ツッコミ所満載な当方の作品ですが、悪意とか一切ありません。
でも多分、これからもキャラが崩壊するのを私は恐れないことを、宣言します。
ではでは、よろしくどうぞー。
真一、リアス、朱乃の顔合わせから約半年。
三人とも個人個人の友好関係はあるものの、入学当初からウマが合ったと言う事実は大きいのか、三人で行動する事が圧倒的に多い現状。
いくら女子が圧倒的多数でも、下世話な噂がいくつも流れるのは仕方の無い事だ。
朱乃とリアスは親しい者限定だが、二人共行うスキンシップには、艶の様なものが多分に含まれる。
そんな二人が真一に行うスキンシップを見ていれば、邪推するのも仕方ない事ではある。
しかし男女的な意味で付き合いを聞かれれば、リアスも朱乃もはっきりと否定しており、噂が立つのは仕方がないものの何時までも消えない事には別の原因が存在する。
その原因とは、当然、噂の中心である三人の中で唯一の男子にあるのは明白。
「おはよーさん、グレモリーに朱乃」
リアスと朱乃が登校中、ちょうど正門を越えた辺りで真一がその姿を見つけ、後ろから声をかけつつ近づく。
それだけならばごく普通にありふれた光景だが、普通ではない原因と噂が消えない原因はここからだ。
リアスと朱乃の間に収まるようにして位置取ると同時に両手を動かし、右手はリアスのお尻に、左手は朱乃の胸へ。
両方共まともに鷲掴みにしており、肉に食い込む指の感触を堪能している様に二度ほど握り締める。
「んっ……」
「毎朝貴方も飽きないわね……」
朱乃は何も言う事なく胸に食い込む指の感触を受け入れ、リアスは呆れた様な言葉を発するものの、声は拒絶しておらず表情は小さく笑みすら浮かべている。
二人共頬が少し紅潮しているが、それ以外の振る舞いや雰囲気は、普通にしている時とそう変わらない。
やがて感触を堪能し終えたのか、真一は胸と尻から手を離し、薄っぺらい鞄を肩に担ぐようにして持ついつもの登校スタイルへと戻る。
そして、そのままごく自然にリアスと朱乃の間へと収まる。
真一の顔には悪びれた表情は浮かぶ事はないし、朱乃とリアスも真一を責めるような空気がない。
三人にとってこれはスキンシップの内であり、リアスの言った通り、毎朝行われている儀式の様な物らしい。
何時まで経っても消えない噂の原因はこれである事は明白で、真一からの過剰すぎるスキンシップと、それを拒否しないリアスと朱乃。
噂が消えないのも当然だろう。
「んで? 今日放課後どうするよ」
「来た途端にもう放課後の話? 幾ら何でも早いわよ?」
「まぁまぁ、いいじゃありませんか、私カラオケに行ってみたいですわ」
「行った事ないのか?」
「私もないわね」
「お前らな……ボッチ仲間が寄り添ってるわけじゃねーんだからよ……」
カラオケに行った事がないと明言する二人に対し、驚いた様な呆れた様な声を出し、肩を竦める真一。
そんな彼にリアスと朱乃は、共に不服そうな表情で真一に対し抗議の声を上げる。
「失礼ね。私は騒々しい所が苦手なだけよ」
「全くですわ。リアスに同じく、ですわね」
(((そこは怒るのかよ……)))
登校途中に三人のスキンシップを見せられた全生徒達の心が、余す事なく一つになった瞬間だった。
「あっそう……んじゃカラオケはやめるか?」
「私行ってみたいって言いましたわよ?」
「騒々しい所は苦手なんだろ?」
「あのねぇ、何処に行くかも重要だけれど、誰と行くのかも重要なのよ?」
「ふーん……三人でなら行ってもいいって事か」
「そういう事ね」
「そういう事ですわ」
