どうしてこうなった?   作:とんぱ
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第五十三話

 争いは虚しい。だが、人は戦わなければ生きていけない生物なのかもしれない……。などと意味があるかないか分からないことを考えている場合ではないな。ゴン達には悪いが、ようやく男に戻る時がやってきたのだから……!

 気絶したゴン達を見下ろす。若干、いや結構後味悪いけど、今回は勝ちに行かせてもらった。
 最初は皆の成長を確かめる意味合いが大きくなりすぎていた。そしたら真面目にピンチに陥ったからな。あれには吃驚した……まさかカストロさんがあんなパワーアップをするとは……。
 キルアも凄かったな。あの年齢であのレベルに到達するなんて……数年後が楽しみだな。最後には大人気なく勝ちに拘ってしまった。【天使のヴェール】+変化系は相性良すぎだな。

 私は変化系が苦手な為に攻撃力は大分落ちるけど、それでも見えない攻撃は脅威的だ。最後は誰も対処出来ていなかったからなぁ。
 問題はやっぱり攻撃力の低下とオーラの消費量の高さだな。【天使のヴェール】と苦手な変化系で消費量もドン、だ。短期戦には向いているけど長期戦ではあまり使用しない方がいいな。

 死屍累々の戦場跡を見て多少のやり過ぎ感はあるけど、これも悲願達成の為だ!
 さらば女の私! でもまたその内戻るから待っててね! だが今はとっとと男に戻って童貞喪失じゃああぁああ!!
 男として生きて132年! 女に生まれ変わって14年! 合わせて146年! 私は長き童貞の時代に終わりを告げるぞーーー!

 おっと、気が早い。まずは相手を見つけないとな。ははは。男に戻ってからが大事じゃないか。まあ焦らずゆっくり探すとするか。でも150年に到達しないことを目標にしておこうか。切りが良くてなんか嫌だ。
 とにかく、今はホルモンクッキーを食べて男になろう。

 ホルモンクッキーの箱を開けて、中からクッキーを1枚取り出す。
 ふふふ、これを食べたら性転換……だが、そうは問屋が卸さないだろうことは理解している! そう! グリードアイランドのアイテムは全て念で作り出された物! つまりこのホルモンクッキーも念能力の産物! それは私の【ボス属性】により無効化されることを意味する! そんなことはとうの昔に分かっていたわぁ!

 ……いや、【ボス属性】を作った時は分かっていなかったけどね。あの時はそういう薬があると思い込んでいた。普通に考えたらそんな薬念能力以外では有り得ないのにな。私って、ほんとバカ。

 一時はそれに思い至って正直絶望しかけたが、まだ望みはあると考えついた。
 そう、グリードアイランドへの入国方法自体がその答えだ。そもそもグリードアイランド自体プレイ出来ないんじゃと絶望しかけていたんだが、【ボス属性】の誓約を上手く使えば何とかなると考えついたのだ。
 結果は成功だった。30日もの間絶状態を強いられるが、オーラを消費しきれなかった場合の念能力は無効化出来ずに私の体にも効果を及ぼした。
 つまりはそれと同じことを今回もすればいいだけのこと! 皆との戦闘でオーラもそこそこ減っている。これをさらに消耗させ、残り僅かになったところでホルモンクッキーを食べれば……!

 念願の男ってわけだよ。
 くくく、まずはホルモンクッキーを1つ食べてオーラの消耗度を確認しておこう。もちろん【天使のヴェール】は発動してな。
 さて、いただきまーす!

 モグモグ、意外と美味しいな。味は期待してなかったんだけど。
 よく噛んで味わって咀嚼する。さて、オーラは……………………あ、あれ?
 おかしいな、もう1枚……………………あ、あれあれ? 3枚、4枚、5枚……………………お、オーラが、へら、ない?







 ……はっ! あまりのことに一瞬意識が飛んでいた。
 いかんいかん! まずはどうしてオーラが減らないか原因を考えるんだ!
 ……ホルモンクッキーは1枚のカードで10箱アイテム化した。これは1箱全て、もしくは10箱全てを食べきらないと効果を発揮しないとか?
 1箱ならともかく、10箱だったらまずい! 最初の1箱は完全に焼却されてしまっている! まずはこれを確認しなければ……! でもどうやって!?

