どうしてこうなった?   作:とんぱ
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第十五話

 私はスタート直後に森に入って速座に全力でダッシュした。出来るだけ痕跡を残さないレベルでの全力でだ。もちろんヒソカから一刻も早く離れるためだ。アイツは私のすぐ2分後にスタートする。あれとまた一緒になるのは勘弁してほしい。

 

 ……もういっその事ここでプレートを奪って試験不合格にしてしまえば……? いや、プレートを奪っても他の受験生から手に入れるだけだ。ヒソカなら簡単に6点分のプレートを集めるだろう。ならプレートを奪えないくらい戦闘力を削ぐ様に痛めつける? ……それで他の受験生に殺されても寝覚めが悪いしなぁ。まあ、ヒソカは死んだ方が世の中の為かもしれないけど。

 

 

 

 ここがどこかは分からないけど、とりあえずヒソカからは離れることは出来ただろう。後は受験生を探すだけだ。円は……あまり使わないでおこう。やっぱりオーラは消費され続けているし。緊急を要する時以外は絶でいるとしよう。オーラの消耗も防げるし、襲うにしても逃げるにしても気付かれにくい方がいいしね。

 

 絶を行い気配を絶ちながら受験生を探すこと約2時間。依然として受験生は見つからない。まあそれも仕方ない。あんなに一気に離れたんだからここら辺に受験生がいる可能性は少ないだろう。

 円を使って探すか? ……いややっぱり駄目だ。ただでさえオーラの消費が激しいのにさらに円を使えばかなりの消耗になる。これが【天使のヴェール】と【ボス属性】の不便なところだよな。それにこの場所は円をするには不利だ。体を隠す場所が多すぎる。円は物体を透過する事は出来ない。何かで体を覆ってしまえばそれだけで円の索敵から逃れることが出来る。

 もちろん明らかに不自然な何かがあれば分かるけど、この森の中だと草むらの中に入ったり木の枝や葉で体を覆えばとても分かりにくくなる。

 1㎞に達する私の円なら普通に移動している受験生を見つける事は簡単だろう。だけど先程のデメリット、オーラの消費がやはり痛い。出来るだけ絶でいるべきだろう。円は最終手段だね。

 

 しかし……先程から何となく誰かに視られているような……。

 

 ……気のせいか? 気配は感じない。円を使わなくてもある程度の距離なら気配を探ることは出来る。いるのはせいぜい小動物くらいだ。

 視線も……やっぱり感じないか。多分気のせいだな。自慢じゃないけど気配探知はかなりのモノだと自負している。少なくとも周囲数百mの範囲に人はいないな。小動物の気配と勘違いしたのか? 人と動物の気配を間違うなんて鈍ってんのかな……?

 

 まあいい、気を取り直して受験生を探すとしますか。

 

 

 

 受験生3人倒してプレートゲット!

 これで試験終了までの間プレートを盗られないように注意すればよしと。ふう。丸2日動き通したから少し汗かいたな。

 途中で泉が湧いていたのを見つけてたな。そこで少し水浴びをして汗を落とそう。

 

 ……周囲に人の気配なし。大丈夫そうだな。別に見られても困ることはないけど、裸を見られるのは男とか女とか関係なく多少は恥ずかしいからね。母さんなら女性がむやみに肌を見せてはいけないとか言いそうだし。

 

 母さん……まだ本当の母さんのお墓にお参りも行けてないな……。

 ……いつか必ずお墓を見つけよう。そして報告しなきゃね。私は元気ですって。

 

 

 

 ふう。冷たい水が火照った身体に気持ちいい。

 そうだ。ついでに服も洗っておこう。このままじゃ臭いが……視線!?

 何者だ!? 距離は……約50mか。ここまで接近されて気付かなかった。かなりの手練れ! 

 ちっ! 私が気付いた事を察知されたか……気配が完全に消えた。恐らくすでに離脱しているな。

 

 受験生か今のは……? それにしてはレベルが違いすぎる。

 

 とにかく一旦ここから離れるとしよう。

 

 

 

 

 

 

「本当に会長が出られるのですか?」

「うむ。401番の監視はワシがする」

「し、しかし」

「これは決定事項じゃ。異論は認めん」

「は、はぁ。分かりました」

 

 4次試験において受験生1人1人につける監視。目的は4次試験における受験生の対応を見ることで様々な資質や能力をチェックすること。

 これを利用せん手はない。401番……アイシャ嬢ちゃんを尾行する事でアイシャ嬢ちゃんがリュウショウの生まれ変わりかどうかの確認が出来るやもしれん。

 本当にリュウショウの生まれ変わりなら言いたいことは山ほどあるんじゃ。確実に見極めさせてもらうぞ!

