東方孤戦漢 〜Replacing and Revolution of Bioenergy.   作:影のビツケンヌ

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ここ最近、初期と比べて文章の劣化が激しいことに悩みを抱えております。
自分特有の説明文チックな癖がどんどん出てきていて、内面描写の不足や語彙の貧弱さも露呈してきています。

しかぁし! ビツケンヌはここで諦めるようなヤワな男ではない!
絶対に完走してやるぞおおおうおおおおおおおお(強制終了


今回もまた幻想郷の地理に関して独自設定が存在します。

十六年一月十八日、本文傍点形式修正


Rebelling

 「この腕はどうにかならんのか?」

 

小櫃が目覚めて半日程経過している。

 各地がオリジンギアの襲撃に遭う中で、永遠亭だけはそれまでと同じ平静を保っていた。方向を見失いやすい迷いの竹林に踏み入ることを恐れているのではないか、と藍は推測しているが、それでもいつ攻められるかわかったものではない。生体攻撃兵器を扱えるのが小櫃だけである以上、落とされる危険性も高い。

 

「培養皮膚にまだ神経が通っていないのね。我慢しなさいな、そのうち戦える位には回復するわよ」

「だといいんだがな…」

 

小櫃は自分もオリジンギアとの戦いに参入したかったが、()()の調子が戻らず万全とはいえない状態だ。

 九年前、小櫃は一度左腕を失った。彼の筋電義手を作ろうと素子とにとりが奮闘していた時、丁度幻想郷に迷い込んできたジェイビークと出会い、彼の協力を得て、開発コードFH-1、後にイシュタルFV-0と小櫃に命名されるロボットアームが完成した。外の世界での一般的な義手と異なり、小櫃に取り付けられたこれは身体と完全に融合させてしまう為サイボーグに近い。腕が切断された際に体内に残っていた上腕骨の一部を取り除き、タンタル製人工骨格を用いた義手を腱と神経系に繋ぎ合わせた後、血管や神経組織を張り巡らせた培養皮膚で全体を覆い隠す。お陰で世間一般に認知されているサイボーグの姿とは一線を画した大分有機的な見た目を維持できている。輝夜の能力で『永遠』にされているので、機械のメンテナンスもいらない。

 とはいえ培養皮膚は生体部品であり、小櫃を昏倒させた小瓶の爆発で大きく傷付いてしまった。永琳は回復が難しいことを理解すると、培養皮膚を張り替えることにし、眠っている小櫃に手術を施したのだ。

 

「手術で麻酔が五人分飛んだわ。インフィニタスの毒への耐性ってこういう時不便よねえ」

「…取り敢えず、謝ろう。俺は部屋を片付けてくる」

 

 永遠亭が竹林ごと焼き払われる可能性も否定できないので、現在永琳を代表とした永遠亭の住人達は、竹林のほぼ真下に存在する地底の洋館、『地霊殿』に避難する準備をしている。丁度灼熱地獄跡の入り口に蓋をするように建つ、覚妖怪の古明地姉妹とそのペット達が大勢暮らしている館だ。

 地上と同じく攻撃を受けた旧都は、至る所でオリジンギアの戦闘員が徘徊し物々しい雰囲気になっているが、地霊殿だけは一切手を付けられていないらしい。その思惑は未だ不明であるものの、広いが攻撃を防げる遮蔽物が少ない、おまけに耐火性の殆どない永遠亭に引き篭もるよりは、最前線であっても堅固でセキュリティレベルの高い――古明地姉妹のペットには高い知能と戦闘能力を持つ人型に近い妖獣も多くいるのだ――地霊殿に身を寄せるのが得策だと判断した結果、そこへの移動が決定したのである。

 

 「……」

 

永琳との会話を終えた小櫃は、自室に戻って少ない荷物を整理しながら、これからのことを考えていた。地霊殿への避難が完了し次第、ブロークンタスクの拠点を移動先に設け、部隊を少数精鋭の者で組織し直し、オリジンギアの拠点と見られる紅魔館へ侵入、内部から陥落させる。非常に大雑把なものだが、小櫃は常にそれで頭をいっぱいにしていた。…そうでもしなければ、自分の不在が招いた犠牲に居た堪れなくなってしまうから。

 ふと、彼の脳裏にこの場にいないにとりの姿が過った。

 にとりはオリジンギアの目から逃れていち早く永遠亭に逃げ込み、現在は地霊殿でアルバートの専用武器を作っている。

 素子と二人で解析し研究していた技術を奪われ、悪用されていることを、彼女はどう思っているのだろうか。自分の発明には絶対の自信と誇りを持っている彼女の目に、オリジンギアが自分達の発明を理不尽な暴力に用いる今の世界は、どう映っているのだろうか。

 次いで思い起こされた、自分の寝ていた床の周りの死体。犠牲になったのがそれだけでないことなど子供でもわかる。抗えぬ力に虐げられ、奪われ、壊される――オリジンギアという、巨悪によって。

