どうしてこうなった?   作:とんぱ
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後日談その2 ※

 昨日は幸せだった。

 念獣とはいえ私を命懸けで産んでくれた母さんに会え、その上父さんが私を娘と認めてくれた。私のような咎人がこんなに幸せでいいのだろうかと何度も思った。

 でも私がそういう態度を表情に出すと母さんが鋭く気付いてメッてされた。叱られただけですごく嬉しかった……。

 

 3人で一緒に食事をして、色んな話をした。

 私が流星街で念獣の母さんに育てられた時の話をすると、母さんはその母さんにちょっと嫉妬してた。

 

「小さい頃のアイシャちゃんも見たかったなー……」

 

 そう言ってちょっと拗ねてる母さんは可愛かった。

 あとは服についても色々言われちゃったな。私の服装はとても女性らしいとは言えたものじゃないから……。

 その内3人で買い物に行く約束もした。一応女性物の服は持ってるけど、全部風間流の道場にある部屋に置いてあるし、母さんや父さんに選んで欲しいし……。

 買い物に関して父さんは渋々そうだったけど……。でも多分そんなに嫌じゃないんだと思う。何となく父さんの内心が分かるようになってきた。

 

 そうして私と父さんと母さんは一緒のベッドに入って眠りについた。

 私を真ん中にして、少し話しながらゆっくり眠りにつく。

 ふと疑問に思ったけど念獣の母さんは眠れるのだろうか? 確認したら人間に出来ることは大抵出来るらしい。そういえば夕食も食べていたな。どうやって消化しているんだろう?

 

 そんな細かいことを気にしながら、私は幸せを噛み締めて眠った。

 明日がより良い日になると信じて……。

 

 

 

 信じて、たんだけど……。

 

 身体に違和感を感じた私は早朝の、まだ日が完全に昇る前に目が覚めた。

 昨日はあんなにも幸せで心地よかったはずなのに、今は何故だが気分が優れない……。

 気持ちが悪く、目眩や吐き気を感じる。下腹部には鈍痛が響いているようだ……。

 

 何だこれ? もしかしてメルエム戦での傷が開きでもしたのか?

 そう思って隣で寝ている母さんと父さんを起こさないようゆっくりと上半身を起こす。そのままこっそりとベッドから抜け出して、身体の調子を確かめてみる。

 

 …………分からない。

 傷らしい傷はない。内臓関係もそのはずだ。でもおかしい。オーラの巡りも普段と違う。

 う……駄目だ。ちょっと気分悪いからトイレを借りよう。

 

 

 

 ――少女■■中――

 

 

 

 ……私は、死ぬのか?

 ま、まさかあんなところからあんなに血が出るなんて……。

 もしかしたらメルエムとの戦いの傷が治療されきっていないのかもしれない……。

 医者が気付かないまま放置していた小さな傷が、今になって大事に至ったのでは……?

 

 どうしよう、どうしよう、どうしよう……せっかく父さんと母さんと一緒になれたのに……。

 昨日は死んでもいいと思っていたのに、今は死にたくないと思っている……。勝手だけど、このまま死ぬなんて嫌だ。父さんと母さんともっと一緒にいたいんだ。

 

 ……そうだ。レオリオさんに聞いてみよう。私も人間の体の構造には詳しいつもりだけど、医者との知識量の差は比べるまでもないだろう。医者の卵のレオリオさんなら私の症状も何か知っているかもしれない。

 今の時間に電話するのは迷惑だけど、背に腹は代えられない。ごめんねレオリオさん。

 

 切っておいた携帯の電源を入れる。すると大量の電話とメールが入っているのが分かった。

 ……どうやらゴン達からのようだ。私を心配して連絡してくれたみたいだ。申し訳ないけど、嬉しかった。

 

 いや、感慨に耽るのはあとだ。とにかく今はレオリオさんに連絡をしてみよう。

 

 prrrr……prrrr……。

 しばらく電話を掛けると慌てたような声が電話口から聞こえてきた。

 

