どうしてこうなった?   作:とんぱ
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ヨークシン編
第三十五話 ※


「リィーナ、少しの間でしたがお世話になりましたね」

 

 今日でとうとう風間流ともしばしの別れとなる。9月までは少しだけ時間があるけど、ヨークシンへの移動時間も考えたら今日くらいに出立しなければいけないだろう。あまりに遅くなるとレオリオさんを待たせてしまうかもしれないし。レオリオさんと会うのも久しぶりになるな~。半年以上も会っていないよ。元気にしているかな?

 

「お世話などとそのような! せ……アイシャさんならどれほど逗留されても何ら問題はありませんとも! ……もちろんアイシャさんのお弟子さん方も。貴方達のおかげで我が道場も活性化いたしました。やはり度々外の方とも手合わせをすると皆の身も心も引き締まるようです。ありがとうございました」

「いえ、我々こそ風間流にて大きな経験を積ませていただき、礼はこちらが言うべきことです。リィーナ殿、真にありがとうございました」

「ありがとうございました!」

 

 うんうん。クラピカとリィーナの確執も大分なくなったようで何よりだよ。2人の確執と言うより、リィーナが一方的にクラピカを嫌っていたんだけどね……。

 何が有ったのか分からないけど、リィーナの角も取れたようだ。クラピカへちゃんとしたアドバイスをしているのも何度か見かけたし。……初めの内は罵倒か厭味しか言ってなかったもんな。

 

「ねえアイシャ、契約が終わったからあたしがあなたにこんなこと言う権利ないのはわかってるわさ……。でもあえて言わせてちょうだい。……やっぱり服装変えない?」

「だが断る」

 

 ようやく、ようやく私は以前の動きやすい服装へと戻ることが出来たんだ! 契約が切れた今! もはや女性ものの可愛らしい服を着る必要はない!

 

「ああ、勿体無い。絶対損するわよアイシャ……。やっぱり私も付いていこうかしら?」

 

 ビスケはもう少し本部道場に残るようだ。目当てのグリードアイランドのプレイヤー選考会は9月10日のサザンピースオークションが終了してからその会場で始まるらしい。なのでゆっくりするようだ。まあ会場に入るにはサザンピースオークションのカタログを購入しなければいけないからギリギリでヨークシンに来ることはないだろうけど。私たちもカタログを買わなきゃいけないな。忘れないようにしないと。

 

「ビスケの言う通りです! アイシャさんは自分をもっと磨くべきかと……」

「武人として充分に磨いているからいいんです」

「それは磨きすぎよ……」

 

 そんなことはない。これでもまだまだネテロに確実に勝てるとは思えない。奴に完勝するまでは修行を怠るわけには! ……あれ? 私って本当に【絶対遵守/ギアス】解けてるんだろうか? ……最近そこらへん自信がないぞ。

 まあ、今さら腕を錆びつかせるつもりはないからいいけどね。

 

「ゴン君、キルア君、これでしばらくお別れだね。アイシャちゃんの言うことをしっかり聞いて元気に頑張るんだよ」

「シオンさん! ありがとうございました! シオンさんも元気でね」

「あんたも元気でな」

 

 シオンとカストロさんも見送りに来てくれた。カストロさんは本部道場でも一目置かれる存在となっている。あのリィーナが風間流の門下生でもない者を内弟子にするなんて初めてのことだし、当然とも言える。

 

「うん。ウイングとの式にはみんなも呼ぶからね!」

「ありがとう! シオンさんも早くウイングさんに会えるといいね」

「おいゴン! そんなこと言うと――」

「……ああウイング! もう68日と12時間32分も会ってないよ! 早くウイングに会いたい……。【映像記憶/オタカラフォルダー】だけじゃ限界があるよ。

 ……新しい念能力でも作ろうかな? どんな念能力がいいだろう? ウイングを具現化? ダメだ、完璧な操作をするには操作系は得意系統から離れすぎているし、何より何だか浮気みたいになっちゃう。

 テレパシーで声だけでも。ううん、それなら電話で大丈夫だし……。それに声だけじゃ満足できないよ! うーん……。そもそもウイングに定期的に会えればいいんだよ。具体的には1日24回くらい。

 そしたらこんな悩みもなくなるのに。でもそれをするにはここから抜け出さなきゃいけないし。そんなことしてバレたらトンパさんと同じ目に有っちゃうよ……。そうなったらもう御終いだ、私は監獄に囚われた囚人の如く……。はっ!? 囚われのお姫様、それを助けに来るウイング! 白馬に乗った王子様!? ぐ、落ち着け私! 2・3・5・7・11・13・17……ふう」

 

「お、遅かったか……。バカ野郎! 1ヶ月近くもシオンと付き合っていたらこいつの扱い方くらい覚えておけ! ゴン! お前は風間流で何を習ってたんだ!」

「念の修行だよ! シオンさんの扱い方じゃないのは確かだよ!」

「そうだ! 瞬間移動の能力を作ればいいんだ! 放出系は少し離れているけど、移動できるのがウイングの隣だけに限定すれば! あとは私のウイングへの愛で不得意系統の不利なんか吹っ飛ばすだけだよ!」

「おいリィーナさんよ。コイツが本当に次期本部長最有力候補者でいいのか?」

「……少々、早まった感はありますね……」

 

 うん。今日もシオンは平常運転で何よりだ。

 あと、その念能力はどうなんだろう? シオンは戦闘系の念能力を持ってない気がするんだけど大丈夫なのか? 私が言えることじゃないけど。戦闘用の念能力は私も持ってないし。【天使のヴェール】は充分戦闘用とも言えるけどね。

 

 シオンが暴走し、キルアが神速のツッコミを加えている横をカストロさんが通り過ぎてこちらまで近づいてきた。……心なしかシオンを見て疲れていたけど。

 

「カストロさん」

「アイシャさん。貴方には多くの恩がある。その恩に報いる方法は私なりに実行しているつもりだ」

 

