どうしてこうなった?   作:とんぱ

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外伝2

「はっ、はっ、はっ!」

 

 夜のヨークシンの一角を、1人の女性が走っていた。

 人気がほとんどないビルの路地裏を息を切らせながら走るその女性の表情は必死そのものだ。

 まるで足を止めたらそこで死んでしまうかのような、そんな必死さを見せて女性は走る。

 

 街明かりを目印に人気がある方へと走っている。あの角を曲がればもう少しのはずだ。

 そう思って走るが、路地裏の出口には1人の男が立っていた。

 それを見て顔をしかめながら、しかしすぐに方向を切り替えて別の道へと走る。

 

 まただ。女性はそう思う。逃げても逃げてもこの繰り返し。もう少しで明るい場所へと、安全な場所へと辿りつけるというのに、その直前で防がれてしまう。

 遊ばれている。自分を絶望させるためにわざと泳がされているんだ。きっと奴らがその気になればすぐに捕まえることなど出来るのだろう。

 絶望が女性を包むが、だからと言って諦めるわけにはいかない。諦めたらそこで終わってしまうからだ。……彼女の人生が。

 

 

 

 女性の名前はシャーロット。フリーのジャーナリストをして生計を立てている女性だ。主な活動はヨルビアン大陸で、今はヨークシンで活動中であった。

 彼女が狙っていたスクープは去年の9月1日、つまりは1999年9月のドリームオークション開催日に起こった大事件についてだ。

 2つの大型ビルが倒壊し、多くの死人が出たはずの大事件。だが、そんな大事件にも関わらずその詳細はあまり一般には知らされていなかった。

 

 それもそのはず。事件はドリームオークションの裏、マフィア主催のアンダーグラウンドオークションが発端であったからだ。

 そしてマフィアとヨークシン市長は結託していた為、当たり障りのない内容へと事件を書き換えもみ消していたのだ。

 ちなみに警察署長は市長の子飼いのようなものだ。マフィアと市長と警察がグルなのだ。もみ消しも容易だっただろう。

 

 シャーロットはこの事件を知り、調べていく内にその不自然さに気付いたのだ。明らかに何らかの手が入っているのを。

 今までにもその道の人間にはマフィアとヨークシン市長の繋がりは噂されていた。だが、それが明るみになったことはない。

 もし自分がこの噂をすっぱ抜き、記事にすることが出来たなら……。そう思うと興奮が止まないシャーロット。そこには失敗すればどうなるかという考えはなかった。

 

 彼女は優秀だった。少し考えが足らず勢いで行動を決めることはあるが、それでもいくつものスクープを今までに上げている。

 その証拠というべきか、今回も上手く行っていた。独自の情報網を使い、市長の周囲を調べ、根気強く粘ることで、マフィアと市長が一緒に食事をしている光景を写真に収めることが出来たのだから。

 そのマフィアは一般にもマフィアと知られている男だった。市長とマフィア。明らかに混ざってはいけない者同士だ。それが一緒に食事をしている光景は十分にスクープになるだろう。

 

 もちろんだが市長とマフィアが関わっているなど公になって良いわけがない。つまりこの会食も厳重に警戒して誰にも見られないように配慮されている。

 市長の息が掛かった信頼出来るホテルのレストランを貸し切り、周囲にも多くの黒服が警戒しており、ホテルに入るのも時間を分けている念の入れようだ。この警戒を超えて写真を撮るなどまず出来ないだろう。

 では、なぜシャーロットはこの光景を撮ることが出来たのか。窓もなく遠距離から撮影することも出来ない。入り口は黒服に守られている。そんな密室の写真をどうやって撮ったのか?

 

 それはシャーロットが市長とマフィアの会食が始まるよりずっと前に、レストランの天井にあるダクトに隠れ潜んでいたからだ。

 彼女は独自の情報網と執念で、本日市長が誰かと食事をすることを突き止めたのだ。そして市長に関して調べている内に市長が良く貸し切りして利用するレストランにも気付いていた。

 そこから彼女は勘で動いていた。確実にそのレストランで食事をすると分かってはいなかったが、彼女の勘がここで何かがあると囁いたのだ。

 そしてシャーロットはホテルに忍び込んでダクトへ入り込み、レストランの天井裏へ隠れ潜んだ。ちなみにこの時シャーロットは天然で絶を使用していた。一念が生み出した驚異である。

 

 そうして勘に従い特ダネをゲットしたシャーロットであったが、その勘は特ダネ以外、つまりは自らの危険に関しては働かなかったようだ。

 

 

 

「失礼します」

「どうした? 私は今大事な話をしているんだぞ?」

 

 シャーロットが決定的瞬間を撮影した直後。シャーロットがその場からすぐに離れようとした瞬間に、ドアの前に立っていた黒服の1人が室内に入ってきた。

マフィアのボスが誰も中に入るなと命令していたというのに入室してくる。つまり相応の何かがあったということだ。

 市長もボスも怪訝な表情でその黒服を眺める。そして黒服は入室した理由を答えた。

 

