無釖語《プロット建て直し完了》   作:ナタDeココ

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土日に書き上げるといったな、あれは嘘だ!?(ごめんなさい

今回は手前に少し前座をいれさせていただきました。こういう■を挟む形式はこれからもとっていくと思いますので、違和感などありましたらご指摘お願いいたします。


虚刀と斬刀

七花たちと銀閣が初めて視線を交わしたときに姿を消した釖閣は自分の部屋である店主で正座をし、握り拳で目を閉じていた。

表情はどこか険しく、物思いにふけるというよりは堪え忍ぶという表現の方が正しそうな表情である。

 

もちろん、なにかされたからそれに対して釖閣が堪えているわけではない。自分の采配とそして手を出すことのできない仕合いの行方を心配していたのだ。

今回の目標は銀閣を生かした上で刀を譲渡させ、自分はとがめたちについていくというものだ。

だがしかし、銀閣の死因になりうる要因は取り潰したが、取り潰したが故に逆に七花が斬られるという可能性が出てきたかもしれない。

万が一にそんなことはないとわかっていても、歴史を変えるというものは一つずれればすべてがずれてしまう。だからこれもおおいにあり得てしまうかもしれない可能性なのである。

 

それでも、今の釖閣は手を出さないし、手を出さない。

自分の知っている歴史通りになりながら歴史通りにならないような些細な変化になることを祈りながら…

 

強く噛みしめた釖閣の口からは一筋の朱がこぼれ落ちた。

 

 

  ■

 

 

場面は銀閣の部屋、時刻は少し前、三人の対面に戻る。

 

七花と銀閣は目を合わせても空気は重く、その中に警戒と殺気が交差し、沈黙を置いていく。その沈黙を破ったのは無言のやりとりを把握できないとがめであった。

 

「宇練銀閣だな?」

 

銀閣は無言のまま眠たそうにあくびを一つ。それを気にすることなくとがめはさらに続ける。

 

「わたしは、尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所、軍所総監督──奇策士とがめだ」

と、張りのある凛とした声で名乗った。

と、幕府の重役ならばこういったところで証明となる将軍家の家紋の入った印籠なんかを某月曜の夜にやっている時代劇のように掲げるのだろうが、残念ながらとがめの所属である軍所というのは尾張幕府の中でも極めて影にして極めて裏の部署なので、そういった幕府直轄うんぬんを証明できるものは一切持っていないのだ。

 

だから、聞き分けの悪い相手に対しても自身の言葉で説得しなければならないのである。

なんともまあ、面倒なことである。

 

 

「改めて、その刀──斬刀『鈍』と見受けるがら如何かな?」

「はぁ……うるせえな。あいつが言ってたのはこれかよ」

 

ぽつりと、衣服の黒と一緒に消えゆくような呟きをもらす。

 

「確かに俺は宇練銀閣だし……あんたはなんだ?なんとかってとこのとがめさんなんだろうし……この刀は斬刀『鈍』だけどよ……そう大きな声でぴーちくぱーちく怒鳴るなよ。寝起きの頭には、少し辛いんだ」

「ふむ……それは失礼した」

 

とがめは少し声音を落として──そして微笑んだ。相手が銀閣だとわかり、刀が目的の刀だとはっきりしたため、ある程度は安心して気が抜けたのだろう。

しかし、七花は違う。気など抜けやしない。目を細めて開けている銀閣との視線のやりとりは決して油断してはいけないと本能的に七花に理解させるには十分すぎるほどの物であった。

 

七花は気を張って思考する。

銀閣の腰にある刀。銀閣は眠っているときでも腰に差していた。それで刀を守っているつもりなのだろうか、と疑問を覚える。

 

ああして腰に差していなけば、いつなんどき誰に盗られるからわからないから……?これが冬の言っていた守るということならずいぶん気弱なものだ。

まぁ、体内に保存するなんて無茶ができるのは真庭蝙蝠くらいだから、四季崎記紀の変体刀、その保存方法は、所有者全員が常に頭を悩まされなければならないのだろうけど……。

 

