どうしてこうなった?   作:とんぱ
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時間がすっ飛びます。


第四話

 この世界に来て早20余年か。

 俺ももうすぐ四十路に近い年齢となった……。

 

 一般的に青春と呼ばれるものを経験することなく唯ひたすらに鍛え続ける日々。しかし俺はそれを不幸と思っていない。むしろ幸福だとすら思っている。自分のやりたいことをやっているのだ。不幸なわけがない。

 帰郷の想いがなくなったわけではないが、今は修行の方が大事だ。それにこの世界の方が修行には向いているしな。

 

 しかし誤算だった。まさか【原作知識/オリシュノトクテン】が使用できなくなるとは思わなかった。

 あれは俺が念の修行の参考になることはもうないかと原作を読んで再確認しようと思った時のことだ。何度発をしても【原作知識/オリシュノトクテン】が発動しなかったのだ。

 この能力は【絶対遵守/ギアス】と違って使用制限はないし、誓約も破ってないはずだ。どうしてかとしばらく悩んで、ふと気づいた。

 

 【原作知識/オリシュノトクテン】も【絶対遵守/ギアス】も、両方とも自身を操作する能力。そして今の俺は【絶対遵守/ギアス】の効果により操作されている。そして操作能力は早いもの勝ちのはず……。

 

 【絶対遵守/ギアス】は俺の心臓が止まるか誰かに除念されない限り効果は消えない……。

 

 死にスキルの完成です。メモリぇ……。

 さすがに、落ち込んだよ……。

 

 

 

 誤算はそれだけではない。基礎身体能力の成長が殆どみられなくなったのだ。それもかなり早い段階で。

 ゴンたちは1ヶ月足らずの間に数トンもする扉を動かせるようになってたが、今の俺はどれだけ鍛えてもせいぜい200キロのバーベルを持ち上げるのが限界だ。

 元の世界では凄い方だがな。

 

 この世界に来てから筋肉の成長は著しかったが、どうやら限界値は元の世界が基準みたいだ。考えたら当たり前だな。この身体はこの世界の人間ではないのだから。念を覚えられただけでも有難いだろう。

 

 だが、その念に関しても行き詰まっている……。

 基本や応用技は習得した。堅の持続時間も初めの頃に比べると雲泥の差だ。今でも徐々にだが上昇している。

 

 しかし問題は系統別修行だ。

 原作に出ていた系統別修行は強化系レベル1と放出系レベル1と5に変化系レベル1のみ。

 系統別修行は自身の系統を中心に山形になるように鍛えるのが理想だと言われている(特質は除く)。

 つまり俺の場合は、操・放・操・具・操のローテーションで一日一系統ずつ行うのが良いのだが……。

 

 ……操作系と具現化系の系統別修行ってどうやるんだ? 他の系統に関してもレベルが最高で5までしかわかってないし。

 操作系に関してはビスケが体内のオーラを操作する修行があることを言っていたのでそれがそうかもしれないけど、どうやったらいいのかわからないから自己流でやるしかない。

 

 仕方ないので操作系に関しては自分で考えた。

 ヒントは変化系の修行だ。変化系のレベル1は形状変化。オーラの形状を変化させて一分間で0から9までの数字を作れるようにする(最終目標は5秒以内)。

 これはオーラの性質を変化させるのではなく形状を変化させている。性質まで変化させる修行はもはや念能力になるだろう(例:ゴムとガムの性質に変化するバンジーガム)。

 

 つまり操作系もオーラそのものを操作するのが訓練になるのでは? と考えたのだ。物や動物や人を操作したら能力になるだろうからな。

 

 なので体内のオーラを一部分に集めて、それを身体中いろんな場所へと操作して動かす、という修行法にしてみた。

 ちなみにこれは流ではない。あれはあくまで凝と堅を応用したものだ。攻撃や防御の瞬間にオーラを集中する技術であり、オーラを操作して動かしているわけではない。

 

 これを元に自己流で系統別修行を行なった。ローテーションは操・放・操・強・操・放・操・変だ。

 具現化系は……捨てた。

 

 修行法が思いつかなかったんだ。あれか? オーラそのものを一般人に見えるように具現化すればいいのか? だれか教えてくれ。

 

 しかし操作系は損している気がする。攻撃・防御ともに他の系統に劣っている。強化系は言わずもがな。変化・放出系は強化系と隣り合わせだしな。具現化系は系統図的には操作系と変わらない強化率だが、具現化した物に特殊な効果を付与することで強い戦闘力を得られるだろう。特質系は考えるだけ無駄だ。

 

 それに比べて操作系はなぁ……何かを操作するにしても俺はすでに自身を操作している。別の物を操作するのも出来なくはないだろうが、何となくメモリの無駄遣いになりそうだし。

