なのに白鷺さんがいるだけで書くのに時間がかかってしまった…
個性を否定するのはあれだけど、もうちょっと執筆に優しい個性は無かったのかね、白鷺さん(血涙
逆さ喋りの白鷺
からり、と襖が開いた。
中は、というよりはここは荒廃した城の天守に当たる場所。
荒れ果てているとはいえ、元は城主のいた場所なのだから豪華絢爛の名残はところどころに朽ちている屏風や浮き彫りで見て取れる。
その部屋の奥中心に、目を閉じ座禅をする男が一人。
今の世には珍しく、後の世ではすぽーつがりと呼ばれるすっきりとした髪型のひ弱そうな男だ。
身長はみた感じ五尺八寸。遠目から見ても少し手足が長く見えるものだ。
服装は簡易だが動きやすい黒の着流し。
殺気などはない、否、存在感すら薄そうな面もちでゆったりと座ってる。
城主の座につくにはなんとも似合わない、そうよくとれる雰囲気である。
そこに座った男は言うならば何も持っていないのだ。得物もなく、存在感もなく、今にも消えてしまいそうな、そんな出で立ちで…
「うん…………」
襖の開いた音で座禅を組んでいた男は落ち着いた表情のままゆっくりと目を開けて、細めた。
「っくっくっくっく」
音が裏返ったような、いや、実際順序が裏返っている不自然極まりない奇妙な笑い声。
それとともに、城主の部屋へと、その開いた襖から一人の男が這入ってきた。しのび装束を身にまとい、とはいっても一般的に連想されるようなものとは方向性がずれている袖がなく、太い鎖が巻かれた物だった。
「かたえ違間、しいなてっ持刀がたっ思とるいが人に守天れあ」
と、その一風変わったしのび装束の男は言った。
が、その男が何を言っているのかは常人にはまったく分からないだろう。
まぁ、まるでわからないがそれこそがこの一風変わった忍者の特徴であり、驚嘆を覚える特性である。
驚嘆するほど不自然極まりなく、奇妙な特徴…いや、特性である。
「ぜうらもてせら乗名、らかだくかっせ──だ鷺白庭真、人一な領頭二十軍忍庭真はれお。などけだんーつっ『鷺白のり喋さ逆』称通」
「あ、えっと、どうも。浪人兼下酷城城主代行の宇練釖閣(とうかく)と申します」
そう白鷺に返した釖閣は座禅を崩すとにへらと笑って立ち上がり、おじぎをした。
その現状の様は一言で言えば滑稽なものである。
昼時から勝手に侵入してきたこんなしゃべり方のこんな服装の忍者に対して動揺もなく、浪人兼城主代行が頭を下げているのだから。
文面だけでも滑稽、というか珍妙である。
その対応に真庭白鷺は目を細めた。怪しむというよりは、不自然が自然すぎるという感じであろうか。
「いい、あま?いかのるてっ持がたんあらかだんてっ行代主城。『鈍』刀斬。本一が本二十形成完ちう、本千刀体変の紀記崎季四るあでのみ込れ触ういといなはのもいなきで断両刀一」
白鷺は言葉を続ける。
「よれく、に俺」
「はぁ……」
「なよだんてし争競と間仲──るきでがとこぶ並についあは俺、ばれ取け受をれそらかたんあずま、どけだんるてじん先歩一が奴てっ蝠蝙、ことん今。あさてっ思とるけ助、な」
「えっと、刀が欲しい、で合ってるのかな?それならそうですね、刀をお渡しした際にはお代はいかほどいただけますか?」
「?か金、ん。なてくながち持くにいあ、がい悪。ぜだんいいもって奪して殺ゃきなさ渡くし人大、らかだ」
くっくっ、と寧ろ殺して奪いたいですと丁寧に言ってるような嫌らしい顔で白鷺はさかしまに笑う。
真庭忍軍。
それは、知る人ぞ知る、暗殺専門の忍者集団──中でも、その長たる十二頭領が一人。真庭白鷺の使う忍法は、仲間内でも一目置かれる物だった。真庭忍軍において、真庭白鷺が敵でなかったことを天に感謝しないものはほとんど皆無であり、彼の奇妙な逆さ喋りの特性は、その忍法に密接に関係しているのである。
その真の恐ろしさは、彼と相対した者にしか知るすべはない。逆に言えば相対したものは嫌でもそれを知ることになろう。
たとえば、今、白鷺の目の前でそれは困りました、なんて他人事のように返している釖閣のように。
釖閣は白鷺に殺すぞと、脅されているのになんの対応も示さず他人事のようにしているし、笑みも崩さない。