「いえ、ネズミがいたものでして、ね!」

 

 その言葉を発した瞬間に、天井裏のシャーロットは慌てて逃げようとし、それよりも早くに黒服が念弾を天井に放出した。

 

「きゃああっ!?」

 

 天井が弾ける大きな音と煙と共に、シャーロットがその場に落ちてきた。

 シャーロットは念能力の欠片も知らない一般人だ。何が起こったか理解出来ないままに、地面に落ちた衝撃で痛む体をさすっている。

 

 ここまでは完璧な絶にて気配を消していたシャーロットだったが、特ダネを手にした喜びのあまりに気配が漏れてしまったのだ。それをこの黒服に察知されてしまったのである。

 

「この女……!」

「知っているのか?」

「私の周りを嗅ぎ回っていたジャーナリストです。まさかこんな所まで!」

「やっば……」

 

 己の置かれた状況を理解し、シャーロットはすぐさま踵を返して部屋から逃げ出した。一般人にしては早いその動きに、部屋の外で待機していた数人の黒服は一瞬呆気に取られてしまい捕まえるタイミングを逸してしまったようだ。

 

「何をしているカルロ! 早くあの女狐を捕まえろ! 写真でも撮られていたら面倒なことになるぞ!」

 

 シャーロットを見つけた黒服――カルロ――に怒鳴って命令を下すボス。怒りも当然だ。カルロはシャーロットが逃げるのを黙って見ていたのだから。

 カルロはボスの構成員でも最強の念能力者だ。そのカルロならあのような一般人程度造作もなく捕まえられたはずだ。だというのに一体どういうつもりなのか?

 

「ご安心ください。この通り、あの女が持っていたカメラや録音機はすでに奪ってますぜ」

 

 そう言ってカルロは後ろ手にしていた両手を前に出す。その手にはカルロの言った通りの機器があった。

 あの時、シャーロットが天井から落ちてきて状況を理解する数瞬の間に奪い取っていたのだ。

 

「おお……」

 

 自分の地位を脅かす証拠がないことに安堵の溜め息を漏らす市長。

 だが、ボスはまだ怒りを顕わにしていた。

 

「だからと言ってあの女狐を逃がす気か?」

 

 その怒りが混ざった視線と言葉に対し、カルロは肩を竦めてこう答えた。

 

「まさか。ところでボス。狐狩りってお嫌いですかね?」

 

 その台詞を聞き、カルロの意図を理解してボスはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「嫌いじゃないな。朗報しか聞く気はないぞ?」

「もちろんですよ、ボス」

 

 そうして、ヨークシンの夜で狐狩りが始まった。

 

 

 

 

 

 

 ホテルから逃げ出したシャーロットは、ホテルの前にあったタクシーに乗り込み空港まで移動しようとしていた。

 だが、タクシーに一本の電話が入った後、何故かタクシーは横道にそれて行き、人気のない場所で無理矢理シャーロットを降車させてそのまま走り去って行ったのだ。ホテルが市長の息が掛かっているということは、そのホテルのタクシーも同様だった。

 

 呆然とするシャーロットだったが、すぐに気持ちを切り替えてその場から離れようとする。

 だが、いつの間にか目の前には1人の黒服が立ちはだかっていた。

 

「よう、いい夜っ!?」

 

 シャーロットはすぐさま懐に忍ばせてあった小型の護身銃を取り出し、躊躇せず撃った。シャーロットが黒服――カルロ――を認識してわずか2秒程度の出来事である。

 常識を超えた存在に取って2秒は長すぎる時間だが、一般人のはずのシャーロットには短すぎる時間だろう。

 そんな短い時間で躊躇うことなく自身を敵と認識して銃を撃つとは、流石の裏社会の猛者であるカルロも思ってもいなかった。

 

 倒れたカルロを見てやっちまったと僅かに後悔するシャーロットだったが、どうせ生きていても人様の役に立たない社会のゴミだとすぐに割り切った。相当図太いようだ。

 だが、人を殺してしまったという後悔も、敵を倒したという安堵も、すぐに霧散することになった。

 死んだはずのカルロがゆっくりと立ち上がったのである。

 

「やってくれるなこのアマ。大した度胸だぜ」

「ば、化け物!?」

 

 小型とは言え銃は銃だ。その殺傷能力は十分にある。心臓付近に2発、頭部に2発のコロラド撃ちをすればどれだけ殺傷能力が低くても致命傷になるだろう。

 例え胴体に防弾チョッキの類を着けていたとしても、頭部を守る物は何1つないのだから。強いて言うなら黒のサングラスくらいだろうか。

 だが、一流の念能力者であるカルロを殺すには威力不足にも程があったようだ。

 

「……出会い頭にいきなり銃をぶっ放す女に化け物呼ばわりされるのも癪だな」

 

