どうしてこうなった?   作:とんぱ
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第五十九話 ※

 レオリオさんのおかげでグリードアイランドから出ることが出来た。感謝感激である。

 レオリオさんにお礼を言うと何故か逆にお礼を言われた。解せぬ。

 その後レオリオさんはゴン達と合流した時にキルアとミルキとリィーナに睨まれていた。解せぬ。

 

 さて、久しぶりの外の世界だ。文明の光が懐かしい。空気も澱んでいる気がする。グリードアイランドには排気ガスとかなかったからなぁ。

 色々嫌なことが有ったから二度と行く気はなかったけど、住むだけならいい場所かもしれない。でももう一度行くにはまたオーラを枯渇させて1ヶ月絶で過ごさなきゃ行けないんだよなぁ。やっぱり不便か。止めておこう。

 

 外の世界に戻って来て最初にしたことはバッテラさんにクリア報酬の1枚を渡しに行くことだった。

 

「おお、ロックベルト会長! よくぞクリアしてくれました!」

「皆様の協力あってのことでございます。さあ、こちらがお望みの若返り薬でございます。どうぞ」

「おお、これが! ……あ、ありがとうロックベルト会長……! 何から何まで貴方のおかげだ! これで、これでようやく私と彼女の人生を歩むことが出来る……!」

 

 ……良かったねバッテラさん。彼女が昏睡状態で失ってしまった時間もこれで取り戻せるし、後は幸せに過ごすだけだね。

 

「お気になさらずに。既に報酬は支払われております。それは当然の対価でございます。あと、その薬の注意点を1つ。それは1粒飲めば1才若返る薬ですが、年齢以上の数を飲んでしまえば死んでしまいますので、お気を付けください」

「なるほど、それは怖いですな。ですがご安心を。彼女が眠っていた時間以上は若返るつもりはありませんからな。彼女もそう願っておりました。失った時間さえ戻ればそれでいいのですよ」

 

 ……素晴らしい。何という愛だ。望めばそれ以上の物が簡単に手に入るというのに……。彼女の為に私財の全てを投げ打ったことといい、打算のない本当の愛だ。なんて素敵な2人なんだろうか。

 

「それならば大丈夫でしょう。何かあれば私を頼ってくださいませ。出来る限り力になることを約束いたします」

「おお、それはありがたいですな! 私たちに困難なことが起きればその時は喜んで頼らせてもらいますよ」

「あと、少しだけ浅ましいお願いがあるのですが……」

「? なんでしょうか? 今の私でロックベルト会長の力になれることは少ないと思いますが?」

「実は……」

 

 ……何をお願いしているんだろう? 誰にも聞こえないようにバッテラさんだけに何かを伝えている。バッテラさんの言う通り、私財の殆どをリィーナに譲渡したバッテラさんに出来ることなんて少ないと思うけど……?

 

「ははは、なるほど。ロックベルト会長もやはり女性だということですか」

「失礼な。女は何時になっても乙女なのですよ」

「はは、そうですな。それは失礼をした。いいでしょう。その話、了承しましたよ」

「ありがとうございます! では、また後ほどに!」

「ええ。皆さん、本当にありがとう! 皆さんの人生に幸有らんことを」

 

 そうしてバッテラさんとお別れをした。

 バッテラさん達にも幸がありますように。

 

 

 

 

 

 

 そしてやって来たのはアームストル。ここに来ると帰って来たという気持ちになる。やっぱりここが私の故郷の1つだ。

 私が故郷と想う場所は4つある。1つは二度と帰ることのない、帰ることの出来ないかつての世界。そしてここ、人生の大半を過ごしたアームストル。そして私の人生を決定づけた想い出深き風間流発祥のジパング。最後は流星街だ。と言っても、母さんと過ごした一部のみを故郷と想っているだけだ。他の流星街は知らん。私はともかく母さんを悪魔と呼んでいた奴らが住んでいる土地を故郷とは想わん。

 

 まあいい。それよりもアームストルに帰って来たのだ。やるべきことはたくさんある。

 

「本当にいいんですかリィーナ? しばらく世話になりますが」

「全くもって問題などありません! あるわけがございません! それはもう10年でも100年でも1000年でもご自分の家と思ってお過ごし下さいませ!」

「いや、それは死んでるだろ……」

「無駄だよキルア。今のリィーナ殿の耳はアイシャ以外の声をシャットダウンしているのだよ」

 

 流石はクラピカ。既にリィーナの特性を理解しているな。こんなことで褒められたくはないだろうけどな。

 

「んで、どうして兄貴もここまで着いて来てんの?」

 

 キルアの言う通り、ミルキも私たちと一緒にアームストルへとやって来た。ゴンとキルアとクラピカがアームストルにやって来たのは修行の為だ。

 この3人、もう今の修行を当たり前に思っている節がある。成長したな。もう1段階修行レベルを上げよう。

 レオリオさんも一緒に来た。合格通知は携帯電話からでも分かるようになっているから家に戻る必要もないそうだ。それなら一緒に行きたいと言ってくれた。

 私としてもレオリオさんが一緒なのは嬉しい。それに、ドミニクさんにレオリオさんを紹介することも出来るし。

 カストロさんとゲンスルーさん達も当然一緒に来た。彼らは風間流で修行の日々を送るのだろう。

 そしてミルキも着いて来た。というかグリードアイランドのメンバー全員が来ている。

 

「べ、別にいいだろ! 家に帰るわけにも行かないし、修行してお前に勝ち越さなきゃいけないしな!」

「はっ。返り討ちにしてやんよ」

 

 ミルキも修行がしたかったのか。皆修行大好きになって来たなぁ。私としては嬉しい限りだ。

 

「では、初めて来られる方もいらっしゃるので説明いたしましょう。ようこそ皆様。ここが風間流合気柔術本部道場でございます」

「ここが風間流の本部道場か」

「初めて見たが、結構でかいな」

「ああ、ここがオレ達の新たな牢獄もとい修行場か」

 

 まあ、ゲンスルーさん達にとってはここから出るのもままならない缶詰状態にされるからね。牢獄扱いになるかもしれない。でもそんなこと言ってるとリィーナに叱られるよ?

 

「さて、早速ですが中をご案内いたしましょう。どうやらすぐにでも地獄の修行をなされたい方がいらっしゃるようでございますし……ねぇ、バラさん?」

「オワタ」

「死ぬなよ」

「生きろ」

 

 いい加減リィーナの禁句ワードを覚えた方がいいと思う。ゴン達は覚えているぞ。リィーナの怒りを買わない。それがここで過ごす上で1番重要なことなのだ。それが出来ない者は門下生の中にはいないだろう。あ、2人くらいいたかな。

 

「では皆さんこちらへ」

 

 リィーナの案内で中へと入っていく。数ヶ月ぶりだな。やはりここは落ち着く。自分の家にいるみたいだ。まあ、リュウショウの時は殆どここで過ごしていたから当然か。

 

「これは! お帰りなさいませ本部長!」

「本部長! お帰りなさい! お疲れ様でした!」

「皆さん。しばらく留守にして申し訳ございませんでした。私のことは気にせず修行に励みなさい」

『はい!』

 

 リィーナの帰還を喜ぶ門下生の声が続々と響いてくる。

 リィーナは今の風間流のカリスマだからね。門下生10万を超える道場の最高責任者なのだからな。一門下生からしたら武の頂きを見る思いだろう。見た目もクールで美人だし、男女ともに憧れている者は多いだろうな。

 リィーナに憧れる女性は特に多い。多分私が最高責任者をしていた時より女性の比率が多くなっているんじゃないだろうか?