 

 ……死んで勝ち逃げなんぞ認めてなるものかい。

 

 おっといかん。彼らに言っておかねばならぬ事があったのう。

 

「今回受験生を尾行するハンターに告ぐ。自分の管轄の受験生の近く。およそ500m以内に401番の信号が来れば即座にそこから離れるように。これは厳命じゃ」

 

 アイシャ嬢ちゃんがリュウショウだと仮定して事を進めておかねばな。ワシの尾行が気付かれんでも、他の受験生を尾行している試験官に気付かれては意味がないわい。

 そこからワシの存在に感づかれる可能性は大いにあるからの。

 

 さて、受験生も全員出発したようじゃし、ワシもそろそろ行くとするか。

 一応、体には布を覆いその上に木の枝や葉を付けて偽装しておこう。円対策じゃ。リュウショウの円は半径500mはあったからの。

 発信器を確認すればアイシャ嬢ちゃんの居場所はすぐに分かる。……随分奥に行っておるの。少し飛ばすか。

 そうしてワシはアイシャ嬢ちゃんを追って森の奥へと消えていった。

 

 

 

 アイシャ嬢ちゃんのプレートに仕込んでおる発信器を目指して来たのじゃが……無理じゃ。これ以上近づけぬ。

 確実にこれ以上距離を詰めたらアイシャ嬢ちゃんにばれる。それが分かってしまう。気配を察知する範囲が広すぎじゃろう! これより少し前に進んだだけでワシに気付きかけおった!

 ますますリュウショウとしか思えんわ! 絶をしているワシにこの距離で普通気付くか? 並どころかトップクラスの実力の持ち主にも気付かれん自信はあるのにのう。視線だってアイシャ嬢ちゃんに直接合わせず上手くぼかしているというのに……。

 

 大体なんじゃあの絶は! 発信器がなかったら見つけるのも困難じゃわい! 少しは尾行している者の身にもならんかい!

 全く……念のためそこらにいた小動物を嬢ちゃん方面に向かって放した甲斐があったわ。どうやら監視はばれていない様じゃの。

 アイシャ嬢ちゃんが移動を再開した。つかず離れず、この距離を何とか保ちながら尾行する。正直めっちゃ神経けずるわい……。

 

 

 

 ……どうやら受験生を発見したようじゃ。

 相手は……駄目だなあれは。嬢ちゃんに気付いておらんのは仕方のないことじゃが……それ以前に弱すぎる。あれでは嬢ちゃんは実力の一分も出さずに倒すことが出来るじゃろう。

 

 ほれ、言わんこっちゃない。一瞬で近づいて首筋に手刀を一線。簡単に気絶させられおった。風間流を使うまでもない様じゃ。不甲斐無い。少しは粘らんかい。

 

 まあ良い。そもそも実力は十分理解出来ておる。なにせ竜巻落としすら使って見せたのじゃからな。監視カメラにばっちし映っとったわい。

 あのヒソカに同情するとは思わんかった。よくあれをまともに喰らって生き延びていたもんじゃ。いや、そもそもリュウショウはあんな殺し技をワシに仕掛けておったのか?

 ……マジであいつタダじゃおかねぇ。

 いや、【百式観音】使うワシも似たようなもんか。

 

 おっと、感慨に耽っていてはいかん。嬢ちゃんがまた移動を再開した。さあ、いつボロを出すかの?

 

 

 

 わずか2日でいとも簡単にプレートを集め終わりおった。犠牲になった受験生が哀れと言うほかないの。レベルが違いすぎる。

 ほとんど休みなく動いておるが疲れた様子はなし。スタミナや身体能力はリュウショウとは比べ物にならぬ。この歳でこの身体能力、確実に成長の余地はあるじゃろう。……リュウショウ並の技術に類稀なる身体能力。何の冗談じゃ?

