ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 はい、別にバレンタイン関係なく今回はタイトル通り中二病回です。
 私自身にわか中二病ですが、にわかはにわからしくセリフやワードを考えてみました。是非楽しんでもらえればと!


ほのりんは中二病!?

 今日も今日とて放課後練習。いつものようにみんなの綺麗な肌に汗水が垂れる、ちょっとエロティックな姿を見てドキドキする時間がやってきたのだ。そうは言っても今日は掃除やら生徒会やら大学の授業やらで全員が揃う時間はバラバラになるので、練習の時間は割りと遅めだ。だからそれまで部室でゆっくりしようと思っていたのだが……。

 

 

「な、なんだこれ!?」

 

 

 部室の目の前までやって来ると、その辺り一帯が異質な空間となっていた。

 なんと部室の扉の隙間から、緑色の明るい光が廊下に漏れ出していたのだ。まるでこの扉の先が異次元空間へのワープホールになっているかのような、とにかく現実的ではない謎の光が廊下の壁や天井を含め辺りに広がっている。

 

 そして俺は、一刻も早くこの場を離れたかった。

 だってこの扉を開けたら最後、また変なことに巻き込まれるのは目に見えてるじゃん!!どうせまた秋葉が何か企んでいるのか、楓のイタズラだろ?最近のコイツらがすることはマジで命に関わることがあるから、できることなら扉を開けずにこのまま真っ直ぐ家に帰りたい!

 

 

 だけどどうせ開けないと話が進まないんだろ?はいはい開けますよ開ければいいんでしょ!!

 

 

 俺は溜息を付きながら、緑色の光を放っている怪しい扉のノブを握り、ゆっくりと回して扉を開ける。

 するとさっきまで微かに漏れ出していた緑色の光が扉という障害物がなくなったのをいいことに、俺の身体を包む勢いで一気に放出された。あまりの眩しさに、俺は思わず目を瞑ってしまう。この光を目にまともに浴びたら視覚を失いそうだ。

 

 

 段々と目を開けながら部室の様子を確認すると、中は非常に暗かった。それもそのはず、部屋一面が黒いカーテンで覆い尽くされていたからだ。そして床には謎の魔法陣が書かれた絨毯、部屋の隅に追いやられた机の上には燭台やロウソク、そして一冊のノート。そのノートのタイトルは英語で、えぇっと……"Mabinogion"。日本語読みでそのまま"マビノギオン"か。

 

 さっきの緑色の光は、棚の上からスポットライトで扉を照らしていたらしい。こんなものどっから持ってきたんだよ……。

 

 

 極めつけは、部室の真ん中に黒いローブを纏った魔術師みたいな風貌の人間(?)が2人いる。1人は栗色の髪をしたサイドポニーの少女、もう1人はオレンジ色の髪をしたショートカットの少女……うん、いかにも()()()()()()()()でこういうことをしそうな奴らだと一瞬で分かった。

 

 それはいいとしてこの2人、俺が部室に入ってきたことに気付いてないのか?さっきから俺に背を向けて(うつむ)いたままだ。ちょっと声を掛けてみるか。正直なところ、見て見ぬふりをしてとっとと帰りたいけど……。

 

 

「おいお前ら」

「「わぁっ!?」」

「いい反応だなオイ……」

「れ、零君!?もう驚かさないでよ!!」

「心臓が飛び出るかと思ったにゃ!!」

 

 

 黒のローブを纏っていたのは、まぁ今更言うのもアレだけど穂乃果と凛だ。

 そして2人がこっちへ振り向いて初めて分かったのだが、穂乃果は左目に眼帯を付け、凛は右腕に包帯を巻いている。何も前情報がなければ怪我をしたと思われるかもしれないが、穂乃果は同じクラスだし凛は日中に一度会っているからその線はない。そもそも眼帯や包帯に謎のマークが描かれている時点で怪しさMAXなんだが……。

 

 

「お前ら何してんだ。こんな照明まで持ってきたりして……」

「実はね、この前――――」

「穂乃果ちゃん!キャラがブレてる!!」

「あっ、そっか。フフフ、我が解き放つ忌まわしき能力(ちから)に耐えることができたならば、その理由を教えてしんぜよう……まあ零君ごときでは、穂乃果の瞳の奥に眠る創造と破壊を司る2対の竜を止められないだろうけど」

「は、はぁ?」

 

 

 穂乃果は眼帯に手を当てながら、意味不明な言葉を漏らし始めた。

 眼帯に包帯、そしてこの暗い空間に魔法陣に燭台、そしてあの怪しい緑色の閃光――――ああなるほど、要するに俗に言う"中二病"ってやつね。この小物やセットをどこから調達してきたのかは知らないが、やけにリアルな空間だったから普通に混乱してたわ。

 

 

「別にお前の力に耐えなくても分かったよ。どうせテレビや漫画の影響でも受けたんだろ?」

「うぅ、折角カッコよく決めたのに、すぐに答えを言わないでよぉ~」

「お前ら流されやすいからな」

「凛たち馬鹿にされてる……?こうなったら永遠なる光(アガルティア)の使者である凛が、光の下で零くんに裁きをくだすにゃ!!」

「あ、あがる?なんだって?」

 

 

 早速中二病特有の意味不明な単語が飛び出してきやがった。俺は特段その道を辿ってきた訳ではないから、その辺の知識はかなり疎い。そもそも疎くても困らないし勉強しようとは思わないが、これからコイツらの相手をするのにその辺の言葉が分からなければ、確実に俺の頭はパンクする。もう逃げられるような状況でもないし、くっそメンドくせぇええええええええええええええ!!

