Dragon×strife   作:くるみわりナックル

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 取り敢えず一話まで……。
 書き溜めてる分は一日置きで予約投稿設定しておきます。
 まぁ……十話ないんですけどね……。


陽のあたる世界で学生生活!

 霧咲真一が育った場所、陽の当たらないアンダーグラウンドな世界……故郷とも言えるその場所を捨て、家業の何でも屋を廃業して陽の当たる表の世界へ出てきて三ヶ月。

 戸籍を金で買い、中古物件で売りに出されていた家を、金で雇った代理人を使って購入。

 駒王学園を受ける為の準備を整え、ようやく受験という流れに漕ぎ着けるまでの時間が三ヶ月と言う時間だった。

 各所への金や昔の人脈を使っての根回しに多大な時間を取られつつも、しっかりと準備は済ませた真一。

 短期間の内に多大な苦労をして作り上げた霧咲真一と言う人物のプロフィールは、こうだ。

 

 霧咲真一、現十五歳。

 両親共に既に死亡しており、孤児となった後養護施設へとその身柄を移される。

 事故で亡くなった両親の資産の受取人は当然真一になっており、ある程度以上の資産を保有しているが、その資産管理は一時的に身元保証人になった養護施設の院長に委ねられている。

 小学までの教育は養護施設においてその課程を修了した事を保証され、両親の遺した資産を使い、養護施設の院長が身元の保証人となって中学へと通う。

 中学卒業後は身元保証人となった院長の名を借りて、必要書類と共に養護施設を出る。

 両親の資産で購入した一軒家に一人暮らしを開始すると同時に、近場に存在する駒王学園へと受験。

 現在合否待ち。

 

「しっかし、アレにゃね……ツッコミ所満載のプロフィールにゃん」

「いーんだよ。それぐらい無茶苦茶な方が、余計な詮索をし辛くなるだろ」

「私が言いたいのはそんな事じゃないにゃ。大体突っ込まれてもご主人様なら騙して、脅して、殴って乗り切るにゃ」

「騙して脅してまでは許す。だがオメェ、殴ってってのは言いがかりだろ。そこまで短気じゃねぇよ」

「騙して脅すだけでも相当ダメダメにゃ……ってご主人様が最低鬼畜野郎なのはどうでもいいにゃよ」

 

 主人と口にしながらも、軽く真一をこき下ろす内容の言葉を紡ぐ黒歌だが、当の真一本人は全く気にした様子もなく「ヒデェなおい」と何がおかしいのかソファに寝そべったまま笑い声を上げている。

 ソファに寝そべった真一のお腹の上で丸まった状態を維持しつつも、呆れたような表情で顔だけを起こし、じっと真一を見据える黒歌の言葉は止まらない。

 

「そこまでツッコミ所満載のプロフィールにしちゃったら目立つんじゃにゃいかって事。目立ったせいで、変な奴に目をつけられて、そこからトラブルに巻き込まれていくヴィジョンが容易に浮かんだにゃ」

「まぁ、そんときゃそんときだろ」

「だから、私はご主人様のトラブルメイカースキルに巻き込まれたくないって何度も言ってる……んっ」

「落ち着け落ち着け」

 

 不満しかない表情で真一に文句を垂れる黒歌だったが、途中で妙に艶のある声が上がり、それ以上言葉を紡ぐ事はなくただ体を震わせるだけになった黒歌。

 当然、その原因は目付きの悪い所はそのままに、小さく笑みを浮かべた新一にある。

 頭の後ろで組まれていた二本の腕の片方が、黒歌のお腹をゆったりと撫でている。

 どうやら黒歌はそれが気持ちいいらしく、起こしていた顔を再び真一のお腹へと落とし、そのついでとばかりに目蓋も完全に落としきっている。

 完全に意識は撫でられているお腹へと向かっているようだった。

 止める素振りも無い事から、慣れ親しんだ行動であると感じさせると同時に、黒歌も真一の手付きを気に入っているようだ。

 

「ま、なるようになるさ」

「別にご主人様の心配はしてないにゃ……ただ私的に面倒だっていう話にゃ」

「なら別にいいな」

「……ま、まぁ、どうしてもダメなら私がご主人様を守るにゃ」

 