『アイシャか! 今どこにいるんだ!? あんな書置きを残してまたいなくなって、どうしてたんだ! 皆心配しているんだぜ!』

「心配かけてすいませんレオリオさん。今は父さんのところにいます。その、実はレオリオさんに相談したいことがあるんです……」

 

 私を心配してくれているレオリオさんや他の皆には申し訳ない。

 けど、今は一刻も争うかもしれない。まずはレオリオさんに私の症状を話して何か心当たりがないか確認してみよう。

 

『相談したいこと?』

「ええ……じ、実は今日目が覚めたら目眩と吐き気がしまして……」

『目眩と吐き気? ……頭を強く打ったりとかは?』

「していません」

『嘔吐は?』

「吐き気はありますが、大丈夫です」

『他に何か自覚症状は?』

「ええ、その……血が」

『血? 何処からだ? 口からか? それとも縫合していた傷が開いたのか? もう癒着していたはずだけど……。落ち着いて説明してみてくれ』

 

 おお、流石はレオリオさん。医者の卵なだけはある。私が慌てないよう優しい声色で落ち着いて話しかけてくれている。

 私もそれに習って落ち着いて説明しよう。落ち着いて……どこから血が出たっけ? えっと…………。

 

「その……からです」

『はい?』

「で、ですから……い、いん……からです」

『悪いアイシャ。よく聞こえないぜ?』

「で、ですから……い、いん、ぶ……からです」

 

 うう、何だこの言いようのない恥ずかしさは……! 顔から火が出そうだ! 

 

『…………血が?』

「出たんです……」

『陰部から?』

「……は、はい」

『…………』

 

 沈黙が続く。うう、何か分かったんだろうか? そうも黙っていられると不安になるんだけど……。

 

『聞くがアイシャ、今までそこから血が出たことは?』

「ありません。初めてです……」

『……良し。今からそっちに行って患部に【掌仙術/ホイミ】をかけるからちょっと待ってグアァッ!?』

「れ、レオリオさん!?」

 

 何だ!? 襲撃か!? レオリオさんが突然叫び声を!?

 

『ぐは、やめ! 何を!?』

『何をじゃねーよ。一緒の部屋に泊まってりゃ話聞こえて当然だろうが!』

『断片的に聞いてもアイシャがどんな状態か分かるわ!』

『だというのに、アイシャが女性の知識に疎いのを良いことに自分の欲望を優先しようとはな』

 

 キルア、ミルキ、クラピカの声がうっすらと聞こえてくる。

 どうやら襲撃ではないようだ。皆で同じ部屋に泊まってるのか。ちょっと羨ましいな。

 それは置いといて。その3人にレオリオさんはフルボッコされてると。なんでさ?

 

『もしかしてアイシャってあの日なのかな?』

 

 あ、ゴンの声も聞こえる。あの日? あの日ってなんだろう?

 でも、どうやらゴン達は私の症状に覚えがあるようだ。医者でもないゴンですら知っている? 何なんだあの日って。

 

『そのようだ。しかし、レオリオに相談する辺り、アイシャも初めてなのかもしれん』

『多分そうだと思う。女の人があの日になったら匂いで分かるけど、今までアイシャからそういう匂いを嗅いだことないし』

『……そういうことは女性には話すなよゴン?』

『うん。ミトさんにも怒られたからわかってるよ……』

 

 女の人があの日になる? 女性なら私と同じ症状になるのか?

 あの日……目眩に吐き気……あそこから血が…………あ。

 まさか!

 

「せ、せい……!」

 

 あの日か! 女性特有の、あの日! なんで私が! って、私女じゃん! 今まで生理なんてきたことなかったからそんなのがあるなんてすっかり忘れていたよ!

 

 

※説明しよう! アイシャは女性であるという事実を認めたくないあまり、無意識の内に体内のバランスを操作していたのだ! それが月経という女性特有の生理現象を今まで妨げていたのである!

 

 

 でも今までそんなのなかったのに、どうしてこんな急に!

