ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は楓ちゃん回!
 そして久々のヤンデレ回なので、苦手な方は一応閲覧注意で。しかしヤンデレ以上に可愛い楓ちゃんが見られますので、是非勇気を振り絞ってどうぞ!


ヤンデレ妹 楓ちゃん!

 現在の状況を確認しよう。

 まず俺の身体が完全に縛られている。朝目が覚めたらベッドの上で縄で身体がぐるぐる巻きにされている始末。一瞬秋葉の人体実験の道具にされそうだと勘違いしたのだが、周りを見渡してみると紛れもない俺の部屋、その可能性は著しく低いと思う。俺がそう思いたいだけだが……。

 

 

 こんな状況でもある程度は冷静でいられるのは、やはり過去に()()()()()があったからだろうか。その経験に関わらず、これまで幾度となく奇想天外な荒波に揉まれてきたし、慣れってつくづく怖い。

 

 

 なんて大して状況も分析せずに余計なことばかり考えている俺は、やっぱりこの摩訶不思議な生活に毒されてきているな……。そもそも彼女9人持ちの時点でまともな生活は送っていないが。

 

 

「おーい!楓ぇーーー!!」

 

 

 …………

 

 

 音沙汰なしと。一応俺より先に起きているだろう妹の楓の名前を呼んでみるが、アイツの声どころか家からは物音1つ聞こえない。これが秋葉の仕業だとしたら、邪魔になる楓をどこかに連れ去ったと考えられるけど……。怖い考えをするなと思われるかもしれないが、秋葉に常識は通用せず、どんな状況でも起こり得る。アイツのせいで今にも地球が滅亡すると言われても、何ら不思議ではない。

 

 

「休日だからって変なことに巻き込むなよな。こっちは受験生だっつうの。あまり勉強はしてねぇけど……」

 

 

 休日は休む日と書いて休日、だからこそ俺は彼女たちとデートのお約束が入っていない限り昼まで寝ていたい所存である。

 

 だが俺の身に降りかかっている現状を見れば、これからロクでもないことに巻き込まれるのは明白。ここは今まで俺が鍛え上げてきた、どんなことが起きても驚かない肝の据わり具合を見せる時がきたようだな……。

 

 

 そしてふと、俺が寝返りを打ったその時だった。

 

 

「お兄ちゃん♪」

「うわぁああああ!!か、楓!?いつの間に……」

「えへへ、さっきからいたよぉ~♪」

 

 

 楓がいつの間にか俺のベッドの隣に座っていたという驚きと、さっき意気込んだのにも関わらず高速でフラグを回収したことの2重の驚きが俺を襲う。さっきまで物音1つしなかったのに、寝返り1つで目の前の世界がガラリと変わったら、そりゃあ驚くだろ!まさか楓が俺の顔を覗き込むように眺めていたなんて思わないって!

 

 

「よ、よぉ、おはよう」

「おはよ~お兄ちゃん♪今日もいい朝だね!」

「あ、あぁ」

 

 

 なんだ……いつもの楓とは違うような、どこか様子がおかしい。

 俺の寝起きを笑顔で迎えてくれることに変わりはないのだが、その笑顔が明るい笑顔ではなく、クスクス笑うような小悪魔のような笑顔。元々彼女は小悪魔的な要素はあるのだが、家の中では割と俺に対して塩対応も珍しくはないため、早朝から彼女がこんな態度を取っているのは極めて珍しい。

 

 

 もしかして、何か企んでいるのか……?いや、この状況を見れば言わずもがなか。

 

 

「俺をミノムシみたいに縛ったのはお前か?」

「そうだよぉ~」

「そうか。ダメ元で言ってみるが、外す気は?」

「ないよぉ~」

「うん、知ってた」

 

 

 そう安々と縄を外すくらいなら、夜中にこっそり俺の部屋にしのびこんだりする苦労なんて掛けないよな。

 そんなことより気になるのは、楓のこの妙な笑顔。さっきからクスクスと俺を小馬鹿にしているかのような微笑みが止むことはない。流石我自慢の妹というべきなのか、そんな表情も可愛いのだが、もちろんそれ以上に不気味さを感じられる。