 真一にお腹を撫でられつつ丸まったままで、もにょもにょと呟く様に吐き出した黒歌の言葉に、自然と真一の顔には笑みが浮かぶ。

 

「そんときゃよろしく頼むわ」

「そ、そこは、え? 何が? って聞き流す所にゃ! ご主人様には鈍感スキルが備わってないのがダメにゃ所にゃ! 全然チョロくないにゃ!」

「逆に鈍感な奴ならチョロいから、幾らでも思い通りに操れるから楽だって言ってるお前の方がよっぽど怖いわ、俺」

 

 中古物件として購入した一軒家に存在する、至って普通のリビングに置かれたソファの上で、喋る黒猫とどこかおかしな人間の時間は過ぎていく。

 後に黒歌の予想が見事的中する事になるのは、神ならぬ身の真一には分からぬ事だった。

 

 

 

 薄っぺらい革製のカバンを肩に担ぐ様に引っさげ、片手を制服のズボンのポケットに突っ込んだまま、目の前に存在する鉄格子のような学園の玄関口を見上げているのは誰であろう霧咲真一だ。

 学園指定の制服の袖を通し、緩く結ばれたタイを見る限り、きっちりと制服を着ているという印象はまるでない。

 ぼけっと学園の校門から、相当な広さを誇る敷地内へと視線を送り、その奥に存在する圧倒的なまでの質量を有した校舎を見上げている。

 制服を身に纏い、学園の前にいると言う事は、つまりそういう事だ。

 一月ほど前に霧咲邸のポストの投函された合格通知を受け取り、正式にこの学園の生徒として校門の前に立っているという事に他ならない。

 呆気ない程の合格通知に、真一の記憶からその事実が消えかけた時、黒歌の言葉にその事を真一が思い出したのが数日前。

 制服の採寸等、もろもろを終え、今日ようやく入学と相成った。

 そして真一の目の前には圧巻の建物と光景、そして見渡す限りの女子女子女子……。

 あからさまにげんなりしたような表情を浮かべ、その悪い目つきで校舎を睨みつける。

 

「チッ……失敗したな」

 

 その言葉の意味する所は当然、周りを埋め尽くさんばかりに異性が存在する光景にある。

 むせ返りそうな程に濃密な異性の香りが鼻腔を埋め尽くし、胸焼けでも起こしているのではないかと言う程に眉根を寄せている。

 勿論、真一は女性が嫌いなわけではない。

 むしろ女好きと言っても何ら不足はない……のだが、何事もバランスと言う物がある。

 この光景はあまりにも過剰な光景であり、それにテンションを上げるほど真一は女性に困る生活をしていない。

 真一のここに至るまでの敗因は、実際に学園へ下見に来た事が一度もないという事にある。

 ここ駒王学園は、もともと女子学園だったのだが、近年共学化へ向けて動いていると言う事実がある。

 その為、テストケースとして男子生徒も少数ではあるが受け入れている。

 男子生徒の合格人数には制限が存在するが、駒王学園の中身を知っている男子生徒は、当然ながらこぞって受験しに来る。

 思春期の男子生徒が興味を抱く駒王学園の中身、それは教育方針や教育レベル等と言った高尚な基準ではない。

 もっと俗物的な基準であり、その基準に頷かない男などほぼ存在しないと言える事だ。

 それつまり……女子生徒の容姿レベルが異様に高い。これに尽きる。

 多数の男子生徒が受験する上、周りには多数の女子生徒。

 問題を起こさないように配慮した結果は、受験教室を男子と女子で分けると言う方法。

 結局男子生徒が多数ひしめく教室に入り、尚且つ教室にたどり着くまでに多数の女子生徒を見掛けている事から、受験生徒が多い共学と言う結論に至った。

 一緒の教室で試験を受けている殆どの男子生徒が落とされるなど、真一は夢にも思わなかった。

 その結果が今の状態である。

 

「知ってたらぜってーこんなとこ受けてねぇ……」

 