 

 

 

 そうして風間流でも念能力を修めた者しか入ることを許されていない道場の奥にある隠し道場まで到着する。中には多くの念能力者がそれぞれ研鑽を積んでいた。その中で、それらの門下生に対して指導している人物がこちらにいち早く気付いた。

 

「り、リィーナ先生!?」

『リィーナ様!?』

 

 最初に気付いたのはシオンだ。シオンは確かリィーナが不在の時にリィーナの代行を務めていたんだったな。今もそれで指導に当たっていたんだろう。

 その場にいた全員がシオンの声でリィーナの存在に気付く。そこから他の練習場にいた門下生達もリィーナが帰って来たことに気付いてどんどん集まって来た。総勢100を超える念能力者が集った。

 

「これが風間流の念能力者達か……」

「なるほど。程度の差はあれ、どいつもこいつも大したもんだ」

「ああ、敵に回したくはないな」

「1人2人ならともかく、それ以上となると厳しいな」

 

 初めてここに来るミルキとゲンスルーさん達も驚いているようだ。質・量ともにここまでの念能力者が一斉に集まることもそうないだろう。

 ふふふ、どうだ。これが風間流だ。理解したらリュウゼン=カザマを称えるがよい。

 

「しばらく留守にして申し訳ありませんでした。私が留守の間も修行に励んでいたようで何よりです」

「それはもう! 私もしっかり指導しましたよ!」

「ご苦労様です。ですが、そういうことは自分で言うものではありません」

「アイター!? い、痛いですよリィーナ様ー」

 

 再会してそうそう頭を殴られるシオン。変わりないようで何よりである。

 

「あ、ビスケ様に、それにゴン君、キルア君、クラピカ君にアイシャちゃんも。久しぶり! ゴン君達はまた修行しに来たの?」

「シオン。積もる話もあるでしょうが、それは後になさい。まずは互いに色々と報告することがあるでしょう?」

「あ、そうですね。それに丁度良かったですよ。リィーナ様が帰って来てくれて本当に良かった~」

「……? 何かあったのですか?」

 

 シオンの口ぶりからして、何かあったんだろうけど、それほど大事ではなさそうだ。言葉に緊張も不安もないからな。

 

「はい! 私妊娠してるんでしばらく休みます!」

 

 大事だった。大事件だった!

 

「はぁ!? に、妊娠って! まさか相手はウイングじゃないでしょうね!?」

「何を今さらなことを仰るんですかビスケ様! 私がウイング以外の人とチョメチョメするわけないじゃないですか!」

 

 チョメチョメ言うなし。

 いや、これは驚いた。2人がまあチョメチョメ……そういうことをしているのは知っていたけど、まさか妊娠したなんて……。

 

「そ、そうですか。それはおめでとうございます。祝福いたしますよ。しかし、大丈夫なのですか? ここで指導していたようですが、あまり激しい動きをしては母子ともに危険ですよ?」

 

 リィーナが持ち直した。まさかこんな時にこんなカミングアウトをされるとは思ってもいなかっただろうからな。一瞬だったけどリィーナがフリーズしてたし。多分あの瞬間に攻撃を仕掛けたらシオンが勝っていたな。

 

「はい。まだ安定期には入っていないんで本格的な指導はせずに助言だけにしています」

「そうですか。それなら……待ちなさい。今、妊娠何ヶ月目なのですか?」

「え? 2ヶ月目ですけど?」

 

 2ヶ月か。あと8ヶ月くらいしたら赤ちゃんが産まれるんだな。まだ男の子か女の子か分からないな。どっちだろうか?

 

「早く子どもの性別が分かるくらいに成長してほしいですねぇ。やっぱり最初は男の子がいいかな! きっとウイングに似た可愛くてカッコよくて頭も良くて優しい子になるよねぇ。ううん、女の子もいいよねやっぱり! きっとウイングに似た可愛くて美人で頭も良くて優しい子になるよねぇ。あ、双子というのはどうだろう! 男の子と女の子の双子とかヤバイ! もう最高じゃん! この際3つ子でも4つ子でもばっち来い! 私は一向に構わん! 将来はサッカーでチーム戦が出来るくらいは産むよ! あ、そうなったら早く孫も欲しいなぁ。あはは、流石にそれは気が早いか。そう思いますよねリィーナさアイター!?」

 

 これはひどい。

 

「この脳みそパープリンお花畑馬鹿娘は……! いい加減妄想の世界から帰ってきなさい!」

「……おい、コレはなんだ?」

「シオン。風間流の次期最高責任者候補」

「風間流の未来も真っ暗、いや真っピンクだな」

「流石にリィーナ先生の頭を疑うぞ」

「……返す言葉もございませんね」

 

 リィーナも今回のゲンスルーさんの暴言には何も言い返せないようだ。私だってそう思う。いくら優秀でもこれはない。考え直せと言いたくなってきた。

 

「とにかく! 今妊娠2ヶ月目なのですね!?」

「はい! その通りです!」

「……お相手のウイングさんはどこにいるのですか?」

「え? 天空闘技場ですけど? 妊娠を心配してくれてましたけど、弟子のズシ君をほったらかしにさせるわけにもいきませんからね。私は大丈夫だからと天空闘技場に留まらせました。夫の仕事に寛容な出来る妻! くふふ、ああ、私って健気! やっぱり男の人って尽くすタイプに弱いと思うんですよ。私って一途だし? 1人に尽くすタイプだし? その辺りの魅力にウイングもやられアイター!?」

 

 お、さっきよりも突っ込みが早い。学習したかリィーナよ。

 

「ウイングさんは天空闘技場にいるのですね!?」

「はい! その通りです!」

「……2ヶ月前にウイングさんがここまで来ていたのですか?」

「え? ウイングはずっと天空闘技場にいましアイター!? ま、待ってくださいリィーナ様! 私まだおかしなこと言ってないじゃないですか~!?」

「申し訳ありません。つい先に突っ込んでしまいました」

「うう、酷いですよ~」

 

 いや、どうしてもリィーナが悪いとは思えない。何故だろうか。

 それとシオン。まだってことは言うつもりは有ったのか? というか、おかしなことという自覚が有ったのか?

 

「では、貴方は私の命に背いて道場を留守にして天空闘技場までウイングさんに会いに行っていたと? そういうことですかシオン?」

 

 ……シオンの言うことが本当ならそういうことになるな。

 ここから天空闘技場に行くとなると飛行船でもかなりの日数が掛かる。その上往復となると1週間近くは道場を留守にしていたことになるだろう。

 

「そ、それは……」

「どうなのですかシオン? はっきりと答えなさい」

 

 徐々にプレッシャーが増している。

 既に門下生はシオンとリィーナの半径10m以内から離れている。大した反応速度である。慣れてんのかな?