 それにこういうのってもっと早くに来るんじゃないのか!?

 私は学年で言うと中学2年生くらいだ。そんなに遅いものなのか?

 

 

※説明しよう! アイシャは昨日両親との語らいでようやく自身を女性として受け止めたのだ! それ故に今まで塞き止めていたホルモンバランスが働き出し、一気に女性の日に持っていったのである! まさに人体の神秘である!

 

 

 いやしかし……そうか、生理か。分かってみればどうということはなかったな。

 別段命に関わることでもないし。慌てて損した。ああ、ホッとした。

 ……いや待て。生理ってどうすればいいんだ? あんなに血が出てほっといてもいいのか? 分からない……。前世でも学んだことないし、私を育ててくれた母さんはまだそこまで教えてくれていなかった。

 

 うう、急に不安になってきた……。そうだ!

 母さんに聞けばいいんだ! 母さんなら色々とアドバイスをくれるだろう!

 そうと分かれば今は母さんと父さんのところに戻ろう。

 あっと、ゴン達にも私の現状を伝えておかなきゃね。

 

「もしもし、聞こえますか?」

『――もしもし? アイシャなの?』

「あ、ゴンですね。ええ、そうですよゴン。心配を掛けたようでごめんなさい。キルア達にもそう伝えてもらえますか?」

『うん。でもそれは自分でも言わなきゃ駄目だよ。それで、今何処にいるの?』

「ええ。必ず伝えます。今は父さんの屋敷にいます。レオリオさんに言えば場所は分かるはずです」

『またトラブルでもあったの?』

「いえ……父さんに、アナタ達に話した前世のことを話しただけです」

『そっか。大丈夫だった?』

「ええ……まだわだかまりはありますが……それでも受け入れてくれました」

 

 うん。受け入れてくれたんだ。それが何よりも嬉しい。

 昨日のことを思い出すだけで心が暖かくなり涙が出てきそうになる。

 

『良かったねアイシャ……。でも、勝手に出て行くなんてひどいよ! キメラアントの時みたいにまた何かあったのかって心配したんだからね!』

 

 うう、そうだよね。キメラアントの時も皆に黙って出て行って、また同じことをしたら心配もするし怒りもするよね。

 

「本当にごめんねゴン。次は勝手なことしないから」

『約束だよ?』

「ええ。約束です」

 

 ゴンとの約束を経て電話を終える。

 次は絶対に勝手に出て行かない。この約束は絶対に守ろう。

 

 良し! とにかく今は母さんに助けを求めよう! ……うう、気持ち悪いの治る薬とかないかな?

 

 

 

 

 

 

 初の家族買い物お出かけが生理用品購入になった件について。

 いや、まあ他にも色々と買ったけどね、うん。

 

 護衛もつけずに3人の家族水入らずでの買い物は楽しかった。

 まあ護衛は私がこなすけどね。誰であろうと2人を傷つけようとするなら絶対に許さん。全力で相手してやるぞ。

 

 問題は父さんと母さんが5m以上離れられないことだな……。

 生理用品は当然女性だけが必要としているもので、必然的に女性物ばかり置かれるコーナーにあった。

 だから父さんも母さんと私に付き合ってその中まで入らなくちゃいけなかったのだ……。すごく、不機嫌でした。ごめんなさい。まあしばらくしたら母さんが宥めて機嫌を直してくれたけど。

 

 その後は服を見たり、父さんのスーツに付ける小物を母さんと2人で選んでプレゼントしたり、レストランでご飯を食べたりと、楽しい時間を過ごせたな。

 こんなに幸せでいいのだろうかと思う時があるけど、きっといいのだろう。幸せになってと、私を育ててくれた母さんにも言われたんだから。

 

 そんな幸せな日を過ごしていると、ゴン達からたくさんのメールが届いた。

 色々書いてあったけど、要約すると明日には皆がこの家に到着する予定のようだ。

 ちょうどいい。皆を父さんと母さんに紹介したかったんだ。レオリオさんは父さんとは会えたけど、母さんとは初めてだし。

 取り敢えず皆が来ることを父さんと母さんに知らせよう。

 