 

 

「お前、なんでそんなに嬉しそうなんだ……?」

「えっ?だって、お兄ちゃんはこれから私とずぅ~っとここで暮らすんだよ♪私にお世話されながら、この部屋で永遠にね……お兄ちゃんに余計な雌豚が近付かないように、ずっと私が一緒にいてあげる!」

「…………」

 

 

 オーケー、状況は大方理解した。これだけで察することができる辺り、やはり俺はこの奇々怪々な日常にどっぷりと溶け込んでいるんだと思う。

 

 それにしてもヤンデレとはかなり久々だ。しかし久々すぎるからといって、ヤンデレちゃんの対処法に手馴れていると言われたらそうではない。一手でもミスをすれば、確実にその場で刺されるだろう。

 

 サラッと緊張感なくして言っているように聞こえるかもしれないけど、これでも一応()()()()()を無事に乗り越えてきた人間なもので。それ以降も何度か同じような状況に遭遇しているしな。

 

 

「別にこんなに縛らなくても、お前とならずっと一緒にいてやるのに」

「え、そぉ~お?えへへっ」

 

 

 ヤンデレを相手にした時の最も有効な対策、それは優しくすること。単純な方法だが、大体ヤンデレちゃんは褒められると普通にデレるだけで、自分に害が及ぶ可能性は極めて低い。上手いこと"ヤンデレ"の"デレ"の部分だけを引き出してやれば、そこほど気を張らなくても対処可能なのだ。むしろいつもとは違う可愛さのギャップに、こっちから惚れるまである。

 

 

 おっと話が脱線した。もし今の俺のように女の子に拘束されてしまったら、こうやって褒めることで相手を徐々に懐柔させ、掛けられた枷を1つ1つ向こうから解かせるように仕向ければ問題ない。これ豆知識な。

 

 

「だからせめて手の縄くらいは外してくれないか?」

「心配しないで。お兄ちゃんの性処理は全部私がしてあげるから♪お兄ちゃんの性処理をしていいのは私だけ……μ'sの先輩たちには一切お兄ちゃんのお兄ちゃんを触らせないから」

「その独占の仕方はどうなんだ……」

「えぇ、気に入らない?お兄ちゃんの命令ならどんなプレイだって受け入れるのに」

「ま、マジか!!」

「お兄ちゃん、期待しちゃってるね♪」

「あっ……」

 

 

 待て待て!俺が懐柔されそうになってどうする!!危うく楓の策略に乗せられそうだった……。

 ヤンデレを相手し慣れている俺をここまで欺くとは、流石に俺の妹と言ったところか、俺の弱点を分かってやがる。ヤンデレになってもまともに知性は働いているのか、ただただ俺を縛って我が物にしようとする量産型ヤンデレとは違うな。

 

 

「ま、お兄ちゃんがイヤというのなら、少々強引な手を使っても、私と一緒にいられるようにするしかないよねぇ」

「お、おいそれって……」

「フフッ♪」

 

 

 楓が取り出したのは、彼女が愛用している料理用の包丁だった。今までベッドで隠れて見えなかったけど、コイツそんな武器を隠し持っていたのか!!

 

 さっきから何度も言っているが、俺はこんな状況など既に慣れっこだ。しかしこうして女の子が刃物を持っている光景を間近で見ると、少々血の気は引いてしまう。いくら経験があっても、現実を目の当たりにすると恐怖感が改めて伝わってくる。

 

 

「お兄ちゃんはね、ずっと私と一緒なの!なるべくなら私もお兄ちゃんを傷つけたくない。だから私にこれを使わせないで欲しいなぁ」

「じゃあ使わなかったらいいじゃん」

「あまりお兄ちゃんが我が儘を言うと、私、我慢できなくなっちゃうかもね♪」

「お前、いい笑顔してるよな……」

「へへっ、ありがとぉ~♪」

 

 