「……う、うう」
「っ! キルア?」

 呻き声が聞こえた方を見てみるとキルアが意識を取り戻そうとしていた。

「と、桃源郷が……」
「丁度良かった。キルア、これを食べてください」
「え? ムグッ?」

 キルアの口にホルモンクッキーを1枚突っ込む。
 すると、キルアの身体が徐々に変化していき、やがて男性から女性へと変化した。顔つきはキルアの印象を残しつつも女の子らしくなり、体つきもまだ子どもだから分かりにくい所もあるが出るところは少し出てるし、腰も細くなってお尻も少し膨らんでいる。何より骨格が完全に女性のそれであった。

「ん? んん? ……な、なんじゃこりゃぁーーっ!」

 き、キルアは女になった……。 何で? 私はオーラが減らなかったよ!? それって私は性転換の効果が発揮されなかったってことだよね! どういうことなの!?

 お、落ち着くんだ。ま、まずは確認の為キルアの身体を点検しよう。

「ちょっ! やめ! やめろ、やめろって……! やめて! いやぁー!!」

 ぐぅ、完全な女性だ。間違いない……。
 もう1枚ホルモンクッキーを食べる。だが私のオーラはひと欠片も減りはしない。え? あれ? 本当にどうして? なんで私は?

「うう、もうお婿にいけない……」

 さめざめと泣いているキル子ちゃんの横で放心する私。私だって泣きたい。でも今は原因究明が先だ!

 キルアには1枚でホルモンクッキーの効果が現れた。つまり1箱全部食べきる必要はないわけだ。私の【ボス属性】で無力化した場合は私のオーラがその効果に合わせて減少する。【天使のヴェール】も発動しているのでそのオーラの消費は元の10倍だ。これでオーラの消費に気付かないわけがないだろう。
 しかも性別を変化させるなんて結構なオーラを消費する効果だと思う。何せ人体のホルモンや仕組みを操作して身体を変化させるという高度な、のう、りょ、く………………操作、して? ……そう、さ……操作、系?
 ま、まさか、ホルモンクッキーの効果は……操作系の、能力? だとしたら……。

 念能力操作系ボス属性無効化オーラが減らない効果がない操作系早い者勝ち母さん操作系操作系操作系操作操作操作操作操作……!!

 操作系は、早い者勝ち……誰かに操作された物を他者の念で操作することは……出来ない。そして……私は母さんの……母さんの能力で……操作されている……!

『アイシャちゃんは女の子なんだから、オレなんて言っちゃダメ。女の子らしくしなくちゃいけないのよ』
『アイシャちゃん。汚い物を食べてはダメよ! お腹壊しちゃうからね! わかった?』

「あ、ああ……あああああ……」

 母さんの言葉が脳内でリフレインされる……。
 そう、母さんの能力で意識の一部を操作されている私に操作系の能力は効果がない……。そして、効果がない能力を受けても……【ボス属性】は反応しない……。当然だ。効果がないのに無効化なんておかしい話だろう。

 つまり、つまり、つまりつまりつまり!
 操作系の能力であると思われるホルモンクッキーは、例え【ボス属性】がなかったとしても……!
 私に効果を及ぼさない…………。
 私は男に戻れない…………。
 私は、私は…………。



 ………………おわった。







「アイシャ、まだショックみたい。朝ご飯いらないって」
「……そうか。まさか男になれなかったのがそこまでショックだとはな……」

 あの死闘という名の蹂躙から一夜が明けた。
 まだ身体のあちこちが痛むが、全員動くのに支障はないようだ。
 アイシャも何だかんだで手加減をしていたのだろうな。そうでなければもっと早くに私たちを倒せていた筈だ。

 だが死闘を制したアイシャが目的を達成することは出来なかった。
 何が原因かは聞けなかったが、どうやら【ボス属性】以外でホルモンクッキーを無効化してしまったらしい。そのせいでアイシャは昨夜から非常に落ち込んでいる。今もゴンが朝食に呼びに行ったのだが、拒否されたようだ。

「そんなにオレ達と一緒に寝泊りしたかったのかなぁ……?」

 確かに性転換の動機はそのようなものだと聞いたが、流石にそれはどうなんだろう? その程度であそこまで性転換に執着するだろうか? 性転換出来なかったことにあそこまで落ち込むだろうか?
 流石にこれは解せないな。おそらくもっと違う何かがあるのではないだろうか……。

 これにはアイシャの周囲の人物がヒントになっている気がする。リィーナ殿とビスケ……いや、リィーナ殿が特にそうだろう。彼女は明らかにアイシャに対して敬愛の態度を示していた。風間流の最高責任者が一介の少女にどうしてと思っていたが、今までそれを追求することはしなかった。2人とも私が世話になっているしな。

