特に何の問題もなく、日中の授業が終わり戸塚も八幡に絡むことなく平和に終わろうとしたところだった。
「ヒッキー!」
八幡は舌打ちをしつつ、返答する。
「んだよ、ヒッキーとか不名誉なあだ名つけるな」
そう、何故だかわからないがこの由比ヶ浜は八幡に全力で絡みに来るようになった。
きっと奉仕部に早く馴れたいのだろう。まぁ八幡に関わろうと関わらずとも変わらないとは思うが。
「やぁ、八幡」
「出口はあっちだぜ?」
戸塚も負けじと八幡に話しかけてくる、が構ってやるほど八幡は優しくはない。
そもそも何故戸塚が由比ヶ浜と張り合っているのかさえ謎だ。
「そんなそっけないこと言わないでよー」
ニヤニヤしながら戸塚が言う。反面八幡は眉間にさらに皺をよせる。
「むー……」
由比ヶ浜はそんな二人をみて不満そうに変な声を出す。
こちらもこちらで八幡は理解できない。
「そうだぞヒキタニくん、彩夏がかわいそうだ」
「あぁ?」
唐突に会話に入り込んでくる輩。
我が高校が誇るトップエリートの葉山 隼人。
だが、そんなことどうでもいい。
「今何て言った?お前、今誰のことを何て言った?」
八幡の表情がみるみる内に険しくなりさらに元々腐っている目がさらに濁る。
「君のことをヒキタニくんって呼んだだけだけど?」
葉山は肩をすくめおどけた風に言う。
それに対してさらに不機嫌になる八幡。
「ひ、ヒッキー……?」
由比ヶ浜がビクッと震える。戸塚は呆れたように笑い由比ヶ浜と共に八幡から距離をとる。
「ちょーっと危ないから由比ヶ浜さん下がろうねー」
「え、あ、うん……」
葉山は恐らく八幡がキレているのをわかって煽っている。
八幡はあえて、それに乗っかり間接的に威圧している。
由比ヶ浜が気軽に話しかけてきたことにより、気安く話しかけられると言うことが発生しないようにの処置だろう。
その効果として言えば、三浦優美子が少し震えている。
「あー、あー、そーかいそーかい、ならてめえは枯れ葉たなぁ!」
八幡も応戦し、互いにヒートアップしていく。
結果、休み時間全てを使い、言い争いが続いた。
その日の昼休み。
屋上にて、今朝の二人がフェンスに寄りかかっていた。
「やぁ比企谷、さっきはすまなかったな」
「はっ、別に構いはしねぇよ」
葉山はいつも以上に晴れやかな顔をしており、八幡は逆に疲れきった顔をしていた。
「さぁて、君の依頼を完遂したんだ、報酬を貰おうか」
にこやかに八幡に報酬を要求する。
「現金な野郎だ……、ほらよ」
八幡はブレザーの内ポケットから小型のデータ端末機を葉山に投げ渡す。
「そんなかにレジスタンスやらナインボールやら死神部隊の情報がたんまりと入ってる」
葉山はそれを受け取り、笑みを深める。
「でも良いのかい?元々敵対組織だったORCA旅団のトップに簡単に情報を渡して」
端末を弄りながら葉山は純粋に問いかける。八幡の目的はわからない。特に予想がつかない爆弾のような存在。それがORCA旅団の見解だった。
「別にどーでもいいだろう?俺は愉しければいいだけだ。企業、ナインボール、それこそORCAなんてものは俺が行動する上で何の障害にもならない」
八幡は顔を笑みで歪めながらそんなことをいう。
そもそもがこんな狂人に常識や仲間意識が通じるわけがない。そう葉山は改めてこの八幡という人間を認識した。
「へぇー……、まぁいいさ。この情報は有意義に使わせてもらうよ」
葉山はそういうと教室に戻る。
「おー、勝手にしろ」
八幡はそんな葉山を見送る。
ぼんやりと、空を眺めながら。
補足というなの書き忘れ。
ORCA旅団
企業の所業により退廃的になりつつある世界に活気を取り戻そうとしているボランティア軍団(大嘘)。
元々、レジスタンスと共に企業から目をつけられていた反抗勢力。
しかし、レジスタンスのやり方に疑問を持ち、反抗勢力としては離反した。
結果として、企業の傘下に入り内部から改革を起こそうと画策している。企業としては新たな方向性としてORCA旅団の行動は黙認している。
内部改革を行いつつ、実働部隊として独自の戦力を保持している。
戦力としては中小企業のものより遥かに少ないが、実力はナインボール部隊に匹敵するほど。
旅団長は葉山隼人。
企業からの命を受けて八幡の監視を行う。
八幡との関係は良好で八幡曰く、ORCAの反抗意識は称賛に値し、ゴミ虫(レジスタンス)よりも好感が持てるらしい。
とくに、冷静そうに見えて葉山の目に写る静かな殺意や闘志は彼を純粋に楽しませているようだ。