ハイスクールD×D 満たされぬ欲に狂う者   作:山北深夜

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半年も間を空けて申し訳ありませんでした。これからは気をつけるよう心がけます。


二十六話

「最悪だ……。いやどうすんだよこれ……」

 

 ――ありえない。ライザーの思考はこの一点に固定されていた。目の前の状況は理解した。しっかりと頭は追いついている。だが、ありえない。ありえていいはずがない。ライザーは目の前の状況をなんとなく判断し、そして理解し、絶望した。その脳内は理解したはずの全てを拒み、全力で眼前の光景を否定する。

 

 だが、どれだけの否定をしようが事実は変わらない。ライザーは聡明な悪魔である。ゆえに否定し続けることができないことは百も承知だった。それでも否定を続けたのは、それほどまでにありえない状況だったからだ。理解したくもない状況だったからだ。

 

 ライザーの眼前、そこにいるのは己が下僕の一人である空繰人形(パペット)と、ライザーを潤んだ瞳で見つめる黒髪の少女。ライザーといるだけで幸せそうな様子の黒衣の童女。正直、空繰人形(パペット)だけでもライザーはもてあまし気味であるというのに、それ以上に厄介なのがもう一人。

 

「ライザー。リリス、ライザー」

 

 それは無垢な無表情。どこか甘えるようにライザーに声をかける黒色の幼子。どこか求めるようにライザーを見つめる無限の幼女。その様子はまるで、ライザーに懐いている犬かなにかのようである。ライザーを見つめて、無表情ながらもどこか嬉しそうにしている。ていうかどう考えても懐いている。事実懐いている。

 

「あったかい、ライザー、むね、あったかい? リリス、むね、あったかい。からだ、あつい、とてもあつい」

 

 ウロボロス・ドラゴン。無限の龍神。トップオブトップ。世界最強の存在。そしてテロリスト集団、禍の団(カオス・ブリゲード)のボス。それがライザーの目の前にいる彼女、オーフィスだった。――正確にはオーフィスでなく、その力の片割れ(リリス)なのだが、ライザーの認識ではオーフィスである。とはいえ、どちらにせよライザーの現状は変わらない。オーフィスであろうとリリスであろうと、世界最強の力であることに変わりはない。つまり、ライザーの目の前に世界最強が存在しているのだ。

 

「えー、あー、そうだな、ううむ」

 

 そんなリリスを前にして、ライザーの口から言葉が出かけては消える。はるか格上の龍神を相手に、何を言うべきかが見当たらない。どうすればいいのか分からない。まったく経験にないどころか想像もしていなかった出来事なのだから当然である。ていうかこんなの予測できるか。ライザーは混乱していた。

 

 ライザーの思考がぐるぐる回る。状況の意味を知ろうと、原因を図ろうと、解決策を得ようと回る。どうにか、どうにか空繰人形(パペット)だけでも逃がそうと、ライザーは思案を巡らせる。

 

 だが。そんなライザーを気にするでもなく、リリスはそっと近づいていく。

 

 このとき、ライザーは時間の流れが緩慢に感じられた。いやな予感が、走馬灯とともにライザーの脳内を駆け巡っていた。近づいてくる最強に命の危機と判断したライザーの脳は、状況の整理を放棄してこの事態を打開すべく全力の稼働を始めていた。最強の無垢が一体何をするのか。どうすればそれを回避できるのか。その答えを導き出そうと全力だった。だが、それでも。近づいてくるリリスが何をするのかライザーには予想がつかない。

 

 僅かな時間。しかしライザーにとっては永い時間の後、それは訪れた。ライザーの眼前、目の前、目と鼻の先。リリスはそこに立っていた。ライザーの腰ほどしかない小さな背丈で、ライザーを見上げていた。

 

 ああ。とライザーは思う。それほどしかない幼い矮躯に、世界を滅ぼす力が秘められているのだ。待ちわびたかのようにライザーに伸ばすその手にも、万物を破壊する能力がある。指一本だって動けるはずもない。害意などなくとも、その気にならずとも、手が滑るように気軽さで、ライザー一人殺すなど簡単に為してしまうような化け物なのだから。それが、それこそが世界最強という存在なのだから。

 

 リリスが伸ばした手がライザーを捉える。とろけるようなほど表情を上気させながら、どこか緊張したような、あるいは期待するような雰囲気。無表情に、無口に、しかし雄弁に。リリスはそっとライザーの腰をつかんだ、

 

 ――そして勢いよくライザーのズボンをずり下ろす!