 俺の操作系レベルが10だと仮定したら、強化系は10の60%、つまり6レベルが習得の限界だ。習得率と同じ割合で念の精度も減少する。6レベルの60%の精度、俺の強化系の精度は純粋な強化系の3,6レベルと同等になるわけだ。

 単純な殴り合いなら強化系のレベル4に負ける計算だ。

 

 もちろん実際に強化系のレベル4と闘ったら絶対に負けるというわけじゃない。俺の操作系が20レベルだったら強化系は12レベルまで鍛えられるし、身体能力や体術の差、念の技術の差、潜在オーラ量や顕在オーラ量の差、念能力の相性など、戦闘を左右する要素は多々ある。

 それはわかってるんだが……理解はしても納得は出来ないって奴だな。

 

 とにかく念の修行も基礎修行以外行き詰まった。身体能力の向上ももはや見込めない。

 ならばどうするか。答えは決まっている。

 

 力がないなら技を鍛えればいいじゃない。

 

 

 

 

 

 

 己の肉体と武術に限界を感じ悩みに悩み抜いた結果。俺がたどり着いた結果は、感謝であった。

 

 などという事はない。そもそも俺は肉体はともかく武術に限界を感じていない。なんせ武術なんて習ったことないからな!

 ひたすらにオーラと肉体を鍛える日々だった……楽しかったけどね。

 

 俺は今、祖国日本を模した国、ジャポンに居る。仕事は辞めてきた。皆からは惜しまれたし、俺も寂しくはあったが、修行の魅力には勝てなかった。

 餞別までくれたのは嬉しかったな。金は貯めに貯めていたが、多いに越したことはない。

 ちなみにここまでは当たり前だが船で来た。さすがに修行の為だからと泳いでは来たくない。絶対死ぬ。

 

 俺がこの国に来た理由はここなら俺の理想の武術があるかもしれないと思ったからだ。それは柔術・柔道・合気道といった柔の武術だ。

 初めは心源流拳法に入門しようと思ってたんだが、あれは剛の武術だろう多分。俺はこの世界の人間に比べると身体能力の絶対値が限りなく低い。鍛えた12歳の少年に負けるくらいに、低い……。

 つまり俺が剛の武術を学んでもあまり効果は見込めないわけだ。

 

 その点、柔の武術には力はあまり必要ない。理を極めれば力は不要。どこぞの海皇さんも言っていた事だ。

 目指せ渋川or海皇!!

 

 という事で、俺のジャポン全国道場巡りが始まる。その前に一言。

 米うめぇ!!!

 

 

 

 

 ジャポンを巡って早2年。ようやく、ようやく俺の求める道場を発見した。

 その名も風間流合気道場!

 

 数多の道場を巡ったが、大半が大したことはなかった。いや、技術は俺の遥か高みに位置してるんだろうが、念を使用した俺に勝てるものはいなかった。

 念能力者に念の使えない人間が勝てるわけがないのは当たり前だが、俺が求めているのは柔の極み。念が使えるだけの素人相手に負けるようじゃ話にならん。

 中には念を使える奴もいたが、結果は変わらなかった……どうもオーラの総量がかなり多くなっているみたいだ。念の基礎技術も俺を超えるやつはいなかった。

 初めて念能力者と対峙した時はかなり緊張したが、そいつの錬を見て緊張が取れてしまったくらいだ。しょぼすぎワロタ。

 

 今まで比べる相手がいなかったから分からなかったが、やはり18年も欠かさずに基礎修行を続けた成果が出てるのだろう。ビバ修行! もちろん、旅の最中も修行はしている。

 

 これはやっぱり心源流にいくしかないのか? そう思いながらも諦めきれずに数件の道場を巡って発見したのが風間流合気道場だ。

 10名ほどの門下生に齢60は超えているであろう道場主。しかも纏をしている様子もないし、こちらの錬にも全くの無反応。

 ここもはずれかと思いながらも一戦を申し込む。

 

 そこで俺は、本物に出会った。

 

 幾度攻撃を繰り返しても何時の間にか地面に転がされている。堅をしていても脳が揺らされて立つこともおぼつかなくなる。

 力が、力が一切通用しない……!

 

 

 

 気づいたら道場の隅で横たわっていた。どうも気絶していたらしい。まだ道場では鍛錬を続けている様だ。道場主の武はまさに静の武術。どこまでの高みに達しているかなど今の俺では見当も付かない。

 この人だ! この人こそが俺の求めていた武人だ! この人の下で武を学びたい!!

 たった今道場破りに来た者が手のひら返して何を、と罵られるかもしれないが、覚悟の上! 認めてもらうまで何度でも頼み込むのみ!!

 即座に道場主の傍に行き、土下座をする。

 そして全身全霊を込めて、叫ぶ。

 

――どうか私を弟子にして下さい!!!――

――いいですよ。入門費は必要ありません。月謝は5000円です――

 

 

 

 

 

 覚悟を肩透かしにするほど簡単に入門出来ました。








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