 だが、追求はせずとも思考することは出来る。今までの情報を纏めてみよう。
 アイシャは風間流の使い手。それも1流のだ。いや、それに超がつくだろう。リィーナ殿と比べても遜色ないレベルに達している。彼女の普段の態度を見れば彼女よりも上にすら見える。
 しかもそのオーラはとても14歳のそれだとは思えない。14年間を無駄なくオーラの修行に費やしたとしてもあそこまでオーラが高まるだろうか? ビスケの能力を駆使しても不可能だろう。そもそも14年前は赤子なのだから、オーラの修行など出来はしない。それを考えれば10年の余裕があるかないかだ。

 14歳で風間流の最高責任者以上に風間流を操り、オーラ量は比肩する者がいないレベルに達する。

 ……ない。これはない。無理だ、不可能だ。どんな才能があっても14年という短い歳月であそこまで強くなれてたまるか。私たちの年代から14年ならともかく、赤子から14年だぞ? 出来たらそれは人間じゃない。
 だがアイシャはまごうことなき人間だ。これまでずっと一緒にやってきてそれは理解している。優しく、厳しく、甘く、老成しているようで時に子供っぽさを見せる、普通とは少し違うかもしれないが我々と変わらない人間だ。

 ……まて、14年? 14年前と言えばかのリィーナ殿の師である武神リュウショウの……っ!?

 少女……男になりたい……老成……歳にそぐわない強さ……14年……風間流……リィーナ殿が敬う……。

 1つ1つがパズルのピースが埋まっていくように合わさっていく……。
 いや、そんな馬鹿な……。それにしては精神年齢が……いや、だがしかし……それならば納得がいってしまう! まさか……! アイシャの正体は……!

「よし!」
「っ!?」

 ゴンのいきなりの掛け声に意識が外へと戻ってくる。
 周りを見ないほど集中していたようだ。……このことは誰にも言わないようにしよう。言っても混乱を呼ぶだけだ。私の予想が当たっているとも限らない。私の胸の中だけにしまっておこう。

「どうしたのだゴン? いきなり声を上げて」
「うん。アイシャがそんなに男になってオレ達と一緒に遊びたかったならさ。オレ達がアイシャとおんなじになればいいかなって思ってさ」
「すまんちょっと言ってる意味が分からないんだが」

 つまりどういうことだ? ゴンもキル子と同じく性転換するということか? いやオレ達というのはつまり私たちもか?

「おいおい! それってオレもキル子ちゃんと同じように女になれって言うのかよ!?」
「キル子って言うなコラァッ!! ぶっ殺すぞレオリオ!」
「そう怒んなよ。か、可愛いぞ、くっ、き、キル子ちゃん、ぐ、ダメだ腹が痛い……!」
「ミルキてめぇ!」
「お兄ちゃんって呼んでいいんだぞ?」
「誰が呼ぶかクソ兄貴がぁ!」

 うむ。意外と可愛いぞキルア。キルアが女になるとまさかここまで美少女になるとはな。ミルキとレオリオがからかうのも分かる。
 いや、他人を見て笑っている場合ではない。私も同じ境遇になるかもしれないのだぞ?

「ゴンの意見に賛成だぜぇ。お前らも女になってオレの気持ちを味わうといい!」
「うおっ! 何しやがるキルア!」
「逃げろ! 今のキルに何を言っても無駄だ!」

 いかん! キルアが完全に暴走している! ホルモンクッキーを持って私たちに無理矢理食べさせようとしてきた!

 あ、ゴンは自分でホルモンクッキーを食べた。
 女になったゴンは活発なイメージの元気な少女だな。ツンツン髪を下ろせばもっと似合うだろう、って違う。今は逃げるのが先決だ!

「誰も逃がさねぇぜ……【電光石火】ぁあぁ!」
『や、やめろーー!』

 やっぱり【電光石火】には勝てなかったよ……。







 崖の上で膝を抱えてぼうっと座り続けている。
 もう一夜が明けたのか。ゴンが朝ごはんに呼びに来てくれて初めて気付いたよ。
 ゴンには悪いけど、正直食欲がわかない。14年の悲願が叶わないという残酷な現実を叩きつけられたんだ。簡単には気持ちの整理はつかないさ……。
 いや、前世の年数も入れれば146年か。ははは、私は一生童貞というわけだ。いや、童貞すらないか。私はずっと女なんだから。

