ごちうさエイプリルフールネタに便乗した一発ネタ短編。
今日もラビットハウスは平和です。


※pixivにも投稿中。

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魔法少女チノ 最後の決戦!

☆前回までのあらすじ☆

 

 どこにでもいるような平凡な少女・チノちゃん。チノちゃんは本当は姉のココアのことが大好きなのに、なかなか自分の気持ちを素直に口に出せない女の子です。だけどある日、姉のココアがコンバット・アーミー・リゼと名乗るミリタリー少女に誘拐されてしまいます。

 いつも恥ずかしくて気持ちを表に出せず、どうしても無愛想に接してしまっていたけど、チノちゃんにとって姉はとても大切な存在。どうしても取り戻したいと思いつつも自分が無力であることを嘆く彼女の元に、突然ティッピーと名乗る不思議なウサギが現れます。そして大好きな姉を取り戻す力、魔法少女となる力を与えてくれたのです!

 

「魔法少女チノ、華麗に爆誕です!」

 

 姉を取り戻す力を手に入れたチノちゃんの前に、待ち受けるはリゼちゃんの手下である精鋭達。マメ隊と名乗るコンビネーションを駆使する2人組、あんこという使い魔ウサギを操る魔術師千夜ちゃん、コーヒー酔拳の使い手シャロちゃん……。数多くの強敵との激戦に辛くも勝利したチノちゃんは、とうとう大好きな大好きな姉を連れ去った宿敵、リゼちゃんと対峙するのでした……。

 

 頑張れチノちゃん、大好きなお姉ちゃんはもうすぐそこだよ!

 

 

 

 

「フハハハハ! よくぞここまで来たな、魔法少女チノよ!」

 

 弾がたくさん付いたベルトを体に巻いた、迷彩服と緑色のベレー帽の女の子は、豪華な椅子に足を組んで座っていました。そしてウサギを撫でながら、高笑いと共にいかにも悪役の言いそうなことを口にします。そう、ツインテールが似合うこの女の子こそ、チノちゃんの大好きなココアお姉ちゃんを連れ去ったミリタリー少女、コンバット・アーミー・リゼなのです!

 

「意外だったぞ、褒めてやろう。まさか我が精鋭達を倒してここまで来るとは、いささか予想外だった」

「大切な姉のためです。私は……負けません!」

 

 可憐なる水色の魔法少女衣装に身を包んだチノちゃんが力強く答えます。頭の上には、チノちゃんに力を与えてくれたティッピーが帽子のようになって被られています。そしてチノちゃんの手には、魔法少女の武器であるコーヒー・スプーン・ステッキが! 強い! かわいい!

 だけど、チノちゃんも平気ではありません。ここまでの戦いで力を大きく消耗して、肩を揺らして息が乱れてしまっています。

 

(それでも……弱音は吐きません! ココアさんを……大好きなお姉ちゃんを助けるまでは……!)

 

 チノちゃんは強い決意と共に視線を投げかけます。でも、リゼちゃんは低く笑うだけでした。

 

「いい目だな。よほど姉が大切と思える。……いいだろう、会わせてやろう」

 

 ウサギを撫でていた手を止めて、パチン、と指を鳴らすリゼちゃん。かっこいい! その合図に、部屋の隅にあった暗がりが照らし出されます。そこで見たものに、チノちゃんは目を見開きました。

 

 そこにあったのは、鉄格子のついた檻だったのです! そして、その中にいたのは――。

 

「ココアさん!」

 

 彼女にとって大好きな姉であるココアがそこに! ああ、捕らわれてしまった無力なココア。だけど、お姉ちゃんが大好きなチノちゃんが助けに来てくれたよ! もう少しの辛抱だからね!

 

「ああ……チノちゃん! そんなにボロボロになって……! 私のことはもういいから、チノちゃんだけでも逃げて!」

 

 妹思いのココアは、我が身よりも妹を心配しています。なんて健気でしょう!