 

「て、天空闘技場に、行ってたのは確かです! で、ですが、休みの時間を利用しただけで、道場を長い時間留守にはしていません!」

「どういう意味ですか? 休みの時間だけで天空闘技場まで行けるわけがないでしょう。そうであるならばそれを可能とした理由を述べなさい」

「は! それは私の念能力で天空闘技場まで瞬間移動したからであります!」

 

 瞬間移動? 念能力で? いや、念能力で確かにそれは可能だけど……。放出系だよ瞬間移動って。シオンって変化系だよね? それで放出系の能力を覚えるのは……。

 複合能力で放出系を必要としているならともかく、瞬間移動は純粋な放出系の能力だ。シオンが覚えるとなるとどれだけの容量を使ってしまうのか……。

 

「瞬間移動……! 馬鹿な能力を……。貴方には発を作る時の重要性をとくと教え込んだはずでしたが……」

「大丈夫です! 制約と誓約をすっごく重くしましたから! 然程容量は取っていないはずです! というか、もうウイングに会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて。想いが募りすぎて気が付いたらウイングの隣に瞬間移動していました……。無意識に能力を作っていたみたいです。すいませんでしたリィーナ様……」

「い、いえ。それほどの想いなら、仕方ないのでしょう。ええ」

 

 想いじゃないよ。重いだよ。リィーナが引いて怒りを収めるくらい重たい想いだよ。というか怖いよ。私も引くよ。皆引いてるよ。初対面のミルキとゲンスルーさん達の印象も最悪レベルになってるよきっと。

 なんて残念な子なんだ……。もうウイングさん逃したら終わりだな。頑張れウイングさん。

 

「ありがとうございます! それじゃあ、後はリィーナ様にお任せして私は産休に入らせて頂きますね!」

「まあ、産休には少々早いでしょうが、身重の身でする仕事でもありませんからね。ただ、念の修行なら体に負担もかけないでしょうから、それはキチンと続けておくのですよ。ただし衰弱するまで消耗しないように。分かりましたね?」

「はい! あと、結婚式は5月に予定しております! お腹が目立つ前にウェディングドレスを着たいんでアイター!?」

「そういうことは早くお言いなさい!」

「う、うう~、申し訳ありません~。そ、それではこれ以上怒られる前に今日は休みます……。あ、ゴン君達もまた後でね。グリードアイランドの話を聞かせてくれると嬉しいな」

「う、うん。また後で色々話そうねシオンさん。色んなことがあったからきっとシオンさんも楽しんでくれると思うよ。ね、キルア」

「……ん? もう妄想は終わったのか? 悪いなゴン。話を耳に入れないようにしていたからな」

 

 キルアのシオン対策がもう熟練の域に達しているんだけど? これには私も脱帽である。

 

「ひ、酷いよキルア君!」

「悪いなシオンさん。オレの精神の安定の為にもあんたの妄想は聞き流した方がいいんでな」

「キル。後でオレにもコツを教えてくれ」

「私も頼む」

「あ、オレもよろしくな」

「オレも頼むぜ」

「もちろんオレもな」

「頼んだぜキルア」

「うう、クラピカ君ばかりか、初めて会う人たちまで!?」

 

 ごめん。フォローする言葉が出てこない。どうしてこういう子になったのかなぁ。初めて見た時は緊張してたけどこんなんじゃなかったのになぁ。ウイングさんのせいなのかなぁ? いやウイングさんを責めるのはお門違いだよなぁ。シオンの素だもんなぁ。

 ……本当にどうしてこうなった?

 

 

 

 

 

 

 さて、本部道場に住み着いて2日が経過した。初日は色々バタバタしてたから大変だったな。

 しばらくここで情報収集をしたいから、私の為に用意してくれた一室にはパソコンも用意してもらった。まあ昨日はこうしたパソコンやネット回線を繋げるのにほぼ時間を費やしてしまったのだが。大体はミルキがやってくれた。流石機械関係に強いだけのことはある、ミルキ様々である。

 用意してくれたパソコンは最新式で、色々とグレードアップしているらしい。ミルキがスペックを見て凄い欲しがっていた。幾らくらいするんだろう? 相場は詳しくないけど、50万ジェニーくらいかな? 後でお金を出しておこう。

 

 早速ハンターサイトでキメラアントと思わしき事件がないか調べて見たが、何の成果も得られなかった。

 虫関連の情報なら結構あった。希少な虫のハントの要望や、生態を調べる仕事の要望だ。でもそれらはちゃんと何の虫かの情報が正確に載っていた。キメラアントではなかった。

 キメラアントの事件が起きれば、巨大キメラアントとか正体不明の巨大昆虫という風に情報が出るはずだからな。

 

 まあ仕方ない。情報が手に入るまでは地道にハンターサイトや他のサイトなんかを調べていくしかない。情報が見つかるまでは修行に力を入れよう。キメラアントと戦う為には地力を伸ばさなければ。

 このことは誰にも言うつもりはないから、キメラアント討伐にも私1人で行くつもりだ。どれだけのキメラアントがいるかも分からない。体力勝負になるな。走り込みと堅の持続時間を延ばす修行を重点的にしておこう。

 

 そうして私は机の上にある2つの本をふと見て溜め息を吐いた。

 昨日、早速リィーナが“失し物宅配便”を使ったんだけど……やっぱり戻って来たのは原本とリィーナの書いた写本の2冊だけだった。残り2冊……どうかゴレイヌさんが持っていたのがリィーナの書いた写本じゃありませんように……。もしそうだったらゴレイヌさんの持っていた写本はここに来たことになる。つまり残り2冊の行方は分からないままということに……。

 せめてゴレイヌさんが持っていたのが別の人が書いた写本なら、後からゴレイヌさんが持って来てくるはず。それなら行方が分からないのは後1冊だけということになる。

 

 …………ふぅ。こればかりは祈るしかないな。

 まあ、今日は他にしなくてはならないことがあるんだ。黒の書のことを考えるのは後にしよう。

 

 

 

 

 

 

「ここが……」

「はい。ドミニクさんのお屋敷です」

 

 レオリオさんを連れてドミニクさんの屋敷までやって来た。ドミニクさんはレオリオさんにお礼を言いたいそうだし、レオリオさんもそれを拒否していない。なら紹介しても問題はないだろう。ドミニクさんには“死者への往復葉書”を渡したかったから丁度良かった。

 

 さて、突然の訪問だけど、ドミニクさんはいるかな? 電話番号とか調べてアポイントメントを取っていれば良かったんじゃないだろうか?

 ……前に母さんのお墓参りは自由にしてもいいって許可は貰えたから、私がインターホンを押しても拒否はされないだろう。……多分。

 うう、緊張してきた。前にもこんな風に緊張してた気がする。いや、なんか前以上に緊張している気がする。なんでだろう?

 

「どうしたんだアイシャ? インターホンを押さないのか?」

「え、ええ。今押します」

 

 ええい! 女は度胸だ! 当たって砕けろ!

 ……押したった。数秒待ったらインターホンから声が聞こえてきた。

 

『当家に何用で……あ、おじょ……あんたか。一体何の用だ?』

 

 今何か言おうとしてなかった?