 ああ、私の気持ちを汲んでくれている。この人は武術家としても人としても素晴らしい。今に彼は知らぬ人などいない程に立派な武人へと成長してくれることだろう。

 

「私は強くなる。誰よりも、ヒソカよりも、貴方よりも! ……だからアイシャさん。いつか私とまた戦ってくれ。その時は……必ず貴方を失望させないと誓おう!」

「……! はい! その時を楽しみに待っています!」

 

 彼からは断固たる決意を感じる。ヒソカを超える日もそう遠くないかもしれない。

 だが、あの男も停滞しているわけではない。故に油断は禁物だが……今のカストロさんなら大丈夫だろう。力強い、真っ直ぐな瞳をしている彼ならもう自分の力に驕ることはないと信じられる。

 ふふ、ネテロ以来ですね。戦うのを待ち遠しいと思うのは。

 

「みんな、名残惜しいだろうがそろそろ時間だ」

「そうですね。では、ヨークシンへ出発です!」

「おー!」

「元気なこって」

「いいことだろう。お前もあの時のアイシャを心配していただろう? 元気なのは多少は吹っ切れた証さ」

「それは分かっている。だけどな……あの時を思い出させるようなことを言うな。次の日に地獄見たの忘れたのか……。朝方アイシャの部屋から出てきたのをリィーナさんに見られてさえなけりゃ……!!」

「……すまない。自分で言っておいてなんだが今更ながら寒気がする。生きているとはそれだけで本当に素晴らしいと実感したぞ……」

「何してるの2人ともー! 置いてっちゃうよーー!」

 

 さあ、ヨークシンへ向けて出発だ。さらば風間流よ。さらばアームストルよ!

 

 ……次にここに戻ってくる時には、また母さんのお墓の前に立つことが出来たらいいな。

 

 

 

 

 

 

「ここがヨークシンかー! 凄いね、早朝なのに人がいっぱいだ!」

「今日からドリームオークションが始まるからな。観光客も含め、いつもよりも活性化しているんだろう」

「レオリオさんはお昼頃に合流するんでしたっけ?」

「はは、レオリオ以外ずっと一緒にいるって知ったらどんな反応するだろうな」

「ダメですよそんな意地の悪い事を……というか、レオリオさんに言ってないんですか? 私たちが一緒にいることを」

「ん? ああ、その方が面白そうと思ってなー」

「な、何ということを……! ハンター試験が終わった後にレオリオさんも私がいないことを気にしてくれていたみたいだから、連絡してくださいと言ったじゃないですか!」

「そだったっけ? ワリ、忘れてた。でもアイシャが連絡したら良かったじゃん」

「私はレオリオさんのケータイ番号もホームコードも知らないんですよ? それでどうやって連絡を取れと……」

「え? でもキルアやクラピカに頼んで教えてもらえばいいんじゃない?」

「本人以外から番号を聞くのは失礼じゃないですか?」

 

 少なくとも私はそう思うんだけど? これって常識的な考えじゃないのかな?

 

「律儀だなお前。ま、今回はしゃーないってことで。それよりもゴンはいいかげんケータイくらい買えよな。ハンターの必需品だろが」

「あ、すっかり忘れてた」

「ハンター以前に連絡用としてだけでもいいから持っておくべきだ。何かあった時に不便な思いをするぞ?」

「そうだね。じゃあレオリオが来る前にケータイを買ってきてもいい?」

「ええ。それじゃ一緒に……あれ? ……ちょっと待ってください。レオリオさんが近くにいるような……」

 

 この気配。真っ直ぐに私たちに向かってきているこれは多分レオリオさんの気配だ。しかしこれは……足運びが以前とは比べ物にならないくらい洗練されている? 何があったんだろう?

 

「お、いたいた。よお! 久しぶりだなお前ら!」

「レオリオ!!」

「おー、ホントにいたぜ」

「流石アイシャ。この雑多な中で良く分かったものだ」

「いえ、流石にこれだけの人の中では自信ありませんでしたよ」

「って! アイシャじゃねーか! お前無事だったのかよ! ハンター試験の後どこ探してもいなかったから心配してたんだぜ!」

「すいませんレオリオさん、何も言わずいなくなってしまって。……それと、心配してくれてありがとうございます」

「お、おお。まあ無事ならいいんだ」

 

 見た感じレオリオさんも強くなっている。纏はしていないけど、垂れ流しのオーラも淀みがない。きっとレオリオさんも厳しい修行を積んでいたんだろう。

 でも良かった。一緒にいるとどこか安心するこの雰囲気は変わっていない。医者を目指しているようだけど、きっとレオリオさんならとてもいい医者になってくれると思う。

 

「アイシャはハンター試験のあと何をしていたんだ? ヨークシンで待ち合わせって話はアイシャは知らなかったよな?」

「おーいレオリオ。積もる話もあるだろうけどさ、それはホテルにチェックしてからにしようぜ。ゴンがケータイを買いたいんだとよ」

「お? それはオレの出番だな。おいゴン、任せておけ。最新の機種でもとことん値切ってやるぜ」

「そう? それじゃレオリオにお願いするね」

 

 

 

 レオリオさんの値切り交渉は本人が言う通り凄まじいモノだった……。店が1本20万ジェニーと言っている機種を、半値近くにまで値切ってしまった。10の位まで値切りだした時の店員さんの眼にはもう半分涙が浮かんでいたんだけど……。

 

「……レオリオ。流石にやり過ぎだろう……?」

「そうか? 値切んのは常識だろ? 金ってのは節約するに越したことはないんだ。オレから言わせりゃ値切らない方が間違ってるね」

「金を節約して人としての何かを削ってんなコイツは」

「あはは……」

 

 まあでも確かにレオリオさんの言うことも分かる。お金がなくて苦しい思いをしている人は世の中にどれほどいるか……。人生には何があるか分からないから、そう考えると節約するのは間違ってはいないんだよね。

 ただ、流石にあんな値切り方は真似出来そうにない……。

 

「それで、お前ら念は習得したんだろ?」

「ああ、バッチリだぜ」

「レオリオはどうなの?」

「ああ、もう覚えたぜ」

 

 そう言えばレオリオさんはいったい誰に念を教わったんだろう? 心源流? それとも風間流かな? それとも……ん? ……ああっ!!