 尤もである。結果的に見ればカルロはシャーロットを捕らえるもしくは殺す為に来たのであり、シャーロットがしたことは自己防衛とも言える。

 だが、流石に出会って喋る間もなく相手を撃つというのはない。しかもコロラド撃ちだ。殺す気満々である。

 状況が状況でなければ裏社会にスカウトしたくなる逸材かもしれなかった。

 

「殺すにゃ惜しい女だ」

「っ!?」

 

 その言葉を聞いて、この男が自分を殺しに来た追手と完全に理解する。

 銃も効かない化け物だ。女の自分が勝てるわけがない。理解したら判断は早かった。即断即決は彼女の長所である。……短所でもあったが。

 

 とにかく、勝てる相手ではないのだ。シャーロットは即座に踵を返して逃げ出した。

 だが、それはカルロの思惑通りの行動だったが。

 

 

 

「はっ、はっ、はっ!」

「おーっと、こっちは行き止まりだぜ?」

「くっ!」

 

 どこへ逃げようとも、どこまで行こうとも、行く先々には先回りした黒服の男たちがいた。

 カルロとは違うが、同じ黒服だ。こいつらも同じ化け物――実際は無能力者だが――だと勘違いしたシャーロットは黒服を見る度に方向転換して別の場所へと逃げた。

 だが、巧みに部下に連絡をして逃げ道を塞いでいるカルロの手腕により、シャーロットはどれだけ逃げても人気の有る場所へと辿り着くことは出来なかった。

 

「何処に行くのかなお嬢ちゃーん?」

 

 下卑た笑い声が後ろから響いてくる。捕まればどうなるか? それを容易に想像させるような声だ。

 そんな目に遭ってたまるか! その想いが限界のはずの肉体を無理矢理動かしていた。

 

 そんな必死なシャーロットを、黒服たちは確実に、しかしゆっくりと追い詰めていく。遊ばれているのは分かっている。だが、だからといって諦めるわけにはいかない。

 

「ひっ!?」

 

 シャーロットの周囲に何発かの銃弾が飛び交った。命を容易に奪うその音が自分に向けられたことを恐怖し足を竦め、当たらなかったことに安堵する。

 続けざまに数発の弾丸が地面や壁に当たる音が響く。だが当たってはいない。それどころかシャーロットとは掛け離れた位置に銃弾は着弾していた。

 どうやらこれも遊びのようだ。わざと当てないことで恐怖を煽っているのだろう。悔しさで歯噛みする想いだ。だが、立ち止まっていたら捕まってしまう。屈辱をバネにしてシャーロットは再び走り出す。

 

 だが……どれだけ必死になろうとも、所詮は一般人の域を出ない女性だ。

 常識を逸脱した念能力者の遊びには勝てるわけもなかった。

 

 

 

 逃げて逃げて。走って走って。どこにも逃げ道がなくなって、辿り付いたのは廃ビルの屋上だった。

 好んでこんな場所に逃げたわけではない。ここしか逃げる場所がないようにゆっくりと誘導されたのだ。

 周囲には同じくらいの高さのビルがあるが、今いるビルから飛び移るには遠すぎる距離があった。

 そしてビルの高さは30mを超えている。どんなに運が良くても落ちたら重傷は免れないだろう。運が良くてそれだ。悪ければ……確実に死ぬだろう。

 

 逃げ道はない。どう足掻いても絶望だ。もうどうしようもないその残酷な現実に、シャーロットは疲れ果てた体を屋上に張ってあったフェンスにもたれ掛けることしか出来なかった。

 

「お疲れさんっと。よく逃げたじゃないか。正直もっと早くにギブアップすると思ってたぜぇ?」

 

 その声にシャーロットがゆっくりと振り向くと、そこには屋上のドアを開けて入ってきたカルロとその部下の黒服たちがいた。

 シャーロットは意味がないと知りながらも、残り2発しかない護身銃を構えて必死に虚勢を張る。

 

「こ、来ないで! それ以上近づいたら撃つわよ!」

 

 その虚勢に男たちはニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる。当然だ。虚勢であると誰もが理解しているからだ。

 黒服はリーダーであるカルロの強さを知っている。あの程度の銃でどうにかなる存在ではないのだ。

 

「撃ってみろよ。上手く眼にでも当てられればそんな銃でもオレを倒せるかもしれないぜ?」

「う、うう……」

 

 撃つことは出来なかった。

 眼という小さな的を狙い撃つ技術などシャーロットにはないし、この残り2発の銃弾がなくなってしまえば本当に心の拠り所がなくなってしまうように感じたからだ。

 

「お前さんも馬鹿な真似をしたもんだ。人間はな、分ってやつを弁えなきゃならない。それを超えちまったら……。ま、これ以上言う必要はねぇか。どうせもうすぐ自分の体で理解するんだからなぁ?」

 

 カルロの言葉に続いて黒服たちが嗤い声を上げる。

 もうすぐ自分に降りかかる非情な運命を鮮明に理解し、シャーロットは震える体を抱きしめた。

 