 …………これからどうしよう。
 正直、力が抜けた。気力がわかない。人生の目的は永遠に失われてしまった。もちろん蟻の化け物を倒すというのはあるが、今はそれを考えてもどうにも力が入らない。目前まで来ていた目的がさっと消えてなくなったんだ。この喪失感は簡単には拭えそうにない……。

 ……手段はある。手術による性転換だ。これならば念能力は関係ないので男になることは出来るだろう。
 でもそれで性転換して、また女に戻ることが出来るのだろうか。多分無理だろう。そう簡単にコロコロと性別を変えられるものじゃないだろう。私は父さんの想いを無碍にしたくない。
 却下だ。童貞を捨てたいが為にそこまでしたくない。その思いで母さんを犠牲にしてるんだ。そんなのはもうたくさんだ。

 いや、もう1つあったな。……除念だ。私を縛る母さんの念を除念したら後は【ボス属性】を例の方法でどうにかしたらホルモンクッキーの効果は出るだろう。
 だがこれも却下だ。これは母さんの愛だ。私を縛る鎖ではない、私を護る母さんの愛なのだ。これを除念するということは母さんを否定することになる。それだけは絶対にない!

 ……これからは女性として生きていくしかないのか?
 でもそれってどういう生き方なんだ? 初めから女ならともかく、男として生まれ男として生きた記憶がある私にはよく分からない。

「アイシャさん……いえ、先生」

 リィーナか。いたんだ。気付かなかったよ。
 気配にも気付かないなんて……。今の私なら誰でも勝てるだろうな。

「……どうしたんですかリィーナ?」
「その、気を落とさないでください先生……。例え女性でも先生は先生じゃございませんか……?」

 そうだな。私が女性でも私であることに変わりはない。それは分かっている。
 でもお前には分かるまい。ずっと童貞卒業という男にとって生まれたならば必ず成し遂げたいことを100年以上に渡って成せなかった私の気持ちなどな。
 これは同じ男にしか分からないだろう……。どれだけ私と共にいても、リィーナは女性なんだから……。

「リィーナには分かるまい……私の無念が……」
「そ、そのようなことは……!」
「ならば私を男にしてください」
「そ、それは……」

 ……意地の悪い言い方だったな。
 正直かなり荒んでいるようだ。歳下に当たるなんて情けない……。

「すまない……ただの八つ当たりだ。許してください……」
「せ、先生……」
「アイシャ、もういいでしょ。仕方ないじゃない。男になれなかったんだからさ」

 ビスケ……。仕方ない、か。そうだな、仕方ないな。
 それは分かってるんだ。仕方ないんだよ。どうしようもない。
 でもそれで納得しきれないんだ。自分の中で現実を消化しきれないんだよ。

「……アイシャのお母さんがあなたに残した念が、あなたを縛っているのよね?」
「……ええ」

 リィーナとビスケには事情を説明した。いや、したんだろう。昨夜にそんな話をした記憶が朧げにだがある。何で話したんだが。この2人ならいいだろうと思ったのか。
 それもあるけど、多分誰かに何かを話したかったんだろう。愚痴でも言いたかったのかもしれないな。
 はは、ここまで心が参るとはな……ネテロが見たら嗤うだろうな。

「それってあなたのお母さんがあなたが女性として生きていくことを願っているんじゃないの?」
「……え?」

 母さんが? 願う?
 いや、でも……私を縛るこの念能力はそんな意図で私に掛けたわけじゃないだろう。それはビスケも分かっているはずだ。でも……。

「確かにこんな状況を思って能力を掛けたわけじゃないでしょうけどね。でも、自分の子が女の子として生まれてきたのよ? 母親なら、女としての幸せを願わないわけないじゃない」
「あ……」

 そうだ。母さんは私のウエディングドレスを見たがっていたな……。
 本当の母さんにも、念獣の母さんにも見せることは出来なかったけど……。
 女としての幸せ……? ……やっぱり分からないな。
 でも、少しは気が晴れたような気がする。まだ心の整理はつかないけど……。

「おーい! アイシャー!」

 そんな風にビスケの言葉を色々と考えていると、ゴンの声が聞こえてきた。
 ……ゴン、だよね? 若干声が高いような気がするんだけど?

