比企谷八幡の日常はまず、人間の可能性の証明から始まる
「お兄ちゃーん、起きないと人間の可能性が消えちゃうよー」
小町のふざけたような言葉が一階から響く
そんな言葉に比企谷八幡は意識を覚醒させる
「じゃあお前と喧嘩して証明してやろう」
そう言いチャッチャと制服に着替える
この間二分
無駄な時間は極力省く
「それはいいから早く席についてよー」
「わかったから待ってろ」
一階に降りるにつれて美味しそうな匂いが鼻孔をくすぐる
両親はとっくのとうに仕事に出ており、朝食は小町と交代交代で作っている
「小町、レジスタンスの動向はどうなってるかわかる~?」
「今のところ目立った動きはないけど、そのうち活動しはじめるかも」
小町はそういいながら携帯端末(スマホに似た)をチェックする
一応、八幡はプログラムに当てられているがゴミ虫(レジスタンス)がプログラム実施地区に現れたときは迎撃に向かわなければならない
「今動いてないならどーでもいい」
リビングに入り飼い猫のカマクラを撫で、席につく
うむ、美味しそうな飯だ
八幡は小町と共に朝食を取り始める
「そーだ、財団から連絡入ってたよ」
そしておもむろにそういう小町
それに対して眉間に皺をよせる八幡
「…………ほっとけ」
しかめ面のまま卵焼きに箸を伸ばしたときだった
「その扱いは酷くないかい主任」
軽薄そうな嘲るような声がリビングに響く
どことなくあどけなさが抜けない聞く分には良い声
彼は戸塚彩加、総武高校にて八幡を監視する者である
コードネームは財団である
「…………朝食の邪魔してんじゃねえぞゴミ虫」
しかし八幡は舌打ちをし視線を向けずに不機嫌なのを隠しもせず言う
「君とボクの仲じゃないか」
「はっ!寝言は寝て言えよ」
「つれないなぁ、いつからそんなにボクのことを毛嫌いするようになったんだい?」
「むしろテメエと仲良かったことなんざあったのかねぇ」
いつもより3割増し位の語気の強さで言う八幡、もちろん視線など向けない
「教室だと仲良くしてくるのに?」
「お前が勝手に話しかけてくるだけだろうが」
「馴れ合いの途中失礼しますが、お二人ともお時間は大丈夫なのですか?」
小町の凍てつくような一言で二人は時計を見る
「……ヤバくないかい?」
「こりゃヴェンジェンス平塚にどつかれるぞ」
八幡と戸塚は荷物を手に取ると全力で家から飛び出していった
ー再教育プログラム補佐官報告書からの削除内容ー
もちろんお互いに罵倒しあいながらだ
しかし、財団はおちょくるような発言ばかりだが八幡をよく気にかけているようでもあった
これは、キマシなのか……?
財団は見てくれは可愛らしいし……ふむ、夏には薄い本が熱くなるな、ぐ腐腐……
ー以上の内容は削除後秘匿とするー
(ここのところ吐き気を催すほどに財団がウザい)
八幡は授業を聞き流しながら戸塚を見る
真剣に授業を聞きつつ、時折八幡を見て小さく手を振ってくる
律儀に手を振り返すのも後々バカにされるか屈辱的な言葉と共に自分に反ってくるので無視を決め込むのが妥当と判断し八幡はそう決定する
(訳のわからんやつほど厄介なものはないしな)
そもそもが戸塚がこの実施地にいること自体がおかしい
彼は企業の中でもかなり上の存在だ、しかも戦場で見かけたことがほんとにない
おそらく何らかの研究チームにでも所属しているのだろう
何かの研究のためにここにいるのか、それとも全く違う理由でいるのか?
(結局はどうでもいいことなんだがな)
考えたところで戸塚が何をしようとしているのかわからないし、何かしたところで企業が尻拭いを行うだけだ
(俺には関係ない)
そう結論付け、八幡は再び授業を聞き流しはじめた
こんな授業など生きていく上で全くと言っていいほど役にたたない
「比企谷、ここを答えてみろ」
教師が八幡を指名する
どうやら、人物の考えを述べる問題らしい
「疑心暗鬼に陥っているところから考察すると、周囲に裏切られた経験をもっているから、誰も信じられないと考えてるのでは?」
適当に答える、八幡は役にたたないことで時間を割くほど無駄を愛しているわけではないのだ
「う、うむ……」
教師は顔をひきつらせつつ、解説に入った
(あー……、ダルい)
朝から無駄な体力、思考、時間を使ってしまった八幡は
放課後を待ち遠しく思うのであった