 にんまりと何故か得意げな表情をする楓。その愛おしい表情に一瞬気を引かれそうになるが、懐に閉まってある包丁を忘れてはならない。ブラコン気質が限界突破している彼女のこと、下手に琴線に触れればマジで刺されるかもしれないぞ……。

 

 

「そうだ!朝ごはんを作ってきたの忘れてた!」

「さっきからずっといい匂いがするなぁと思っていたら、わざわざ朝食持ってきてたのか」

「その格好じゃ食べられないでしょ?だから私が食べさせてあげるよ♪」

「食べさせてあげるって、箸すらないじゃないか」

「そんなものいらないよぉ~。だってこうするんだから」

 

 

 楓は皿の上に乗っていた卵焼きを1つ摘むと、それを自分の唇で咥える。そして俺のベッドへ身を乗り入れて、卵焼きを咥えた自分の唇を俺の口元へと近付けた。

 

 これは口移しで食えってことだよな……?別に食べるのはいいんだけど、あわよくばでキスしてきそうで怖いんだが。流石にこんな訳も分からない状況で楓とのファーストキスを経験したくはないので、卵焼きの端を咥えてひったくるように奪えば問題ないか。

 

 

「んー!んー!」

 

 

 早く口移しさせろと楓の催促。飲み物の回し飲みならいくらでもやったことあるのだが、こんな恋人同士みたいな行為は、そこら辺の仲のいい兄妹よりもよっぽど仲のいい俺たちですらやったことがないため、口移しの相手が実妹だとしても少し緊張してしまう。

 

 彼女はただの妹ではない。お互いに異性として好きだと認め合った仲、もう彼女は穂乃果たちと同様に俺の大切な人となっているのだ。だからキスが成立するかしないかの瀬戸際まで詰め寄られたら、そりゃあドキドキするのは当たり前だろ。

 

 

 俺は楓の唇で挟まれた卵焼きの本当に端っこを自分の唇で挟み、そのまま彼女の唇から引き抜く感じで自分の顔全体を後ろに下げる。

 

 

 その時、楓の笑顔が急に黒くなった。笑顔を表す擬音を使えば、今まで"ニコッ"としていたのが急に"ニタッ"と変わったのだ。

 

 

 これは……来る!!

 

 

 そして案の定、楓は俺の唇を目掛けて自分の顔を勢いよく押し付けようとしてきた。事前に何とか彼女の行動を察知していた俺は、卵焼きを落とさないように自分の顔を迅速に後ろへと下げる。

 

 

「んぐっ!!」

 

 

 すると楓は勢い余って、俺のベッドに顔を思いっきりダイブさせてしまう、可愛い。

 いつも完璧に見える彼女だからこそ、こんなおマヌケな姿は余計に微笑ましかったりする。そして顔を上げて、ちょっと涙目になっている姿も愛おしいじゃないか。こんなあざとい表情をするコイツは非常に珍しいけども。

 

 

 俺は楓からひったくった卵焼きを一口で飲み込んで、よく噛んで体内に放り入れる。

 甘い……と思ったけど、今日のは少し甘さ控えめかな。

 

 

「もうっ、お兄ちゃん避けないでよ!」

「お前、完全にキスするつもりだっただろ……」

「だってお兄ちゃんは私とずぅ~と一緒にいるんだよ?一緒にいるってことはもう恋人、いや夫婦なんだよ!!分かる?分かるよね!?」

「近い!近いって!!」

 

 

 またしてもキスをしそうな勢いで、楓は自分の顔を俺の眼前へ近付ける。顔は笑っているけど目が怖いとは、まさにこのことか。目の虹彩が有り得ないくらい光を失っているんだけど、人間ってこんな目できるの!?