 女性としての尊厳を嬲られてから殺されるなら、いっそのこと自殺した方がマシか。この銃で頭を撃てば痛みは一瞬だ。

 そんな風にシャーロットが諦めかけた時……この場に不釣合いな陽気な声が響いた。

 

「大変そうだね? 助けてあげようか?」

 

 誰もが動きを止めた。この場を支配しているマフィアと、嬲られるだけのか弱い女。それ以外の存在がこの場にいるとは誰も思わなかったのだ。

 中でもカルロの驚愕は一層際立っていた。この場所はシャーロットを追い込むために選んだ場所だ。その際に軽くだが下調べは済ませてある。逃げ場を失くす為の追い込み場所だ。調べずに逃げ道を残しては台無しなのだから当然だ。

 だというのに、しかもこのような人気のない場所に第三者がいて、それに自分が気付いていなかったのだ。一流を自負する自分がだ。

 

「何者だ!」

 

 誰よりも動揺したカルロだったが、動揺から立ち直るのも誰よりも早かった。

 声のした方向を向き、そこにいる第三者を確認する。

 カルロに続いてその場にいる第三者を除く誰もが同じ方向を見た。

 

 そして見た。給水タンクの上に立ち、雲の合間から照らされる月明かりを浴びて存在感を際立たせる……何故か股間を滾らせている1人のピエロを。

 

「通りすがりの、正義の味方さ♥ っ!?」

 

 シャーロットはすかさず撃った。反射的に銃を撃った。2発の銃弾を的確に頭部と男の急所に撃ち込んだ。変態ピエロ――当然ヒソカである――がガードしなかったら彼は第三の足を失っていただろう。

 

 カルロは銃弾を防いだヒソカの実力よりも、いきなり銃を撃ったシャーロットの反応に唖然とした。この状況であの反応。この女、一体どういう思考回路をしているのだろうか? そう、誰もが疑問に思った。

 

「あっと、その、ごめんね? つい……」

「……いい腕してるね? その道に知り合いがいるから紹介しようか? いい暗殺者になれそうだよ?」

 

 反射的に銃を撃ってあれだけ正確に人間の急所(+男の急所)を狙えるのは相当である。然るべき所で訓練を積めばそれなりの暗殺者になれるかもしれない。

 

「ところで、助けない方が良かったかな?」

 

 ヒソカとて善意だけで彼女に助けの手を差し伸べようとしたわけではないが、あの対応はあんまりである。

 さしものヒソカもげんなりしていた。

 

「ああ! 待って待って! 超助けてほしい! お願いこの通り!」

 

 この絶望の状況を一変してくれるかもしれない存在の不興を買ったことを後悔し、とにかく平謝りするシャーロット。

 ヒソカとしてももう助けるの止めようかなーと思いもしたが、自分の欲求を満たす為には人助けは必要不可欠なことなのだ。

 だから先ほどのことは無かったことと気持ちを切り替えた。

 

「まあいいよ、助けを求めるなら応じるのが正義の味方ってものさ♦」

「お前のようなヒーローがいたら他のヒーローの尊厳が傷つきそうなんだが?」

 

 全くである。何処の世に股間を膨らませて興奮しているピエロなヒーローがいるというのか。これがアニメで流れたら世の子どもはヒーローに絶望するだろう。

 

「まあそう言わないでくれないかい? 仕方ないじゃないか、だって……久しぶりの獲物なんだから、さぁ♣」

「っ!」

『ひっ!』

 

 ヒソカから突如として放たれた殺気にシャーロットはおろか、黒服たちも全員竦んでしまった。

 その殺気に対応出来たのはカルロくらいだ。そしてそれを見て、ヒソカは獲物の味を確かめるように舌なめずりをする。

 

「少しは楽しめるかな?」

 

 枷を持つ身としてはかつてのように思う存分暴れることは出来ないヒソカ。

 興奮を鎮める機会が極少数な今、カルロは上等な獲物と言えた。

 

「お、おい! この女がどうなってもいいのか!?」

 

 黒服の1人がシャーロットに向けて銃を構える。

 恐怖でその身は震えており銃身もブレまくりだ。とてもではないが弾を当てられるとは思えない。そしてその愚かで無駄な行為は男の寿命を縮めただけだった。

 

「この女を殺されはひゅっ!?」

 

 いつの間にか、銃を構えていた黒服の喉元にはトランプが突き刺さっていた。

 ただの変哲のないトランプだ。それが人の肉を裂き、骨まで断っている。

 あれもまた化け物だ。シャーロットは味方と思っていいのか分からないヒソカに恐怖する。

 

「お前たちは下がってろや! 邪魔にしかならねぇよ!」

 

 カルロのその言葉は別に部下を思ってのことではない。言葉通りの意味だ。

 この広いとは言えない空間で、これだけの足手まといがいてはまともに戦うことが出来ないのだ。

 