 そうして私室を出て父さんと母さんの部屋へと移動する。

 この家に私用の部屋が出来たのは何だか不思議な感覚がする。まだ慣れないけど、嬉しいな。

 父さんと母さんは同じ部屋なんだよな。母さんは父さんと離れられないから当然だけど。今までの分も含めて愛を深め合ってほしい。

 

 部屋の近くに来ると護衛の人が立っているのを発見する。

 

「お疲れ様です」

「あ、お嬢様。ボスに御用でしょうか?」

 

 このお嬢様という呼ばれ方はちょっと慣れないんだよな。今までそんなお高い存在になったことないし……。

 ……ん? リュウショウの時の方がある意味お高かったのかも? まあいいや。

 

「はい。父さんは中にいますか?」

「ええ。少々お待ちください。ボス、お嬢様が来られましたが……」

『入ってかまわん』

 

 父さんの声が聞こえて、護衛の人は扉の前から離れた。お疲れ様です。これからもよろしくお願いしますね。

 

「失礼します」

 

 そう言って中に入ると、そこには練を維持して汗をかいている父さんと、それを微笑みながら見ている母さんがいた。

 修行中だったか。父さんは母さんを“死者の往復葉書”を使用せずとも具現化出来るように修行をするようになったんだったな。

 何せ“死者の往復葉書”の枚数は1000枚。今までにも使用したから残りは900枚を切っているだろう。あと3年もしない内に母さんは具現化出来なくなってしまうのだ。

 それは私も嫌なので、父さんが私に頼んだ修行は快く受けた。

 

 取り敢えずはある程度のオーラを持ってもらうようにしている。

 戦闘で必要な修行はするつもりはなく、あくまで母さんの具現化に関する修行だが、それでもオーラが多いと出来ることは多くなる。

 逆に言えばオーラが少なくては出来ないことが増えるということなのだ。

 

「お疲れ父さん。調子はどう?」

「う、む。ふぅ、ふぅ、まだ、練の持続時間は、30分も届かんな……」

「それは仕方ないよ。10分延ばすだけでも1ヵ月はかかると言われてるから」

 

 父さん焦ってるな。残りの期限が決まっているから当然か。……ビスケ雇おうかな?

 

「はいあなた」

「ああ」

 

 母さんが渡したタオルで汗をふく父さん。

 水差しから入れた水を飲んで、一息ついた父さんが再び私に向き直る。

 

「それで、どうした? 何か用があるようだが?」

「うん。明日だけど、レオリオさんを含む私の友達がここに来るって言ってるんだけど、家に上げてもいいですか?」

 

 急な訪問だから無理かもしれない。父さんはマフィアだからな。簡単に家に人を上げることもないだろうし。

 

「レオリオか! いいぞ。他の友達とやらもレオリオのダチなんだろう? なら問題はない」

 

 おお! 明らかに機嫌が良くなった! レオリオさん本当に父さんに気に入られてるな。羨ましい……。

 

「あら。アイシャちゃんのお友達に会えるのね! 楽しみねぇ」

「うん。皆良い人達なんだ。私の最高の友達だよ」

 

 命を顧みず私を助けに来てくれた。損得を抜きにして想い合える本当の友達だ。

一緒に笑って、遊んで、時に喧嘩して、また笑って。一緒にいて気が置けない最高の友達。

 かつての世界の私には、ここまでの友達はいなかっただろうと思える。だって、昔の友達のことは忘れたけど、ゴン達のことは何百年経っても忘れそうにないんだから。

 

 だから父さんと母さんも気に入ってくれると嬉しいな。

 

 

 

 

 

 