リアスと朱乃にとって、やはり入学当初すぐに仲良くなれたメンバーと言うのはどうも特別らしく、二人共何か特別な事をする時は必ず三人揃っているにすると決めているらしい。
リアスと朱乃だけでもダメ、リアスと真一だけでも、朱乃と真一だけでもダメ。
三人揃ってこそ、特別な事をする価値があるようだ。
友達……と言うよりも、仲間と言ったほうがしっくりくるのかもしれない。
「んじゃ、放課後はカラオケ行くかぁ」
「えぇ」
「はい」
古典の課題はやったか、数学で少しわからない所がある、等とくだらない会話に花を咲かせつついつもの様に三人は校舎の中に姿を消した。
学園内で今一番目立っているグループがいなくなった事によって訪れたのは、形容し辛い安心感が満ちた空気だった。
昼休み。
適当にパンを見繕った真一は、リアスと朱乃の待つ教室へと向かっている途中、少し冷淡とも感じられる冷たい鈴の様な声に呼び止められた。
目つきの悪い瞳を向けた視線の先には、メガネがよく似合う切れ長の瞳が印象的で、艶のあるショートの黒髪が目を引くスレンダーな女子生徒の姿があった。
そして、その女子生徒の名前を真一は知っていた。
「何だ、支取じゃねぇか。何か用か?」
「特別な用と言う程ではないですが……ちょっとしたお小言を」
「小言言われるとわかってて残ると思ってんのか?」
「えぇ、貴方は天邪鬼ですからね」
クールに小さく笑みを浮かべて、全てを見通したような女子生徒――支取蒼那の態度に、真一は小さな溜息と共に小さく笑みを浮かべて肩を竦める。
「へいへい、で? どんな小言だ? 大体予想はつくけどな」
「お察しなら話が早いですね。朝の一幕、見ていましたよ? 出来るだけ控えてください。特に、人目のある所では」
「やめろとは言わねぇのか」
真一の楽しそうな声に対し、それこそ愚問と言った風に肩を竦めて見せる蒼那は、間違いなく才媛である。
蒼那にとって、真一と言う男子生徒を知る事となった原因はリアスだが、真一の表面的な性格など少し付き合えば直ぐに理解出来る。
その上で、彼に何かをやめろと面と向かって言う事は逆効果である事を、支取蒼那と言う生徒は知っていた。
ある種の諦めとも取れるかもしれないそれは、しかして真一という人物を知ったという証でもある。
「貴方にやめろといった所で逆効果でしょう?」
「よくお分かりで……生徒会に入る奴は頭の出来からして違うのかねぇ」
「あら、その様な評価をもらえるとは光栄ですね」
リアスや朱乃と言った、容姿からして華やか且つ、雰囲気も人を惹きつける華々しい雰囲気と言う訳ではない蒼那。
しかし、一部の知名度はリアスや朱乃を上回る程であり、その要因として挙げられるのはただ一点。
支取蒼那と言う女子生徒は、とにかく優秀である、と言う点だ。
先に挙げた二人程目立つ容姿をしているわけではないが、それでも美人と言うには忌憚ない見た目に、一年にして生徒会に入る行動力と優秀さ、運動でも壊滅的に悪いと言う事実は何処にもない。
むしろ運動神経は発達している方であると言えるだろう。
まさに文武両道を地で行く成績を残しながら、公明正大とも言える気質を持っている彼女は、持って生まれたカリスマで人を惹きつけるわけではない。
自らの残してきた軌跡と積み上げた結果によって、人をついてこさせる。
持って生まれたカリスマで人を惹きつけるリアスとは、また違った求心力を持った人物だ。
支取蒼那と言う人物を頭の中で軽く分析している真一は、先の発言から後、件の蒼那がじっとこちらを射抜くような瞳で視線を送っている事に気がつく。
彼女いわく、お小言の返答を待っているのだろう。
