全てを捨てた小さな吸血鬼 作:Frieden
突然の紫の訪問というトラブル(?)を乗り切ったフィールン。
(これと、これと、これ。それにこれで…)
彼女は今、食料庫の中で布袋に食料を詰めていた。
何故そんな事をやっているかというと、彼女の友人にあげる為の分を今から届けるからだ。
「っと…こんな感じかな」
大量の食料を入れた布袋を持ち、次に財布、ホルスターに入れている銃二丁と胸ポケットに入れてある粉末があるか確認し、最後に壁に立て掛けていた傘を持ち、食料庫のドアを開けた。
外は太陽の日差しが出ており、フィールンは日差しから身を守る為に傘を差し、日差しから身体を隠す。
そしてフィールンは空へと飛び、友人の元へと向かう。
現在の幻想郷において唯一の有人神社、「博麗神社」。
幻想郷の最東端、正確に言うと幻想郷と外の世界を隔てる「博麗大結界」に位置するその神社は、代々「博麗の巫女」が博麗大結界の管理を行う場所でもある。
そんな、幻想郷にとっては重要な場所にフィールンは辿り着いた。
「っと…来たよー。霊夢」
参道に着地し、大きめの声で呼びかけるフィールン。
「また来たの?フィールン」
すると、本殿から赤い巫女服を纏った少女が現れる。
「当たり前でしょ?食糧難の数歩手前な友達を放っておく奴となんか、私なら絶対に縁を切る」
「違い無いわね」
フィールンの愚痴に近い言動に、「霊夢」と呼ばれた少女は苦笑するしか無かった。
彼女は、博麗神社巫女職兼博麗結界管理者の一人、「博麗霊夢」。
幻想郷の最重要人物の一人でもあり、フィールンの数少ない友人の一人でもある。
「ま、とりあえず上がりなさい。粗茶と和菓子しか用意してないけどね」
「そうさせて貰う…その前に」
本殿に上がるフィールンの歩みが止まり、ポケットから硬貨を取り出して賽銭箱に投げ入れる。
そして、チャリンと硬貨が落ちる音が響いた。
「…もう10年か〜」
「いきなりどうしたの?」
本殿にある客間で、茶と和菓子を楽しんでいた二人だが、不意に霊夢が呟いた。
「いや、紫経由でフィールンと知り合ってから随分と時間が経った、って思ってね」
「私からしたらまだまだだけど、霊夢からしたらそうだね。あの時の子供特有のヤンチャな性格も、今じゃ無くなって…」
「言わないで。思い出すと今も恥ずかしくなる…」
少し頬を赤く染めた霊夢は、言葉を飲み込む様に冷めた茶を一口飲む。しかしフィールンは知らんとばかりに話を続ける。
「あの時の霊夢は本当に可愛くて、来る時はいっつも私に引っ付いて「一緒に遊ぼ〜」って言って、私と遊びたがってたね」
「ちょ…」
「それに私が帰る時も「帰っちゃヤダ!!」って言って引っ付いて、そのままズルズルと何泊もしたり」
「フィールン…」
「最終的には紫よりも私に懐いて、自炊が出来る様になるまで、数年間一緒に住んでたね〜…」
「…もう勘弁して。お願いだから」
目を瞑って思い出を語ってウンウンと頷くフィールンの横で、霊夢は顔全体を真っ赤に染めていた。
「…そうだ。何なら今日、あの時の再現でもしてみる?」
「私の黒歴史を掘り返す気!?」
「ふっふっふ、霊夢に拒否権は無いよ〜。拒否したら何処かの鴉に、私の事をおかあ──」
「わーわーわー!!分かったからそれだけはやめて!!もう神社から一生外に出れなくなるから!!」
何かを言おうとしたフィールンの口を、霊夢が大声を出しながら手で塞ぐ。
「契約成立。それじゃ、今日はお世話になるよ」
「…何でかしら、この数分で一気に疲れたんだけど」
「さ、とりあえず夕食の準備を始めよっか。もう良い時間みたいだし」
外に目線を移すと、既に夕陽が幻想郷全体を紅く照らし、 一味違う景色を映し出していた。
次回は今話の続きです。