 如何にも疲れたと言う感情が滲み出る声で小さく呟く真一だが、その悪い目つきは爛々と輝き、校舎を睨みつけている。

 この様な状況でそんな目をすれば通報物であると思うが、周りの女子は真一に対して汚物のような視線を向けているわけではなく、誰も近寄ろうとせず関わろうとせず声を掛けようとせず視線を合わせようとしない。

 有り体に言えば、死ぬほど怖がられていた。

 諦めた様に重い足取りで一歩踏み出せば、どこからか、ヒッ! と掠れた様な声が上がる。

 しかしその声を真一は気にする事なく、先程から重く前に行こうとしない足を無理やり動かし、校舎を目指す。

 恐怖で身を竦ませ、関わらない様に真一を避けて歩く女子生徒達が作り出したのは、真一から放たれる恐怖のプレッシャーが作り出した不可侵領域だった。

 

 しかしてその時である。

 誰も犯せない不可侵領域を、躊躇なく犯す勇者が舞い降りたのは。

 

「ちょっといいかしら?」

「……あ? 俺か?」

「貴方以外誰がいるのかしら。今この場で、明らかに注目せざるを得ない状況を作ってる原因だと思うのだけれど?」

 

 半身で振り返り、睨めつける様に視線を動かした真一は、不覚にもその視線を釘付けにされる。

 さらりと風に流れる深紅の髪、強固な意思を宿した気高い青の瞳。

 シャープさが先に立つ輪郭に加え、美人と言う言葉すら霞む、まるで霧の向こうに存在するような美しさを備えた顔立ち。

 スラリと高い身長に加えて、反則的なまでのボディラインを備えた肢体。

 言葉にしてしまえば美人。

 しかし、たったその一言で片付けるには礼を欠くと思える程の美女がそこに立っていた。

 

 その美女の言葉に、真一は辺りを見渡し、今のこの状況をしっかりと認識する。

 肩を落とすようにして、フーッと声なき息を吐き出すと、顔を上げて体ごと赤毛の美女へと向き直る。

 

「まぁ、原因と言えばそうかもな……で? 俺に何の用だ?」

「用と言う程の事はないわ。ただ、周りの子が怖がってるみたいだから貴方に自覚して欲しかっただけ」

「そうかい、なら次からは気をつけるとするわ」

 

 軽く肩を竦めて小さく笑みを浮かべる真一の返答に対し、ふわりと小さく笑みを浮かべる赤毛の女子生徒。

 浮かべた笑みが振りまくその美貌に、周りの女子生徒は熱に浮かされたような表情を浮かべたまま、食い入る様に視線を向ける。

 今や真一が独占していた視線は、赤毛の美女へと移り変わっている。

 男も女も関係がない。

 美しさから滲み出る求心力のような、言ってしまえばカリスマと言う形無き武器を滲ませる彼女に、視線を向けない事自体が失礼だと言わんばかりの影響力だ。

 

「ここで声を掛けたのも何かの縁ね、一緒に行きましょう? 校舎までだけど」

「別に構わねぇぜ。所でまだ名前を聞いてねぇんだが?」

 

 笑みを浮かべて真一の隣に並ぶ美女と足並みを揃えつつ、真一は純粋な疑問を投げかける。

 投げかけられた質問に対し、赤毛の女子生徒は瞳を見開き、少し高い位置にある真一の顔を見上げた後に艶のある笑みを浮かべてみせる。

 

「リアスよ。リアス・グレモリー。今年入学した一年生よ」

「霧咲真一。俺も入学したばかりの一年だ。よろしく頼むぜ、グレモリーさん」

「さん? ふ、ふふふっ、無理しなくていいわ。呼び捨てで構わないわよ。同じ学年でしょう?」

「んじゃ、よろしく頼むぜ、グレモリー」

「えぇ、よろしくね? 霧咲君」

 

 目付きの悪い黒髪の男子生徒と、気高い青の瞳を持った赤毛の女子生徒は思いの外ウマが合ったらしく、弾む会話をそのままに校舎へとその姿を消した。

 後には二人の姿に複雑な表情を浮かべる一部の生徒と、二人の雰囲気に熱い溜息を吐く生徒達が残った。

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