 まあいいや。そんなことより用件を言わなければ。

 

「あの、ドミニクさんはいらっしゃいますか?」

『ああ。それで、何の用なんだ?』

「ドミニクさんが以前お会いしたいと言っていた方を私が連れてきたと伝えてもらえませんか? それで分かると思います」

『!? もしかして、隣の男がボスの命の恩人か!?』

「あ、ドミニクさんから聞いていたんですね。はい、その通りです」

『少々お待ち下さい! 只今ボスにお伺いしてきます!』

 

 おお、すごいな。レオリオさんのことを教えたらすぐに態度が変わったぞ。それだけドミニクさんを助けたことに感謝しているんだろう。

 

「これから親父さんに挨拶をするのか……くー、緊張してきたぜ」

「大丈夫ですよ。ドミニクさんはレオリオさんに深く感謝していましたから。

 レオリオさんが邪険に扱われることはありませんよ」

 

 私は別だけどね。レオリオさんを紹介して、“死者への往復葉書”を渡したら母さんに挨拶してすぐに帰ろう。私が長くいるとドミニクさんも辛いだろう……。

 

『ボスがお会いになるそうです。迎えを寄越しますので、少々お待ち下さい』

 

 受付の人がそう言ってすぐに正面玄関が開いて複数の黒服を着込んだマフィアの構成員が出てきた。

 彼らは急いで門までやって来るとリモコンを操作して開門し、一同礼をしてレオリオさんを出迎えた。

 

「お待たせしました! ご案内しますので、どうぞ中へお入りください!」

「お、おお。……すげぇなこりゃ。VIP待遇だぜ」

「それはそうですよ。レオリオさんは彼らのボスの恩人なのですから」

 

 そうしてレオリオさんと一緒に私も中へと案内される。

 心なしか私に対する警戒心が以前と比べると薄いな……。義理堅いドミニクさんだから、きっと私が幻影旅団から助け出したことを部下たちにも教えているのかもしれないな。それなら私に対する態度が軟化しているのも頷ける。

 

「こちらでボスがお待ちになっています。どうぞ中へ」

「失礼します」

「し、失礼します!」

 

 中には大きなソファーに腰掛けたドミニクさんが待っていた。

 良かった。元気そうだ。病院で見た時よりも血色がいい。食事もしっかりと摂っているようだ。痩せてこけていた頬も張りが出ている。

 

「良く来てくれた命の恩人よ。オレの名前はドミニク=コーザだ。因果な商売をしちゃいるが、これでも義理人情は捨てちゃいないつもりだ。受けた恩を忘れるような不義理な生き方をしたくはない。取り敢えず、まずは礼を言おう。命を救ってくれてありがとう。本当に助かったよ。お前が望むなら、十分な謝礼も用意しよう」

「いや、そう言ってくれるだけで十分だ、です」

「はっはっはっ。敬語は苦手か? なら堅苦しい言葉はなしでいいぞ。好きなように話してくれ。お前らも分かったな。この人がどんな言葉遣いをしようとも何もするな。オレが許したんだ。いいな!」

『はっ!』

 

 おお……! こんな機嫌の良いドミニクさんは初めて見る!

 これが本当のドミニクさんなんだろうな。私と話す時に不機嫌になるのは仕方ないから、こんなドミニクさんは新鮮だ!

 ……レオリオさんが羨ましいな。

 

「そう言ってくれると助かるぜ。えっと、謝礼に関してなんだが、遠慮しとくぜ。オレはオレが助けたいから助けたんだ。礼ならさっきの言葉だけで十分さ」

「欲がないな。今時の若者には珍しい。だがそういう所も気に入った! 名前はなんて言うんだ?」

「そう言えば自己紹介がまだだったな。そっちから名乗ってもらったのにすまん」

「なに、気にすんな」

 

 まるで友達のような会話だ。う、羨ましいなぁ。

 レオリオさんとドミニクさんが仲良くなるのはいいことだけど……何だかレオリオさんに嫉妬してしまいそうだ。

 

「では改めて……。初めましてお義父さん! 私はレオリオ=パラディナイトと申します! つきましては娘さんと長い付き合――」

「殺せ」

 

 うぉおい!? さっきまで良い雰囲気だったじゃん! どうして!? なんでそうなる!?

 

「どうした? 早くこの害虫を殺せ」

「いや、ですが、この方はボスの命の……」

「そうだったな。じゃあボコれ」

「ま、待ってくださいお義父さん! 話を――」

「やっぱり殺せ! このクソガキをぶっ殺せ!」

 

 あわわわわ! こ、このままではレオリオさんが殺されてしまう!? いや、この場にいる念能力者でレオリオさんより強い人はいないけど……。

 って! そういう問題じゃなかった! とにかくドミニクさんを落ち着かせなければ!!

 

「お、落ち着いてください父さん!」

「………………今なんてった?」

「え、あ……落ち着いてください……?」

「その後だ!」

 

 あ……そ、そうか、思わず父さんって言ってしまった……。今までドミニクさんと話す時は父さんと呼ばないようにしていたのに……。勝手にそんな呼び方をしたら怒るに決まっているから……。凄い剣幕でこっちを見てる……。やっぱり怒ってるんだ。

 

「何と言ったかと聞いてるんだ」

「と、父さんって……その、ご、ごめんなさい」

「……二度と勝手に呼ぶなよ」

 

 ふんっと鼻を鳴らしてドミニクさんはソファーに座り込んだ。

 …………あれ? もう怒ってないの? 私もそうだけど、レオリオさんに対してももう何も言わなくなった。

 

「おいドミニクさんよ! アイシャはアンタを助ける為に幻影旅団を相手に戦ったんだぜ! オレがしたことは傷の治療だけだ! アイシャがいなかったらそれも出来なかったんだ! アイシャと縁を切ったのも、アイシャが原因でのことらしいけどよ、それでももうちょっと言い方ってもんがあんだろうが!」

「ふん。何も知らん部外者が口を挟むな。これはオレとこいつの問題だ」

「んだと!」

「いいんですレオリオさん。ドミニクさんの言う通りですから」

「けどよアイシャ!」

 

 レオリオさんの気持ちは本当に嬉しい。私の為に真剣に怒ってくれているのが良く分かる。でもドミニクさんの言う通り、これは私たちの問題なんだ。そして非は全て私にある。例えドミニクさんに何と罵倒されようとも私に言い返す資格はない。

 

「ありがとうございますレオリオさん。でも、本当にいいんです」

「……分かったよ」

 

 レオリオさんは渋々だが引いてくれた。荒々しくソファーに座り込んで不機嫌そうにそっぽを向いている。もう暴れようとすることはないだろう。周りに控えている部下の人たちも冷や汗を流しながらホッとしているようだ。

 

「……」

「……」

「……」

 

 うう、沈黙が続く……。誰も話そうとしない。レオリオさんは不機嫌なままだし、ドミニクさんは私とレオリオさんを何度か見て怪訝そうにしている。空気が重たい。誰かタスケテ。

 

「……おい」

「は、はい!」

「……お前たち、本当に付き合っているのか?」

 

 え? 付き合うって……。買い物、とかじゃないよな?

 修行に付き合う……でもないよな? ど突き合う……もないか。

 じゃあ……付き合うって……やっぱりそういう意味だよな。

 

「いえ……付き合ってはいませんが……」

 

 あ、レオリオさんがすごく落ち込んでいるのが分かる。

 やっぱり男の人だから、女の人にそんな風に言われたらへこむのかな。私もそうだったろうか。……お、覚えていないなそんな昔のことは……。

 リュウショウの時は修行馬鹿だったから女の人とは修行以外での触れ合いなんて殆どないし。修行馬鹿になる前のことなんて殆どが記憶の彼方に消え去っているからなぁ……。

 

「……本当か」

「はい」

 

 でも本当のことだからハッキリと言っておこう。

 

「……そうか」

 

 ……ドミニクさんの機嫌が良くなっているな。

 わ、分からない。さっきから何が原因で機嫌が悪くなったり良くなったりしてるんだ? 修行で培った読心術はどこ行った? こういう時に役立てよ。駄目だ。経験にない心の変化だから何とも理解しがたい。

 

「さっきは悪かったなレオリオ」

「るせーよチクショウ!!」

「はっはっは。そう嘆くな。お前はオレの若い頃に似ている。きっといつかいい女に巡り会えるさ」

「そうですよ。きっとレオリオさんの良さを理解してくれる素敵な女性と出会えますよ!」

 

 私はレオリオさんの良いところを一杯知っているしね!