 

「それは出来ません……! 私は、大好きなココアさんを助けるためにここまで来たんですから!」

「チノちゃん……」

「……待っていてください、お姉ちゃん。すぐに、助けてあげますから」

 

 優しい笑顔が大好きなお姉ちゃんに向けられます。でも次にそれは決意の表情へと変わり、リゼちゃんへと視線が移りました。その様子を愉快そうに眺めていたリゼちゃんが口を開きます。

 

「なかなか感動する場面だったな。しかし、これが最後の対面だ」

「そうはなりません……! 私は、勝ちます!」

 

 すぅ、とチノちゃんは静かに息を吸います。そして高らかに、チノちゃんが魔法少女であることを証明する口上を紡ぎ出しました。

 

「木組みの街の平和を乱す悪い人は、私達が許しません! あなた達の荒んだ心、この一杯で癒します! カフェラテ、カフェモカ、カプチーノ!」

 

 かわいい! なんてかわいいの! 秀逸なデザインの衣装を着た美少女の口上、かわいさのあまり檻の中でココアは卒倒しちゃってるよ!

 

「フフフ……」

 

 でも悪の心に染まってしまったリゼちゃんには、そんなかわいさは通じません。勿体無い! このかわいさがわからないなんて!

 

「なかなかかわいいことは認めてやろう。しかしかわいいは正義ではないのだ! 強い者こそが正義なのだ! そう、私こそが正義なのだ!」

 

 前言撤回。悪の心に染まっていても、やっぱりチノちゃんのかわいさはわかるんだね!

 だけど、リゼちゃんはチノちゃんと戦うことをやめる気はないみたいです……。やめて! ココアのために争わないで!

 

「それではいくぞ! 覚悟はいいか、魔法少女チノ!」

 

 撫でられていたウサギがまさしく脱兎の如く逃げ去り、リゼちゃんは立ち上がりました。そして椅子の後ろに隠してあった武器を手に取ります。ああ、なんて大きな機関銃!

 

「ーーッ!」

「コンバット・アーミーの名は伊達ではないのだよ! いくぞ! ハーッハッハッハ!」

 

 腰に構えた機関銃が火を噴き、リゼちゃんは辺り一面に弾を撃ちまくります! 危ない! チノちゃん気をつけて!

 

「防御魔法! シールド・エスプレッソ!」

 

 だけどチノちゃんも負けていません! ティッピーから授かった魔法の力、高濃度に抽出された魔力を茶色の防壁にして迫り来る銃弾を弾き飛ばします!

 

「くっ……うぅ……!」

 

 でもでも、チノちゃんが辛そう! 無理もありません。チノちゃんはここまでの戦いで、疲れが溜まってしまっているんです。

 

「きゃあっ!」

 

 とうとうチノちゃんの魔法の防壁が破られてしまいます。そんな! 大丈夫、チノちゃん!?

 

「ハーッハッハッハ! これが力だ! 私が正義なのだ! ハーッハッハッハッハッハ!」

 

 高笑いと共にリゼちゃんはひたすら銃を撃ち続けます。でもやがて弾が無くなってしまい、嵐のように続いた銃声は止みました。

 ああ、チノちゃん……。チノちゃんはどうなっちゃったの……!? 檻の中のココアは固唾を呑んで見守ることしか出来ません。

 

「これでわかっただろう、チノ。いくら姉が大好きだといえど、貴様の気持ちなど所詮はその程度なのだ」

「う、うぅ……。そんなこと……ありません……!」

「しかしお前は私に負けた! この結果が全てよ! ハーッハッハッハ!」

 

 突きつけられた残酷な現実に、チノちゃんは何も言い返せません。たまらず、檻の中のココアが声を荒げます。

 

「違うもん! チノちゃんは私を助けるために、こんなボロボロになってもここまで来てくれたんだもん!」

「だが負けたのだ。勝ったものこそが正義、私が正義だ! その正義の前に、お前達2人の絆など到底勝てるものではなかったのだ!」

 

 2人は思わず言葉を失ってしまいます。だけど、互いを思う気持ちだけは本物なのです。

 

「チノちゃん! 私はチノちゃんのこと、大好きだよ! チノちゃんも私のこと、大好きだよね!?」

 

 檻の中からのココアの声に、一瞬だけチノは考えて、それから答えました。

 

「……勿論です! 私もココアさんのことが……お姉ちゃんのことが大好きです!」

「まだ言うか! ……いいだろう。その減らず口も、ここで終わりにしてやろう!」

 

 リゼちゃんが懐から黄金の拳銃を取り出し、チノちゃんへと狙いを定めます。やめて! チノちゃんを傷つけないで!