 

 

「全く。こんな調子だったら朝食を食い終わるのにどれだけ時間掛かるんだよ……」

「私はお兄ちゃんとの口移しを楽しめるから、全然いいんだけどね!」

「飯が冷めちまうだろ」

「そこまでお兄ちゃんが私との口移しを楽しみにしてくれているなんて!!嬉しさでもっとお兄ちゃんを縛り付けちゃいそう♪」

「やめろやめろ!!」

 

 

 コイツ、俺を縛った縄とは別にもう1束縄を持ってやがる!!もう俺の身体はこれでもかというくらいにぐるぐる巻きにされているのに、これ以上縛るところなんてないんだが……。ていうか、よく俺を起こさずに縄で縛れたな。俺はコイツのヤンデレ気質よりも、その拘束技術を褒め称えてあげたい。

 

 

「じゃあ次はもう一度卵焼きね!」

「今度はキスしようとするなよ」

「ん~どうしよっかなぁ~♪そんなことよりお兄ちゃん、私の卵焼きどうだった?味付け変えてみたんだけど」

「確かに少し変わってたな。いつもよりも甘さが控えめっていうか、ほの――――」

 

 

 そして俺はここで言葉を詰まらせる。むしろ自分から故意に詰まらせたのだが、遅かったと感じたのは楓の顔を見た時だった。一見するとその表情は"無"、特に何も考えていないように見える。だがその瞳の奥は、底が見通せないほどの"黒"が広がっていた。

 

 

 やっちまった……つい好物の卵焼きのことを聞かれて、話し相手がヤンデレちゃんだってことを忘れてしまっていた。俺はヤンデレちゃんに言ってはならない禁止用語、つまりタブーを犯してしまったのだ。

 

 

「ねぇお兄ちゃん、どうして他の女の名前を出したの……?」

「い、いや、出してないだろ……」

「出してない?"ほの"って、どう考えても穂乃果先輩のことだよね?ねぇ?」

「違うよ。ほのかに香る甘さだって言いたかったんだ」

「嘘つかないで!!」

「!!!!」

 

 

 楓は懐から勢いよく包丁を取り出すと、刃物の先端を俺の鼻の頭に向けた。あと一寸ズレていたら、俺の鼻が見事に縦真っ二つになっていただろう。俺に包丁を向けることに一切の躊躇がないのか、彼女が包丁を握る手は微動だにしない。コイツも俺を本気で切ろうとは思ってないだろうが、この覚悟は本気だ!!早く楓をなだめないと!!

 

 

「いくら先輩たちがお兄ちゃんの彼女だからって、私といる時くらい私を見てよ!!そうだよ、やっぱりお兄ちゃんは私と一緒にこの部屋で暮らすべきなんだ。そうすれば誰も邪魔は入らないし、お兄ちゃんも私だけを見てくれる。そのために私とお兄ちゃんの愛の証を付けないとね……どうしよう?お兄ちゃんのカッコいい顔を切りたくないし、腕や手を切ったらお兄ちゃんにハグやナデナデをしてもらえなくなる。いっそ雌豚の名前を二度と口走らないように口を切っちゃう……?いや、そうすると私への愛も囁けなくなるか……お兄ちゃんから私を愛してるって言ってくれるのを、ずっと待ってるんだからね。そして何より、お兄ちゃんの大切な唇は私のモノになるんだから、傷付けることなんてできないよ。フフッ……」

 

 

 目の光を失った楓はマシンガンのような口調で俺への重い愛を囁く。割と早口で喋っていたのにも関わらず、俺は彼女の放った言葉を一字一句正確に聞き取ることができた。またさっきみたいに墓穴を掘らないよう、相手の言葉を冷静に理解し、何とかこの場を打開する一手を探し出す。

 

 さっきも言ったけど、何故かコイツは本気だ。目も行動も言葉も、まるで()()()を思い出すかのように、俺に冷汗が流れる。彼女は目から光が消えつつも、強烈な目線で俺を精神的に捕食する。俺は息を飲んで、彼女を見つめることしかできなかった。

 

 

