漢の真は千の夢に混線する
時間軸は万仙陣っぽいような八命陣のような混線世界で全てのメイド物に捧ぐ男甘粕のメイド論!
『メイド喫茶 じゅす☆へる』へようこそご主人様(by幽雫くん)

※ギャグでキャラ崩壊しています
※メイド服を着ます――男が
※残酷な描写内容は女装です

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予約特典にメイド服を着た四四八の話と合コン喫茶の魔王があったので、足して割ったら悪夢ができた
素敵なメイド喫茶で心休めてくださいご主人様♪


終段――メイド・イン・ヘブン!

現実に帰ってからというもの、あれ以来俺たちはどうやっても邯鄲へ入ることはできなくなっていた。

邯鄲の夢に戻りたいかと問われれば否だが、根本的な意味での解決を終えてない苛立ちが内心にあるのも事実だった。

 

「さっさと寝てしまおう」

 

寝る前にこんなことを考えたのがいけなかったのだろうか?

何時もの睡眠とは違う、何かに引き込まれるような、何かと混線するかのような感覚を受けてしまったのは……。

 

 

空気の澄んだ日本晴れのある日、駅前に新店舗が開き大いに賑わっていた。

店はオタクの街から日本各地に進出目覚ましい店こと『メイド喫茶』と呼ばれる、あらゆる意味で喫茶店の概念を超えた禍々しい欲望の産物である。

そんな悪夢の真っただ中に、何も知れず贄として放り込まれ目が覚めたらここに居たという二人の話に移ろう。

価値が分からないが豪奢なのは伝わる英国調のアンティークや、誰が考えたのかわからない奇妙な生き物の着ぐるみが飾られた一角で、二人は意識が急に覚醒したのを感じた。

 

「っつ……柊?」

 

「淳士か……というかここは何処だ?」

 

意味不明、理解不能、クエッションマーク。

まさにそんな状態の二人だったが、まだ頭に靄が残っている四四八よりも先に、隣でおぞましい現実に気付いた淳士の方が混乱に陥っていた。

 

「柊てめぇなんて恰好してんだよ!」

 

「恰好だと?」

 

恰好など何と言ったことはない、いつも通りのジャージのはずであるからして、このふりふりがついた膝まで届かないスカートやデフォルメされたエプロンチックなものやリボンがあるわけないのだ。

いくらオタクカルチャーに弱い二人でも、今の四四八がどんな格好をしているかは一瞬で理解できた。

まごうことなく『メイド服』である。

 

「なんでこんな服って、淳士こそ同じようなものを着ているじゃないか!」

 

「俺もかよ?!」

 

同じような基調でありながらも、淳士が着ているそれはロングのスカートで慎み深さを出しつつ、クラシカルな外見ではなく用途を追求した一品のそれである。

中身こそ男一本槍な四四八であるが、外見は中性的とは言えなくもない美形であり、絶壁の胸を除けばこんな服にも負けないものはある。

しかし、中身だけではなく外見も男一本槍な淳士はまるで違う。

線の太くごつごつした身体は、あろうことかメイド服に包まれ巌のような威容をかもしだしつつも、ロングスカートとブーツで足を完全に覆い隠すことで絶妙なバランスを出していた。

そんな意味不明な状況に、普通着替えるとなれば替えの服が合って脱ぎ始めるものだが、ジンマシンが出るとでも言うかのように淳士の脱衣は早かった。

早かったが――遅すぎたのだ。

 

「何だこりゃ!ボタンが外れないってか、布が破れすらしねえぞこれ!」

 

「なんだと?」

 

呆然としていた四四八が淳士の言葉に我に帰り、メイド服を脱ごうとして本当にボタンが外れない事実にぶち当たった。

飾りのボタンではなく本物のボタンなのに、まるで一体ものの構造とでもいうかのように外せなかった。

しかも破る事すらできないのだから、混乱は拍車の一途をたどっていた。

 

「落ち着けお前たち」

 

「「甘粕?!」」

 

声がした方を見てみれば、そこにはいつもの軍装など忘れたかのように、四四八に近いがよりコスプレ衣装寄りになったデフォルメメイド服を着た甘粕が立っている。

しかもその隣には、こちらはいつもの服装だが神野明影と、死んだ魚のようなまなざしで四四八の顔――正確にはその向こうの壁というか空間――を見て座っている柊聖十郎が存在していた。