 ……あれ? ドミニクさんが何言ってんだコイツって顔でこっちを見てるんだけど? レオリオさんは天を仰いでいる。え? 私、何か変なこと言った?

 

「……おい、これは素か?」

「素なんだよこれが……」

「……そうか。その、なんだ。さっきは本当に悪かったなレオリオ。頑張れよ」

「ほっといてくれ……」

 

 ……ドミニクさんがレオリオさんに同情している。本当に何があったし。

 ……まあ、喧嘩するよりはいいのかな?

 

「話が逸れたな。とにかく、レオリオはオレからの礼は必要ないってことだな」

「あ、ああ。オレが勝手にした治療だ。そんなので金を貰うつもりはねぇからな」

「……そうか。ならこれ以上は無理には言わん。だが、何かあればコーザファミリーが力になると約束する。オレを恩人に恩の1つも返さない不義理な男にしてくれるなよ」

「ああ、そういうことなら1つ頼みがある」

「ん? なんだ。早速か。いいぞ、言ってみろ。出来ることなら力になってやる」

「緋の目って知ってるか?」

 

 !? レ、レオリオさん……! この人は、本当に……!

 

「知っている。世界7大美色の1つ。クルタ族の瞳のことだな」

「それの情報が欲しい。ドミニクさんの持つコネクションで探すことは出来ないか?」

「……どうして緋の目の情報を欲しがる?」

「ダチの為だ」

 

 ドミニクさんの緋の目を欲しがる理由の追求に、レオリオさんは簡潔に、そして全てを籠めた一言で返した。

 ……やっぱりレオリオさんは素敵な女性と付き合えるだろう。だって、こんなにも素晴らしい人なんだから。

 

「……」

「……」

 

 レオリオさんの答えを聞いたドミニクさんがレオリオさんを凝視し続ける。

 レオリオさんはドミニクさんから視線を逸らすことなく見つめ返した。

 

「ダチの為に、か。……嘘じゃないようだな。真っ直ぐな目をしてやがる。いいだろう。深い事情は聞かないでおいてやる。緋の目に関してはオレの持つ情報網で出来る限り調べておこう」

「ありがたいぜドミニクさん!」

「ありがとうございますドミニクさん!」

「礼には及ばん。受けた恩を返すだけだ」

 

 そういうドミニクさんは優しく微笑んでいた。

 私は一生見ることが出来ないと思っていた顔……。きっと母さんが愛した表情なんだろう……。

 ……そろそろドミニクさんに“死者への往復葉書”の話をしよう。

 

「あの……ドミニクさんに渡したい物があります」

「……なんだ?」

 

 ……これを受け取ってくれるだろうか。それとも今さらこんなものを渡されても困るだろうか。怒られるかもしれない。怒鳴られるかもしれない。でも……。

 

「これです」

「……? 葉書か?」

「はい。……グリードアイランドというゲームを知っていますか?」

「聞いたことはある。世界で1番高額で危険なゲームだとな」

「これはそこで手に入れたアイテムです。念能力者が作った特殊な葉書……。これに……亡くなった人の名前を書いて手紙をしたためておくと、次の日には名前を書いた人から返事が返ってきます……」

「何だと!? ふざけて……っ! ……いや、ミシャのことでお前がふざけることはない、か」

 

 ……前に言ったことを、信じてくれてるんだ。それだけでも嬉しい。

 

「だが、そんな葉書を信じることは出来ん! 死んだ人間から返事が来るなど……! いくら念能力と言えどあるわけがない!」

「グリードアイランドのアイテムはどれも常識では計れない効果を持つ物ばかりでした。こうしてアイテムとして用意している以上、嘘はないはずです」

 

 私だって死者から返事が来るのはおかしいと思う。

 それでは死者に意識があってずっと世界を漂っているということになるからだ。

 もしかしたら死後の世界とはそういうものかもしれないけど。

 

 私はこの葉書が死者そのものではなく、人が死んだ時に残るオーラの残留思念か何かを読み取って、それが手紙の受け答えになっているのではないかと思っている。

 人が死んだ時に強い残滓を持っていると、その想いは死者の念となって後々にも強く残っていることがままある。母さんの念獣も、私を想う心から創り出されたものだ。

 でも、そんな形に残る程の想いじゃなくても、死んだ時には何らかの残留思念がオーラとなって漂っているのかもしれない。

 それをこの葉書が書いた人の思念を読み取り、書かれた名前の死者の残留思念を見つけ出してそこから返事が来るのではないか。そう考えた。

 それは死者本人ではないけれど、思念そのものは死者のものだ。だから返ってくる返事も死者が書いたものと同じ返事となるだろう。

 ……穴だらけの推測で何の確証もない考えだけど。

 

「……今さらこんなものを渡してどういうつもりだ? これで許してほしいとでも言う気か?」

「いいえ、私がドミニクさんに許されることはないでしょう。許されて良いわけがありません……。ですが、これを……この葉書を知った時に……ドミニクさんに渡したいと……そう、思ったんです」

 

 これが慰みになると思っていない。いや、僅かな慰みになるかもという期待がないと言えば嘘になる。

 これで逆に傷付くことになるかもしれない。手紙で会話出来たとしても、母さんは帰ってこないのだから。

 これで癒されるのかもしれない。母さんの言葉を見て、母さんと再び会話出来たら、もしかしたらドミニクさんの心は癒されるのかもしれない。

 私にも分からない。理由なんて幾らでも思いつくし、どれも本当じゃないかもしれない。

 

「…………ふん。くれるもんなら貰っといてやる」

「ありがとうございます……。……どうぞ」

 

 ドミニクさんは“死者への往復葉書”を受け取ってしげしげと眺めている。

 色んな想いが複雑に絡み合っているようだ。今のドミニクさんに何を言っても話は進まないだろう。

 

「では、私たちはこれで失礼させてもらいます」

「……ああ」

「……それじゃあなドミニクさん」

「ああ。……レオリオ、何時でも来てくれ。歓迎しよう」

「そりゃありがたい。……いつか、その言葉をアイシャに言えるようになるって信じてるぜ」

「……」

 

 ドミニクさんはレオリオさんの最後の言葉に何も答えることはなかった。

 否定も、肯定もだ。……悩んでいるんだろうか。色々と整理がつかないんだろう。

 母さん……お願い、ドミニクさんの力になってあげて。

 

 

 

「レオリオさん。少しだけ寄り道をしてもいいですか?」

「ああ。どこに行くんだ?」

「……母さんの所です。……そうだ、レオリオさんも来てくれませんか?」

「オレも? いいのか?」

「はい。母さんに紹介したいんです。私の初めての友達だって」

「……ああ、いいぜ」

 

 良かった。これで断られたらへこんでいただろう。

 