 

 世界最強を前にして、命の危険を前にして、種の保存の本能は全開だった。不死鳥であろうが関係ない。ライザーの目の前にいるのは無限である。不死身など欠片ほどの意味を持たない。故に生物としての本能は全力だった。

 

 ライザーのライザーは最高峰にそそり勃っていた。パンツごとズボンを下ろされ、外気にさらされたソレは、今にもその役目を果たさんと張り切っていた。熱く、硬く、長く、太く、高く、そして大きく、たくましく。一言で言うなら実に立派、その様子はまさしく怒張、形容するならそれこそ巨根。それはもはや、神器といっても過言ではないほどの見事さだった。

 

 ライザーの剛直を前にして、リリスは小さく息を呑む。彼女がつばを飲みこむ音がライザーの耳にいやに大きく響く。すん、と鼻を鳴らし、リリスは小さな笑みを浮かべた。とろけるような笑みだった。そしてその小さな口を、そっとライザーの息子に近づけ――

 

「いや待て待て待て待て!!!!」

 

 ライザーの慌てた制止の声。思わずといったようにリリスの動きが止まる。そして不満そうに、不思議そうに、物ほしそうにライザーを見上げる。リリスの口から垂れたよだれが、ぽたぽたと地面に吸い込まれていく。

 

「なんで俺のチン●食おうとしてんだよ!」

 

「リリス、ほしい。これほしい」

 

「訳わかんねえよ! 誰がやるか!」

 

 ライザーが怒鳴ると同時、それに応じてぶるんぶるんと振れるライザー(小)。するとリリスの視線もそれを追うように盛んに動く。目の前で振れるそれにリリスは無言で、無表情で、生唾を飲み込む。大好物のおやつを追う犬のように、その目がライザー2号から離れない。

 

「リリス、これほしい。でも、ライザー、ダメっていう。……リリス、どうしたらいい?」

 

「俺が知るかよ!」

 

 ライザーの投げやりな言葉にリリスは困惑したように目を見開く。やがて、その瞳にじんわりと涙が溜まっていく。うるうると瞳を潤ませ今にも泣き出しそうになっている。必死に歯を食いしばり、泣くのをこらえるリリスを無視してライザーが下されたパンツとズボンを履くと、リリスはぼろぼろと涙をこぼし始めた。

 

「らいざぁ。らいざー。らいざあ」

 

 名前まで呼び始めた。母親の名を呼ぶ幼子のように、欲しいものがもらえない幼女のように、あるいは迷子の子供のように。ぼろぼろと涙を流しながら、ひくひくとしゃくり上げながら、世界最強(リリス)は産声を上げる赤子のように泣いていた。

 

「どうしろってんだよ……。ほんとどうしろってんだよ。なんなんだよこれ。どうしろってんだよ…………」

 

 ライザーも正直泣きたかった。実はちょっとだけ泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライザーのチン●はでかい。それはもうでかい。俺が最後に見たのは……えーっと、いつだったっけ? 多分十年前から一度も見てないってことはないと思うんだけど。まあそれはともかく、その頃から変わりなくライザーのチン●はでかい。いや、もしかしたらもっと大きくなってるかもしれない。それほどにでかい。どのくらいでかいかというと俺が初めてを奪われたときちょっと裂けたと言えば分かりやす……くないな。俺ってロリだし。

 

 ともかく、ライザーのご立派様は文字通りご立派なわけだ。一目見るだけで「でかっ!」と思ってしまうほどに立派なわけだ。当然ながら法的にも倫理的にも白日の下にさらされていいものではない。いやまあ俺の前だったら全然おっけーだし、青●もばっちこいなんだけど。法とか倫理とか欲求の前では無価値だよね! ていうか背徳感がいいスパイスになるかもだし、せっかくだからやってみようぜライザー。

 

 やっぱりね、たまにはスリリングなのも必要だと思うんだよ。まあたまにじゃなくてもいいんだけど、ほらマンネリって怖いからね。だからたまには俺のことを抱くべきだし、積極的に俺を襲うべきだし、毎日のように俺を犯すべきだし、常日頃からその反則級のブツで俺を貫くべきなのだ。裂けるほどのサイズだろうと問題ない。いけるイケる。ライザーのはデカイだけじゃなくて段差も凄いからね。すごく気持ちいいからね。

 

 そんな感じのライザーの一物である。それが何故か外の空気を吸っていた。なぞの幼女によってパンツを脱がされた結果、ライザーの凶悪なブツがお空に向かってこんにちはしていたのだ。しかもギンギンである。臨戦態勢である。なんでこんなことになっているのかは分からないけど、とりあえず幼女はよくやった。

 

 ていうか臨戦態勢ってことはつまりライザーは興奮してるというわけで、つまり俺か幼女のどちらか、あるいは両方とにゃんにゃんしたいと思ってるわけだ。そして俺と幼女は一部を除いて似た体型の持ち主――これが表すことはつまり、ライザーはロリ巨乳とロリの食べ比べをしたいってことである!