 

 ワシがリュウショウに勝てた最大の要因がリュウショウの身体能力じゃ。打たれ強さや反射神経に動体視力。これらは並の人間よりも鍛えられているがそれでも達人クラスになると遥かに下。

 それをあ奴は持ち前の読みの深さと圧倒的なオーラ量、そして世界最高峰のオーラ技術で補っておった。リュウショウのオーラの流れから次の攻撃を予測できる者はおらんかった。攻防力移動など有り得ぬ速度じゃ。何せワシの【百式観音】にすら間に合う圧倒的速度の流をこなすのじゃからの。

 

 それらを駆使してもワシが【百式観音】を使用したらワシの勝ちは決まっておった。どれほど読みが深かろうと、オーラ総量が多かろうと、オーラ技術が凄かろうと、避けられぬ攻撃を受け続ければいずれ倒れる。リュウショウの耐久力ならば尚更の事。

 ……それでも最大12発耐えたのはすごいと思うわ。一瞬でも油断すればワシがやられておったのだからの。

 

 アイシャ嬢ちゃんがリュウショウだとすると……あのリュウショウの最大の弱点がなくなったと……?

 

 いやいや、一体それはなんの冗談じゃ? 【百式観音】を受けてかすり傷程度じゃったぞ? ふざけてんの?

 

 ……く、くっくっく。面白れぇ。最近はめっきり張合いもなくてつまらなくなってきたところだ。

 ワシの全力の全力を受け止めてくれる相手が更なる成長を遂げて復活をした。最高じゃねぇか。例えアイシャ嬢ちゃんがリュウショウでなかったとしても実力者であることに変わりはねぇ。

 俺のこの疼き。止めることが出来ることを望んでいるぜ?

 

 ん? いかん! 嬢ちゃんが神経を集中して周囲を警戒しておる! もしやワシがおることがばれたか? すぐにこの場から遠ざからねば!

 ……いや、どうやらばれていないようじゃの。ふう、焦らせおって……むお! こ、これは、ま、まさかぁぁ!?

 

 

 

 か、観音様が……!!

 

 おお! 齢13とは思えぬ豊満な胸! まさに全てを包み込む母性の象徴! この歳でこのバスト、確実に成長の余地はあるじゃろう!

 細すぎず、かつ太すぎず、女性の魅力たる胸と尻を強調するかのごとく括れた腰! 

 桃の果実を思わせるような、思わず齧り付きたくなるほどの張りと柔らかさを秘めた魅力溢れる尻!

 何というプロポーション! 鍛えられた肉体と女性の魅力が合わさった均整のとれたその身体は芸術の極み。

 さらには水に濡れた事により濡烏(烏の濡れ羽色とも言う)となった流れる様な黒髪が白い肌に合わさり、まさに美の結晶じゃあぁぁぁぁぁ!

 

 ほ、ほほう。下はまだ生えておらぬようじゃのぅ。そこは年相応といったところか。ふむ。先っぽは綺麗な桜色――む! ええい。服を取りに行ったのか! 位置が変わって木々が邪魔で良く見えんわ!!

 早くこっちに戻ってこんか!

 

 ――! やば、気付かれた! 思わず興奮してしもうた。気配が漏れてたか?

 くそう! まだワシの正体がばれた訳ではない。口惜しいがここは撤退じゃ! 

 

 残り5日もある! 必ず好機(水浴び)は巡ってくるはず!! 

 絶対にアイシャ嬢ちゃんのその全貌を暴いてくれるぞ!

 

 

 

 

 

 

 あの視線を感じてから4日が過ぎた。残りは既に24時間を過ぎている。あれ以来さらに注意して周囲を警戒しているが、視線も気配も感じない。いや、何人かの受験生と思わしき人の気配は感じていたが、私を監視していた者の気配ではない。

 あれは桁が違う。あの隠行、下手すればネテロや私並の使い手。自画自賛になるが、その様な使い手がハンター試験にいるとは思わなかった。

 

 顔面針男か? ヒソカなら確実に見つかって逃げる性格ではない。

 それとも試験官? どちらにせよ私を監視していた理由は分からない。

 憶測ぐらいならいくつかつくけど。

 