 

「れ、レオリオさん!!」

「おお!? ど、どうしたアイシャ?」

 

 重大なことを忘れていた! どうしてこんな大事なことを忘れていたんだ!

 

「レオリオさん! く、黒の書という本を持っていませんか!?」

 

 そう! カストロさんに聞いた話だとレオリオさんが黒の書を持っているはず!

 いや、カストロさんからレオリオさんの名前が直接出たわけではないけど、あの話で聞く限りカストロさんを助けたのはレオリオさんとしか思えない!

 ならば! 今こそ黒の書を取り戻しこの世から抹消する絶好の機会! この好機を逃してなるものか!

 

「どうしてアイシャが黒の書のことを知ってるんだ?」

「黒の書って何だっけ? どっかで聞いたことあるな」

「確か……カストロがヒソカと天空闘技場で戦った時に話していたな」

 

「お願いします! 黒の書を私に譲ってくれませんか!? お金ならあるだけ払います! 足りなければ幾らでも稼ぎますから何とぞ!」

「お、落ち着けよアイシャ! 金だなんて言わなくてもアイシャになら本くらいタダで譲るさ。けどな――」

「――ほ、本当ですか!?」

「熱はないか? 吐き気は? 具合が悪かったら早く言ったほうがいいぞ?」

「喧嘩売ってんだなクラピカ? まあそれはいいとして、だ。アイシャ落ち着いて聞いてくれ。アイシャには恩がある。黒の書をタダで譲るなんて屁でもねーくらいにな。ただな……オレはもう黒の書を持っていないんだ」

 

「そ、そん、な……」

 

 目の前が真っ暗になる。ああ、ようやく取り返せると思ったのに……。またも寸前にて黒の書が離れていく……。どうしてだ? 私は呪われてでもいるのか?

 

「で、では、いま黒の書はいったい何処に……?」

「そうだな。ホテルに着いたら全部話すか。お互い色々聞きたい事が多いみたいだしな」

 

 

 

 

 

 

 ホテルに着いたオレ達はチェックインをした後、アイシャの個室に集まって話をしだした。アイシャは節約の為に二部屋とって誰かと相部屋にとか言ってたけどとんでもねー。いくらオレでも金の節約の為に女の子を相部屋にさせるつもりはないからな。

 

「まずはオレから話そうか」

 

 アイシャはよほど黒の書が気になるみたいだからな。オレもアイシャがどうしてたのか気になってるが、ここはレディーファーストで行くとするか。

 

 

 

――あれは、そうだな。ゾルディックでお前たちと別れた後のことだった。

 オレは受験に備えて家に帰って勉強をするつもりだった。その為に船に乗り移動していたんだが、その時具合の悪そうなイケメンの兄ちゃんを見かけたんだ。

 イケメンはいけ好かねーが、病人に貴賎はない。オレはその兄ちゃんを診ることにしたんだ。素人に毛が生えた程度の診察だったが、幸いと言っていいのかオレが知っている症状だった。毒キノコの一種を食べた時と同じ症状になっていたんでな、話を聞くとやっぱりキノコを食べていたようだ。持っている薬でどうにかなったのも幸いだった。一晩もすりゃカストロはすっかり元通りに戻っていた。

 

 それで恩でも感じてくれたのか、そいつはオレに色々と話しかけてきてな。オレもまあ1人旅だったから暇を持て余していたし、丁度いい暇つぶしと思って飯でも食いながら色んな話をしたんだよ。

 その話の中でオレがプロのハンターだって話をしたんだ。そうするとカストロは神妙な顔つきになってな、こう言いだしたんだ。『念と言うものを知っているか』ってな。

 その時は念のねの字も知らなかったからな。念の話を聞いた時は半信半疑、いや、全然信じてなかったぜ。

 

 だが、そいつがオレに見せたモノはその念を信じさせるのに充分だった。何もない空間が急に熱くなったり、手に持っている紙が一瞬で燃え尽きたり、離れた位置にあった空き瓶を割ったりとな。手品の類じゃないのは見てわかったぜ。聞けば念はプロハンターに必須の能力らしい。カストロ自身はプロハンターじゃないみたいだけどよ、念の勉強をしている内にそういう話を聞いたことがあるそうだ。

 オレにも念が使えるのか? そう聞いたら努力次第で誰にでも使いこなせるって話だ。人によっては様々な個別の能力を手に入れることも出来る。興味が湧かないわけがなかった。

 

 そこでオレはそいつに念を教えてくれと頼んだ。だが、それは断られてしまったんだ。未だ未熟な身で他人に物を教えることは出来ないってさ。

 その代わりと言って渡されたのが『黒の書』だったってわけだ。その黒の書は伝説の武人リュウショウ=カザマが書いたと言われ、念の修行法について事細かく書かれているらしい。そいつもその本の通りに修行して念に目覚め、強くなったみたいだ。

 

 そいつと別れた後、ウキウキしてオレは黒の書を読んだ。これでオレも超能力者だってな。だが、どうも念に目覚めるには瞑想とかをやらなくちゃいけないときたもんだ。医者の勉強もあるし、何よりめんどそうだ。いきなり挫折か?