 

 自分で言うのもなんだけど俺ってすごい推察力してると思う。そしてライザーもなかなかいい趣味してるよね。いや全然大好きなんだけど。俺もそういうの全然いける口だからね。ライザーのロリ比べをしたいっていう気持ちはよく分かる。すぐにでも比べてほしいくらいにはよく分かる。まあつまり重要なことは、ライザーは俺となぞの幼女の両方を犯すつもりだということだ。

 

 ライザーのビッグダディを露出させるという偉業を成し遂げた本日のMVPことなぞの幼女もそれを察したのだろう。まずは性槍を口に含もうと顔を近づけて――

 

「いや待て待て待て待て!!!!」

 

 しかしライザーがそれを制止した。

 

 ……? どうしたんだろう。もしかして最初にフェ●は嫌とかそういうのかな。まあ確かにフェ●の後だと色んなプレイに制限がかかるだろうってのは分かる。なんか汚い感じとかしそうだし。でもライザーって前●とか嫌いじゃなかったと思うんだけど。気分じゃなかったとかかな。とにかく突っ込みたい気分だった、とか?

 

 ああ、なるほど。臨戦態勢だもんね。いいからさっさと犯させろやってことか。おっけおっけー。そういうことね。いやまったくそんなことにも気がつかないとは、気が利かない幼女もいたもんだなあ。俺ならすぐにでもファックにつなげて見せるというのに。これだから幼女は。

 

 いや仕方ない。これは仕方ない。仕方ないから俺が最初にライザーとセック●しようじゃないか。ほら幼女ってばライザーの機嫌損ねちゃっただろうし? やっぱり俺から食べてそれから比べるってのがほら、理由とかわかんないけど多分って言うか絶対そっちのがいいからさ。

 

 うん。うん。それがいいね。それがいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライザーの困り顔を前にして、諦観の表情を前にして、その少女は立ち上がる。その名は空繰人形(パペット)。ライザーの有する最強の駒にして、最強の兵士(ポーン)。己が主の混乱を少しでも和らげようとしているのか、いつも通りの無表情ながら、しっかりとライザーへと歩いていく。

 

「お、おお! お前か、いや、今はマズイちょっと待て!」

 

 その姿にライザーは一瞬喜色を示すが、直後に状況を思い出し押しとめようと声を出す。リリスはライザーにこそ懐いている――かもしれない――が、しかしそれが空繰人形(パペット)に対して何もしないという証明にはならない。なによりライザーの側にいるのは世界最強であり、いくら空繰人形(パペット)が強いからといって敵うような相手ではない。

 

 とくに今のリリスは危険だ。理由は分かりたくもないが泣き出しており、情緒が安定しているとは言い難い。それはつまり子供のように行動が予測できないということであり、何がきっかけでどうなるのか、全くもって分からない。可能性としてはリリスが暴走することもありうる。ライザーはそんな状況に自らの下僕を置くような男ではない。

 

 だが、ライザーの制止の一切を、空繰人形(パペット)は聞き入れない。

 

 無表情に、ライザーへと歩みを進めていく。そこにいる最強すらも眼中にないかのように、最強であろうと問題などないかのように。悠々と、堂々と、その歩みは僅かたりとも緩まない。その進みは僅かたりとも揺るがない。

 

「っおい! 聞こえてるのか! 今お前が来るのは――!」

 

 必死に呼びかけるライザーの声を聞いてなお、やはり空繰人形(パペット)は止まらない。どんな行動がリリスのきっかけになるか分からないため、ライザーはうかつに動くこともできない。正直、声をあげるどころか、リリスから意識を一分すらも逸らしたくないのだ。だが、それでも声を上げずにはいられない。心を向けずにはいられない。空繰人形(パペット)を、心配せずにはいられない。

 

 どうして来る。何故、死ぬかもしれないのに来る。確かにリリスからは威圧も殺気も闘気も敵意も、ましてや害意すら感じられない。だが、それなのに、ただそこにいるだけで全身が、魂が恐怖に叫ぶのだ。それほどの存在が目の前にいるというのに。何故。この感覚が分からないはずもないだろう。生きていれば本能で理解するはずだ。リリスが最強であると。不動の一位であると。

 

 それなのに、それなのに。何故。何故その歩みを止めようとしない。生物として近づくことすらしたくないほどの絶対的存在に、なぜそうも恐れずに歩めるのか。躊躇いもせずに近づけるのか。

 

 お前の何がそうさせるんだ。もし死ぬとしてもそれは主たる俺だけでいいはずだ。もし俺が死んでもレイヴェルもユーベルーナもいる。新しい主を探してもいいし、自分が上級悪魔になってもいいだろう。俺がいなくても問題ないはずだ。なのに、何故、何故――?

