心を穿つ俺が居る   作:トーマフ・イーシャ

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比企谷八幡は自分のやり方に酔っている。
雪ノ下雪乃は口だけで行動することはない。
由比ヶ浜結衣は恋愛脳を拗らせている。
平塚静は暴力と権力を振り回す。
葉山隼人は性善説の理想論しか持てない。

SSを読んでたらこんなことみんな知っている。いつだって、何度だって、そういったSSは投稿されてる。この作品のテーマは”間違っている”。誤解を提示されている以上、あとからその誤解を発見、指摘、糾弾、訂正、完解、暴露、修正、改竄することなんて簡単。問題はどう見せるか。

だから、ごめんなさい。今回は、ただただ間違いを指摘するだけのような、そんな話。


真っ当な思考と正しい思考

俺は、平塚先生に連行され、奉仕部とかいう生徒のお悩み相談を行っているらしい部活に叩きこまれた。そこにいたこの部に所属していると思われる女と言い合いになり、話はどんどんおかしな方向に進み……

 

静「なら、これから君たちの下に悩める子羊を導く。彼らを君たちなりに救ってみたまえ。自らの正義を証明するのは己の行動のみ!自らの正しさを示すために勝負するんだ。だが、ただ勝負しても面白くない。君たちにもメリットを用意しよう。勝ったほうが負けたほうになんでも命令できる、という権利をやろう。勝負の裁定は私が下す。基準はもちろん私の独断と偏見だ。どうだ?やるか?」

 

八幡「はぁ?やるわけないじゃないですか」

 

静「なんだ?勝つ自信がないのか?勝てば女子への命令権だぞ?それともあれか?君は女子に興味がないのか?」

 

八幡「いや当たり前でしょう。独断と偏見で裁定するって言われてどこから勝つ自信が出るんですか」

 

雪乃「あら、勝つ前から諦めて逃げるのね。それなら、誰が見ても明らかなくらいの結果を出せばいいのではなくて?相手が自ら負けを認めるくらいに叩き潰せば勝敗は明白でしょうに」

 

八幡「……そんなに威張って恥ずかしくないのか?」

 

雪乃「あら、それは私があなたに勝てるはずがないとでもいいたいのかしら。さっきと言っていることが真逆ね」

 

八幡「いや違うだろ。この勝負、雪ノ下が勝つに決まってんだろ。むしろ雪ノ下が負けたらお前、失笑ものだぞ」

 

雪乃「……私が優秀かどうかはともかく、あなたこそ恥ずかしくないのかしら。負ける前から負けを認めるなら、勝てるように努力するのが当然でしょう。そればかりか自分の弱さを公言してハードルを下げようとするなんて」

 

八幡「いや違うだろ。ここは生徒が悩みを相談する部活で、お前はその部員で、俺は今までこの部の存在すら知らなかった人間だぜ?」

 

雪乃「だからなんだというのかしら」

 

八幡「まだ分からねえのか?つまりこの勝負は、例えるならラーメン店の店員と客のどちらがうまいラーメンを作れるか競うようなもんだろ。奉仕部に所属している、つまりラーメンの作り方もノウハウも知っている雪ノ下と全く知識がない俺が勝負だって?おまけに最終的な勝敗を判定するのはいわば奉仕部顧問……要はこのラーメン屋の店長の独断と偏見。

 確かにお前なら勝って当然だろ。なんせプロと素人が勝負して、その判定はプロの身内の人間がするんだからな。お前、恥ずかしくないの?負けて当然?当たり前だろ。何も知らない素人と戦って勝って嬉しいのか?」

 

雪乃「それなら、努力して勝てるようになればいいでしょう。多少のハンデがあるからって、負けを認める理由にはならないわ」

 

八幡「そのセリフはハンデを持ってる人間がいうことじゃないと思うがな。あと、平塚先生に導かれた生徒の悩みを解決してその結果を見るってことは、あれだろ?俺や雪ノ下が作ったラーメンを客に食わせるってことだろ?ラーメンなら金を払って、生徒なら深刻な悩みを抱えてきているのに、提供する側がこんな裏で素人が関わってるとか客で遊んでるって知ったら、俺ならこんなところ二度と来ないな。今時異物混入ですらネットで大々的に叩かれてるんだぞ?俺みたいな素人が関わって問題起こしたらどうするんだ?俺は下手に関与出来ないだろ」

 

静「安心したまえ、この奉仕部は発足してから日が浅い。つまり、それほどノウハウもたまってはいない。今はそういったことを少しずつ模索している段階だ。だから、君にも十分勝機はあるぞ」

 

俺は憤りを感じた。いや、真実怒ったと言ってもいい。

 

八幡「つまり、あれですか。こんなノウハウも経験も実績もろくにないような浅い部活で俺を更生させようとしたってことですか?」

 

雪乃「まあ、確かにこんな腐った目を持った男の更生なんて奇怪な依頼は初めてね」

 

八幡「……ふざけんなよ。そんな部活に拘束されて更生?そんなもん、安心出来るわけねえだろ。こっちはお前の上司に無理矢理連行されたんだぞ?」

 

雪乃「安心出来ない?なめられたものね。あなたを更生させるなんてことを私が出来ないとでも?」

 

八幡「実績がないからそう判断しているだけだ」

 

静「確かに、奉仕部にはまだ実績がないかもしれない。だが、何事も最初は実績もノウハウもないだろう。経験を積んでいってこそそういったものは生まれるのだろう?」

 

八幡「……だからって俺をサンプルにでもする気ですか?こっちとしてはたまったもんじゃねぇよ。これだったら、こんな何にもない訳の分からんところじゃなくて素直に実績もノウハウもある適切なカウンセリング施設に行くわ!」

 

俺は奉仕部室を出た。

 

後日、奉仕部があるから総武高校のスクールカウンセラーは不要だという意見が上がったのは別の話。

 

 


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