 

 「……!!」

 

勢いを弱めていた小櫃の意思の炎は、その怒りによって再び激しく燃え上がり始めた。

 悪にも悪なりの正義がある。善悪の線引きは主観的なものでしかない。かつて小櫃はそれを否定した。人々の努力によって作られる平和、守られる安寧、それらを乱すものを悪だと定義した。曖昧である故に絶対性を維持できる形で悪を見据えた。そしてその悉くを滅すものを正義だと結論付けた。悪がなくなれば正義も要らないと割り切った。

 彼の根幹を成す感情、それは義憤。世にのさばる悪への強い憎悪、そして悪を滅ぼすことを真髄とする正義観は、小櫃の過去に由来するものだ。

 彼が目を閉じれば、その血塗られた幼き記憶はありありと蘇る。戦いに身を投じる切っ掛けとなった、忌々しく凄惨な過去。

 

 「…悪は滅びる。正義に勝てぬから」

 

小櫃は目を開き、呟く。自分に言い聞かせるように。元より自ら決めたこと。最早かつての世界と同じく戦うよりないならば、たとえどんな悪が幾度現れ立ち塞がろうとも、その全てを灰燼に帰して以って己が正義と為す。

 それこそが自分――四島小櫃なのだから。

 

 「ああっ、駄目ですって! まだ培養皮膚を貼り付けてないんですから!!」

「知るかぁーっ!!」

 

しかし空気を読まない者というのは必ず存在する。障子を隔てた縁側から、何者かが床板を踏み抜きそうな程の足音を立てて走ってくる音が聞こえてきた。足音の主は小櫃の部屋の前で停止し、音高く障子を開け放って、

 

「小櫃ー!!」

 

彼の胸元に顔面から突撃した。

 

「ぬおっ?!」

「うわああああああああ小櫃も起ぎないで死んじゃうがど思っだああああぁぁあぁ…!!」

 

空気を読まないというより、空気を変えたという方が正しいかもしれない。彼女は受け止められるなり堰を切ったように泣き出した。余程小櫃を心配していたと見える。

 白のブラウスに緑のスカートを着、長い黒髪に緑の大きなリボンをつけている。背は身長約一八〇センチの小櫃より一回りも高く、豊かな胸と合わせて存在感は格別だ。

 

「…空」

「ぐすっ、お燐も死んじゃって、いっぱい死んじゃって、それで小櫃までなんて嫌だったからぁ…ひぐっ」

 

霊烏路(れいうじ)(うつほ)。古命地姉妹の姉、さとりのペットの地獄鴉である。地霊殿を出ていた彼女はオリジンギアとの戦いで負傷し、ここに運び込まれていたのだ。その‘負傷’は、小櫃が直後に感じた違和感。

 

「お前…翼と‘目’はどうした?」

 

 地獄鴉は地上にいたカラスから分化してきた種で、人に近い姿をとれば鴉天狗のそれよりも巨大な翼――翼開長およそ三メートル、アスペクト比は通常のカラスと同程度――を背中に有する。更に空は守矢神社の神の一柱、八坂(やさか)神奈子(かなこ)によって太陽の化身八咫烏(ヤタガラス)の神霊を身体に宿し、『核を操る程度の能力』を手に入れ、同時に胸部に神霊が宿る器官『赤の目』ができた。

 だが、今の空にはそのどちらもない。

 

「……」

 

空は涙を拭い、小櫃から離れて座った。

 ブラウスを着た背中から、そろりと無機質な金属製の‘腕’が現れる。三本の鉤爪が付いたそれは左右二メートルに広がり、軽く上下すると、‘腕’の下から青白い光が溢れ、翼の形に形成された。

 

「…バイオウィング?」

 

小櫃の胸に、手術を受けてサイボーグとなった師匠展人が去来する。スキャニングで視えた機械と生体組織の結合部には、コーカサスでは珍しくなかったサイボーグ手術の意匠が見られた。サイボーグ手術の第一人者であった、熊谷のどかの技術が。

 そもそもサイボーグ(cyborg)とはサイバネティックオーガニズム(cybernetic organism)の略称で、生命体と機械の自動制御系を融合する、現在も外の世界で研究が進められている技術である。二一二九年の地球ではサイボーグ化は極普通のことであり、交通事故などで欠損した四肢の再生、筋ジストロフィーなどで弱った筋肉の置き換えの他に、神経接続によって文字通り腕を増やすなど、健常者にもサイボーグとなる者がいる。展人はリディアの作った追加人工筋肉機構『ザ・キメラ』を改造し、計六枚の‘翅’を持つ『マグネイズフライヤーパック』なる飛行ユニットにして背中に取り付け、時速四十キロ以上で空を飛ぶことができた。

 しかし小櫃は、それらの技術を幻想郷に持ち込んだ覚えはない。飛行原理こそ違えど――マグネイズフライヤーパックはトンボと同じ原理で飛び、空の翼はバイオエナジーの翼面形成で飛ぶ――、それを作る術を誰が持ち合わせていようか。