あまりにもあんまりな格好に、声がかかっても甘粕本人だと認めたくなかった。

なにより、短いスカートで片足を椅子にのせ例のポーズで立っている者などを、決して人類の魔王となるべくして立ち上がった、あの悪い意味で純粋かつ高潔な馬鹿と同じだと認めたくなかった。

というか、これではただの馬鹿だ。

 

「柊……」

 

淳士のかわいそうな人を見るような同情の視線が突き刺さるが、四四八は決してそれには触れようとしない。

見えているのだろうが、脳が決定的にまで拒否を続けた結果、ついにはその人物は存在しないのと同じような扱いにまで昇華したのだ。

そう、重篤な病人というよりも一周まわって解脱の領域に片足どころか、首まで突っ込んだ巫女服を着た柊聖十郎などそこには存在しないのだ。

 

「こいつはテメェらの差し金か?」

 

「うーん、ボクとしては趣味じゃないんだけど、我が主がどーしてもとご所望してね。ほらあそこの」

 

いつものテンションの無い神野は後ろを指さすと、そこにも巫女服に身を落とした幽雫と、メイド服の淳士に熱い視線を送る――こちらはいつもの服装だが――辰宮百合香が鼻息荒く幽雫を侍らせてオムライスを食べていた。

ちなみにケチャップで『くらな(ハート)』と書かれていたことは、秒も残さず二人は脳裏から消し去っていた。

 

「辰宮の御嬢さんも乗り気でね、我が主がメイド喫茶にはまったのはいいんだけど、メイドになりきらなければメイドの良し悪しは語れんって言い出してさあ」

 

「うむ、やらずして批判などできようものか。全力でメイドになりきってこそ、新たなメイドが生まれ続けると言うもの」

 

「まーぶっちゃけセージと幽雫くんだけじゃつまらないから、どうせだから巻き込まれときなって」

 

あまりのぶっちゃけに戦慄が隠せない四四八だったが、未だに聖十郎を見ようともしないところを見ると、この四四八かなりテンパっているようである。

頭の回転や口の回り具合に関して、四四八より数段劣ると自覚している淳士からすれば相手に神野がいれば口で勝てるはずもないと、聖十郎の解脱ほどはいかないが諦めの境地に踏み込んでいた。

もはや一瞬目を離した隙に神野の後ろに陣取って居たはずの百合香が、さも当然のように淳士の隣に立って写真を撮っており、アングルをあーでもないこーでもないと口にしつつ激写を続けるのを受け入れ――現状に理解が追い付かないだけだが――ており、当然のように百合香に侍る幽雫は従僕らしく恭しくカメラのレンズを手に持っていた。

この至近距離の撮影にバズーカのような望遠レンズが必要なのかは不明だが。

そこまでされて、やっと傾城反魂香の香りがしないと確信した淳士は重い口を開いた。

 

「待てよ、ちょっと人数が足りないんじゃねえか?」

 

淳士の言葉に四四八もハッと我に返り、周囲を見渡せば栄光も晶も歩美も我堂も世良も居ない。

もしや仲間が危険な目に――冷静に判断すれば現状も危険だが――会っているのかもしれないと緊張が走るが、その緊張を砕くのもやはり胸を張って威圧感をまき散らし下男下女にはなりきれない甘粕であった。

 

「いや、今回は誰も傷つけたりはせん。面子を選ぶ以上は基準が要る。その基準でふるいをかけた結果、大杉栄光は落選しただけに過ぎない」

 

「他の戦真館は女性だけだろ?ボクとしては水希のメイド服なんて、それだけでご飯三杯いけちゃうようなものの方がそそって良かったんだけど、女が女の服を着るだけじゃ普通じゃないか」

 

「だからって何で俺たちがメイド服なんぞ着なきゃなんねえんだよ」

 

「それは当然、俺が選びお前が選ばれたからだ」

 

なんの悪びれもない笑顔で宣言する甘粕に、呆れを通り越して怒りも何も浮かんでこないのは人徳のなせる業だろうか?

