満潮が可愛すぎるせいで書いちゃいました。
「満潮よ。私、何でこんな部隊に配属されたのかしら」
この部隊に配属が決まり、司令官との顔合わせのとき。
穏やかに私を見つめる提督に対し、こう吐き捨てた。
すると司令官は、少しだけ目を丸くして。
もう一度穏やかに笑うのだった。
私はその態度が気に入らなくて、余計に腹を立てるのだった。
配属されて数日。
私は他の部隊との演習に参加していた。
その日の演習は、経験不足な私のせいで散々な結果だった。
「司令官、今日の演習は私が居なければもっといい結果だったんじゃないかしら?」
少しの苛立ちと、素直な感想を司令官にぶつけた。
すると司令官は、真面目な顔でこう言った。
「君たちには、もっと演習を積んで、もっと強くなってもらわないと困るんだ」
ああ、そうね。私じゃ力不足ってことね。
納得すると同時に、とても悔しかった。
配属されて数週間。
多くの演習と少しの実戦を積んだ私は、まともに出撃できるようになっていた。
その日は、水雷戦隊を組んで、鎮守府周辺の哨戒などを行っていた。
私は、突然現れた潜水艦の雷撃で、ダメージを負ってしまった。
なんとか敵潜水艦の撃滅はできたが、私は無傷のみんなに庇われながら鎮守府に帰投した。
一人で入るドックは無駄に広くて。
みんなは無傷だったのに。
私一人は、相変わらず無力で。
悔しくて、悔しくて。
湯気と涙が、私の顔を濡らした。
入渠を終え、部屋に戻ると。
机の上には甘そうなドーナツと、一枚のメモがあった。
「……甘いもの食べてリフレッシュ! 元気出せ! 、って……誰が置いたんだろ、これ」
一口かじったドーナツは、とても甘くて、優しくて。
何だか元気が出てくるようだった。
配属されて二ヶ月。
私はついに大役を任されることになった。
それは――
「満潮には、今回の作戦で、山城の護衛にあたってもらう」
そう、山城さんの護衛だった。
それは、あの日果たせずに沈んでいった使命。
私は、今度こそ果たして見せる、と意気込んだ。
しかし、その夜。
私は夢を見た。
海の上で一人。
周りには沈んでいった仲間たち。
「山城さん……? 扶桑さん……?」
返事は無い。
「最上さんっ!」
……返事は無い。
「山雲っ! 朝雲っ!!」
…………返事は無い。
「時雨っ!!!!」
遥か遠くに、泣き崩れている時雨を見た。
目の前には、迫る攻撃。
「あぁ、私――」
――また何もできなかったんだ。
黒く沈んでいく世界に、新たな声が生まれた。
「違う」
……誰よ。
「満潮は、無力なんかじゃない」
どうして、そんなことが言えるのよ。
「この二ヶ月、必死で頑張ったのを、俺は知っているから」
「――っ!」
冷めきった世界が、少しずつ温められていく。
暗い世界が明るさを取り戻し、蒼に染まったところで――
――目が覚めた。
嫌な夢を見たのに、不思議と不快感が無い。
むしろ、心地のいい温かさが――っ。
司令官が、私の手を握っていた。
当の本人は、私の枕元で胡坐をかきながらウトウトしている。
もしかして、この司令官は。
私のことを心配して来てくれたんじゃ……?
時計を見たら、深夜三時だった。
私が寝たのは十一時過ぎだったから、もしかしたらその後からずっと……?
「大事な作戦の前に、何をしているのかしら」
でも。
司令官に夢の中で励ましてもらったからだろうか。
今の私には、余計な不安は無かった。
胡坐をかいていた司令官を畳に横たえ、布団をかけてあげる。
私ももう一度寝なおすとしよう。
「おやすみなさい」
と小声でつぶやく。
横になり、司令官の寝顔を見つめる。
直ぐに気恥ずかしくなり、目を閉じた。
「…………ありがと」