律儀にこちらの返答を待つ蒼那の姿に、真一は小さく笑みを浮かべて肩を竦める。
「りょーかいりょーかい。今後は控える事にするさ」
「はい、その返答を聞けて安心しました。私はこれでも貴方の事を買っているのです。出来れば、その信頼をクーリングオフさせる様な事態にならない事を祈っています」
「あいよ」
「では私はこれで……」
「あ、ちょっと待て」
「何でしょう?」
「ついでだ、一緒に飯食ってかねぇか?」
これもなにかの縁だろ、と軽く言葉にする真一に対し、蒼那は純粋に驚いたような表情を浮かべている。
二人で食べようと誘われたと思っているのかとも思う真一だが、どうもそう言う雰囲気ではない。
「何だよ?」
「三人でいる所に乱入すれば、烈火の如くリアスと姫島さんが怒ると言う噂が……」
「お前もその口かよ……」
眉間を揉みほぐす仕草のまま呆れた様に声を上げる真一に、珍しく瞳を丸くして目を見張っている蒼那から、違うのですか? と戸惑ったような声が上がる。
「違うに決まってんだろ。俺もアイツ等もそんな短気なわけねぇだろ」
「それはまぁ、そうですが……あの二人が特定の男性と懇意にしている所等見た事がないので、何分私も初めての事態なんですよ? 貴方の様な存在が」
「まぁ、理解してもらえたと見ていいのか?」
「勿論」
「じゃあ、どうするよ」
「そちらがいいなら喜んで」
んじゃ、行くか、と声を上げて歩き出す真一の隣に蒼那が並び、目指すは一年B組の教室だ。
「悪いな、遅くなった」
「遅かったじゃない……ソーナ?」
聞こえてきた真一の声に、振り向きつつ小さな不満を漏らすリアスの言葉が止まり、真一の隣に並ぶ自らの友人の姿に少しの驚きが表情と口に出る。
「お邪魔するわよ、リアス」
「拾ってきた」
「あらあら、ダメですわよ真一? ウチはペットはダメとあれほど言ったじゃないですか」
「やだやだ! このペット飼いたい! お母さん許して!」
「いけません! 元いた場所に戻してきなさい!」
至って普通に挨拶を交わす蒼那だが、真一の言葉を皮切りに、すかさず朱乃から何かが始まってしまったような言葉が飛び出てくる。
才色兼備を地で行く蒼那の目が、完全に点になっているが、状況はお構いなしに進んでいく。
真一に至っては、駄菓子屋の前に広がるアスファルトに寝転がって駄々を捏ねる子供もかくや、と言わんばかりの気合の入った演技だ。
動かす手足によって、規則的に並べられているはずの机と椅子が、乱雑に蹴散らかされていく。
そんな羞恥心など欠片もなく、失う物等何もないと言わんばかりの気合の入った真一の演技に対し、朱乃はまさに子供を穏やかに叱る母親の様に人差し指を一本立てて「めっ!」と叱っている。
目の前で繰り広げられているあまりに形容し難い光景に、蒼那は完全に白昼夢を見ているような気持ちに襲われる。
いっそ夢であれば……と思う気持ちはわからなくもないが、そんな光景を他所に、リアスはマイペースに自分の弁当箱を広げている。
真一と朱乃が繰り広げるコントなど、微塵も気にしていない様子だ。
「リ、リアス? これは……何?」
「え? あぁ、ソーナは知らなかったわね。別にいつもの事だから気にしなくていいわ」
「おい朱乃、どうすんだ。リアスからワンパターン過ぎて詰まらない、と辛口コメントが飛んできたぞ」
「いけませんわね……私達コンビの絶体絶命の危機かもしれませんわ、こうなっては解散も辞さない覚悟で……」
これ以上何が起こるというのか……真一だけならまだしも、あの姫島朱乃がこんな事をするなど、一体誰が予測できたであろうか?