 そう思いながら適当に黒の書を読み進めていると、様々な念能力について書かれた項目に行き当たった。

 

 1人で考えたとは思えないくらい多彩な念能力。設定だけでも読むのは楽しくてな、結構夢中になって読んでいたよ。そして見つけたんだ。あの能力をな。

 

 

 

「あの能力って?」

「まあ待てって。ちょっと喉を潤わさせてもらうぜ」

 

 飲み物を飲み、一息ついてからまた話し出す。

 

 

 

――その本に書いてあった能力は本当に多彩だった。

 一瞬先の未来を予測する眼鏡の具現化、砂を操作して対象を攻撃、オーラを氷に変化させて切り刻んだり氷の柩に閉じ込めたり、1つの系統だけじゃなく複数の系統を組み合わせた高等な能力もたくさんあった。

 だがオレが気になったのはそんなモノじゃない。それは……癒しの能力だった。

 

 

 

「癒しの能力? それって」

「ああ、言葉通りの能力だよ。オーラで相手を癒すんだ。オレは目から鱗が落ちる思いだったぜ。こんな事も出来るのか、ってな」

 

 

 

――その力をオレが手に入れる事が出来たら、オレは多くの人を救う事が出来ると思った。この能力は病気などには効果がないと注意書きがされてあった。だがそれでもオレはこの能力を身につけたかった。

 当たり前だけどよ、人が死ぬ原因は病気だけじゃない。外傷が原因で死ぬ人間は事欠かない。大きな怪我を負って病院に運ばれても、出血が多すぎて輸血が間に合わず傷を縫合する前に死んでしまうなんて幾らでもある事例だろう。

 病気や感染症は治療法さえ確立すれば治すことは出来る。でも外傷による出血多量はどうしようもない。だけどこの能力があれば救われる人は増える。オレ1人で救える人なんてほんのひと握りだけどよ。それでもやれることはやっておきたかった。

 

 そう思った瞬間だ。俄然やる気が出てきてな。自分でも驚く程瞑想に集中出来たよ。絶対に念に目覚める。何よりもその一点だけを思って毎日瞑想した。

 そしたらだ、瞑想し出して1週間くらいたったらオーラを自覚できたんだよ。次の日には纏が出来てたな。

 

 

 

「……素晴らしい速度です。えっと、私はあなた達全員に嫉妬しても許されると思います……」

「え? そうなのか? お前らも同じくらいに目覚めたんじゃねーの?」

「私は1週間で目覚めたな。アイシャが言うにはとても早いらしい」

「オレ達は正規のやり方で目覚めてないからちょっと分からないや」

「ズシっていう才能がかなりあるって奴でも目覚めるのに半年は掛かったって言ってたぜ」

「レオリオさんも類まれなる才を持っています。それだけでなく、断固とした決意を持って瞑想に取り入ったのも良かったのでしょう。念は何よりも精神に左右されますからね」

 

「念に目覚めた話はいいけどよ、肝心の黒の書をレオリオが持っていない話はどうしたんだ?」

「ああ、それはもう少し先だな」

 

 

 

――念に目覚めたオレは黒の書に書いてある通り毎日修行をした。勉強も並行してやるのはきつかったけどな。それでも夢に向かって進んでいると思えばやる気も出たってもんだ。

 そんな風に毎日修行と勉強とで忙しくしている時の事だ、夜中にふと気配がして目が覚めたんだ。強盗か? そう思ってオレは身構えた。だが、目の前で人影が一瞬霞んだかと思うとオレは背後を取られ組み敷かれていた。

 

 このまま殺されるのか? そう思ったが、その人影はオレを見てこう言ったんだ。『……やっぱりレオリオかよ』ってな。

 そいつは急にオレから離れた。オレはそのまま咄嗟に起き上がって目の前の人物の顔を見たが、心底驚いたね。

 そいつはなんと……オレ達と同期のプロハンター、一緒にトリックタワーを乗り越えたあのハンゾーだったんだよ!

 

 

 

『ハンゾー(さん)!?』

「おお。吃驚したぜ、どうしてこんな所にハンゾーがいるのか見当もつかなかったからな」

「マジかよ。どうしてハンゾーはレオリオん家にいたんだ?」

 

 

 

――まあすぐに話すさ。

 相手がハンゾーだと確認したオレも疑問に思ったさ。『ハンゾー!? なんでここにハンゾーが?』そうするとハンゾーは少し迷った素振りを見せて、オレにゆっくりと理由を説明しだした。

 

 何でもハンゾーは隠者の書って巻物を探す任務を帯びていたらしい。それでハンターライセンスを使ってその隠者の書がある国に入国したまではいいけど、残念ながら隠者の書はその国から盗まれていたそうだ。

 目的の物が見つからなかったハンゾーは、それでも諦めるわけにはいかずに情報を集めたそうだ。そして……黒の書に行き当たった。色々と曰くつきの噂のある黒の書が隠者の書なんじゃないか? そう思ったらしい。

 そして黒の書の情報を探す内にオレの所まで来たそうだ。どうも船でカストロと会話しているのを他人に聞かれていたみたいだな。

 

 で、俺んちに忍び込んだってわけだ。

 

 それからはオレに黒の書を譲ってくれ、と頼み込まれた。どうも黒の書は目当ての隠者の書とは違ったみたいだけどよ、黒の書自体に興味を覚えたらしくてな。

 だけどオレだってまだ黒の書から学びたい事が山ほどあったからな。無理だと断ったんだよ。そうするとだ。『だったらオレがお前を鍛えるからお前が満足行くまで鍛えられたら黒の書を譲ってくれ』って言い出したんだよ。

 最初は何言ってんだ? と思ったさ。でもよくよく聞いたら悪い話じゃないと思ってな。独りで修行するにも限界があるだろうし、効率も悪いだろ?

 オレだって強くはなりたかったし、組手の相手や念の確認をしあえる相手がいるのは願ったり叶ったりだった。だからオレは――

 

 

 

「その話を承諾して、く、黒の書を譲った……と?」

「そういう訳だ。わりぃなアイシャ。お前が黒の書を欲しがっていたのを知ってりゃ断ったんだけどよ」

「い、いえ、いいんです。それよりもハンゾーさんは何処に行ったか知りませんか!?」

「悪い、それもわかんねーんだ。また隠者の書を探しに行くとは言ってたけど、行き先までは言わなかったからなぁ」

 

 多分聞いても答えてくれなかったろうけどよ。ハンゾーの奴、オレに修行をつけてくれたのはいいけど、忍としての技は絶対に見せてくれなかったからな。口は軽いしノリも良い奴だが、そこらへんは徹底してやがる。流石は忍者ってとこか。

 

「あぁ……」

「っと! だ、大丈夫かよアイシャ!?」

 

 ハンゾーの行方について話すといきなりアイシャが倒れ込んできた!

