全てを捨てた小さな吸血鬼 作:Frieden
「着いたね」
その後、フィールンは少女を抱えながら人里の上空に辿り着き、降下。人里の中に着地し、少女を降ろした。
「それじゃ、私はこれで…」
「ま、待って…」
フィールンが去ろうとした時、少女が呼び止めた。
「何かな?」
「あ、あの…その…ありがとう…」
「「優香!!」」
その時、二人の元に一組の男女が駆け寄ってくる。
「お父さん、お母さん!!」
少女は両親の元に走り出し、両親は少女を抱きしめた。
「全く、いきなり居なくなって…!!」
「良かった…!!今までどこにいたのよ!?」
「え、えっと…」
「花をあげたかったんでしょ?」
怒っていた両親に怯える少女をフォローする様に、フィールンが会話に入る。
「花…?」
「う、うん…」
そう言って、少女は右手に持っていた小さな花を両親に見せる。
「えっと…今日、お母さんが誕生日でしょ?だからお母さんを、喜ばせようって…」
「…馬鹿ね。そんな事をしなくても、お母さんは嬉しいわよ」
「…お母さん…」
それを見届けていたフィールンは、邪魔をしないように去ろうとするが。
「待って下さい」
今度は父親がフィールンを呼び止める。
「優香を助けてくれて、ありがとうございます…!!このお礼は──」
「お礼を言われる事はしてないよ。偶然その子を見つけて、ここに送ってきただけだから」
「ですが…」
「…なら、明々後日の今、また此処にくるから、何種類か薬草を用意しておいてくれるかな?」
「それだけ…ですか?」
「それだけ。あと、敬語も要らない。私は吸血鬼だけど吸血は強要しないし、人間とでも対等に話し合いたいから」
「分かり…分かった」
「それじゃ、また会いましょう」
そう言って、今度こそフィールンは飛び立った。
その後フィールンは、何故か少女を助けた場所に戻っていた。
その理由は、一つ。
「…さて、やっぱりお仲間がいたね」
先ほどフィールンが殺した犬の妖怪と造形が似た妖怪が何匹も集まり、フィールンを包囲していた。
「こーんなに集まってくれて…
しかし、フィールンは冷静にホルスターから銃を抜き取り、魔力を手から供給する。
「
その瞬間、フィールンの言葉を否定するかのように、犬の妖怪は一斉に飛びかかった。
「
それと同時に、フィールンは大きく跳躍。知能が低い犬の妖怪達はあっという間にフィールンがいた場所で衝突する。
自由落下の中、身体の体勢を整え、両手に握る二丁の銃を照準。
「
次の瞬間、連続的で静かな発砲音と共に大量の魔力弾が発射、弾幕を形成する。
殺傷を目的としたその弾幕は、容赦なく妖怪達の身体を抉り、絶命させる。
フィールンが地面に着地する時には、飛びかかった7匹の妖怪は血だまりの中に沈んでいた。
その時、フィールンの真後ろから一匹の妖怪が飛び出してきた。
フィールンは振り返らず、そのままジッとしている。
そして、妖怪の視界からフィールンが消え、次の瞬間には身体が腹部の激痛と共に宙に浮いていた。
「
その言葉を最後に、妖怪の意識は永遠に絶たれた。
「これでおしまい、か…」
あっという間に蹂躙を終えたフィールンは、銃をホルスターにしまって、妖怪だった物を見ている。
「…っ」
突然、フィールンの身体が震え、八重歯が本人の意思に関係なく伸びる。
フィールンは冷静に腕に魔力を集め、その魔力によって腕に込められた魔法陣が視覚化。そして魔法陣が起動し、フィールンの身体を淡い光が包む。
身体を包む光の効果はゆっくりと、しかし素早く効き始め、1分もすれば淡い光と魔法陣は消え、そして震えは止まり、八重歯も元に戻っていた。
(散歩もする気分じゃないし…戻って読み進めよう)
そう決めたフィールンは、再び空へと飛んだ。
雲一つ無く、月明かりが照らす中、フィールンは変わらない景色を見ながら飛行する。
そして、飛行する事数分。フィールンは下降し、森の中に再び着地する。
そこには、こじんまりとした木造の家と小さな二つの小屋が建っていた。
家の中に入って灯りを付けると、空間を十分に利用して整えられた生活用品が揃えられており、二つある机の片方には大量の魔法書が置かれているのが目に入る。
フィールンは椅子に座り、机から紙とペンを取り出して机に置き、一つの魔法書を手に取って読み始める。
(使えそうな魔法は…)
内容を見間違えないようにじっくりと、かつ素早く読み始める事、数十分。分厚かった魔法書も、残り十数ページとなっていた。
(…無いか)
パタンと魔法書を閉じ、また別の魔法書を取り出して読み進める。
(…あ)
読み進めると、フィールンの目に一つの魔法の説明が目に入る。
「これ…使えそうね」
魔法書を開いたまま机に置き、書いてある魔法の説明と魔法陣を紙に書き写す。
(それじゃ、次は…)
その後、家の中には本を捲る音と何かを書く音が響いていた。