ナインボール、これは企業の上層部またはそれに準ずる権威を持つものしか詳細を知ることのできない機体、コードネームである。
そして、そのナインボールには階級がある。
さらにナインボールのトップは特殊な機体を駆るそうだ。
作戦行動部隊の八幡は詳しいことは知らないが、戦闘を見た人間は総じてこう言う。
《奴は最強のAC乗り、ナインボールのトップだ》
機体の名前はナインボール:セラフ
奴は化け物だ。
「………………小町何をやらかした」
「私はなにもしてません、貴方が何かしたのでは?」
八幡は少し思考に入るが全くもって見に覚えがない。
むしろここ最近の彼は大人しすぎて逆に恐ろしいほどだ。
「とにかくだ、ナインボールが来るということは何かしらあったんだろうなぁ」
八幡は現実味がなくぼーっとした表情を浮かべながらそう呟いた。
「上層部から連絡です。ナインボールが自発的に会いたいと希望を出した。だそうです」
ますますわからない。
「一応、ハングドマンの準備をしておけ」
「そういうと思い、準備はできています」
流石は、長年パートナーを勤めているだけはある。八幡の考えていることは簡単に予想がつく。
そのときだった。
ピンポーン。
普段は全く鳴らないインターホン。
八幡、小町は共に顔を見合わせる。
一応、小町が応答をしてみる。
「どちら様でしょうか」
「企業って言えばわかるかな小町ちゃん?」
インターホンから聞こえる声。とても澄んだ声。とても最強とは程遠い声だ。しかし、ここで小町を見てみよう、顔が青ざめている。これ程など無いほどにだ。
「勝手に入るねー」
インターホン越しに聞こえる死刑宣告。
急いで小町が八幡の背後に隠れる。軽やかな声にとてつもない威圧が混ざっていた。
「おー、いたいた。はろはろー比企谷主任♪」
「ど、どうも……」
目の前に居る女性は一目でわかるほどに美しい。というか完璧な造形品のような風貌をしていた。
そして、笑顔なのだがどこか寒々とした印象がとても強い。
八幡はこれだけでなく、もうひとつ何か引っ掛かった。
冷めたような目、どこかで見た……
「やだなー、そんな死んだ魚みたいな目でジーっと見られたらお姉さん惚れちゃうぞ?」
八幡の間近に迫りなからそんなことを言う。
「寝言は寝て言えよ、で天下のナインボール様がしがない一軒家に何の用ですか?」
おちょくるような言葉に対して反応を見せずに淡々と話を進める。
「あーん、比企谷主任冷たいよー?」
キャッキャしてる女性を八幡はさらに眉間に皺を寄せる。
その反応を待っていたのかさらにニヤニヤしながら見てくるナインボール。
「いい加減にしろよ何の用だと聞いてるんだ、簡潔に答えろ」
八幡は語気を強めながら言う。
「そんなの決まってるじゃん、君への忠告と行動についてだよ」
背筋が凍る。
この一言に尽きる。
八幡を貫いた物は尋常ではない気配。まるで人間ではないようなそんな考えを持たせるほどのものだ。
「このまま再教育プログラムに反抗する素振りをみせるなら、お姉さん本気出しちゃうぞ☆」
鼻と鼻が擦れそうなほどの距離で、言われる最後通達。
「別に反抗なんざしてねえよ、そう見えるならもっとましなプログラムを用意するこったな」
八幡は特に意に介することなく嘲笑う。
それはまるで楽しくて愉しくて仕方がない様子で。
「へぇ……、いい顔するのね」
ナインボールは、改めて笑顔を浮かべる。
「そーだ!いいこと教えてあげる!」
まるでおもちゃを手にいれた子供のような笑顔を浮かべる。やはり誰かに似ている。
「私の名前、《雪ノ下陽乃》って言うの、賢い君なら何のことかわかるよね?」
八幡は納得したように目を丸くする。
通りで似ているわけだ。
まさか姉妹だとは……。
「小町ちゃん、今度お茶しよーね」
陽乃は言いたいことは言い終わったのか小町に一言声をかけた。
「は、はい……」
小町は小町でビビりつつも、返答する。
「それじゃあ、《また》ね」
最強の異名を持つ彼女は台風のように比企谷家をかき乱し後にした。
残された二人はしばし呆然とするのであった。
ごめんなさい!
「黙れよ」
出せませんでした……!