「で?幕府のお偉いさんが、こんな砂漠に何の用だよ……あれ?俺を名指しだっけか?またここから立ち退けってん話か……んん?いや、斬刀……」

「その斬刀。譲ってもらえんかな」

単刀直入にとがめは言った。

正直、単刀直入すぎるほどに、これでは交渉にならないじゃないか、と七花は思った。

交渉と言ってはいたが改めて考えてみれば高飛車なとがめに交渉らしい交渉ができるのかという疑問が浮上してくる。不承島で七花自身が雇われるさいのことも思い出してなおさら頭が痛くなってきていた。

 

「もちろん、ただとは言わん。幕府として、できる限りのことをさせてもおう。刀一本、──」

「この前よお……」

 

銀閣はとがめの言葉を遮って、相も変わらず眠そうな声で言う。

 

「忍者の偽物みたいな変わった奴が来たんだが、なんとなしにあんたと似たようなことを言ってたみたいなんだけど……何?あれ、あんたらの友達?」

 

「友達などではない。わたし──たちはあんな外道な忍者とは違い正当な取引を望むものだ。その刀の価値はよく認知しているし、そう易々と引き渡せるものではない。しかし宇練よ、そこは幕府のため──ひいては天下国家のために、貢献してくれぬか」

「天下国家のため、なんて大義名分をぶら下げる奴にろくな奴なんていねえよ。それと、俺のことは銀閣って呼んでくれ…、宇練じゃ混じってどっちかわかりゃしない」

 

とがめの言葉に、宇練は眠そうに答え、さいど大きなあくびをする。

その態度と物言いに、とがめの緩んだ頬がぴくりのひきつった。

それでもとがめはやはり慣れなのか切り替える。

 

「おぬしたちの心持ちは先ほど聞いたが、それでもこの砂漠の中で不自由な生活を続けることはできなかろう。お付きのあの者にも限界はある。お前についている賞金だって取り払ってやれるぞ」

 

しかし、返す答えはあくび一つ。銀閣にまじめに聞く気は毛頭なし。

 

「おい、銀閣。貴様──」

「……怒鳴り声をやめてくれたのは助かるけどよ。今度は極端に声が小さすぎて聞こえねえや。もうちょっと近付いてくれねえか?」

 

砕けて眠そうに言う。

 

「大体、敷居越しに話をするなんて、剣士に対しては失礼だろうがよ。それは、あれか?俺が浪人だからかい?あんたがどれだけ偉いかはわからねえけど、少なくとも人に物を頼むときの態度じゃねえよな」

 

とがめは銀閣の発言に不愉快そうに口を尖らせたが、しかしそれでも、銀閣の言うことに理があるため、渋々敷居を跨いで宇練のいる部屋へと足を踏み入れた。

七花も続こうとするが、なにぶん狭いし、長身のため気が引けてとどまることにした。

 

そして、とがめの背を目で追っているとき。

ふいっ……と、宇練の右手が動いた。ほんのわずかに刀の柄を掴んだ程度に見えたその動き。

その瞬間──

 

 

しゃりん!

 

 

と、そんな音がした。

そして、その音の直前に七花もまた動いていた。

思考よりも先に体が動く。切りつけられてときの反射神経のように、とっさに身体中を駆動させ逆回転におけるいわゆる胴回し回転蹴り──

 

「虚刀流、『百合』!」

 

ただし、今の位置からどうしたって銀閣には届き得ない。狙ったのは銀閣ではなくとがめの身体。その蹴りが寸のところで引き戻されるとともに、それのつられて逆回転の勢いでとがめの身体もまた引き戻される。

 

その勢いのまま、壁にぶつかるとがめ。ぎゃふん、なんて可愛らしい声を上げながら目を回すが七花は気にすることなく銀閣を睨む。

 

 

「何すんじゃー!」

 

とがめは怒鳴る。

 

「落ち着けよ、とがめ。そんなことより自分の服、見てみなよ」

 

促されるようにとがめは自身の身体に視線を落とせば…、十二単衣さながらのとがめの衣装がまんなか、腹のあたりねざっくり斬り込まれていた。それも半分以上。

 

「な……なっ」

 

さすがにとがめも静かになって青くなり、そして混乱する。

しかし、そこは百戦錬磨の奇策士。すぐさま立ち直り、そして激怒する。

 