「そうだお兄ちゃん」

「な、なんだ……」

「さっきの卵焼きねぇ、味付けがいつもと違うって言ったでしょ?」

「それがどうしたんだ……」

「まだ気付かない?あの卵焼き、隠し味にねぇ~私の唾液を混ぜてみたんだ♪ど~お?甘かったでしょ~?」

「ま、マジで……」

「それだけじゃないよ。あの卵焼き、いつもよりちょっと赤みがかってたでしょ?」

「あぁ……って、ま、まさか!?」

「そうだよぉ、私の血液も入れてみたんだぁ♪これでお兄ちゃんの身体の中に、たくさん私の体液が入っちゃったね♪これでお兄ちゃんの身体は私のモノにしたも同然!」

 

 

 楓はそう言うと、左手の人差し指を俺に見せつける。その指には絆創膏が張ってあるが、既に血液によって赤く染まっていた。それどころか、赤の滲みは徐々にその範囲を拡大させていく。

 

 ま、まさか、まだ傷口が閉じていないのか!?もしかしてさっきごちゃごちゃと暴れていた時に、閉じていた傷口が開いてしまったのかもしれない。それなのにコイツ、笑顔を崩さず俺と戯れてたのかよ……。

 

 

「おい、この指大丈夫なのかよ!?無理してんじゃねぇのか!?」

 

 

 そう考えると、俺は思わず楓の左手を掴んでしまった。それで特に何も解決できる訳ではないけど、そうせざるを得なかった。というより、俺でも気付かぬ内に、無意識的にそうしてしまっていた。

 

 すると楓は目を丸くして少し驚いたような表情をしていたが、その直後に一変、彼女の目も表情も()()()()彼女へと戻った。

 

 

 そしてそんな彼女を見て、俺も一度冷静になって分かったのだが、何やら嗅ぎ慣れている調味料の匂いがプンプンしていた。

 

 

 この匂いは――――ケチャップ?

 

 

 あっ、も、もしかして……あの指の血液って!?

 

 

「プッ、フフフ……もうダメ、笑いが収まらない!!」

「な゛ぁ!?お前まさか……」

「ゴメン、一度大声で笑わせて……」

 

 

 その瞬間、俺の部屋に彼女の高らかな笑い声が響き渡った。

 一言でまとめれば、俺はコイツに遊ばれていたってことだ。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「はぁ?ヤンデレを一度やってみたかっただとぉ?」

「そうそう!それでお兄ちゃんがどういう反応するかなぁと思って楽しみにしていたんだけど、想像以上に面白い表情がたくさん見られたから満足だよ♪」

「お前なぁ……」

 

 

 話を総合すると、俺はコイツのお遊戯に付き合わされていたらしい。俺の慌てふためく顔を見たいがために、自らヤンデレを演じていたんだと。初めは冷静に対処ができていたが、途中からガチだと思うほどに焦ったぞ……。それだけコイツの演技が上手かったってことだけど、コイツの手のひらで踊らされていたみたいで、素直に褒めるのはなんか癪だな。

 

 

 確かによく考えてみれば、何故楓がヤンデレ化していたのか、その理由を全く考えていなかった。割と俺もあの状況を楽しんでいたのかもしれない。精神力は持って行かれたけども、彼女の可愛い一面も見られたから、それでイーブンにしておいてやろう。

 

 

「まさかケチャップを血液に見せていたとは……あの時はお前に気が散っていて、匂いに気付くのが遅れちまったよ」

「でもそれだけお兄ちゃんが私のことを心配してくれていたってことだよね?」

「まあ、あの時は必死だったから」

「だって私、お兄ちゃんに包丁を突き付けていたんだよ!それなのに自分じゃなくて私の心配をしてくれるなんて、私感動しちゃったよ!!ありがと♪」

「どういたしまして……で、いいのか?」

 

 

 いかん、素直に褒められると口数が少なくなってしまう病気を発症してしまっている。別に俺を試していた訳ではなさそうな分、こうして素の行動を褒められると恥ずかしいんだよな。楓の明るい笑顔を向けられると特に……。

 

 