「そういうこと。キミたち程度なら、このトランプ1枚で十分♠」

 

 だがそんなカルロの危惧はすぐに解消された。

 いつの間にか給水タンクから降り立ったヒソカが、瞬く間にたった1枚のトランプで残る黒服たちの命を刈り取ったことで。

 

 屋上に死の臭いが充満する。

 屋外だというのに、その死臭は簡単には消えそうになかった。

 

「うわ……」

 

 仕事柄人の死体を見たことも幾度かあるシャーロットも流石に口元を押さえるほどの惨状だ。その惨状を生み出した当の本人、自称正義の味方はとてもスッキリそうな表情であったが。

 

「ほら、これで邪魔はいなくなったよ♣」

「そいつは……ありがたいねぇ!」

 

 牽制のつもりか、カルロは殺された部下をヒソカに向かって蹴り飛ばす。それをヒソカは避けることなく持っていたトランプで切り裂いた。

 トランプの長さで人を半分に切り裂くという理不尽な現象に、シャーロットの理解は飽和状態になっていた。

 

 だが、そこから廃ビルの屋上で起こった出来事はシャーロットを更に混乱へと導いた。

 

 シャーロットの目線で説明しよう。

 

 眼で追えない動きをする両人。激しい音だけが聞こえ、頻繁に周囲の物が壊れていく。素手でコンクリートが砕け、トランプで金網が切り裂ける。

 ようするに訳が分からない、である。いつからここはファンタジーや物語の世界に入ったのだろうか? 一般人であるシャーロットがそう思っても仕方ないだろう。

 

 そんなシャーロットを置いて、ヒソカとカルロの戦いは激化していく。

 

 

 

「中々やるじゃないか。大したものだよ♣」

「貴様こそ! このオレに付いて来れるとはな!」

 

 余裕そうにしているが、カルロは内心で焦っていた。これほどに接戦するとは思ってもいなかったのだ。

 カルロは自分に比肩するレベルの念能力者がそうはいないと思っていた。その自惚れも仕方ない。念能力者となって今まで彼は負けたことがないからだ。その自信に胡坐をかかず、日々の鍛錬も怠っていない。次代の陰獣に選ばれると周りから予想されていたし、去年の事件で陰獣が全滅したことから陰獣確定と言われている男だ。

 

 そんな自分にここまで接戦するこの男は何者なのか。

 

 ヒソカが高速で振るうトランプを避けながらそう考えるカルロ。

 たかがトランプと侮ることはカルロにはない。確かに紙で出来たトランプの耐久力などたかが知れている。

 だが、その紙も高速で振るえば人の肌を切るくらいは出来るのだ。しかもそのトランプには大量のオーラが乗せられて強化されている。

 念能力者は思い入れのある物体には普通の物体よりもオーラを乗せやすくなる。このトランプも例に漏れていないだろう。

 例え同じ念能力者と言えど、たかがトランプと侮っていては部下と同じ目に遭うだろうとカルロには分かりきっていた。

 

 とにかく、男の正体は置いてまずはこの難敵を倒すことを考えなければならない。

 念能力者の戦いで重要なことは、敵の能力を知ることだ。それには単純な身体能力や戦術もそうだが、やはり最重要なのは得意系統とその発だろう。

 それが分かれば戦闘は有利に働くことになる。ここまで接戦するほど戦闘力に差が無い戦闘ならば尚更だ。

 

 カルロは戦いながら注意深くヒソカの力を測っていく。

 

 トランプという物体にオーラを多く籠められていることから操作系か具現化系の可能性がある。その2つの系統は物体に強いオーラを籠められる傾向が多いからだ。

 だが身体能力自体は放出系の自分と変わらないほどだ。眼で見て分かる肉体を覆うオーラも互いに然程の差は無い。

 その上で身体能力が互角ということは、放出系である自分と変わらない強化率で肉体を強化しているということ。つまりこの敵は変化系か、自分と同じ放出系である可能性が高い。

 前述した通り、例え操作系や具現化系でなくても物体に強い想いがあればオーラも乗せやすくなることから、変化系か放出系でもトランプにこれほどのオーラを籠められておかしくはない。

 まだ確定ではないが、十中八九この2つのどちらかの系統だろうと予測する。

 

 ここまでヒソカはトランプを用いた接近戦で戦っている。

 放出系は文字通りオーラを放出することを得意としている。接近して戦うならば変化系の可能性が高い。

 だがカルロ自身放出系でありながらこうして接近戦を講じている。それは単純に自身が放出系と悟られないようにするためだ。

 同じことをヒソカがしないとは限らない。

 

 ――いや待て――

 

 そこでカルロは気付いた。

 この戦闘が始まる前、カルロの部下がシャーロットを人質にしようとした時にヒソカが投げたトランプ。

 あの時、トランプを覆っていたオーラはどうだった? 今トランプを覆っているオーラと比べてどうだった?