 とにかく私が気付かないだけで未だに私を監視・尾行している可能性は大いにある。おかげでおちおち気を休める事も出来ない。この4日間一度も水浴びが出来なかったよ……。

 それ以前に……眠い! 正直殆ど眠れなかった。

 熟睡するといつあの監視者が襲撃者に変わるとも限らない。そう思うと中々……寝てても気配は察知出来るけど、あれは別格だ。さすがに自信がない。

 

 まあいい。気を取り直して残りの試験時間を過ごそう。試験が終わってから熟睡すればいい。ここで落ちたら今までの時間が無駄になっちゃうからね。

 最後まで気を抜かない様に……ん? 人の気配。それも複数……数は3人か。

 周囲を探索している様だ。恐らく受験生を探しているのだろうが……3人というのが気になるな。協力しているのか? だとしたら大したものだ。このサバイバルで協力関係が取れるなんて状況判断と理性が高い証拠。

 

 どれ、ちょっと様子を……ゴン達か!

 ゴン・レオリオさん・クラピカさんの3人組だ。確かにあの3人なら一緒に協力し合えるよね。

 

 いいなぁ。ああいうのを友達とか仲間とかって言うんだよなぁ。

 羨ましいなぁ。

 

 ……ちょっと声を掛けてみよう。ゴン達を見たら人恋しくなっちゃったよ。

 そうだ。どうせなら少し驚かせよう。それくらいの悪戯ならいいよね?

 

 

 

 気配を消してゴン達の真上の木の枝に移動する。どうやら気付かれていないな。このまま一気に地面に降り立ち……。

 

「わっ!!」

「うおぉぉっ!?」

「くっ!?」

「しまっ!?」

 

 おお。予想以上の驚き具合。でもきちんと警戒していた様で、すぐに皆さん臨戦態勢を取ってらっしゃる。

 ……ちょっとやりすぎたかな?

 

「わわ、すいません! 私です。アイシャです!」

「……なんだよアイシャかよ。ビックリさせんじゃねえよ。敵かと思ったじゃねえか」

「ふう。ほんと。ここまで近づかれたのに全然気づかなかったや」

「……おめでたいなお前達は。まだアイシャが味方と決まったわけではないのだぞ。我々のプレートを奪いに来たのやもしれん」

 

 おおう。レオリオさんとゴンはちょっとビックリした、で済ませてくれそうだけど、クラピカさんには疑われているようだ。

 こんな試験じゃ当然の反応だから仕方ないけどね。

 

「本当にすいません。この辺りを通っていたら皆さんが見えたもので、つい……プレートは既に6点分集めてますのでもう要りませんよ」

「おいおいクラピカ疑いすぎだぜ。アイシャが騙し討ちなんてそんな汚いことするわけないだろ?」

 

 ……えっと、このプレートは受験生から不意打ちで奪ったものですが……騙し討ちと不意打ちは違うよね?

 

「大丈夫だよクラピカ。アイシャがその気なら最初の時に攻撃出来てたよ?」

「……そうだな。すまないアイシャ。少し過敏になっていたようだ」

「いえ、試験が試験です。それにプロハンターになるのなら慎重さも求められるでしょう。先程のは当然の対応ですよ」

「そうか。そう言ってくれると助かる」

「おいおい、まるで俺達が慎重じゃないみたいじゃねえかよ~」

「レオリオ。達を付けるとゴンに失礼だぞ?」

「んだと~!」

 

 レオリオさんとクラピカさんのやり取りに私とゴンから笑いが零れる。それを境にクラピカさんとレオリオさんも笑みを浮かべる。

 ああ、いいなぁ。やっぱりこういうの、憧れるなあ。

 

「ところで3人ともプレートは集まりましたか? ……見たところ受験生を探していたようでしたが」

「……それがなぁ」

「私とレオリオは既に合格分のプレートは集まっている。問題は……」

「うん……オレのプレートが……」

「ああ。ゴンの3点になるプレート。標的となるナンバープレートを持った受験生が見つからねぇんだ」

「私達は上手く合流し協力関係を結ぶことが出来た。その後運良く私とレオリオの標的からプレートを奪うことは出来たが……」

 

 なるほどそういう事情か。

 

 しかし……クラピカさん……優しい人なんだな。

 他の2人は恐らく考えてすらいないだろうが、クラピカさんは私のプレートを奪う事を一瞬だが思考に捉えていただろう。最初の問答で私がプレートを必要ないので敵ではない、となったが、実は違う。彼らの方はプレートが必要なのだ。

