「生徒会長も大事だが、それ以上に……貴女という人間として、成長していけ。自分があこがれる自分になるために、努力していけ。人吉君は当然、サポートしてくれるさ。ときに諌め、ときに宥め、ときに共感してくれる、多分最高のパートナーだと思うよ。二人して、頑張っていけ」

 

「「……………ああ、勿論だ!」」

 

 

 

 

 

 

 さて、そんなわけでオリエンテーションは終わったわけだ。私はどうせだからと後片付けの作業を一人で行い(手伝うと言ってきた奴らは説得して帰らせた)、いまはあらかた作業も終了しているところである。

 

「やあ、四方寄ちゃん。オリエンテーション優勝おめでとう」

 

「ああ、なじみちゃんか。ありがとう。中々に楽しかった」

 

「………きみには本当に驚かされるぜ、まさか人吉君を優勝させちまうなんてね。彼は『僕にとって第一候補だったんだけど』」

 

「………やはり人吉君を狙っていたのだなぁ。私は一番狙いやすい人間に近づいていただけなんだが、その様子だとどうやら本当にそのつもりだったか。会長様達の絆を分裂させ、人吉君を主軸にフラスコ計画を進行するつもりだったんだろう?」

 

「お見通しなんだね、その通りさ。だが、まさかまさかの展開だったよ。君という異分子(イレギュラー)がいたことで、僕の計算はえらく狂ってしまった」

 

「それは申し訳ないな。私にできることであれば出来る限りの詫びをするが?」

 

 そこまで言うと、なじみちゃんはしてやったりといった顔で、私に話しかけてきた。まあ、それもこれも元々は私の行動に繋がる話だったわけだし、今更そんな顔をしたところで最初から顔が割れている黒幕ほど怖くないものもなく、私はその顔をとりあえず左右に引っ張ることにした。

 

「いふぁい、ふぁふぃふんふぉふぁ!?」痛い、なにすんのさ!?

 

「そういう如何にも企んでます、っていう顔を見ると自然とな、なんだか抓って伸ばしたくなるんだ。………で、一体何をたくらんでいるのかな、可愛い可愛い安心院さんは?」

 

「え………?なじみちゃんじゃなくて………ああ、そうだね、たくらみだね。僕の企みに乗る気はないかな?あの二人が成長した今、どうにもアレを切り崩すのは難しそうでね、そこを行くときみは結構簡単に………」

 

「安心院なじみ、一体どれだけ生きているかは知らないけれど、我らの大先輩よ。私の持論なのだが、年寄りはどうにも話が長くて宜しくない。もっと簡潔に話してくれないか?」

 

「………そうだね、きみみたいに相手の裏を簡単に読める人間に言葉を飾っても仕方がないよね。単刀直入に聞こう………」

 

―――――――フラスコ計画に、加担する気はないかな?―――――――

 

 

 

 

 

 

 私は自室のベッドで休んでいる。昼間に言われたことを反芻しながら。それは私にとってある種とても恐ろしい提案で、おぞましい提案で………魅力的な提案だった。

 

「完全な人間なら…成長もできるのだろうか」

 

 私には、私の血統には常について回る、無成長ぶり。私がフラスコ計画の検体になって、完全な人間……というか、成長できる人間になれるのなら………。

 

「あの時に、泣けたのだろうか?…あの時に、怒れたのだろうか……、あの時に………」

 

 自問が頭を駆け巡る。当然だろう、そこまで心を揺さぶられるほどに、魅惑的な提案だったのだから。

 

「……もしかしたら、『アレ』だって解決できるかもしれない。一京のスキルを持つなら………」

 

 私は淡い期待に胸を包まれる。我が家系の祖からの悩みが、解決するかもしれない大事なのだ。

 

「…誰に聞いても、多分答えは同じなんだろうからなぁ」

 

 恐らく親戚は諸手を挙げて賛成するだろうし、両親も反対はしないのだろう。我々がずっと抱えてきた課題の、足がかりをつかめたのだから。

 

「結局………私が決めるしかないんだよな。………返事は明日、か」

 

 そんなことを考えつつ、既に深夜と呼んでもいい時間を迎えた私は、過去に思いを馳せつつ眠りについた。

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