 

 ライザーが思慮を回せたのはそこまでだった。

 

「な、にをして……?」

 

 空繰人形(パペット)の小さな体が、そっとライザーを包み込むように抱きしめていた。身長差からか手を回しているのは実際には腰あたりであるが、しかしそんなことは気にならないほど、それは優しさに満ちた抱擁だった。

 

「お、まえ」

 

 ライザーと空繰人形(パペット)の視線がかち合う。相変わらず変わらない表情の彼女だったが、今この時だけは、その目から感情を読み取れた気がした。それはきっと、ライザーを抱きしめる空繰人形(パペット)の様子が、親に甘える子供のようであり、また子供の不安に寄り添う親のようであったから。臣下を鼓舞する王のようであり、王を気遣う臣下のようであったから。

 

 ――そうか、そうだったのか。お前は、きっと――

 

 空繰人形(パペット)が微笑んだ気がした。慈愛と求愛の含まれた、とろけるような笑み。そんな表情をライザーは幻視した。その幻覚に呼応するように、空繰人形(パペット)の腕に僅かに力が入る。子供のように高い体温のそれが、静かにライザーとの接地面積を増やしていく。ぎゅう、と強く抱きしめられる。空繰人形(パペット)は、そして。

 

 そして――そして。

 

 

 ――そして勢いよくライザーのズボンをずり下ろす!

 

 

「……は?」

 

 ブルータス、お前もか。

 

 ライザーの巨大根が再度天を衝く。その威容は空繰人形(パペット)の抱擁という安堵を挟んでもなお衰えることを知らず、未だ最高潮に血液を駆け巡らせている。べそをかいていたリリスも思わず涙を止めてその棒を見つめ、無表情な空繰人形(パペット)もどこかうっとりとして眺めているような気さえする。

 

「いや、待て。おい待て。何もかも待て」

 

 なんだこれ。何がどうなってるんだ。何をどうしろと言うんだ。ライザーの混乱は止まらない。ていうか空繰人形(パペット)は何がしたいんだ。何がしたかったんだ。真似か、真似っこなのか。

 

 どういうことだ、とライザーが空繰人形(パペット)を見下ろせば、彼女は自分のデニムを下ろそうとしているところだった。なるほど、ライザーと同じように下半身裸になろうとしてるのか。どういうことだ。

 

 ライザーの視界がじわりと歪む。泣きたい気分どころではない。もうほとんど泣いている。だが泣くわけにはいかない。まさかとは思うが、ありえないはずだが、空繰人形(パペット)たちはここで性交しようとしているのではないか、という考えがライザーの脳裏によぎるのだ。いや、いやまさか。

 

 フェニックス家の敷地内とはいえ、現在地は外である。いやまさか青●をしようなんてことは、いくら子供のような空繰人形(パペット)とはいえ、さすがにそこまでの常識知らずのはずないだろう。うん。そうだ。きっとそうだ。だから空繰人形(パペット)が自らの下半身を露出させたことも、ライザーにしゃがむよう促しているのも、何か意味があるに違いない。

 

 期待に満ちた表情でライザーを見るリリスも、多分何かの勘違いだろう。ライザーの膝に股を擦り付ける空繰人形(パペット)も、きっと気のせいだろう。ライザーはそっと現実から目をそらす。

 

 とりあえずいつまでも下半身を出しておくのもアレなためズボンを上げると、空繰人形(パペット)はすぐさまライザーの腰に手をかけた。明らかに脱がそうとしている動きだった。どう考えてもズボンを下ろそうとしていた。

 

「……もう、どうしろってんだぁっ!」

 

 ライザーは逃げ出した。その後から追うように、涙の後が点々とついていた。

 

 残った空繰人形(パペット)とリリスの二人は、そんなライザーの背中をしばらく見つめた後、示し合わせたように顔を見合わせ、同時に首を傾げた。




ライザー? まあ、いい奴だったよ。

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