 確実に少なかった。見間違いではない。確かに少なかった。

 

 放出系ならば体から離れたオーラがあそこまで減少することはない。単に籠められたオーラが少なかったわけではない。この男がトランプを投げてから少なくなったのだ。ならばこの男の得意系統は変化系のはず!

 

 そう思い至って、カルロは内心で笑みを浮かべる。それは勝利を確信した笑みだ。

 カルロは変化系と自分の相性がいいと思っていた。変化系はオーラを何かしらの性質に変化させるのが得意な能力だ。そして変化系は放出系が得意ではない。それは総じて接近戦が得意になってくるということだ。

 そういうタイプの敵に対して、離れながら戦うことを得意とするカルロは苦戦したことすらない。たまに強化系まっしぐらな馬鹿がその肉体の強さを頼りにまっすぐ突っ込んで来て思わぬ苦戦を強いられたことはあるが、変化系だとそれもない。

 オーラをどのような性質に変化させようと、一定距離を保ちながら戦えばその変化したオーラも当てることも出来ずに意味なく終わるのだ。

 そう、カルロは変化系を格下に見ていた。

 

 しかも得意だろう接近戦でも自分相手に互角が精々な相手だ。自分が得意な遠距離戦に持ち込めば勝利は容易い。

 もはやここまで分かれば相手の能力など考えても意味が無い。どうせどのような能力だろうと、そう、例えオーラを炎や氷に変化させようと当たらなければ意味はないのだから。

 

 そう判断したカルロはヒソカの鋭い一撃を躱した後、牽制の蹴りを放ってヒソカを僅かに後退させ、その隙に大きく飛び上がり後方へと離れた。

 

「おや? もしかして逃げるのかい?」

「はっ! 冗談言いなさんなよ。どうしてオレが勝てる戦いで逃げなきゃならないんだ?」

 

 ヒソカの言葉に対して肩を竦めながらカルロは答える。

 そうだ。もはや眼前の敵は脅威にあらず。勝てる敵を相手に逃げる馬鹿はいないのだ。

 

「へぇ? 逃げるつもりがないのに離れるということは、キミは放出系かな?」

「それはお前の体で確かめるんだな。変化系の兄ちゃんよぉ!」

 

 互いの得意系統を言い当て、戦いは更に激化していくことになった。

 

「ほらほらほらほらほらぁ! 避けきれるかなぁ!」

 

 カルロが次々と念弾を放つ。1つ1つが球状の、野球のボール大の大きさの念弾だ。

 ヒソカがその念弾を躱すが、ヒソカを襲う念弾の数は減ることなく、それどころかどんどんと増えていっていた。

 それもそのはず、カルロが放った念弾はヒソカが避けた後にその角度を変えて再びヒソカへと迫っているのだ。

 避けても追尾してくる念弾。しかもその数は増え続けている。数に限界はあるだろうが、それより先にヒソカの回避に限界が来るだろう。

 

 避けるだけでは追いつかなくなり、ヒソカは念弾を破壊しようと試みる。

 後方から迫る念弾を肘で叩き壊そうとする。だが、オーラを籠めたその肘を食らったはずの念弾は破壊されることなく、まるでボールが弾むように遠くへ吹き飛び、そして再びヒソカへと向かっていった。

 

「これは……」

「無駄だ! オレの念弾はその程度では壊れることはない!」

 

 これがカルロの念能力であった。オーラをバレーやサッカーのボールのように弾力性のあるオーラに変化させてそれを球状にして放出する。

 変化系を混ぜているため威力は若干下がるが、それにより破壊されることなく攻撃し続けられるのだ。

 そしてこの能力には操作系も含まれていた。予め対象に目印を付けて置くことでその対象目掛けて襲い続けることが出来る。

 目印はヒソカと戦っている内に仕込んであった。触れさえすれば仕込める簡単な目印だ。その為に放出系でありながら接近戦を講じていたのだから。

 

 この能力は念弾を放ってから10分で目印の効果が切れるのが欠点だが、今まで5分と持った相手などいはしなかった。

 確かに1つ1つの念弾の威力は低いが、避けても避けても向かってくる無数の念弾を受け続けて耐え切れる者などいるわけがない。10分という効果時間はカルロには長すぎるものだった。

 

「はっははは! いつまで耐えられるかな!?」

 

 念弾を避け、打ち払い続けるヒソカに、遠距離から更に念弾を増やすカルロ。

 勝ちパターンに入ったことでどこまでヒソカが足掻けるか、楽しみに観察しているようだ。

 既に念弾の数は100近くまで増えていた。今はどうにか持っているが、限界が来れば圧倒的な数に押され、挽き肉になるのも時間の問題だろう。

 

「どうした? お前の能力を見せてみろよ! ま、見せる暇もないだろうけどな!」

 

