「雪ノ下さん、比企谷くん今日はほんとにありがとね」
相も変わらず爽やかな笑顔を浮かべる由比ヶ浜。
八幡は特に反応を見せることなく携帯端末をいじる。
先ほど、着信が入ったようで放置しすぎると帰宅後に何を言われるか分かったものではない。
「いいえ別にお礼はいいわよ、本当はちゃんと教えたかったのだけれど……」
雪ノ下は少し、残念そうにそう言った。由比ヶ浜も少し残念そうだ。
八幡はそれに対して、閃いたように言う。
「毎週料理習いに来ればいいんじゃねーの?」
その一言に由比ヶ浜は目を輝かせる。
「それだ!」
「それはダメよ」
しかし、雪ノ下は言いにくそうに言葉を続ける。
「奉仕部は自立を促すような活動をしてるのよ、さすがにそれは……」
言葉が途切れ途切れになりつつある。きっと言いたくないのだろう。八幡からすれば、まぁ、知ったことではないがここでは何も言わない。
一応、由比ヶ浜をこちら側に引きずり込む甘い甘ーい言葉もあるが、ここは雪ノ下の言葉通り自立を促すために何も言わないでおく。
言おうが言わないでいようがどうせ結果は同じ、どうせヴェンジェンス平塚が引きずり込むだろう。
わざわざ面倒なことはしない、特段に面白いことでなければだが……。
「雪ノ下さん、ううん、ゆきのん」
「ゆ、ゆきのん……!?」
唐突に話をぶったぎる由比ヶ浜、それに対してあだ名に対してキョドる雪ノ下。
面白そうな匂いがプンプンする。
八幡はそう確信し、愉悦を僅かに顔に浮かべる。
「うん、ゆきのんともっと仲良くなりたいからあだ名つけちゃうね」
「そ、それは構わないのだけれど……」
「で、本題はここからだよ。私奉仕部に入る」
「そ、そう」
「ゆきのん反応冷たいよ!?」
思った通り。八幡は無言のままだが思考にふける。
今後の奉仕部の行方を。
狂犬を招いてしまった奉仕部の行方を。
楽しみはまだまだこれから。
(あぁやはり人間は面白い……!!)
とにかく、小町から連絡があったことだしとっととここから引き上げる。
「あー、お嬢さん方すまないが俺、帰るわ。家で可愛いすぎて逆に憎たらしい妹に早く帰ってこいと催促されてね」
「「比企谷くん妹いたの?」」
八幡の道化ぶった発言よりも妹がいることに興味が向くこの二人。だいぶ八幡の特徴をつかみ始めたようだ。
「お、おう」
思わず素に戻る八幡。
「ヒッキーこんど写真みせて!」
由比ヶ浜が唐突に八幡に近寄る。しかもあだ名まで引っ提げて。
「わ、わかったから」
「事情はわかったは比企谷くん、また明日」
雪ノ下は由比ヶ浜を八幡から引き剥がしつつ、そう言う。
「おう、また明日」
八幡は荷物を手に取り家庭科室を出ていった。
――比企谷家
「緊急回線なんか使ってきてどうした」
比企谷は帰宅後すぐに小町のところに向かう。
「ナインボール:セラフが明日来ます。」
……………………は?
雪ノ下は突然のことに対処できない。
由比ヶ浜は先が読めない。(八幡の大好物な思考回路をさした人間)
戸塚は何を考えているのかわからない。
八幡は何をしでかすかわからない。
平塚は真っ当な先生。