両者の間は距離にして、5尺8寸ほどの釖閣の大股10歩程度の距離ではあるが刀も差さず無防備な男がかの忍者集団を前にして余裕でいられる距離で決してない。
そう、まったくもって安全圏ではない。
「かえねゃじうまちっなくし寂、よなす話にいたみ事人他、いおいお。かのいた見を法忍の俺になんそ、たんかもとれそ?ぜだんえねゃじんもるれ見になんそ、は法忍の鷺白庭真、ぇねたっ参──」
しゅっ、とん…。
と、すり足が止まるような音が一つ。それは多分、本当にすり足が止まる音なのだろうけど、それを白鷺は視認することはできていなかった。
音を出した張本人である釖閣は先ほどまで立っていた位置から白鷺を通り越してその向こう側、下の階に続く階段で降りようとしていた。
「いおいお」
白鷺が少し表情を変える。それは釖閣の動きを視認できなかったためか、はたまた釖閣が逃げようとしてると思ったためか──しかし、相変わらずの余裕たっぷりの態度は変えなかった。己が優位に立ち、己の才能に絶対の自負を持つ者の態度である。
「よかのるげ逃、よだんな──なげ逃けだなき好、ぜいい。だ刀でまくあは的目の俺。ならかいなは暇るてし殺を奴いな係関。よどけるやはていおてし告予応一、とだ期最のたんあが間瞬うと討を俺。なへかだとこてっえて見をし探鱗逆法忍の鷺白庭真、人一が領頭二十軍忍庭真、はとこってるけ向を刃てし対に俺──」
「えっと、今更ですがごめんなさい。あなたの言っていることは俺にはよくわかりません。俺は、阿呆ですから。あぁ、それと──」
そこで白鷺に対して振り返った釖閣の純粋な笑みを見て、白鷺は瞬時に距離をとる。
不気味さか、あるいは無いはずの殺気か。それでも白鷺は無意識の内に本能的に距離をとっていた。
けれどもそれがいけなかった。
「お代はあなたのお命を頂戴いたしました。斬刀を所持した兄は一つ下の襖の先の個室にいます。あまり激しく動かないほうがいいですよ。斬れてる首が落ちてしまいますから」
「え?」
別段、そのままにしていても結果的には死んでいたであろうが──なんて野暮なことはどうでもよく、後ろに飛んだ白鷺の身体に対して、乗っていた頭部はだるま落としのようにすとん、と自然落下していく。
「うわぁぁぁぁあ!い、いつの間にぃいい!?」
という、白鷺の散り際の一言は逆さにもなっていないなんとも噛ませ犬のようなつまらない言葉で、なんてこれまた野暮ったくて…
「無手の初歩 零染 一一。なんてね。やっぱり兄さんの零閃のほうが格好いいや」
釖閣はそうつぶやいて、返り血で染まっていない右手を、刀が斬った血を落とすように振るう。
「うんうん、やっぱり兄さんのところに行かなくてよかったよ。どうせ、斬ってただろうけどまた畳が汚れたって文句言われそうだし、その点は僥倖僥倖。にしても、やっぱり何言ってるかその場で聞き取るのは長くなればなるほど無理じゃないかな、あの逆さ喋り。やっぱ俺は阿呆だからね」
噴水のように血が舞っている天守をなんてこともなく無視して、下へと降りていく。
血が止まるまでの兄への昼時のご飯の内容と、その後の処理の算段を、立て始めたようだ。
そう、この宇練釖閣。
転生したあの喫茶店の店主、その人である。
だが、その性格は育った第二の土地のせいか、はたまた生き抜くためにいたしかたなかったのか、はたまたはたまた歴史を変えるための計算付くの元なのか…
「速さを貰ったのはいいし、宇練家にこれたのもとてもいい。でも、刀が使えないってのは虚刀流じゃないんだし、四季崎が手がけた刀でもない。刀の時代に、理由も無しに刀が使えないってのはどうしたものかなー。それも居合いを主流にする宇練家でだよ。手刀じゃぱっとしないじゃないか。まぁ、でも、俺は阿呆だから」
いいように頭のネジが数本弛んでいた。
前回、神様のアニメ版に対するディスりはにーこにこしてる動画のコメントをいただきました←
俺はアニメ版も小説版も好きですからね!
でも、気を悪くしてしまっていたら申し上げないです。
さて、一言。無手だから虚刀流だと思ったか、残念、宇練家だ!←
誤字などありましたら、ご指摘お願いいたします。