 内心で勝利を確信しているカルロはヒソカを見下しつつ、屋上の隅で蹲っているシャーロットを見やる。

 頭を抱えながら小刻みに震えているようだ。無理もない、理解の範疇にない出来事が起きているのだ。

 しかも眼で見えない念弾が周囲を飛び交い屋上を跳ね回るせいで聞こえてくる破壊音もあるのだ。恐怖も一入だろう。

 そんなシャーロットを見ながら、カルロは彼女を甚振る時が来るのを楽しみにしながら舌なめずりをした。

 

 そして再びヒソカに注意を向けた時、そこでカルロは信じられない物を見た。

 

「な、何!?」

 

 合計100。カルロが同時に展開出来る最大数の念弾。四方八方飛び交い襲い来るそれだけの数の念弾を、ヒソカは一撃たりとも被弾することなくいたのだ。

 その全てを避け、払い続け、ただの一度もまともに当たってはいない。ここまで耐える者はいたが、それでも被弾無しというのは初めてのことだ。

 自分に同じことが出来るだろうか? いや出来はしない。だが、先ほどの戦いに置ける体術では自分と然程変わらないレベルのはず、だと言うのに何故?

 

 まさか、まさかまさかまさかまさか――

 

「ま、まさか、手加減していたのかっ!?」

 

 あの戦いは、あの接戦は、あの死闘は、手を抜いたことで出来上がった演劇だったというのか。

 その気付きたくなかった現実を知り、そんな馬鹿なと首を振るうが、未だ眼前で繰り広げられるヒソカの動きを見て否が応でも現実を直視させられる。

 既に能力を発動して8分が経つ。だというのにクリーンヒットの1つもないままだ。このまま行けば効果時間が切れるまでにヒソカに致命傷を与えるなど出来はしないだろう。

 

 ――逃げるか?――

 

 ここに来て自身の勝利を確信するほどカルロは愚かではなかった。

 あれは化け物だ。最初から勝ち目などなかったのだ。ただ遊ばれていただけだったのだ。

 自分が圧倒的弱者であるシャーロットで遊んだように、圧倒的強者であるあの化け物に遊ばれていたのだ。

 

 今ならば逃げることは出来る。化け物は100の念弾を対処するのに注力しているからだ。

 如何に化け物と言えど、あれだけの数の念弾を対処しながら自分の逃走を妨げることなど出来はしないだろう。

 

 そう思い、逃走を決断し、いざ離れようとしたところでその動きを止めるカルロ。

 逃げるのを止めたわけではない。ただ、逃げる前にやらなければならないことがあるのだ。

 

 そう、狐狩りという仕事が残っていたのだ。

 

 今なら殺せる。ヒソカを殺してからゆっくりと嬲ってから殺そうと思っていたので今まで生かしていたが、この状況に至ってそのような余裕などない。

 だが殺すだけなら簡単だ。ヒソカを攻撃している念弾の1つを自動操作から遠隔操作へと切り替え、シャーロットに飛ばすだけでいい。それだけで一般人の女など簡単に殺せるのだから。

 

 1つだけならばヒソカへの攻撃に然程の影響はないだろう。そして防ぐのに精一杯なヒソカではシャーロットへの攻撃を止めることなど出来るわけがない。

 そうして女狐を狩ったあとはすぐさま逃げ出せばいい。残り1分程で能力の効果時間が切れるが、逃げ切るにはわけない時間だ。

 

 シャーロットを痛めつけられなかったことを残念に思いつつ、カルロは念弾を1つだけ操作してシャーロットへと放った。

 屋上の隅で小さく蹲っているシャーロットは迫り来る念弾に気付けるわけもなく――

 

 ――シャーロットに触れる直前に、その念弾は切り裂かれ霧散した。

 

「何だとっ!?」

 

 そこにはいつの間にか、数多の念弾を対処しているはずのヒソカがトランプを振りかざして立っていた。

 

 ――馬鹿な!――

 

 あれだけの念弾の包囲網を一瞬で潜り抜けて弾力性に富み壊れにくいはずの念弾を破壊した。

 それはカルロには考えられない出来事だった。いや、確かに弾力だけでは打撃は防げど斬撃は防ぎきれないだろう。だが問題はそこではない。あれだけの数の念弾を一瞬で振り切ってシャーロットの元へ駆けつけられるなど到底出来るとは思わなかったのだ。

 

 そしてカルロは更に見たくもなかった現実を突きつけられる。

 

 高速で移動したヒソカ――目印――を追尾して残る99個の念弾が向かってくる。

 だが、その全てをヒソカはたった1枚のトランプで切り裂いていった。

 

 瞬く間に霧散する念弾。そして無傷で立つヒソカ。

 もう逃げるタイミングも逸してしまった。絶望がカルロを包みこむ。

 

「こ、これだけの実力がありゃぁ――」

「最初から簡単にキミを殺せたはず、かい?」

 

 カルロが疑問を口にする前にヒソカがその疑問を先読みして言葉を放つ。

 そして続けて疑問の答えを口にした。

 

