全てを捨てた小さな吸血鬼   作:Frieden

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第3話

「…ん」

 

フィールンは、今現在の状態を確認する。

 

体勢は座っており、瞼は閉じていて、何かの上に頭と両腕を乗せている。

 

(あれ…いつの間に寝てた?)

 

そう自覚し、フィールンは瞼を開き、上半身を起こす。

 

「痛た…変な体勢で寝ちゃってたかな」

 

固まった筋肉を解しながら、散らばった机の整理を同時進行で進める。

 

整理を終え、次は服装を着替える。とは言っても、何枚か自分自身で縫って用意した同じデザインの服装しか無いが。

 

フィールンは服が入っているタンスを開け、中にハンガーで吊るしている服装を手に取ろうとして。

 

 

1番右にある、唯一紅色を基調とした一式の服が目に入った。

 

 

(…やっぱり、捨てられないなぁ…)

 

その服は、「今の」フィールンにとっては一切必要が無いのだが、愛着があった一着でもある為に捨てる事が出来ず、タンスの中に眠りっぱなしの状態だ。

 

少しボーッとしてしまったが、伸ばした右手で着ている服一着を取り出し、タンスを閉じた。

 

そして一応、窓のカーテンや玄関のドアがキッチリと閉まってる事を確認した後、フィールンは今着ている服を脱ぎ始める。

 

最初は少し手間取りながら着替えてたが、今では素早く着替える事が可能になり、二分もすれば新しい服装に変わっていた。…全く同じデザインではあるが。

 

窓を開け、今日の天候のチェック。どうやら昨日の夜と変わらず、雲ひとつ無い快晴らしい。日差しの様子からして、恐らく昼頃だろう。

 

「さーて、《朝ごはん》はどうしよっかな…そういえば、保存してる食料もそろそろ無くなる頃の筈だし、買い出しに…」

 

 

 

 

「その心配は要らないわよ、フィールンちゃん」

 

 

 

 

その時、フィールンの両肩に何者かの手が乗せられ、フィールンの肩がビクリと反応した。

 

「…他人を驚かすその性格は何とかならないの?紫」

 

「イヤよ♪それに、貴女の反応も何かと面白いんだし」

 

「はぁ…」

 

ため息を尽きながら振り返ると、《スキマ》と呼ばれる空間の穴から上半身を出した、黒色のフリルが付いたドレスを着ている女性がいた。浮かべる笑顔が何処か胡散臭さを感じさせるが。

 

 

女性の名は《八雲 紫》。唯一無二の絶対的な力を持つ妖怪。フィールンが住んでいる幻想郷の創始者でもあり、管理者でもある。

 

 

何故、幻想郷の創始者とフィールンが関係を持っているのか。それは少し過去を話す必要がある────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィールンは元々幻想郷の生まれではなく、外界の生まれである。より正確に言うとヨーロッパと言われる地方にある、有力な吸血鬼一家の生まれだ。

 

その吸血鬼一家からフィールンは抜け出し、各地を休み無く転々と移動した。

 

そしてヨーロッパからフィールンは、幻想郷がある極東まで逃げるように…いや、実際に追っ手から逃げる為に来た。

 

そして日本に辿り着き、とある山中に差し掛かった時に、フィールンは巨大過ぎる結界を発見した。

 

普通ならば避けるか引き返すのだろうが、当時のフィールンは長い逃亡生活で自暴自棄な所もあった。

 

 

そして、あろう事か能力を使用して、その結界に穴を開けて進入するというとんでもない事をしたのだ。

 

 

当然、その行為は管理者である八雲紫が察知し、現場に直行。そこにいたフィールンを発見し、即戦闘に移行する事になった。

 

 

戦闘の詳細は省かせてもらうが、結果的に言うと引き分けに終わった。

 

紫の弾幕はフィールンの正確無比な魔力射撃と能力によって相殺され、フィールンの弾幕は多量の弾幕によって殆どが相殺され、残りはスキマによって避けられる。肉弾戦でもほぼ同等の能力だった為に決着が付かず、最終的には双方の魔力切れによって終わった。

 

その後、落ち着いて話してみれば誤解していた所があった事が判明。紫はその場で謝罪し、住居提供や一部の物資提供を現在でも行なっている。

 

最初こそはギスギスな感じはあったが、今では双方が友人として認識している。

 

 

 

その二人は今、フィールンの家にて食事を楽しみ、今は後片付けの最中だ、

とは言っても、紫は椅子に座ってフィールンが淹れた紅茶を飲み、フィールンは使用した食器を洗っている。(水がかからないよう、両手に手袋を着用)

 

「相変わらず貴女が作る料理と紅茶は美味しいわね」

 

「何十年も一人で作ってきたからね。嫌でも上手くなるよ。というより、紫」

 

「何?」

 

「食料や魔法書の提供は助かってるけど、私の料理を食べるのを目的に来るのやめて」

 

「別にいいじゃない。その為に余分に送ってるんだし」

 

「二人分作る私の身にでもなってみて」

 

ギロリとフィールンはゆったりとしている紫を睨む。両手は皿洗いをしながら。

 

「あら、怖い。お姉さんはこれでお邪魔させて貰うわ」

 

そう言って紫はコーヒーカップをスキマを使ってフィールンの横に置く。

 

それに気付いたフィールンが一瞬目を離し、再び目線を戻した時には既に紫の姿は無かった。

 

「全く…あのスキマ使いは」

 

そんな愚痴とは裏腹に、フィールンの口元は緩んでいた。




さて、次は何処で何をどうさせようか…
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