 レオリオさんを連れて母さんのお墓へやってくる。

 周りにあるアイリスの花畑はまだ花は咲いていないようだ。調べてみたけど花が咲くのは5月から6月くらいらしい。今度その季節に母さんに会いに行こう。そしたら満開のアイリスが迎えてくれるだろう。

 

 母さんのお墓の前まで行く。前に来た時と変わっていない、アイリスの花を形どった美しい彫刻が掘られた白い墓石。ドミニクさんが丁寧に手入れしているんだろう。目立つ汚れはどこにもなかった。母さん、愛されているね。

 

「久しぶり母さん。今日は私の友達を連れて来たよ」

「ど、どうも。レオリオっす。アイシャさんにはいつもお世話になっていますです」

 

 ふふ、レオリオさんったら、いつもと違うから何だか少し面白いな。

 

「レオリオさんは医者を目指しているの。世界中の恵まれない人たちを助けたいっていう、立派な志を持っている優しい人だよ。ド……と、父さんもレオリオさんが救ってくれたんだ。大怪我したけど、レオリオさんのおかげでもう全然平気だから大丈夫だよ」

「いやいや、将来のおと……お友達を救っただけっす、はい」

 

 え? レオリオさんってドミニクさんと将来友達になるって分かってたの?

 もしかして予知能力者か何かだろうか? いや、ただの比喩か何かかな?

 

「私はちょっと悲しいことがあったけど……うん、母さん的にはそれで良かったのかも……」

 

 うう、お、男に、男に戻れなかったのは辛い……。でも母さんは私が女の方が嬉しいんだろうな、きっと……。だったら今だけはそれで良かったと思おう。母さんが喜ぶなら私は女と、お、女として……!

 ……うう。まだそこまで言い切れない……。

 

「レオリオさんだけじゃないよ。他にもたくさんの素敵な友達がいるから。いつか皆を紹介出来るといいな」

 

 ゴンやキルアにクラピカにミルキ。皆私には勿体無いくらいの友達だ。母さんもきっと気に入ってくれるよ。

 

「……母さん。もしかしたら、父さんが母さんに手紙を送るかもしれない。そしたら父さんに優しくしてあげてね。父さんは母さんをずっと愛しているんだから」

 

 母さんのことだから、もしドミニクさんが私を捨てたことを手紙に書いてたらすっごい怒りそうだ。捨てられたのは私のせいなんだけど、それはそれ、これはこれとか言ってドミニクさんに怒った返事を書くような気がする。

 というか絶対怒る。だって念獣の母さんが父さんに対して怒っていたし……。

 

 ――私との愛の結晶であるアイシャちゃんを捨てるなんてね。ドミニクさんとは少しオハナシしなくちゃいけないようね――

 

 なんてこと言ってたな……。母さん、怒ると怖いからな……。

 

「ほ、本当にドミニクさんは悪くないからね! 優しくしてあげてね!」

 

 大事なことなのでもう一度言っておこう。

 

「父さんに母さんのお参りを許してもらえたから、何時でも来られるようになったんだ。だから、また来るね母さん。……行きましょうレオリオさん」

「……もういいのか?」

「ええ。付き合ってくれてありがとうございますレオリオさん」

「……アイシャってよ。オレ達と話す時は遠慮してたんだな」

「え? そう、ですか? ……そんなつもりはなかったんですけど」

「オレ達と話す時とお袋さんに話し掛ける時じゃ口調が全然違ってたぜ」

 

 そうなのかな? ……そうだな。あんまり意識してなかったけど、人と話す時は出来るだけ丁寧に話していたな。

 

「えっと、私の話し方って、変でしょうか?」

「いや変じゃないけどよ。さっきお袋さんに話しかけていた時みたいに話してくれた方がオレは嬉しいぜ。なんか今のを聞いたらよ、アイシャがいつも通りの話し方をすると何だか遠くにいるような気がするしな」

 

 そういうものなのか。私はそんなつもりはないんだけどな。

 でも私にそんなつもりはなくても、レオリオさんがどう受け取るかはレオリオさん次第だもんな。

 

「……そうですね。すぐに直せるか分かりませんが、頑張ってみたいと思います」

「はは、言ってるそばから固いぜ。まあ、無理しないでゆっくり慣れていけばいいさ」

 

 うう、すぐには慣れないな。でもこれって母さんの能力でこうなったんだよな。

 母さんの能力で植えつけられた“女の子は女の子らしくしなくちゃ駄目”っていうのは私の認識が強く影響されるから。

 極端な話、私が女の子の一人称を[オレ]だと認識していれば私は[オレ]という一人称になっていただろう。

 まあ言うなれば今の私の話し方が、私の思う女の子らしさということだろう。人と話す時は丁寧に話すというのもそれが原因だろう。

 母さんと話す時は母親にはこんな話し方でも大丈夫って思ってるんだろうな。

 

 ……あれ? つまり私に対して女の子はこうだって教え込んで、それで私の認識が変わったら私の行動も変わってくるってことか?

 

 ……お、恐ろしい事実に気付いてしまった! これはリィーナとビスケには話すわけにはいかん! 話すと最後、延々と女性らしさについて教育されてしまい、体はおろか心まで完全な女になってしまうかもしれん……!

 

「どうかしたのかアイシャ?」

「い、いえ、何でもないです! さあ、そろそろ帰りましょう!」

「お、おお」

 

 レオリオさんにも気付かれるレベルで動揺していたようだ……! これは誰にも話せないな。絶対に秘密にしなければ。また墓まで持っていく秘密が出来てしまった……。

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 あの娘が持ってきた葉書をじっと眺めてどれだけの時間が過ぎただろうか。

 死んだ人間と手紙の上だけとは言え、やり取りが出来るという葉書。

 眉唾物だ。そんな超常現象を信じられるわけがない。だが、超常現象を知っている身としては一概にそうは言い切れないのも事実。

 

 ……念能力。それを身に付けた者は超人、超能力者、仙人などと言われ常識では考えられない力を発揮することが出来る。

 オレの部下にも何人かいるし、オレ自身も何の因果か念能力に目覚めてしまった。まあ強制的にだったがな。

 世に一般的には知られていない念能力者だが、意外とその数は多い。オレが知ってるだけでも3桁近く存在する。文字通り知っている数でそれだ。知らない人間も合わせたら万は超えるだろう。

 それだけいるんだ。超人にもピンからキリまでいるに決まっている。残念ながらオレのところにいる奴はキリの方から数えた方が早いだろうがな。

 あの娘は……部下の話を聞く限りピン、つまりは念能力者の中でも常識外れのレベルらしい。幻影旅団相手に勝つってのはそういうことみたいだ。

 

 ……そんな奴がなお常識では計れないと言った効果を持つアイテム。つまりそれだけの力を持っているということだろう。

 なら、本当にこれでミシャと……! 手紙を通じて死んだミシャと話すことが出来るのか……!