 アイシャの身体は鍛えられているけど女性特有の柔らかさや男にはない良い匂いが……って何考えてんだオレは!

 

「だ、大丈夫です。……すいません。少し眩暈がしただけですから」

「本当だな? 何処か痛いとことか、息苦しいとかないな?」

「ええ、本当に大丈夫ですから」

 

 め、眩暈を感じるほどショックだったのかよ……。どんだけ黒の書が欲しかったんだ? 何だか悪いことをしたな。

 

「黒の書については本当にすまなかった」

「仕方ありませんよ。私が黒の書を欲しがっているなんて知りようがなかったんですから」

「ああ。せめてアイシャのケータイ番号を知ってりゃなぁ」

「ええ、もっと早く番号を交換しておけば……。取り敢えず今からでも番号を交換しませんか?」

「あ、オレもオレも! せっかく買ったんだから使っておかなきゃね」

 

 これで5人全員がようやくケータイ番号を登録出来たってわけだ。出会ってから8ヶ月が経ってからとは、長いこと時間が掛かったもんだぜ。

 

「これで登録完了ですね。ああ、アドレス帳がこれで10人になりました。とうとう2桁に到達です!」

「アイシャ……そんな悲しいことを自慢げに言うなよ」

「いいなー。オレはまだみんなの分しかないや」

「ここにもっと強者がいたぞおい」

 

 ケータイを今日買ったばかりのゴンはともかく、流星街出身だったアイシャは番号を交換する知り合いも殆んどいなかったんだろうな。この若さで過酷な人生を歩んでいるもんだぜ……。

 

「さて、オレの方はこんなもんだな。それで、アイシャはハンター試験の後はどうしてたんだ?」

「はい。それについては謝罪を含めきちんと説明させてもらいます」

 

 

 

――少女説明中――

 

 

 

「――というわけで今に至ります。レオリオさん、ご心配を掛けて本当にすいませんでした」

「ああ、そんなに気にしなくてもいいよ。それよりも、だ……クラピカ君、キルア君。これは一体どういう事だね?」

 

 なんでオレだけ除け者にされてんだよ! オレ以外の全員が揃って一緒に行動してるってどういう事だ! いや、話を聞く限り仕方ないことだろうけどよ。それでも連絡くらいあってもいいだろうが!!

 

「ピューピュピュー」

「口笛吹いて誤魔化せると思ってんのかキルア?」

「いや、落ち着けレオリオ。これについてはすまなかったと思っている。だが、これは言い訳になるんだが、私も強くなることに必死だったんだ。決してお前の事を疎かにしたわけじゃない。それだけは信じてくれ。連絡を怠っていたことは本当に悪かったよ。素直に謝罪しよう」

 

 ぐっ、そう言われりゃオレも強くは言えねーじゃねーか。クラピカが強くなる理由は良く分かってるからな……。仕方ねー、クラピカは勘弁してやるか。

 

「クラピカは分かったよ。それでキルア君。君はどういうことだね? ん?」

「ちょ、ちょっと待てよ。オレだけっておかしくね? アイシャにゴンだって――」

「ゴンはケータイ持ってなかったし、アイシャはオレの番号知らねーだろうが。お前オレにメールでやり取りしてたんだから言ってくれても良かっただろ!?」

「…………てへっ! ちょっと驚かそうと思ってつい――」

「――お前覚悟は出来てんだろうな、あ?」

 

 今こそ修行の成果を見せる時だ。唸れオレのオーラ! 高まれ極限までに!

 

「ふむ。今回は少しイタズラが過ぎるな。私も協力するぞレオリオ」

「2対1だ。卑怯とは言うまいね」

 

 実戦に卑怯もへったくれもねぇ! オレはハンゾー相手にそれを嫌と言うほど味わったんだ!

 

「ま、待てレオリオ! じ、実はお前に言わなきゃならないことがあるんだ!」

「なんだ? 命乞いなら聞かないぜ?」

 

 この高まったオーラは最早何かに発散しない限り収まらねー。安心しろキルア。傷は癒してやるからよ!

 

「ああ、実はな……クラピカがアイシャの裸を覗き見した――」

「死ねよやぁっ!!」

「ぐはぁぁぁぁぁっ!!?」

『く、クラピカーーッ!?』

 

「今のはオレの恨み! そしてこれはオレの悲しみ! そしてこれはオレの憎しみ! そしてこれはオレの妬みの分だ!」

「もうやめて! クラピカのライフはゼロよ!」

「アイシャの裸を覗いただぁぁ? お前なんて羨ま、もといハレンチなことを! それだけでも許されないってのにお前何時の間にアイシャに呼び捨てにされてんだよ! つうかこのメンバーでさん付けで呼ばれてんのオレだけじゃねーか! 前々から鼻につくヤローだと思ってはいたがもう勘弁ならねー! 全国のモテない紳士に代わって成敗してくれるわ! あの世でオレにわび続けろクラピカーーーッ!!!」

 

「ぐは! ご、ま、まて落ち着ぐあ! こ、これは罠――」

「オレも加勢するぜレオリオ! (……ワリーな、オレの為にここでくたばってくれクラピカ)」

「お、おのれキルア! 謀ったな! 謀っ、ぐあぁぁあぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 レオリオさん&クラピカvsキルアという2対1の構図がキルアの策略により一瞬にしてレオリオさん&キルアvsクラピカという構図に変わってしまっていた。

 そして不意を突かれたクラピカはレオリオさんの渾身のオーラを籠めた一撃をまともに喰らい、体勢を立て直す事も出来ないままレオリオさんとキルアの2人掛りにより地に沈められていた……。な、何という殺戮劇……。