 今日はゴン達がこの家に来る日だ。あと少しで来る予定なので、リビングで父さんと母さんと一緒にリビングで待っている。

 この時の為に母さんにおめかしをされてしまった。女として生きると決めたからいいんだけど、まだちょっと恥ずかしい。

 女性物の服は着せられてきたけど、髪留めを付けるのは初めてだし……。似合ってるかな? 母さんは可愛いと言ってくれたけど。

 ゴン達に馬鹿にされないか不安である。

 

 

 

 そうして内心ドキドキしていると、黒服の人がゴン達の来訪を告げてくれた。うう、ドキドキが膨らんできた。

 

「入れ」

 

 ドアからノックがなり、ドミニクさんが入室の許可を出す。

 黒服さんがドアを開けると、そこからゴン達がぞろぞろと中に入ってきた。

 

『失礼します』

 

 お、礼儀正しい。クラピカに指導でもされたのだろうか。全員綺麗なお辞儀をした。

 ん? リィーナやビスケがいないな。てっきり一緒に来てるものかと思っていたけど。ビスケはともかく、リィーナなら絶対に追いかけてくると思ってたのに。少しは師離れ出来たのかな?

 

「良く来たレオリオ。そしてその友たちよ。オレがアイシャの父ドミニクだ。よろしくな」

「初めまして、クラピカと言います。娘さんにはいつも世話になっています」

「ゴンです」

「キルアだ……です」

「ミルキです」

「久しぶりだなドミニクさん。元気そうで何よりだぜ」

 

 一通り挨拶が終わって、ゴン達が私と母さんに視線を向けてくる。

 ……若干レオリオさんとミルキの息が荒いのは気のせいだと思いたい。

 

「それと紹介しよう。オレの妻のミシャだ」

「皆さん。いつもアイシャがお世話になっています。これからも娘をよろしくお願いしますね」

 

 あ、皆呆然としてるな。まあ当然だよね。母さんは死んでるって私が言ってたし。

 

「疑問や積もる話もあるだろう。オレ達がいると話も弾まんだろうから、少し席を外しておこう」

「えー、色々とアイシャちゃんのこと聞きたかったんだけどなぁ……」

「後でも出来るだろう。ほら行くぞ」

「はーい。それじゃ皆さんまた後でね」

「そうそうレオリオ。これを渡しておこう。後で見るといい」

 

 そう言って父さんはレオリオさんに1枚の紙を渡してから母さんと一緒に席を外した。色々と気を利かせてくれたんだ。ありがとう父さん。

 

 

 

 改めて、リビングにはいつものメンバーが集まったので気兼ねなく会話が始まった。取り敢えず第一声は私の謝罪からだ。

 

「みんなごめんね。また勝手に黙って抜け出したりして……」

『全くだ』

 

 うう、総突っ込みを受けてしまった……。でも私が悪いから仕方ない。

 

「ドミニクさんには許されたんだな……」

「レオリオさん……うん、まだ蟠りがないわけじゃないけど……受け入れてくれたんだ」

「そっか。良かったなアイシャ」

「うん。ありがとうレオリオさん」

 

 レオリオさんはずっと私と父さんのことを気に掛けてくれてたからな。

 本当にありがたいことだ。あの時もらったお守りって本当にご利益があったのかもしれないな。

 

「あ、そうだお守り……」

「ああそうだった。全く、オレ達が追って来れないようにお守りまで念入りに置いてくなんてよ。ほらよ」

 

 レオリオさんが懐から出して渡してくれたのはあのお守りだった。

 わざわざ持って来てくれたのか。良かった。置いてきたけど捨てるつもりはなかったんだ。

 

「ありがとうございますレオリオさん。もう手放しませんから」

「そうしてくれるとありがたいぜ。これで何時でもアイシャのところに行けるしな」

「ふふ、そうですね」

 

 【高速飛行能力/ルーラ】の能力があれば皆がどれだけ離れていてもすぐに会えるしね。本当に良い能力だよ。

 

「なんだか距離近くなってないかこいつら……?」

「抜け駆けしやがって……後で覚えてろよレオリオ」

 