「さっきの卵焼きには特に何も入れてないから安心してね。味付けは甘さが控えめになるように、ちょっと変えたけど」

「唾液や血液が両方入ってるって聞いた時はビビったよ。またそんなモノ食わされたのかって思ったから」

「また……?」

「あぁ、一度そんなことがあったからさ」

「へぇ~……私以外にもこんなことしてもらってたんだぁ~へぇ~……」

「なになに!?そこ病むところなの!?ていうか本当に演技だった!?」

「演技に決まってるじゃ~ん♪」

 

 

 じゃあさっきの口ぶりはなんだったんだよ!?また刃物を突き付けられそうな雰囲気だったんですけど!?『妹』+『ブラコン』+『ヤンデレ』の組み合わせって、似合いすぎるほど似合っているから逆に怖くなる。

 

 

「それでどうだった?私のヤンデレキャラは?」

「本格的すぎて結構ビビらせてもらったよ。でもやっぱり一番思ったことは、どんなお前でも可愛かったってことかな」

「も、もうなに素直に褒めてるのお兄ちゃん!!」

「お返しだ」

 

 

 コイツも俺と同じくド直球で褒められるのにはかなり弱い。穂乃果たちからも真面目モードで褒められるとかなりどもるし。そこのところまだガキなんだよなぁ……それは俺もだったか。

 

 

「私もお兄ちゃんが私のことを本気で想ってくれていると知って、とても嬉しかったよ♪あぁ~このままお兄ちゃんと()()()()で暮らせないかなぁ~♪」

「おい、どうして2人きりを強調した……」

「あ、そうだ。この縄、そのままでもいいかもねぇ~」

「ふざけんな!!とにかく俺は今トイレに行きたいんだ!!だから早く解け!!」

「えぇ~、ぜぇ~んぶ私のおクチが処理してあげるよ♪」

「っ……!!」

「あ!!今期待したでしょ!?ねぇねぇ今さっき期待したでしょ!?」

「うるせぇ!!」

「あはは!お兄ちゃん可愛いなぁ♪」

 

 

 なんだろうか。やっぱり俺って、秋葉や楓に一生遊ばれる生活を送り続けるのかもしれない……。

 

 

 その後、ミノムシ状態だった俺は何とか解放された。しかし、楓はさっきまでのヤンデレキャラが染み付いてしまっていたせいか、今日一日何度かヤンデレの兆候が見られる発言や行動があった。それを本人に問いただすと、決まって『無意識だった』と言う。演技じゃないのが逆に怖いんだが……。

 

 

 『妹』+『ブラコン』+『ヤンデレ』の組み合わせは可愛くもあるんだけど、毎日はやめてくれよな。俺の精神力的にも……。

 




 『妹』+『ブラコン』+『ヤンデレ』って最高じゃないですか?


 今回は楓の個人回でした!
 個人回ならR-17.9を執筆したかったのですが、前々からリクエスト(のようなもの)がTwitterの話題に上がっていたので、今回は久々にヤンデレちゃんを執筆させてもらいました。

 ヤンデレを執筆するのは数ヶ月に一度なので、毎回ヤンデレをどう書いていたのか忘れてちゃうんですよね(笑)
だから『この展開、前のヤンデレ回でも見たぞ』ってツッコミがあっても目を瞑ってください。一応毎回ヤンデレるキャラは変えているので、マンネリ化はないと思われます。

 それよりもそもそも、『あれ、ヤンデレって何だっけ?』と自問する始末。基本的に私のヤンデレは怖さと可愛さを上手く両立しようとしているので、ガチのヤンデレを求めている人にとっては生温いかもしれませんね。


 たーぼさんの小説『ラブライブ! ~奇跡と軌跡の物語~』とのコラボは2月7日(日)投稿予定です!


 先日『ご注文はうさぎですか?』の小説を投稿しました!少なくとも3話、続けば5話くらい執筆してみようと思うので是非ご覧下さい!
ちなみにノリは完全に『新日常』と同じですのでご安心(?)を。またあちらの小説にも感想や評価をくださると嬉しいです。


新たに高評価を入れてくださった

トランサミンさん、覇王神 ゾディアークさん

ありがとうございました!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

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