「アイシャー!」
「ぶっ! あ、あは! あはあははははははは! な、何してんのよあんた達! ぶふっ!」

「お、おお……! み、皆さん向こうで着替えをしてみませんか? 今の服装のままでは少々勿体無いですよ?」

 何だ? ビスケもリィーナもどうした?
 ビスケは爆笑しているし、リィーナは軽く興奮しているんだけど?
 気になってつい後ろを振り向く。気分は天岩戸の天照だ。

「……は?」

 多分これほど驚いたのは私の長い人生でもそうはないだろう。
 振り向いた先にいたのはゴン……だろう。そしてクラピカとミルキとレオリオさん……と思わしき人たちも一緒にいた。キル子ちゃんもだ。
 だが、その全員がまさかの性転換をしていた。どういうことなの? どうしてこうなった? あれか? 性転換出来なかった私への当てつけか? ……いかん、本当に心が荒んでいる。

「あの……皆さんどうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも……」
「キル子ちゃん?」
「キル子ちゃん言うな! ったく! 全部ゴンのせいだよ!」

 なんでゴンのせいで皆が女性になっているんだろう?
 ゴンは元気な笑顔がよく似合う可愛らしい女の子に。
 ミルキはクールな雰囲気を漂わすモデルのような美女に。
 レオリオさんは長身で頼りがいのあるお姉さんに。
 クラピカは特に変わりない。あれ?

「クラピカはホルモンクッキーを食べなかったのですか?」
「……いや、私も食べさせられたが?」
「?」

 食べさせられたという言い方は気になるけど……食べたのになんで見た目に変化がないんだろう?
 ……いや、よくよく見ると骨格は女性のそれに変わっているな。声も微妙に高くなっている。胸も確かに膨らんでいた。元々体型や顔つきが女性に近かったから変化が乏しいのだろう。
 まあいいや。それよりもどうしてこんなことをしたかだ。

「それで、どうして皆で性転換なんかを?」
「うん! アイシャってオレ達と一緒に寝泊りしたかったから男になりたかったんだよね! でもアイシャが男になれなかったから、だったらオレ達が女になれば一緒に寝泊り出来るよ!」
「ご、ゴン……」

 確かにゴン達には性転換の動機はそう説明していた。
 それは嘘ではない。男になったらそうしたかったのも本当のことだ。でも、嘘ではないだけで本当の動機ではない。
 それをゴンは信じて……私の言葉を信じてこんなことを……! 私の為に女になってくれるなんて……!

「ゴン……クラピカ……ミルキ……レオリオさん……キル子ちゃん……私の為に……」
「なんでオレだけキル子なんだよ」

 性転換したいが為に皆を叩きのめした私にこんなにも優しくしてくれるなんて……。

「なんか感動してるけど、これっていいの?」
「う、うう。アイシャさんが男と同衾、いえあれは皆可愛らしく美しい女性達、ですが元は男、いやそれを言うなら……」
「あ、駄目ねバグったわ」

 リィーナって百合嗜好はなかったはずだけどな?

「じゃあ今日は皆で一緒にお泊まり会をしよう!」
『おー!』

 ゴンの掛け声に皆が元気に返事をする。……私のは空元気だけど。

 正直、まだ心が晴れたわけではない。だが私を心配してここまでしてくれた皆の想いには応えたい。後は時間を掛けて自分の生き方を考えよう。
 幸せになる。そう母さんが私に願ったように、私は幸せになる。……それは、例え男に戻れなくても出来るはずだ。

 辛くない、悲しくないと言ったら嘘になる。こうしている今も胸が張り裂けそうな程に落ち込んでいる。でも……それだけじゃない。辛いだけが今の感情を占めてはいない。
 だって、こんなに素敵な友達が出来たんだから。
 だから、次に行く時はきっと幸せだって報告出来るようになってるからね、母さん。

「どうしてこうなった?」
「諦めるしかないのだよキル子」
「黙れやクラピ子」
「皆さん。せっかくの容姿もそのような雑な服装では台無しでございます。さあ、マサドラへ赴き衣装を用意いたしましょう」
「やべぇ。このリィーナさんはいつになくやべぇぞ」
「くっ! ここに来てまたも難敵登場か!」
「そうね。この子らの着せ替えもおもしろそ~ねぇ」
「“ブック”! “再来/リターン”使用! アント――」
「おっと、1人で逃げようとするなよミルキ」
「か、カードを返せキル子!」
「だからキル子って言うなっつってんだろ!」
「あはは。でも結構可愛いよキルア」
「からかうんじゃねぇよゴン!」

 お前ら少しくらい感傷に浸らせろよ。




 大抵の方が予想していたボス属性による性転換の無効。だが実際はこうでした。ボス属性など関係なかった罠。
 ホルモンクッキーが操作系の効果なのは私の勝手な判断です。実際にどうかは分かりません。







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