 

 おっかなびっくりと筆を取り、葉書にミシャの名前を書く。

 そしてしばらく筆を持ったままじっとして……おもむろに懺悔を書き出した。

 

 生まれたばかりの娘を捨てたことを書いた。

 それを後悔したことを書いた。

 なのに再会した娘に辛く当たったことを書いた。

 その娘に命を助けられたのにまだ厳しく当たったことを書いた。

 そして後悔しても、どうしても娘を許せない自分の愚かさを書いた。

 

 最後には何を書いたのか分からなくなっていた。

 だがそれを確認することなく筆を置いた。

 

 ……何をしているんだろうなオレは。こんなことを書いても本当にミシャの返事が返ってくるわけがない。

 書いた葉書を机の中に入れる。まあいい。今の手紙はミシャへの懺悔だ。そう思うと何だか少しは気分が晴れた。あいつの持ってきた葉書も無駄ではなかったということだろう。

 

 

 

 ……もう朝か。結局眠れなかったな。昨日は色々あったからな。それも仕方ないだろう。

 今日の予定は特に何もなかったな。だったらいつも通り花畑の世話をしてゆっくりと休もう。

 

 そう考えている時、ふと昨日書いた葉書のことを思い出した。

 ……手紙を書いた次の日には返事が返ってくる……ふ、まさかな。

 そう思いつつも僅かな期待を込めて机の引き出しを開ける。そこには幾つかの書類と一緒に1枚の葉書が無造作に置かれていた。

 葉書はオレが置いた通りに雑多に置かれている。恐る恐る葉書を手に取る。葉書の表にはオレが書いたミシャの宛名が……。

 

「はぁ?」

 

 思わず妙な声が口から出た気がする。

 だが、それを気にしている場合ではなかった。

 

「あ、宛名が……」

 

 あ、宛名が変わっている!? オレは確かにミシャの名前を書いたはずだ! そんなことを忘れたり、間違えるほど耄碌はしていない! なのに……なのになんでオレの名前が宛名になっているんだ!?

 誰かにすり替えられた? そんなことはない! オレは寝てなかったんだぞ! そんなオレの隙を突いて気付かれないように部屋に入って机を開けて葉書をすり替える? 出来るわけがない!

 

 ……それにこの字、この、見覚えのある懐かしい字は……お、オレが間違えるわけがない! ミシャの、ミシャの字だ! まさか……本当にミシャからの返事が返って来たのか?

 

 オレは今なお信じられない気持ちでゆっくりと葉書を裏返す。これで、これでミシャからの返事じゃなかったらきっとオレは立ち直れないだろう。

 そう思いつつも、葉書の裏を見たいという気持ちはどんどん強まった。意を決して勢い良く裏返す!

 そしてそこに書いてあったのは――!

 

 ――私との愛の結晶である我が子を捨てるなんてね。ドミニクさんとは少しオハナシしなくちゃいけないようね――

 

「すいませんでした!!」

 

 最初のその一文を見て反射的にしたことは、東洋に伝わると言われている最上級の謝罪、DOGEZAだった。

 条件反射という奴だろう。ミシャに怒られた時を思い出す。……これは、まさか本当にミシャが書いたのか?

 

「ボス! どうしたんですか! ドアを開けますよ!?」

「な、何でもない! 少し寝ぼけていただけだ! 入ってくるな!」

「りょ、了解しました!」

 

 ふぅ。こんなところを部下に見られたらたまったもんじゃない。

 すぐにDOGEZAから体勢を直してもう一度文面を見直す。

 

 ――と、いきなり私が怒るのも筋違いね――

 ――だって、私はドミニクさんを置いて勝手に逝ってしまったんだから――

 ――ごめんなさい。辛かったでしょう? 私のせいで、貴方にも娘にも辛い想いをさせたのね――

 

 み、ミシャ……! 何を……何を言う! お前が悪いわけがない! そんなわけあるものか! 辛いのはお前の方だろう! オレと娘を残して逝ってしまったお前が1番辛いんだ!

 

 ――せめて私が死ぬ前に貴方に何かを言い遺せていたら良かったのに――

 ――そしたらきっとドミニクさんはこんなにも悩まなくても良かったはずだから――

 ――ごめんなさいドミニクさん――

 

 お前が謝ることは何1つない!

 謝るべきはオレだ……お前が命を懸けて産んだ子を捨ててしまった……!

 お前なら、例えどんなことがあっても見捨てなかっただろうに、オレはお前を失った悲しさと怒りに我を失って……!

 

 ――ドミニクさん。ドミニクさんは色々と悩んでいるみたいだけど――

 ――あの子を許せなくて悩んでいるのよね。それ自体は悲しいけど、嬉しくもあるわ――

 ――だって、それって私のことそれだけ愛してくれている証拠でしょ?――

 

 当たり前だ。オレが愛する女は生涯にただ1人、お前だけだ。他のどんな女だろうとオレの目にはどうでもよく見える。

 

 ――それに、私にドミニクさんの気持ちが理解出来るなんてことも言えないわ――

 ――だって私はドミニクさんじゃないもの。だから、許してあげてなんて勝手なこと言わないわ――

 

 ……言ってくれないのか。お前がそう言うなら、オレはきっとあいつを……。

 

 ――ドミニクさんのことだから私がそう言うとそうしちゃいそうだから言いません――

 ――自分で考えて、悩んで、それから結論を出しなさい――

 

 あ、はいすいません。

 ……か、考えが読まれている!

 流石はミシャ。オレなどでは到底かなわんな。

 

 ――でも、ずっと1人で悩んでいるのは辛いでしょうから愚痴なら聞くわ――

 ――あ、この不思議な手紙ってまだあるの? あるならもっと色々と聞きたいんだけど?――

 ――というか私が死んで何年経っているの? そもそも娘の名前は? 女の子なんだからやっぱりアイシャ?――

 ――次があるならそういうことも――

 

 ……文はそこで途切れているな。葉書の容量が足りなかったか。

 ふ、ふふ。安心しろ。この葉書は1000枚入りだ。まだ999枚残っている。

 また手紙を書くよ。今度は今回みたいな情けない手紙じゃない。もっと色んなことを書こう。

 1番最初に書くのはそうだな……。

 

 ――お前の娘は、アイシャは立派に育っているぞ――

 

 

 

 

 

 

 レオリオさんが無事センター試験に合格し、医大生となった。これでレオリオさんが医者になる為の第1歩を歩みだしたわけだ。でもこれから会う機会が少なくなると思うと寂しくなるな。

 

 まあいざとなったらレオリオさんの【瞬間飛行能力/ルーラ】で会えるけど。風間流本部道場にも目印を置いていったしね。何時でも来ようと思えば来られるわけだ。

 それでも一応はお別れになるから皆でお別れ会をした。楽しかったなぁ。皆でレオリオさんにプレゼントも贈ったけど、私だけレオリオさんからプレゼントを貰ってしまった。

 

 私だけ悪いと思ったけど……貰っておいてほしいと言われたから受け取った。

 人間関係を円滑にする幸運のお守りらしい。……ドミニクさんとの仲を考えて渡してくれたんだろう。……ずっと身に付けておこう。

 

 それはさておき、4月に入っても大型キメラアントの情報は出回っていない。

 もしかしたらこのまま何も起こらないのかもしれない。それが1番いい話だけど……。

 だが今起こらないからこの先ずっとそうだとは限らない。だから今は調べ続けるしかないだろう。

 ……それに、もう事件は始まっている可能性もある。情報が事件が起きる前に出回るわけがないのだから。

 

 代わりというわけではないが、嬉しい報せもあった。

 ゴレイヌさんが黒の書を持って来てくれたのだ。リィーナにグリードアイランドで約束していた報酬を受け取った時に私宛にリィーナが預かったようだ。

 どうやらゴレイヌさんが持っていた黒の書はリィーナが書いたものではなかったようだ。これで後1冊である。少しは気が楽になった。

 

 

 

「なあアイシャ、お前最近なにか悩みごとでもあるのか?」

「どうしたんですかキルア? 別に何も悩んでなんかいませんが?」

 

 5月が近付こうとしている中、キルアに出会い頭にそう問われた。

 キルアに勘付かれた? いや、顔には出していないはずだけど……。気を付けているようで張り詰めていたのかな?