 

「……惜しい男を亡くしちまったな」

「ああ、オレ達の掛け替えのない親友だったよ」

「過去形にしないでください2人とも……まだ生きてますから。……本当にまだですが」

 

 一応ピクピクと動いているから生きてはいるけど……。完全に気を失っているな……。

 

「2人ともやり過ぎだよ。クラピカだって悪気があってアイシャの裸を見たわけじゃないんだよ?」

「それは良かったぜ。悪気があったらオレはこの瞬間にクラピカに止めを刺していたところだ」

「そ、そこまでしなくても……。本当にクラピカはわざとじゃないんですからもう許してあげてください……」

 

 リィーナの時といい、ここまでされたら充分すぎる罰を受けているはずだ。いや、過剰な罰と言ってもいいくらいだ。

 

「ちっ。悪かったなクラピカ。……やべ、白目剥いてんぞおい」

「や、やり過ぎたか? しゃーねーな。ちょっと回復するから待ってろよ」

 

 回復? ということはレオリオさんは癒しの能力を身に付けることが出来たのか!

 それは凄い。回復能力は使い手が少ないからとても重宝するし、レオリオさんの将来の役にも立てるだろう。

 

 問題は、だ。その能力が〈ブラックヒストリー〉に書かれている能力を模して作られているであろうということだ……。ああ、今度はどんな能力が世に出てしまったんだ? この何とも言えないもどかしい思いをどうすればいいんだ? 誰か教えてくれ……。

 

「傷は……打撲が殆どだな。多少の擦過傷もあり、と。骨は……折れてなし。診察終了、それじゃ行くぜ! 【掌仙術/ホイミ】!!」

 

 おいちょっと待て。

 いや、確かに癒しの能力だけどさ! 100年以上経っても覚えているよその言葉は! 正確にはその言葉を聞いて思い出したんだけど……。もう何というか、記憶野にこびり付いているんじゃないだろうか? 元いた世界の故郷ではそれほど有名な単語だろう。

 

 私が内心慌てふためいている間、レオリオさんの掌が優しげなオーラに包まれていた。その掌がクラピカの身体に触れるとゆっくりとクラピカの全身にレオリオさんのオーラが拡がっていき、見る見る内に外傷が癒されていった。

 

「う、うう……わ、私は」

「おお! クラピカが目覚めた! やるじゃんレオリオ!」

「うわ~! すごいやレオリオ!」

「ま、ざっとこんなもんよ。どうだクラピカ、どっか痛いところはあるか?」

「いや、どこも痛くは……はっ! おのれキルアよくも私を嵌めてくれたな!」

「やべっ」

「待て! 逃げるなこの!」

 

 狭くはないけど決して広くもない部屋の中で2人の追いかけっこが始まった。微笑ましいというか何というか。クラピカも以前よりも明るくなった気がする。いい傾向なんだろうけど……。

 

「もう、2人とも止めなよ。周りの部屋の人に迷惑だよ?」

「ゴンの言う通りです。そろそろ落ち着いてください」

「ぐっ、すまない……」

「ふぅ、助かったぜ」

「キルアはちょっとイタズラが過ぎますよ」

「ちぇっ、悪かったよ」

 

 まあ可愛いものですけどね、こういうイタズラも。……やられた側はそうでもないかもしれないけど。

 

「ふむ。身体に一切の傷も痛みもないということは、レオリオが私に癒しの能力を使ったんだな?」

「ああ、【掌仙術/ホイミ】つってな。お前が味わった通りの効果だ」

「そうか。……回復に相手の体力を消費しないのか?」

「いや? 別にそんな制約はないぜ? つうか患者の体力を消費したら傷が治ってもヤベーだろ? まあそんな制約を入れておけば回復力は強まるだろうけどな」

「あ、そう言えば風間流にいたミズハさんは相手の体力を消費して回復能力が発動するんだっけ?」

「ええ。ただ自分のオーラだけを消費して回復することも出来るようですよ。ただそれをして毎日怪我人を癒していると彼女のオーラが無くなり自身の修行もままならなくなるので緊急を要する時以外は控えているそうです」

「てことはレオリオの【掌仙術/ホイミ】はそこまで回復力がないのか?」

「ちっちっち。甘いなキルア。オレの【掌仙術/ホイミ】にもちゃんと制約を入れて回復力を強めてるんだぜ」

 

 おお。私が書いた【掌仙術/ホイミ】の内容をレオリオさんなりに改良したんだろうか? 元々どんな制約を入れてあったかなんて覚えていないけどね。

 

「まずは対象に触れることで効果が高まるな。患部を直接手で触れるとより一層回復力が上がる。だから外傷ならともかく内部の損傷には若干効き目が悪くなっちまう。まあ誤差の範囲だけどよ。

 後は相手の傷の具合を把握して、その傷に対する適切な医療法を学んでいると回復力がより強くなる。だから医者としての勉強もしておかないと重傷患者の場合は治せないなんてことになるかもしれねー。これは自分への戒めも含めた制約だな。勉強を疎かにしたら救えない命が増えるっていうな」

「……レオリオ。私は改めてお前を見直したよ」

「よせよ照れるぜ。……ん? つまりお前はオレを見損なってた時があるってことかおい?」

「品性は金でゲフンゲフン。……何でもないよレオリオ」

「こ、このヤロー、また古い話を持ち出しやがって……!」

「あはは。でも本当にスゴイよレオリオ。後はお医者さんになる勉強だけだね」

「サンキュなゴン。ま、それが一番難しいんだけどな」

「レオリオさんならきっと大丈夫ですよ。いつか立派な医者になれると信じてます」

 

 これは本心であり、希望でもある。レオリオさんなら誰からも頼られる医者になれる、なってほしい。

 

「やべ。回復役まで揃ったこのメンバーってもしかして敵なしじゃねーか?」

「油断は禁物だぞキルア」

「そうですよ。油断で人は死にます。それを忘れてはいけません」

「わかってるって」

 