 落ち着け。マジで殺気が漏れてるぞ2人とも。庭にいる犬が怯えてるのが分かる。どうしてそんなに殺気だってるのやら。

 

「この馬鹿2人は置いておいてだ。アイシャ、話を聞いた限りでは確かお前の母親は亡くなっていたはずだが?」

「そうだったね。お父さん再婚したの?」

 

 殺気だってるキルアとミルキを無視して疑問を聞いてくるクラピカとゴン。

 レオリオさんもそれは気になっているだろう。何せ母さんのお墓の前で挨拶したしね。

 

「そうですね。少し長くなりますが説明します」

 

 

 

 ――少女説明中――

 

 

 

「――というわけなんですよ」

『親父さんすげーよ』

 

 うん。それは私もそう思う。普通は死者の具現化とか考えないし、考えてもまず出来ないと思うだろうしね。

 

「まさか死者の具現化とはな……」

「うーん。念って奥が深いね」

「いやマジで尊敬する。具現化か……」

「何考えてんだくそ兄貴」

 

 皆色々と思うところがあるみたいだな。流石に具現化能力で死者を具現化するとは思ってもいなかったようだ。

 私だってそんなの考えたことがない。今まで聞いたことないしね。“死者の往復葉書”が有ったからとはいえ、正直脱帽した思いだ。

 おかげで母さんと父さんと一緒に暮らすことが出来るようになれたから万々歳だけどね。

 

「そういうわけで、しばらくはここで生活をしたいと思います」

「そうだな。家族仲良く暮らすのが一番だ。良かったじゃないかアイシャ」

「うん。会えなくなるわけじゃないしね。また風間流道場にも来るんでしょ?」

「ええ。走ればすぐの距離ですしね」

 

 歩けば数時間は掛かるが、私なら全力で走れば数分も掛からないだろう。

 まあそこまですれば確実に変な噂が流れるからしないけど。

 そうだ。私も気になることがあるんだった。

 

「そういえばリィーナとビスケはどうしたのですか? てっきり一緒に来てるものと思ったのですが」

 

 リィーナが私関係でこの5人に遅れを取るなんて中々考えられないことなんだけど。

 

「あー。リィーナさんにもアイシャがどこにいるか教えたんだけどな」

「立場が立場だからな。マフィアのドンの家に来るわけにはいかなかったそうだ」

「ビスケはリィーナさんに付き合って一緒に待ってるよ」

「なのでアイシャから連絡を取ってやってくれ。彼女も心配していたぞ」

 

 あー、なるほど。

 確かにロックベルト財閥の会長が白昼堂々とマフィアの家に入ったら大事だわな。

 スキャンダルなんてもんじゃないだろう。大抵は握りつぶせるだろうけど、火種はわざわざ作る必要もないか。

 

 後で確認したら大量のメールの中にリィーナからの謝りのメールも入っていた。

 マジでごめん。大量すぎて全部確認出来ていなかったんだ。後で何か埋め合わせを考えておこう。

 

「そういえばレオリオ。さっきアイシャの親父さんから貰った紙はなんなんだ?」

「そういやそうだな。ちょっと見てみるか」

 

 確かに気になるな。一体何の紙なんだろうか?

 

「……これは。なるほどな。ありがたいぜドミニクさん」

「なんだったのレオリオ?」

「ああ。オレじゃなくてクラピカに必要なもんだな」

「私に?」

 

 そう言ってレオリオさんがクラピカに紙を渡す。

 クラピカに必要な紙。そうか。あれのことか。父さん調べてくれてたんだな。

 

「……これは! レオリオどうしてこれをお前が!」

「何なんだよ一体?」

「どうしたんだクラピカ?」

 

 クラピカの急変に皆が驚く。冷静沈着なクラピカが驚くくらいだ。余程のことがあったと思うだろう。そしてそれはクラピカに取っては本当に余程のことなんだ。

 その紙にはきっと――

 

「この紙には……幾つかの緋の目の在り処が書かれている……」

『!!』

 