目の前で巻き起こる嵐の様な光景に、蒼那の目の前は闇に包まれようとしていた。
しかしその直後、リアスが両手を合わせ、乾いた音が教室に響き渡る。
その瞬間には真一も朱乃も席に着いており、朱乃は弁当、真一は調達してきたパンを目の前に置いて手を合わせている。
突っ込む暇も笑う暇もなく、状況が進んだ事だけを理解した蒼那は、流されるまま己に用意された椅子に腰掛け弁当を目の前に起き……手を合わせる。
「いいただきます」
「「「いただきます」」」
リアスによる凛としたいただきますの声に合わせて、真一、朱乃、蒼那のいただきますが重なって食事の幕が上がる。
世界を平和にする言葉、いただきます。
なんて素晴らしい言葉なんだろう……やはり世界に対する感謝を忘れず、人と食事を囲み、笑顔が絶えない小さな世界を作る。
こうした輪を広げていけば、きっと世界は平和になる。
そう、食事から始まる世界平和を広げていこう……等と訳の分からない思考を働かせる程には、蒼那の頭の中は混乱の渦に巻き込まれていた。
一応の混乱が収まりを見せた蒼那の視界が、しっかりと現実の食事風景を認識した時には、既に先程の様な嵐はなく普通の昼食時の風景が広がっていた。
部活には入らないのか?
勉強の進み具合はどうか?
最近嵌っている事がある。
そう言えば料理を始めた。
今度一緒にチェスをしよう。
くだらなく、実りのない、しかし話しているだけで楽しい気持ちが伝わる会話が広がっている。
そうだ、やはりさっきのはタチの悪い夢だったのだ。
蒼那の思考がそう結論づけようとした時、決定的な言葉がリアスの唇から紡がれる。
「ソーナ。さっきの事は気にしないほうがいいわよ。私が気がついた時には既に二人共こんな感じだったの」
「…………リアス、今だけは貴女を恨ませて」
「ちょっと!?」
「お、支取には受けたみたいだぞ、朱乃」
「あらあら、じゃあ解散のお話は白紙に戻しましょう」
「大体、私はペットではありません」
冷静かつ少しばかり冷たさを感じる蒼那の声に、リアスも朱乃も、そして真一も動きを止めて蒼那へと視線を集める。
三方向から向けられ、後ろに下がるしか道はなくなった蒼那が、冷や汗と共に頬を引きつらせる。
固まってしまった四人の空気の中で、最初に動いたのは、やはりと言うか真一だった。
「うくっ、くっくっく……ブハハっ! いいないいなおい! 支取! まさか朱乃のあれを見てそこに突っ込むとはな! くっくく……さ、才能あるぜ。あー、腹いてぇ」
「まさかこんな身近にこんな伏兵が潜んでいるなんて……私も精進が足りませんわね」
「な、何ですか? 私何かおかしな事を……って、霧咲君痛いです。本当に、嘘でも冗談でもなく、すごく痛いです!」
正に爆笑と言ってもいい程の笑い声を上げる真一が、蒼那の肩を叩き始め、朱乃は頬に手を当て困ったような声を上げる。
そしてリアスは、信じていた者に裏切られたような視線で蒼那を見ており、その表情は正に悲愴と言っていいだろう。
肝心の蒼那はリアスの視線に気がつきながらも、とにかく真一に叩かれる肩が痛いのか、うっすらと涙すら浮かべているようにも見える。
その後の食事は特に嵐が起きる事もなく終わるが、最後まで蒼那がリアスに弁明をはかる機会は回ってこず、その事を切っ掛けにして蒼那も三人に巻き込まれる事になる。
そして早速その日の放課後、生徒会の仕事があると言い張って拒否する蒼那を、真一と朱乃が生徒会室に乗り込んでまで連行。
予定を変更して四人でカラオケと相成ったのは、最早言うまでもない。
支取蒼那の穏やかな学園生活は、たった半年で終幕のベルを響かせた……。