 でもまあキルアの気持ちも分かる。私を抜いたこのメンバーが揃って戦えば同人数の相手なら大抵の者に恐らく勝てるだろう。

 勇者・戦士・魔法戦士・僧侶が揃った感じのパーティーだな。……私は何だろう? 【ボス属性】を考えると魔王とかか? 勇者PTに魔王参戦。洒落にならないな……。

 

「ま、回復役っつってもオレにも攻撃手段くらいあるぜ」

「え? マジで! どんなんだよ!」

「おいおいオレばかりじゃなくてお前らの能力も言えよなー。こういうのは本当は隠しておくもんなんだぜ?」

「うむレオリオにしては正論だ」

「一言余計だっての」

 

 隠しておくって言うのは確かに間違っていないことだ。例え仲間と言えども不用意に自身の能力について話してしまうと痛い目にあう可能性がある。

 この中で誰かが裏切ったりとかはないだろうけど、念能力者の中には対象を操作する者もいる。そんな能力で操られたら仲間の能力なんて簡単に話してしまうだろう。もっとも、クラピカはそんなことよりも幻影旅団を警戒しているんだろうけど。

 ヒソカから聞き出した旅団員の能力に触れるだけで相手の心を読み取る能力の持ち主がいた。確実に特質系の能力。一度捕まればその人の秘密はないも同然になってしまうだろう。

 だからクラピカは私以外の人には自身の能力を殆んど教えていない。これはゴン達が信用できないとかできるとかの問題じゃないしな。仕方ないとも言える。

 

「オレにはみんなみたいな能力がないんだよなー。普通に強化系で戦うだけだし……」

「お前にはあれがあるじゃん。ジャンケンのやつ」

「あれは確かにしっくりくるけどさ、よくよく考えたらタダの硬だし。みんなみたいな能力ってあった方がいいのかな?」

「あまり深く考え過ぎたらいけませんよゴン。強化系でそれ以外の系統能力を作っている者は確かにいます。ですが今のアナタはそんなことを考えるより日々点と纏を繰り返しオーラを強めた方が効率がいい。それが強化系というものなのです。他の系統の能力について考えるのは強化系を極めてからでも遅くはありません」

 

 これの良い例がネテロだろう。あいつは強化系だが【百式観音】という反則的な能力を有している。だが、その【百式観音】もネテロが己の強さに限界を感じ、それを乗り越えた末に辿り着いた境地だ。それ故に強いと言える。

 

「……うん、そうだね。難しいことを考えるのは苦手だし、出来ることからやっていくよ!」

「なあ、ジャンケンってどんな能力だよ? 強化系でジャンケンなんてどう使うんだ?」

「ああ、それはね――」

 

 

 

――能力公開中――

 

 

 

「……お前らどんな修行してたんだ? ハンゾーとの特訓を乗り越えたオレよりもオーラ量が圧倒的に上なんだけど?」

『地獄を見た』

 

 綺麗にハモった!? それだけの思いをしたのか……すまない皆。

 

「キルアはオーラを雷に変化させるのか。すげーな、それを放出出来たら相手は防ぎようがないんじゃないか?」

「ああ、それも考えてはいるけどさ。まだ放出系の系統別修行もまともに出来てないからそうそう上手くは行かないんだよな~」

「流石にあの短期間で系統別修行までこなすのは無理でしたね」

 

 系統別修行に関してはグリードアイランドに行って時間に余裕がある時にすればいいかもしれないな。

 

「で、クラピカは鎖を操作して色々すると。……色々ってどんなんだよ?」

「それは秘密だ。まあその内見せる機会があればそうしよう」

「ずっけーぞクラピカ!」

「オレ達が知ってるのは【導く薬指の鎖/ダウジングチェーン】くらいだな。鎖でダウジングするやつ。嘘ついてもバレるってどんなダウジングだよ」

「今さらだけど念ってスゴイよね」

「少なくても右手の指の本数、多分あと4つは能力があると見た!」

「さて、どうかな?」

 

 正確には【導く薬指の鎖/ダウジングチェーン】を除いてあと6つの能力をクラピカは有しているな。

 ……あれ? これなんてチート? おいメモリ、仕事はどうした? 私も5つ能力を持ってるけどその内2つは死にスキルだぞチクショウ。

 

「で、アイシャの能力が……オーラの隠蔽だって?」

「ええ、その通りです」

「……纏をしても?」

「分かりませんね。実際いま纏してますよ?」

「……練をしても?」

「バレません。ちょっと練してみましょうか? ……どうです?」

「全然分かんねーわ。え? これってどうやって戦えばいいんだ?」

「だろ? 何してもオーラが見えないから戦闘中の攻防移動が分かんねーんだよ。マジ鬼畜だぜ」

「そもそもアイシャの攻防移動が見えたとしても意味がないよ……。技術に差が有りすぎて勝負にすらならないんだもん」

「マジで? アイシャってそんなに強いのか?」

 

 レオリオさんの言葉に3人ともが一斉に大きく頷く。まあ念を覚えて1年未満のあなた達に負けるつもりは流石にないな。

 

「ネテロのじーさんと戦えるレベルだぜ? 強くて当然だろ?」

「でもあの会長には負けたんだろ? そもそもネテロ会長ってどんだけ強いんだ?」

「すっごく強いよ! オレとキルアとアイシャの3人がかりでボール取りゲームしたんだけど、全然相手にならなかったもん! あ、でもアイシャはあのあとボールを取れたんだったっけ?」

 

「正確にはネテロ会長が私に攻撃を加えたのでルール違反による勝利ですけどね」

「ネテロ会長は世界最強の武術家とまで言われている。さらにはあの伝説の武人リュウショウ=カザマともライバル関係にあったそうだ。そのネテロ会長と戦いあえるとなるとこの世界では数える程しかいないだろうな」

 

「うへぇ、そんなに強かったのかよお前……」

「皆さんより長く修行しているだけですよ。私と同じくらい修行すれば皆さんの方が私より強くなれます」

「それってどれくらいなんだ?」

 

 100年以上……かな。

 ……彼らの才能を考えたら10年くらいで追い抜かれそうで怖い。もっと修行しよっかな?