いや、諦めかもしれない。

だったらもう建設的な会話をするしかない。

非生産的の極みの女装で何をと思うが、経験則から話が進まなければ甘粕という男に終わりはないのだ。

そう考えて、やはりさっきのは人徳ではなく諦めだなと確信する。

 

「で、俺たちにどうしろと言うんだ?」

 

「なに、簡単なことだ。メイドとは主に奉仕する者、心から主を支えつつもメイド喫茶らしく可愛さも忘れずに、ただただ与えられるだけではなく自分から動き仕事を勝ち取り、主と切磋し琢磨していく存在こそ我がぱらいぞに相応しい!」

 

「おい柊、メイドってのはそんな高尚なもんなのか?」

 

「俺が知るか」

 

甘粕のメイド論とでも言うべき一大演説にあきれ返りつつも最後まで聞いた結果――

 

「――つまりは俺の気が済むまでメイドになりきれ」

 

というアホらしい内容に落ち着いたのだった。

 

 

 

時代を感じさせるようなシックな扉ががちゃりと開くと、扉に備え付けられたベルが軽やかな音色を奏であげ入店の知らせを告げる。

メイドらしくあれかし、従順な従僕でありながらも、己の個性を表に出して指名を競い取ってランカーたれ。

たしかそんな事を甘粕が力説していた気がするが、四四八はもはやそんなことは気にしない。

気にしたらやってられない。

 

「「いらっしゃいませご主人様」」

 

やるからには全力で、悪い意味で全てをなげうった四四八と自ら楽しむ甘粕の声が店内に響く。

ちなみに声を出していない面子の現状はと言えば、すでに指名で貸し切られた淳士が百合香をあしらいつつ隣の席にどっしりと腰を下ろし何だかんだで求めに応じていた。

所謂ツンデレである。

そんなツンデレを冷徹な視線で睨む幽雫も、相変わらず百合香から離れずに近くに待機しているのだが、残念ながら幽雫に百合香の指名が入っていないのは明らかであった。

ここの席は一部を除き、まだ和気あいあいとしている方だろう。

実際に和気あいあいとしてはいないが、もう一方の机に比べれば盆と正月が一緒に来たような賑やかさだ。

 

「……」

 

「いやー我が主の思い付きにも困ったもんだよね」

 

「……」

 

「おーいセージ」

 

「……」

 

「ここには絵も音もないんだから、喋らなきゃ居ないのも同じだよ」

 

「……死にたい」

 

あれほどまでに生き汚く、自らを蝕む死の病魔に屈服せず絶対不可避の運命に立ち向かい続けたあの柊聖十郎が、初めて死を望んだ瞬間だった。

辛気臭いにもほどがあるテーブルだが、甘粕としてはそれもそれでアリだと感じているのか文句を言わない。

 

 

さて、入店してきた人物に目を向けよう。

服装は何故メイド喫茶にその恰好?と言いたくなるような和装に、刺青・タトゥー入店禁止だったら入れない人頭の蛇を両腕に刻み、不敵な笑みは全て見透かしているぞと言わんばかりの男

 

「よいよ楽しいと聞いちょったが、こいつはまた酷い店じゃのう」

 

「壇狩魔!?」

 

「ここは客相手に名前を呼びつける店たあ聞いとらなんだのう」

 

「ぐっ……!」

 

まさに正論である。

というか、客ってなんだコイツもメイド側じゃないのかと甘粕を睨むも、答えは神野から返された。

 

「彼は無理だよ、良くも悪くも自分が面白い方にしか動けないからね。捕まえようと思った時には、すでにもぬけの空ってやつさ」

 

「神祇省の女子の恰好なんぞ、わしも着とうなんぞないんでのう。こんなんなら、見てるだけで十分じゃ」

 

メイド喫茶の色調に浮きまくりな――そもそも女装メイドと比較できない――壇狩魔が、自分の盧生である四四八の肩を引きテーブルへと移動していく。

それを見た甘粕が「先を越されたか……」と、無駄なまでに新たな熱意を溢れさせていたのは四四八にとってマイナス要素でしかなっかただろうが。

 

「……ご主人様、ご注文は何にしましょうか」

 

「注文のう……とりあえず、酒じゃ」

 

「は?」

 

「酒もってこい」

 