 ならばプレートを持っている私は彼らにとって敵となるはず。その答えにクラピカさんなら確実に行き着いたはず。

 でもそうしなかった。それだけでクラピカさんがどれだけ優しいかがよく分かる。

 

「なるほど……ところでゴンが探しているのはどのナンバープレートなのですか?」

「90番だよ」

 

 ん? ……90番? それってもしかして。

 リュックサックの裏ポケットの中を探す。出てきたのは4枚のプレート。その中の一つに書かれた数字が90だった。……おおぅ。

 

「えっと、私、そのプレート持ってるんですが」

『え?』

「ほら」

 

 すっとプレートを前に出す。それを食い入る様に見る3人。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 沈黙が場を支配した。適当に見つけた受験生から奪ったものだけど、確かに誰かの3点分のプレートを奪う事になるよね。それがたまたまゴンだったと……。

 

 どうしよう? これを譲るのは簡単だけど……確実にゴンは受け取らないだろう。きっとそういう子だ。

 けど今からゴン達が3点分のプレートを集めるのは不可能に等しい。何せ残り24時間切っている中でプレートを3枚集めなければならないのだから。

 しかしまともに渡しても受け取らない事は目に見えている……。

 

 そうだ! これならいけるかもしれない! 少しゴンには悪いけど……。

 まずゴンに勝負を挑む。ゴンが勝てばこのプレートをゴンに渡す。私が勝てば私の言うことを何でも一つだけ聞くようにする、という条件を付けてだ。

 そうして私が勝ったうえでゴンにプレートを受け取れと命令すればいい。わざと負けては余計にゴンのプライドを汚すだろう。

 これでゴンにプレートが渡ってもゴンは私に対して負い目を感じるかもしれない。でも他にゴンにプレートを渡す方法は思いつかない。プレートを渡してしまえば私が合格出来なくなるけど、ゴンと違って私はプレートを一枚手に入れればいいだけだ。それなら何とかなるだろう。

 これで行くしかない。

 

「ゴン。勝負をしませんか?」

「え? 勝負?」

「ええ。勝負です。その勝負にゴンが勝てばこのナンバープレートをゴンに譲りましょう」

「ええ!? そんなの悪いよ!」

 

 いや、すでに勝ったつもりで返されても困るのですが……。

 

「アイシャが勝った場合はどうするのだ? すでにプレートは必要ないだろう?」

「私が勝てばそうですね……1つ私の言うことに何でも従ってもらう、というのはどうでしょう? これならプレートと釣り合う内容だと思いますが」

「なるほど……勝負内容は?」

「クラピカ! オレは勝負するなんてまだ――」

「落ち着けゴン。これ以外にどんな方法がある。もはやお前が合格するにはこの案に乗るしかあるまい」

「でも……」

「(まあ聞け。このプレートを手に入れなければ我々に必要なプレートは3枚。これは分かるな)」

「(……うん)」

 

 何やら小声で相談している様だ。ひとまず待っていよう。

 

「(ここでプレートをアイシャから手に入れたとしても、アイシャが新たに必要なプレートは1枚のみ。その1枚を我々で協力すれば手に入れる可能性は大いにある)」

「(あ。……でも、もし手に入らなかったらアイシャが)」

「(だがそれが全員で合格するには一番効率的だ。4人で協力すればプレートの1枚くらいなら手に入れるのもかなり楽だろう)」

「(4人で……うん、そうだね)」

 

 ん? 相談は終わったかな?

 

「分かったよアイシャ。その勝負受けるよ」

「おいマジかよ! それじゃアイシャが――!」

「(こっちにこい馬鹿リオが! いいか……)」

「(誰が馬鹿リオじゃこらぁぁー! で、なんだよ?)」

 

 ……仲良いなあの二人。

 

「勝負を受けてくれるのですね。それでは勝負内容ですが……賭けの内容を決めたのは私ですから、勝負内容はゴンが決めていいですよ」

「いいの?」

「ええ。二言はありません」

「どんな勝負でも?」

「はい。構いません」

 

 私は一向に構わん! 勝っても負けても問題ないしね。

 まあ勝負事だからわざと負ける気はないけど。

 