 

「そういや明日はどうするんだ? お前らはグリードアイランドが目的なんだろ? でもその選考会とやらはオークション最終日だから、それまでは何かすんのか?」

「……そう言えば、どうして皆さんはヨークシンで集合する事になったんですか?」

 

 9月にヨークシンで集合という話しか聞いていない。そういう話になった流れはどうしてなんだ? ゾルディックを出た時にはグリードアイランドの事は知らなかったはずだから、純粋にオークションを楽しもうとしてのことだろうか?

 

「ああ、確かクラピカの奴がヒソカに蜘蛛について知りたいなら9月1日にヨークシンで、そう言われたのが原因だったな」

「……え?」

 

 ヨークシンでヒソカと会う予定だった? クラピカとヒソカは天空闘技場で再会した。だけどあれはヒソカにも予想外だったということか。あの時のヒソカの反応・言葉からそう想像するのは容易い。

 そしてヒソカはクラピカの復讐心を利用して旅団の団長と殺し合いをしようと画策していた。……そして元々はヨークシンでその旨を話す予定だった。つまり……。

 

 ヨークシンに……旅団が来る!? その可能性が果てしなく高い!!

 

 まて、待て待て待て! ヨークシンで旅団が狙っている物はなんだ? 奴らは盗賊だ。来るとしたら物を盗みにとしか考えられない。そして9月1日の今日からオークションは始まっている! 狙いはオークションの品だろうことは明白だ!

 だとしたらどのオークションを狙っている? ドリームオークションと一言で言ってもオークションハウスの最高峰と言われているサザンピースを筆頭に公式で数万店にも及ぶオークションハウスがある。

 公式以外にもマフィアンコミュニティーが取り仕切っていると言われている盗品を扱ったアンダーグラウンドオークション等の闇の……っ!

 

 マフィアが、取り仕切っている? ま、まさか……!? いや、そんな確率は……! いやでも!

 私の中にある薄れた記憶の何かが私に最大の警告を放っている。これを無視するなんて出来ない!

 

「おいアイシャ? どうしたんだ? 明日は取り敢えず値札競売市にでも行かないかって話なんだが……」

「待ってくれレオリオ。すまないが明日私は別行動をさせてもらう」

「……おいクラピカ。お前まさか1人で旅団を探そうって言うつもりじゃないだろうな?」

「1人で!? そんなの無茶だよクラピカ!」

「……ヒソカの話から推測するに旅団はヨークシンに来ている可能性が――」

「クラピカ! 地下競売がいつ、どこで開かれているか分かりますか!?」

「――!? あ、アイシャ?」

「分かりますか!? 分かりませんか!?」

「あ、ああ。まて、待ってくれ。……地下競売は毎年行われる場所が変わっているそうだ。非合法のオークションだから当然だが。それを知るためには私たちならハンターサイトを利用するのが一番早く確実――」

 

 クラピカが言葉を言い切る前に部屋に備え付けられているパソコンへ向かい起動する。完全に立ち上がるまでの僅かな時間さえもどかしい! ネット回線がある部屋にして本当に良かった! まだか、まだ回線は……繋がった!

 

 即座にハンターサイトへのアドレスを入力しハンター専用サイトへ入室する。検索は今期アンダーグラウンドオークション。その開催場所と日時だ! 頼む、載っててくれよ。…………あった! 情報提供料も確認せずに入金する。金なんてどうでもいい、今は一刻を争うかもしれないんだ!

 場所は……セメタリービルの地下! 日時は……今日!? 時間は21時から! 今は20時51分だ。あと9分! 間に合うか!?

 いや、そもそも行って杞憂だったらどうする? ごめんなさいですむわけがない、下手すれば全マフィアンコミュニティーから狙われることになるぞ!?

 

 ……それでも! それでもあの人が……母さんが愛した人が巻き込まれる可能性が僅かにでもあるのなら!

 

 ヨークシンの地図を確認する。くっ! 遠いな! 時間が惜しい、ベランダから部屋を出て直接飛び降りる! 後ろから私を呼ぶ声が風に乗って聞こえるが今はそれに応える暇はないんだ!

 

 どうか……どうか私の杞憂であってくれ……!




レオリオ復活! レオリオ復活!
レオリオさんの修行相手はハンゾーさんでした。レオリオ強化のためとはいえちょっと強引だったかも……。
あと【掌仙術/ホイミ】はもう何をパクったか丸分かりでしょう。レオリオは自身の得意系統を分かっていて納得済みで強化系の能力を作っています。
ちなみにレオリオが持っている攻撃用念能力……もう大抵の人が予測出来るでしょうw
一応ホイミの能力詳細を書いておきますね。


【掌仙術/ホイミ】
・強化系能力
 対象の自己治癒能力を強化して傷を癒す回復能力。対象に直接触れる事でより高い回復力となるが、放出系と組み合わせて遠距離にいる対象を癒すことも出来る。ただし効果は著しく落ちる上、誰に当たっても回復してしまうため放出して使う機会は少ない。また対象の傷を把握し、その傷に対する適切な医療法を学んでいる事で回復力が強化される。
 レオリオの得意系統と完全に噛み合っているわけではないので最大の効果を発揮することは出来ないが、レオリオ本人の意思と覚悟が加わり効果は上がっている。

〈制約〉 
・対象に触れていない場合回復効果は著しく減少する。
・患部に直接触れないと回復効果は減少する。
・使用者が把握出来ない傷に対しては回復効果は減少する。
・傷に対する適切な医療法を学んでいないと回復効果は減少する。

〈誓約〉
・特になし



またもハトの照り焼き様からイラストを頂きました。ありがたいことです。


【挿絵表示】


なお、このイラストはpixivにも投稿されています。差分イラストもあるのでぜひご覧下さい。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=49914264







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