「きさま!いったいなにをした!」

「あー、びっくりした。これは忠告もされるよな」

 

幕府の人間であるとがめを斬りつけながら銀閣はさも当然のようにそう言った。

 

「この斬刀を手にして以来、俺の零閃をかわした奴はあんたが二人目だぜ…いや、あんたじゃなくて──おまえかな」

 

そして、今度は宇練が七花をにらみつける。

 

「びっくりしたのはこっちの方だ。居合い抜きが剣術の究極形とは聞いてきたけどそこまで速いとは思ってもいなかった」

 

今頃、理解が追いつく。

あのしゃりん!という音は刀を納めたときの鍔鳴りの音。手を刀に伸ばすのと納刀の鍔鳴りが同時に生じていたのだ。二人にとっては想像を絶した速度である。

 

文字通り一閃、いや零閃。刀の煌めきすら残さない速さ。これが宇練家に伝わる究極の居合い──

 

「んじゃま、おまえのびっくりと俺のびっくりでおあいこってことで」

 

そういって、刀の柄から手をそっと離した。離したところで、安心のあの字もとがめたちには感じられはしないが。

 

「銀閣、貴様何をしたのかわかってるとるのか!」

「だから怒鳴る鳴っての…。あんたもそんな腕の立つおにいちゃん連れてきた時点で、最終的には腕っ節でのつもりだったんだろ?なら建前みたいなお話なんていらないんだよ。俺は剣士だ。剣でしか語れないのさ」

「おにいちゃんだと!?貴様、わたしがこいつの妹にみえるか?小さいからか!?」

 

とがめは要領を得れていないようだ。

 

「それにこれはご先祖様がすべてを敵に回しても守ってきたものだ。俺がそうですかの、おいそれと渡したれ葉草の陰で笑い物だぜ。笑われすぎて眠れなくなっちまう」

「その刀をなくすのが、怖いのか?」

「怖かったらなんだん?」

 

そこで改めて七花は自発的に銀閣にしゃべる。

 

「別に。それが刀を使う剣士の限界なんだろうな──と思ってさ」

「さぁ、逆なのかもしれないけどな」

 

と、銀閣はわかっているように即答する。

 

「そういうお前は剣士じゃねえのかい?見たとこと、刃物は帯びてねえようだが──」

「剣士だよ。まごうことなく、な」

「ふーん、そういうことか。だったらお前にもわかるだろう」

 

銀閣はくすりと笑う。

 

「剣士に言葉は不要だ。この刀がほしいなら黙って奪い取れ。それに俺は黙って抵抗する。死合う剣士には斬ったから斬られたかしかないんだよ」

「なんなんだそれは。意地か」

「そうだな。気位、だよ」

 

そこで銀閣は少し迷ってそういう。

 

「とはいえ、怖いっつーなら怖いね。一度この速度と威力を体感しちまてば、もう普通の刀にゃ戻れない。でも、怖いのはこれがなくなることじゃねえ。これありきの俺の速さが怖いんだ。俺の零閃の最高速度は──光を超えるぜ?」

 

試してみるか。と

宇練は七花を挑発する。しかしそれに対して七花は無視を決め込む。

 

「──とがめ。いくつか確認したいことがあるんだがいいかな」

 

それに対してさすがに銀閣も毒気を抜かれてしまう。

 

「おい、にいちゃん」

「銀閣、ちょっと俺らは作戦会議だ。すぐ戻ってくるからうたたねでもしといてくれ。帰ってきたら最高速度の零閃とやらを見せてもらうからな」

「はぁ……襖、閉めていけよ」

 

 

そこで襖を閉めようとした七花に声がかかる。

 

「あー、そうだ」

「白髪のおねえちゃんの名前は聞いたけど、そいやにいちゃんの名前はまだ聞いてなかったよな。教えてくれよ」

 

それに対して七花はとがめにアイコンタクトをもらうと胸を張って答える。

 

「虚刀流七代目当主──やしゅり七花だ」

 

 

なんともひどい締まりのなさである。




次回が斬刀編、ラスト…の予定です。
まとめれたらいいなー…

誤字脱字やご指摘などありましたら是非注意してやってください。

投稿遅れてしまって申し訳ありません。
それでは次回もお楽しみに
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