一人目のお客さん
里の隅。稀に妖怪の迷い混むことのあるような場所に落ち着いた雰囲気の一軒の家が建っている。
その家の扉には、可愛らしいまるっこい手書きの字で
ーーー【西洋風服屋さん。アリウムリーキ】ーーー
との看板がかけてある。
これは、洋服屋さんを営む、ちょっと不思議な少女とそこを訪れる妖怪達の物語ーーーーーーーーーーーーーー
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「ん・・・・・」
朝日が寝室の窓から刺し込み、それに当てられて小柄な14才位の少女はモソモソとベットから身を起こす。
「今何時かなぁ・・・」
「もう十時だぜ、皐月。」
眠そうに時計を手探りで探す少女の前に立ち、ひょいとベッドの上から目覚まし時計を持ち上げ、掲げて見せたのは黒白の魔法使い、霧雨魔理沙。
「あー、おはよー、まりりんー」
ベットから這い出ると、寝惚けた頭でも魔理沙に気付けたのか、少女はトロンとした目でほんわかと笑って返す。
この少女の名は、昏櫁 皐月と言う。
人里の隅っこ、人里と外の境界が曖昧で妖怪が度々迷い込む事があることから、余り人の近付かない場所に立つ家で少女は暮らしていた。
「まりりんは止めろって言ってるだろ・・・それより、夏服作っておいてくれたか?」
「うんー、できてるよー。でも、その前にー」
「はいはい、飯作ればいいんだろ?」
「ありがと、まりりんー。大好きー。」
止めろよ、小っ恥ずかしいだろ。とぶつぶつ言いながらキッチンへ向かう魔理沙。
その姿をほんわかした笑顔で見ながら、皐月は商品クローゼットの中から、一着のエプロンワンピースを取り出す。
彼女はここで生計を立てるため、一人で洋服屋を営んでいる。洋服屋、というチョイスには彼女の能力が関係しているらしい。
彼女の店に並ぶ洋服は多様で、常連になれば完全オーダーメイドも請け負ってくれる。常連には服にこだわりのある妖怪も・・・、というか里の人間は大体着物のため、常連はほとんど妖怪である。かという魔理沙も勿論常連の一人で、数少ない人間の常連となっている。。
だが、魔理沙が顔見知りの店でわざわざ金を払うことなんてあり得ず、まず金すら持っているか怪しい。それが分かっているからこそ、皐月は服を作るのと引き換えに、魔理沙には食事を作って貰う約束を初めから取り付けているのだ。
「ほら、出来たぞ。」
「おいしそー。まりりんって乱雑そうに見えてこういうの得意だよねー。」
「一人暮しだしな、出来て当然だろ。」
「私はできないよー。一人暮らしなのに。」
「すまん、今の忘れてくれ。」
特に深い意味はないんですけど、アリウムリーキの花言葉って、『挫けない心』と、『無限の悲しみ』、『無言の哀しみ』らしいですね。
・・・・いや、特に深い意味はないんですよ?(大嘘)