 

「いや、最近前よりも修行の密度が濃いだろ? オレ達じゃないぜ、お前自身がだ」

 

 ……そうだな。ここ最近は今まで以上に修行に力を入れていた。

 不安なんだろう。ネテロでさえ貧者の薔薇という最悪の兵器を使わなければどうしようもなかった化け物を相手にしようと言うのだから。

 しかもその薔薇ですら殺しきれていなかったはず。私の記憶に残っている情報ではそうだった。

 

 ……勝てるか? いや、ネテロに出来なくて私に出来ることもある。内部を破壊しさえすれば生物なら致命傷を受けるはずだ。

 ネテロは強いが外部破壊の技が基本だからな。自身の攻撃力よりも勝る防御力を持つ敵を苦手とするだろう。以前の私との一戦がその証拠だ。

 逆に私は敵の防御力をある程度は無視出来る。浸透掌は内部破壊の極みだし、合気柔術には他にも単純な防御力だけでは防ぎきれない技が幾つもある。

 

 ……それでも勝てるかどうか分からないのがキメラアント。いや、その王だ。

 最もいい解決策は王が生まれる前にキメラアントの女王を倒すことだ。そうすれば他のキメラアント程度はどうとでもなるだろう。

 だが、最悪の事態というのは常に考えておかなければならない。王と直接対決する可能性も視野に入れておかねば。

 そう思うと修行に力も入ってしまう。そこをキルアに不審に思われたか。

 

「それはもう、修行に力も入りますよ。今度こそネテロをグウの音も出ないほどに倒さなきゃいけませんからね」

 

 ……また嘘を吐いている。こうして皆を騙すのは何度目だろうか。

リュウショウのこと。性転換の目的。ネテロとの関係。細かく上げるともっとあるだろう。

 ゴメンねキルア。この戦いが終わったら……そしたら皆に全部話すよ。

 あ、童貞卒業以外はね。

 

「それならいいけどよ……」

 

 キルアは鋭いからな。何か気付く前に事を終わらせたい。

 これは未来という不確定な情報を知っている私だけがすべきことだ。反則のような方法で得た不確定な情報で、今を精一杯生きる者達を巻き込むわけにはいかない。

 

 ……いや、言い訳だな。私はゴン達を巻き込みたくないだけだ。

 

 ゴン達は強い。その実力は既に1流どころと比べても遜色はないだろう。

 だがそれは基礎能力という点のみでの話だ。それはあまりに急激に強くなりすぎた弊害。そう、経験が足りないのだ。

 この1年近くという期間で言えば凄まじい経験を積んでいるが、それでも足りない。足りなさすぎる。

 

 念能力者の経験とは同じ念能力者とどれだけ戦ったかで変わってくる。

 修行だけでは積み重ねることが出来ない実戦の空気。それが彼らにはまだまだ欠けているのだ。

 

 そんな経験不足のゴン達を連れてどうにかなるレベルなら、ネテロが負けるわけがない。これはゴン達への侮辱になるだろう。私が彼らを連れて行きたくないのは、彼らを守りきる自信がないからだ。

 きっとゴン達には軽蔑されるかもしれない。だがそれでも……それでもゴン達が死んでしまうよりはいい。

 

 勝手だが、それでもいい。ただのエゴだ。ゴン達を巻き込まないのも、キメラアントを倒すのも。

 このエゴは貫き通させてもらう。悪く思うなよキメラアント。

 

 

 

 

 

 

 ……5月になってハンターサイトにある情報が上げられているのを発見した。

 

 “未確認の大型昆虫の足が発見される”

 

 それを見た私はすぐにその情報をクリックした。

 どうでもいい情報ならタダでも手に入るが、詳しい情報を得るとなるとお金が必要となってくる。だが高額を要求される代わりに精度の高い情報がいち早く手に入るのがハンターサイトだ。

 迷わずライセンスを専用のスロットに差し込み提示された金額を入金する。

 

 “ヨルビアン大陸南西の海岸にて謎の巨大昆虫の足が流れ着いているのが発見された”

 “巨大昆虫の本体は消息不明。既に死んでいるのか、それとも生きて何処かに流れ着いているのか”

 “発見された海岸付近では巨大昆虫の目撃例はない”

 “あの付近の海流は複雑に変化する為、発見された足と本体が別の海岸に流れ着いている可能性もある”

 “海流の関係から本体が流れ着いた可能性のある領域はバルサ諸島全域が含まれる”

 “巨大昆虫の目撃例がない現状、本体が生きていればミテネ連邦のNGLと東ゴルトー共和国に流れ着いた可能性が高いだろう。この2国なら情報が外に出ない”

 “現在複数組のハンターが調査に乗り出している”

 

 …………これだ。

 とうとう起きたか。ミテネ連邦、そしてNGL……。

 やっぱりNGLだったか。色々調べている内に記憶に引っかかるものを感じたからここだと大体当たりは付いていたが……。

 あらかじめNGL内に入れば……キメラアントの犠牲者が出る前に方を付けることが出来たかもしれないな……。

 ……いや、結果論だ。本当にNGLに女王が流れ着くという確信がなかった状況で先にNGLに入っていても時間を無駄にするだけだったかもしれない。

 それに、いくら武神と謳われていようと私は神様じゃない。全てを救うなんて不可能だ。

 

 ……こうしている今にもキメラアントによる被害は増えている。急がなければ。

 それだけではない。複数組のハンターが調査に乗り出しているとのことだが、彼らの実力は知らないが犠牲になる可能性が高い。

 

 しかもキメラアントは食べた生物の特徴を次の世代に引き継いでいく摂食交配という特殊な交配で次世代を増やしていくんだ。

 そのハンター達がキメラアントに捕食されたら、次世代のキメラアントは念能力のスペシャリストとして産まれてくる可能性が高い。そんなことを許すわけにはいかない。

 

 ……皆には謝らないといけないな。直接言うわけにもいかないから手紙を残そう。

 シオンには本当に申し訳ないことをするかもしれない。結婚式、間に合わないかもしれないな。でも行かなくちゃ。キメラアントは待ってはくれないんだから。

 

 ……ネテロには連絡して討伐隊を結成してもらおう。既に情報は世に出ている。私の知識のみの話ではなくなったのだ。

 それに私が王を産む前に女王を倒したとしても、残りのキメラアントを全て討伐することは難しい。うち漏らしがいればそこから被害が拡大するかもしれないからな。

 うち漏らしを討伐してもらう為にも少数精鋭で結成した討伐隊を連れてきてもらわねば。

 

 まあ、お前が着く頃には決着もつけておく。本来のお前の相手を取ってしまうけど、勘弁してくれよネテロ。

 

 

 




 次からキメラアント編に入ります。キメラアント編はもうずっとシリアス。キメラアント編でギャグは無理。初めから半端ないギャグシナリオじゃないと無理。

水霞様に描いていただいたリィーナのイラストです。オリキャラにまたも挿絵が入るとは……感無量です。


【挿絵表示】


こちらはpixivにも投稿されています。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=50334045







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