「キミはそこそこは強いからね。長いこと楽しみたかったのさ、何せボクは面倒な制約を課せられててねぇ……♠」

 

 制約。またも疑問に思う言葉が出てくるが、ヒソカは関係なく話を続けた。

 

「さっきの能力もいい運動になったよ。もう少し数と威力を増やせれば良かったんだけどね♦」

 

 己の全力はこの化け物にとってその程度だということだ。

 精々スポーツジムで良い汗をかいた。そんな感想しか浮かばないようなレベルの差。

 

 ――実力が違いすぎる――

 

「どう、して……」

 

 諦めたように膝を突くカルロ。そんなカルロに対し、ヒソカは先輩が後輩に諭すように優しく語り掛ける。

 

「どうしてこうなった、かい? 人生なんてそんなものさ♥」

 

 その言葉が終えると同時に、カルロの人生は終わりを告げた。

 

「中々楽しかったよ。でも、やっぱりキミたち程度なら1枚のトランプで十分だったね♣」

 

 そう言ってヒソカはカルロを切り裂いたトランプを手から離す。

 ひらひらと風で揺れながら、トランプはゆっくりとカルロの顔へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 全てが終わり、溜まっていたものがスッキリとしたヒソカは上機嫌であった。

 念能力者は1人だけだったが、そうは見れないレベルの敵ではあった。ヒソカ式点数で言えば55点といったところか。

 満足行くほどではないが、それだけの実力者というのは意外と多くはない。ヒソカが55点と付けているだけで、並は凌駕する実力者なのだ。

 まあ、ヒソカにとっては実戦の勘を鈍らせないくらいの丁度いい実力者といったところだが。

 

「さて、と♥」

 

 ヒソカが屋上の隅へと視線をやると、そこにはシャーロットが呆然とした表情で立っていた。

 

「お……終わったの?」

 

 恐る恐るとヒソカに決着の有無を確認する。

 確かに自分を襲ってきた恐るべき男は死んだが、ここまでファンタジーな現実を見せられては――見えないことが多いが――死んで復活するのも有り得るのではないかと考えてしまうのだ。

 

「うん、終わったよ♠ これでキミの身は安全さ、良かったね♥」

「ほんと……? はあぁ……」

 

 ヒソカの言葉を確認し、心身ともに無事に終われたことに心底安堵する。

 そして力が抜けたようにペタリと大地に膝と手を突いて……勢い良く飛び上がった。

 

「ねぇ! 今の何なの!? どうやってあんなに速く動いていたの! ビュンッ! ってなってたわよ! もしかして改造人間!? それにどうやってトランプで人を斬ってたの!? ただの紙じゃないの!? もしかして金属かしら!? あと見えない何かが飛んでたのを防ぐように動いていたけど、あれって何!? もしかして超能力なの!? ねぇねぇいいでしょ教えてよ! お礼ならするからさ! この通り!」

 

 

 声掛けるんじゃなかったかな? そう後悔するヒソカである。

 ヒソカとしてはここで助けたことを利用して上手く連絡先を取り、何かしら困ったことがあれば手助けをするように話の流れを持っていくつもりであった。

 そうすることで彼女がまた事件などに巻き込まれれば、ヒソカは人助けと称して戦いを楽しむことが出来るのだから。

 彼女に頼んで敵を用意してもらったら、間接的に他者を自身に挑むように仕向けることになるが、彼女から助けを求めてくれば話は別だ。

 言質を取らず、言外に上手くそうなるように話を誘導するつもりだったのだが……。

 

「ねぇ! 教えてよー! あ、もしかして銃を撃ったのを怒ってる? ごめん! この通り謝るから!」

「いや、うん、それはいいんだけどね……♣」

「じゃあ教えてくれるの!?」

「……まあいいよ。キミって才能ありそうだしね……」

 

 才能はあるが、自分が好むような育ち方はしてくれそうにない。

 ヒソカのその直感は大いに的中することとなった。

 

 その後、数多のスクープを挙げ続ける1人の敏腕女性ジャーナリストが誕生するのだが、彼女がどうやってそれらの特ダネを手に入れたかは杳として知られることはなかった。

 

 

 

「どうしてこうなったのかな?」

 

その呟きに応えてくれたのは屋上に吹く風だけだった。

 

 




 シャーロット=ラミレス(外伝2初登場)
・フリージャーナリストを営む24歳の女性。ある事件を切っ掛けに念能力者への道を進む。だがその能力を戦闘ではなく己の趣味と生きがいである特ダネゲットの為に練り上げた。師であるヒソカから一応の戦闘技術も教え……もとい強制的に叩きこまれたが、それを活かす気は毛頭ないようだ。ちなみに最も得意なのは絶であることからお察し。
 念能力を手にしてからは多くの特ダネをゲットしスクープしている。やばいことに首を突っ込んででも特ダネを手に入れようとする為、頻繁にヒソカの助けを借りている。Win-Winの関係なのでヒソカとしても良いことではあるが。

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