 

「さようならだな、魔法少女チノ!」

 

 無情にも銃声が鳴り響きました。チノちゃんは固く目を閉じ、ココアは思わず目を逸らして――。

 

「なっ……!? なんだ、お前は!?」

 

 そのリゼちゃんの声に2人は視線を戻して、目を見開きました。

 

 そこにはかわいらしいアンゴラウサギの体が頭となり、しかし筋骨隆々な胴体と手足に海パン姿。人間のような格好でありながら、到底人間には見えない謎の生き物が立っていたのです!

 

「やれやれ、しょうがないのう」

「な、なんなんだと聞いている!」

 

 続けて銃声が鳴り響きます。でも謎の生き物は、その筋肉ムキムキな腕を目にも止まらぬ速さで動かしてから手を開き、何かを地面に落しました。

 なんと、銃弾です! 弾を全て、素手で掴み取ったのです!

 

「あ、あぁ……」

 

 恐怖のあまり、リゼちゃんは腰を抜かしてしまいました。他の2人も何が起こったのかわからず、ただ呆然とすることしか出来ません。

 

「チノよ、お前の姉を思う気持ち、しかと見届けたぞ」

「え……? あ、もしかして……!」

 

 頭に手をやり、そこにいたはずの帽子状の存在がいないことに気づきます。そう、その生き物こそ――!

 

「ティッピー……なんですか……?」

「本当は魔法少女となったチノに全て任せるつもりだったが……。今回だけ特別にな」

 

 アンゴラウサギのその顔は、優しく微笑みかけます。しかし次にかわいらしい瞳を鋭くし、リゼちゃんを見つめなおしました。

 

「ひいっ……! か、神様……!」

「神様にお祈りは済んだか。では、部屋のスミでガタガタふるえて命ごいする心の準備はOK?」

 

 チノちゃんに魔法少女の力を与えた大元の存在であるティッピーの魔力(物理)が炸裂! 意外な形とはいえ、コンバット・アーミー・リゼはとうとう倒されたのです!

 

「チノちゃん!」

「ココアさん!」

 

 ついに大好きなお姉ちゃんを助け出したチノちゃんは固く抱き合いました。夢にまで見た、感動の瞬間です。

 

「み、見事だ……魔法少女チノ……」

「リゼさん……」

「私はお前達姉妹の絆の前に敗れた……。だが忘れるな……。いずれ第2、第3のコンバット・アーミー・リゼが現れるだろう……。その時まで……束の間の平穏を楽しむがいい……」

 

 一瞬、チノちゃんの顔に影が差します。でも、すぐにチノちゃんの表情に強い意思が戻りました。

 

「……何度でも戦ってみせます。だって私は、ココアさんが……お姉ちゃんが大好きだから……!」

「チノちゃん……!」

 

 なんて美しい姉妹の絆! 普段はうまく言葉で伝えられないだけで、チノちゃんは本当にお姉ちゃんのことが大好きなんです。

 

「ねえ、チノちゃん。もう1回大好きって言ってみて」

「はい、何度でも言います。……お姉ちゃん、大好きです!」

 

 こうして魔法少女となったチノちゃんの戦いは終わりました。ありがとうチノちゃん! そしてココアを、お姉ちゃんを大切に、これからも仲良くしていくんだよ!