「じゃあ……そこの泉に魚がいたから。釣りで勝負しよう」

「はい。釣りですね分かりまし……はい? 今、何と?」

「釣りで勝負。あ、制限時間を決めておいた方がいいよね。今から制限時間10分以内に魚を何匹釣れるかで勝負。レオリオ、時間を計って」

 

「釣り?」

「うん」

 

「魚を?」

「うん」

 

「釣竿で?」

「うん」

 

「手は?」

「竿で」

 

「足は?」

「竿で」

 

「竿は?」

「自前で」

 

「時間は?」

「10分」

 

 ……鬼がおる。

 

「もう始まってるから早くしないと時間なくなっちゃうよ? レオリオ、残りどれくらい?」

「あ、あと9分15秒だ(え、えげつねぇ)」

「は、はは(これはひどい)」

 

「うわぁぁん! ゴンのバカヤロ~!」

「よし! まずは1匹!」

 

 竿を手作りしている私の後方からそんなゴンの声が聞こえてきた……。

 

 

 

 10分後。はれてプレートはゴンの物となりましたとさ。

 ふっ、全ては計算通り!

 だから、くやしくなんか、ない……!

 

 

 

 

 

 

「ごめんねアイシャ。本当にプレートをもらって」

「い、いいんですよ。勝負の結果です。それも自分から持ち掛けた。そこに文句を言うつもりはありませんよ」

「いや、俺は文句言ってもいい気がする……」

「私もだ……」

 

 やっぱり少しズルかったかな? でも、アイシャと闘って勝てるイメージが湧かなかったんだよね。

 何だろう。ヒソカみたいな怖さやゾクゾクするものを感じないんだけど、なんか打ち込めないっていうか……。闘う前から相手に負けをイメージさせてるなんて……アイシャはすごいや。

 オレももっと強くならなきゃ。そうじゃなきゃジンに会うなんて出来っこないよね、カイト。

 

「まあ終わった事は仕方ないとしよう。それよりもアイシャ。今更こんな事を言うのも何だが、私達と協力しないか? アイシャはあと1点分のプレートを手に入れればいいのだろう。4人で協力すれば手に入れる確率も上がると思うが?」

「そうだよアイシャ! オレ達に協力させてよ!」

「ああ。このまま別れるなんて出来ないしな」

「……いいのですか?」

「もちろん」

「では……よろしくお願いしますね」

 

 うわぁ。すごくいい笑顔だなぁ。レオリオがアイシャの笑顔見て鼻の下を伸ばしてるや。アイシャってこうして人と話したことはあんまりないのかもしれない。オレ達と話す時っていつも楽しそうなんだよね。

 オレも友達とこうして話をするのはすごく楽しいんだよね。くじら島には同年代の人がいなかったから。……レオリオはちょっと年上だけど。キルアもいたらもっと楽しいんだろうなぁ。今頃どうしてるんだろ? キルアの事だからきっと問題ないと思うけど。

 

 いけない。アイシャの為にも早く他の受験生を探さなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 残り時間は20時間を切ったか。

 ここからが正念場だ。例え6点分のプレートを手に入れてもそれを試験終了まで守れなければ意味はない。ここまでくれば恐らく合格点を満たしていない受験生は死にもの狂いでプレートを奪おうとするだろう。

 それを許すわけにはいかない。オレは絶対にハンター試験に合格して幻獣ハンターになるんだ。ここまで来て今更リタイアしてたまるか。

 

 気配を消しつつも周囲に気を張る。……どこにオレを狙うやつがいるか分から――敵! 気配を感じて振り向くと長身のサングラスをかけた一人の男。甘かったな、気配が消し切れてなかったぜ!

 構えていた弓に矢を番え即座に――! 後ろからも気配! くそっ! 2人掛かりか! このままじゃ――右からも人が!? 3人? いやちょっと待て! 狼狽している俺の肩を誰かが叩く。慌てて振り向くとそこには――!

 

 申し訳なさそうな顔をしている4人目の襲撃者がいた……。4人掛かりて……はは、ふざけてんのか?

 

 そうしてオレは後頭部に強い衝撃を感じ、瞬く間に意識を失った……。

 

 

 

 ――受験番号54番ポックル、ナンバープレート紛失。結局彼は今回の試験に不合格。本来の歴史と違いこれよりさらに2年後の試験に合格してプロハンターとなる――








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