 

「翼も目も、もがれた。私は、もう核の力も使えない…八坂様に、申し訳が立たないよぉ…」

 

空は両手で顔を覆い、また泣き出しそうになる。

 

 「迂闊だったよ」

 

縁側の左手から、最初からそこにいたかのようにジェイビークが現れた。

 

「ジェイ…幻想郷に来ていたのか」

 

小櫃は納得した。ジェイビークはチョウゾの優れた技術的知識だけでなく、惑星ターロンⅣに住んでいた彼の部族の特徴として、様々な超能力を扱うことができる。大方、自分が眠っている間に読心(リーディング)能力で記憶を読んだのだろう。しかし、「迂闊だった」とはどういうことなのか。そんな小櫃の心中を察してか、ジェイビークは肩を小さく竦め、経緯を話し始める。

 

「紫に呼ばれて、天魔さんと話をする為にね。でも紫と別れてすぐに、妖怪の山が襲撃に遭った。何人かの天狗に付き添われて山を降りたはいいが、紫と連絡も取れないし、隠れ場所を求めて地底に降りたんだ。グラビティスーツを安置した遺跡で空と出会って、彼女にその能力を託したが…まさか核の力を奪われるとは…」

 

 グラビティスーツは、防御力を向上し、特殊な力場で液体の抵抗や異常な重力場の影響を軽減するだけでなく、マグマのような超高温の環境下での活動を可能にするチョウゾテクノロジーである。九年前、旧都のはずれにあった鳥人族遺跡に安置されているのが見つかったが、適合する者がおらず放置されていた。つまり空は、この危機に及んでチョウゾに選ばれたことになる。その力を以ってしても、彼女はオリジンギアに敗れたのだ。

 

「空の戦闘能力の低下の問題もあるが、何より…オリジンギアが、モノポールドライブ以外の電力供給源を得てしまったというのが大きい。八咫烏の神霊が宿った赤の目さえあれば、彼らは核融合発電など容易くやり遂げるだろう。…彼らの中には、河童達もいるからね」

 

オリジンギアの中に河童がいる。それを聞いて、小櫃は瞠目した。

 

「河童だと?! 寝返ったのか?!」

「違う、そうではないよ。河童が何も地上にいるのだけとは限らない。実のところ、オリジンギアの隊員は種族や地の上下を問わず、今の幻想郷に対して何らかの不満を持っている者ばかりだ。仲間に嫌われて地底に放逐された(河童)がいても不思議はないだろう?」

 

 幻想郷に対する不満というのは、どこにでも存在する。人間で例を挙げれば、幻想郷という狭い世界に閉じ込められ、妖怪の賢者達に‘飼われて’いるという現状。妖怪の場合は、スペルカードルールの制定により、それ以前のように好き勝手暴れ回ることができないという閉塞感。

 恒久的支配からの脱却、不安定に過ぎる均衡の破壊。

 彼らがオリジンギア、即ち原初の歯車(Origin Gear)を名乗ったのは、抑圧された者達の解放、そして彼らの時代を動かすべく最初に動き出すということを宣伝する意があったのだった。

 

 「藍か永琳に説明を受けただろうが、現在ルーミア率いるダスクイーターが魔法の森に向けて進行し、チルノが人里を巡回している。勿論私もできる限りのことはするつもりさ。弾蔵とやらが果たして何者かは知らないが、世話になった人々のいるこの世界を荒らされるのはいい気がしないからね」

 

 しかし小櫃は、ジェイビークの言葉に賛同する一方で、自分が会ったあの男が本当にオリジンギアによる悪行の首謀者なのか疑わしく思っていた。

 彼と玄武の沢で初めて会ったあの時。弾蔵のバイオエナジーの流動パターンからして、およそこのような闘争と破壊と略奪を指示する危険な人格の持ち主だとは到底思えなかったのだ。あれはむしろ、人を慈しみ、人の為を思い、強い意志を持って行動する、そんな感じだ、と。

 きっと何かある。

 なりすまし、洗脳、多重人格、指揮能力の不足、組織の暴走…様々な可能性が浮かぶが、そのどれもが、彼本来の意思ではないことで共通していた。

 だが、もしも。もしも彼が自分の意思で、この状況を作り出したのだとすれば。

 彼には何か、常人には決して理解の及ばない崇高な目的があるのではないか。

 

 「……」

 

 小櫃の疑問は尽きない。

 どのみち彼に直接それを訊くには、オリジンギアと徹底的に戦う必要がある。

 

 「ん…何?」

 

その時、ジェイビークの扱う超能力の一つクレアボヤンスが、人里にいるチルノからの信号を捉えた。

 

「人里が襲われている…?!」

 

 敵は、すぐ近くまで迫っている。




メインヒロインの筈である鈴仙がState 2.に未だ出てこないという矛盾。
それも直に解消されるでしょう。…多分。
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