 

 

 

☆めでたしめでたし☆

 

 

 

 

 

「で、どうどう? 私の書いた小説!」

 

 うんざりした様子のチノとどこか目を輝かせた風なリゼ。2人の顔が上がって物語を読み終わったと分かると、ココアは笑顔と共にそう問いかけた。

 

「魔法少女になったチノちゃんをイメージしてこの服を作ったんだけど、同時になんか小説のアイデアが天から降ってきて! その小説を徹夜で書いちゃったの! ねえねえ、面白かった? 『魔法少女チノ 最後の決戦!』」

「勝手に人を魔法少女にしないでください。その前に、なんでいきなり最終決戦なんですか? 最初が唐突に前回までのあらすじ、って……」

「だってー、私が助けられるところを書きたかったんだもん。チノちゃんが『お姉ちゃん、大好きです!』って言って助けに来てくれるところ!」

「作者の意思を作品に反映させすぎです。というか、勝手に私を姉妹にした挙句、事あるごとに『大好き』って強調して、地の文にもココアさんの意思が見え隠れしてるし。……あと、最後のオチは一体……」

「えへへー。最近読んだ漫画にリスペクトされちゃってね。きっと本当のティッピーはダンディーな声でこんな風にかっこいいんじゃないかなーって」

「……ココアさんはティッピーをなんだと思ってるんですか。人間みたいな胴体も、手も足も生えません」

「つまりティッピーじゃ手も足も出ない! うまい、チノちゃん!」

 

 チノは大きくため息をこぼしていた。助けを求めるようにリゼに話を振る。

 

「リゼさんからも何か言ってあげてください。ココアさんが私達を勝手に登場させてこんなめちゃくちゃな小説を書いたのはリゼさんとしても……」

 

 が、チノの思惑は大きく外れた。読み終えた時同様、目を輝かせたリゼはガッシリとココアの手を握っていたのだ。

 

「ココア! これ、面白いじゃないか!」

「なっ!? り、リゼさん!?」

「さっすがリゼちゃん! 見る目ある!」

「大切な姉のために我が身を省みず戦うチノの姿、私は感動した!」

「リゼさん、私とココアさんは姉妹じゃありません……」

 

 健気なチノの突っ込みも流されてしまう。普段の凛々しい様子はどこへやら、今のリゼには届きそうにない。

 

「ああ、高笑いして弾薬が尽きて銃身が焼き尽くまでフルオート……。いいなあ……こんな悪役、憧れる……!」

「でしょでしょ! ……と、なれば」

 

 2人の視線がチノへと移る。ビクンと小さな身を震わせ、悪寒が背筋を走り抜けていた。

 

「ここはチノちゃんに私の作った魔法少女衣装を着てもらって、プロモーションビデオ撮影から始めないと!」

「な!? なんでそうなるんですか!」

「ココア、私の服は自前で用意しよう。銃はモデルガンを見繕えば準備できるし……」

「だから、なんでそうなるんですか!」

「このプロモーションビデオと小説で、街の国際バリスタ弁護士としてパンを焼きながら小説家の道を生きるという私の夢の第一歩が始まるの! チノちゃん、協力して!」

 

 ずいっと2人の顔が迫った。顔の本気具合から、頭ごなしに否定するのが難しくなってしまう。

 

「い、嫌です……!」

 

 それでもチノは自分の意思に従って拒絶の言葉を口にしていた。途端に、目に見えてココアの表情が暗くなる。

 

「そんな……。チノちゃん……私のこと嫌いなの……」

「きっ、嫌いな訳……ありません……」

「じゃあ!」

 

 まるで今のが演技だったようにココアの表情は輝いた。そして手には小説と一緒に持ってきた、チノの魔法少女衣装が握られている。

 

「この服を着て、決め台詞を言ってみて! 『木組みの街の平和を乱す悪い人は、私達が許しません! あなた達の荒んだ心、この一杯で癒します! カフェラテ、カフェモカ、カプチーノ!』って!」

「言いません!」

「それから、『お姉ちゃん、大好きです!』っても言って!」

「言ーいーまーせーんー!」

 

 ココアの部屋からワイワイと楽しそうな声が漏れる。

 

 今日も、ラビットハウスは平和だった。

 


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