 そう、あの時。レオリオさんが父さんに頼んだこと。

 治療の代価に求めたのが、緋の目の情報だった。あれから3ヵ月は経った。それまでに調べてくれた情報が書かれているのだろう。

 

「どうしてこれをレオリオが……?」

 

 クラピカのその当然の疑問には、恥ずかしそうにそっぽを向いているレオリオさんに代わって私が答えた。

 

「レオリオさんが父さんの治療の代価に頼んだのが、緋の目の在り処に関する情報だったんですよ」

「べ、別に頼みたい物が他になかっただけだしな」

 

 私の周りにはツンデレの男が多い気がする。

 

「レオリオ、お前……ありがとう」

「へっ。患者でもねー男から礼言われても嬉しくないんだよ」

「なんなら“ホルモンクッキー”を食べてから礼を言ってもいいぞ? 今ならそれくらいはしてやる」

『“ホルモンクッキー”の話は止めてくれ……!』

 

 私とキルアの魂の叫びがハモった。

 

 

 

 その後は父さんと母さんも合流して色々と話をした。

 正直私の話題ばかりになって恥ずかしかったけど……。

 今までどんなことをしたとか母さんが色々聞いて、父さんも楽しそうに笑って……。

 まあ恥ずかしいけど、2人が笑ってるならいいか。

 

 宴もたけなわ。楽しく盛り上がっていたお話だが、時間も大分経って夕暮れが近づいてきた。

 

「もうこんな時間か。お前たち、この後予定はあるのか?」

 

 父さんのそんな言葉に、レオリオさんが周りを見渡して皆が首を振ったところで全員を代表して答えた。

 

「いや? 特にないな」

「そうか。なら夕食を食べていくといい」

「あら、それなら今日は奮発しなきゃいけないわね。少し面倒かもしれないけど、付き合ってねドミニクさん」

 

 ああ、母さんがご飯を作るなら父さんが近くにいないといけないしね。5mって結構面倒な制約だな。何とか伸ばせないものか。

 

「いいのドミニクさん?」

「ガキが遠慮するな。何だったら今日は泊まっていくといい。自分の家だと思って寛いでいいぞ」

 

 父さんはゴンやキルアに何だか優しい気がする。子どもに男の子がいればって考えているのかもしれない。

 ……ちょっぴり嫉妬である。

 

『お世話になりますお養父さん』

「殺すぞ?」

 

 レオリオさんとミルキは何を言ってるのやら。

 父さんもそんな冗談を真に受けないでよ。銃は構えないでしまいましょうね。ちょっと、何で銃をオーラが覆ってるの? まだ周教えてないよ?

 

「おいアイシャ、飯出来るまでゲームしようぜゲーム」

 

 なんで私のジョイステを持ってるキルア? しかもすでにTVに接続済みとか。お前はちょっと寛ぎすぎだと思うよ?

 

「おま、これドカ○ンじゃねーか!」

 

 おお、流石ミルキ。ドカ○ンを知っていたか。って違う違う! 何てものをセットしたんだキルア!

 

「さあ、無情なるゲームの始まりだぜ?」

「いいだろう。だが、この私を倒せるかな?」

「……オレは止めとくよ。何だか嫌な予感がするんだ」

「私も止めておきます。眺めてるだけでも楽しいですしね」

「ゲームとあらばオレの出番だろ。あと1人出来るからレオリオもやろうぜ」

「おお、いいぜ。面白いのかこれ?」

 

 地獄の友情破壊ゲームです。これが終わった時に皆さんの友情が残っていることを祈っております。

 

「ハウスルールはどうする?」

「何でも有りに決まってるだろクラピカ」

「お、いいね。後悔すんなよキル」

「そっちこそな」

「ははは。ゲーム1つで大げさだなお前ら」

 

 ――この後、すぐにこの言葉を撤回したレオリオであった。その後の泥沼な争いは言うまでもない――




ハトの照り焼き様から頂いたイラストです。いつもありがとうございます。

【挿絵表示】







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