ソファーにふんぞり返り、酒を要求する狩摩。

既に何度も言っているが、ここはメイド喫茶である。

つまり酒なんて物はない。

 

「なんじゃ阿頼耶と繋がっちょっても、ジャリはジャリらしく酒も知らんのか?」

 

「いや、酒ぐらいバーテンダーのバイトを――ってそうじゃなくてだ、メイド喫茶で酒が出るか!」

 

「客が欲しいもんを出すのが下女の仕事じゃろ、店員を教育してるんかいのう甘粕」

 

ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべつつ甘粕に問いかける狩摩だったが、そんなおちょくった雰囲気を感じれば感じるほど四四八のストレスが溜まっていき、かくいう甘粕はストレスを溜めつつも顔色を変えない四四八を内心賞賛していた。

 

「素晴らしい。己に与えられる職務の理想と現実のギャップに曝されつつも、本分は全うすべくする姿は美しい、賞賛に値する」

 

内心ではなく口に出して賞賛していた。

 

「俺は店の決まりに抗う全てを許す。ただ決まりごとに唯々諾々と従うのではなく、己が判断で己が責任で己が度量で物事を推し量り働ける人材こそを俺は求めているのだから」

 

「つまり店員に丸投げっちゅう事とは、ますますたいぎい店じゃのう。まあよか、はよう酒持ってきて酌せい」

 

「――ッ!」

 

まずもって諸氏は知っているだろうが、柊四四八とは融通の利く男でありやるからには全うするだけの気概を持った熱血少年である。

そんな四四八だってストレスは溜まるし、怒るときは起こるのは当然だ。

ただ、融通が利きすぎてやるからにはやるからこそ、四四八も一種の馬鹿なのだ。

甘粕の言を丸呑みにするのではなく、彼の演説を聞いて自身の中に作り上げたメイド論を訥々と狩摩へ語り始める。

愚者には理解を智者には喝采を得られるほどに練り上げられた独自のメイド論は、甘粕のそれとは少し違うが無意味な情熱と無自覚の欲望が見事に折り重なった、甘粕のメイド論に勝るとも劣らない唯一奉戴すべきと四四八が願うメイド論だった。

甘粕の演説内容を聞き流していると見せかけて、ちゃんと聞いていたんだな。

ちなみに、甘粕の演説を――今回の四四八のメイド論もだが――淳士は当然すべて聞き流した。

 

「それでこそ、俺が真に認めた男だ。あの短期間でそこまで深い理解と、自らの中で新たなるメイド論を創造するとは……やはり負けられん!俺のメイド論に抗い、立ち向かおうとする初々しいメイド論。そのメイドが放つ輝きを未来永劫、愛していたい!慈しんで、尊びたいのだ。守り抜きたいと切に願う」

 

「こんなことで認められたくなくていい!」

 

「そう照れるな、さあ一緒にメイド讃歌を歌おう!喉が枯れ果てるほどに!」

 

 

 

 

 

「はっ?!」

 

激しい動悸と滝のような汗に目を覚ます。

周囲を見回しても特別驚くような事のないいつもの自室で、夜の帳に包まれたこの部屋には四四八以外に誰かが居るという事もない。

何か悍ましい夢を見たような、間違っても見てはいけない何かを脳髄に叩き込まれたような震えが走る。

なんだ、何があったんだ?うっ……頭がッ!

 

「……思い出せないなら、思い出せない方がいい気がしてきたな。シャワーでも浴びよう」

 

浴室前にたどり着いた四四八は、汗でびしょびしょになったジャージを脱ごうとした時に鏡を見て凍りついた。

服はいつものジャージ上下であるが、頭の上には純白のレースが輝くカチューシャが乗っているのを見て、詳細は思い出せないがメイド服を着た夢を思い出し悶絶に打ち震えるのであった。

翌日もう一人の被害者である淳士に四四八が昨晩の夢を尋ねたところ、何も覚えていないしカチューシャも理解されず困惑の坩堝に陥ることとなる。

 

ちなみにだが、文化祭の出し物として晶と二人でメイド服を着させられる事を知る数時間前の出来事である。

盧生が夢の力を持ち出したのではなく、正夢だったのだった。




おれじゃない
あまかすがやった

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