 

 

「凛ちゃんの傲慢なる雷(イーラ・トニトルスギニラール)はこの世に蔓延る悪を徹底的に根絶する究極の雷だからね、零くんじゃひとたまりもないよ」

「さっき東洋より伝来せし混沌の末湯(ラーメン)を食べてきたから、精神(エナ)の回復はバッチリだよ!さぁ、零くんこの世に残しておく言葉はない?」

 

 

 ちょっと解読班!!解読班はまだか!?もうこの2人が何を言っているのか全然分かんないんですけど!?唯一分かるのは何故か俺が悪役となって、この2人が俺を抹殺しようとしていることくらいだ。そもそもなんで俺が標的になってんのかすらも分からないんだが……。

 

 

「なぁ、俺もう帰っていい?」

「フフフ、それはできないよ零君。零君は既に穂乃果たちが発動させた魔法陣に潜む闇の蛇王によって、身体も精神も徐々に喰われているんだから……蛇王は実体がないから、零君じゃあどうしようもないけどね」

「そしてその奪った精神力は、凛たちの魔力として吸引されているんだよ。気付かないと思うけど、零くんの体力はもう――――」

 

「じゃあな」

 

「待って待って待って!!まだ話は終わってないよーーー!!」

「もう少し!もう少しで終わるからぁ~!!」

「知るか!離せ!!」

 

 

 俺が部室から立ち去ろうとした時、穂乃果と凛が涙目になりながら俺の腰に抱きついてきた。ていうかキャラブレブレじゃねぇか……やるならちゃんと貫き通せよな。

 

 あのまま話を続けられても煩わしいけど、身体にまとわりつかれて泣かれたらそれこそうるさいので、仕方なく部室に残ることにした。早く他の誰かが来てくれればツッコミの負担も減るのだが。

 

 

「で?俺は何すればいいんだ?」

「何をって、零くんやられそうになってるんだよ!戦わないと!!」

「た、戦う!?俺はそんなイタイこと絶対にやらねぇぞ!!」

「零君は聖戦を放棄するの!?光と闇が今にも対立してぶつかり合おうとしている、この瞬間を見ても!?そんなの穂乃果の知っている零君じゃないよ!!」

「お前らこそ俺の知っているお前らじゃねぇよ!!ブーメラン投げるのも大概にしろ!!」

 

 

 コイツら、俺までも()()()()()に巻き込もうとしやがる……。俺はそんな挑発を受けても絶対にやらねぇからな。戦いの途中でもし誰かが部室に入ってきてそんな俺の姿を見られてみろ、俺は一生μ'sの前で生きていけなくなる、羞恥心的な意味で……。特に真姫や雪穂の場合は、ゴミどころかこの世のどの塵よりも見下されることは確実だ。

 

 

「じゃあ零くんはそこで見ててね、今から凛の神々しい裁きの光で穂乃果ちゃんの禍々しい闇の力をかき消すから」

「零くん1人裁けないちっぽけな光で、穂乃果の闇を払えるかな?この左目を開放すれば、この世の災いが全て凛ちゃんに降り注ぐんだよ?」

「そんな災い、凛が全部裁いてあげるにゃ!」

「口だけではなんとでも言えるよ。どうやら決着をつけるしかないみたいだね」

「うん。それじゃあいくよ!!」

 

 

 えっ、なに?何が始まんの!?それにさっきまで俺が標的にされていたはずなのに、もう2人で勝手に話を進めてんじゃねぇか訳わかんねぇ!!本当に帰っていいですか!?

 

 

 ――――と、そう思った瞬間だった。凛には光、穂乃果には闇のオーラが纏い始める。そして俺たちの足元の魔法陣が白い光を放ち出すと、2人は一斉に口を開いた。

 

 

「我が真名は"邪龍真眼(じゃりゅうしんがん)"。混沌より出てし闇の力をその目に宿す者」

「我が真名は" 聖光神雷(セイントライジング)"。悪しき闇を裂き裁きを下す者」

 

 

 自分の真名を言い終えると、穂乃果は眼帯に、凛は腕の包帯に手を掛ける。2人を纏う光と闇のオーラも、床に描かれた魔法陣も、それに応じて光の眩さをみるみる増していく。そして2人はお互いににらみ合い、更に仲良く(重要)詠唱と続けた。

 

 

「我が真名に応え、今こそその姿を顕現せよ!!漆黒の闇集いし邪悪なる世界!!」

「契約に従えし我が真名に応えよ!!正義の光集いし神聖なる聖域!!」

 

 

 遂に詠唱がクライマックスを迎える。もう既に魔法陣の光は俺たちを包み込み、もう穂乃果と凛の姿どころか部室の中さえ何も見えなくなってきているうえ、自分の姿さえまともに確認することができなくなっていた。

 

 だがしかし、穂乃果と凛は最後の詠唱をやめることはない。

 

 

「顕現せよ我が戦場!地獄の古戦場(ヘルサルガッソ)!!」

「降誕せよ守護なる神殿!天の聖域(ヘブンズサンクチュアリ)!!」

 

 

 最後の詠唱と同時に、穂乃果は眼帯を、凛は包帯を外した。その時、穂乃果の黄色い眼(恐らくカラコン)と凛の腕の紋章(恐らく自分で描いた)が闇と光を放ち、俺たちを一瞬にして包み込んだ。あまりにも強烈な光を浴び、俺は一瞬だけ意識を失ってしまう。

 

 

 何もかもが砕け、あらゆる物が再生した。

 

 

――――妄想が走る。

 

 

 行き過ぎた妄想は壁となって境界を造り、世界を一変させる。

 

 

 そして俺が目を開けた時には――――

 

 

「な、なんじゃこりゃァああああああああああああああああああああああああ!?!?」

 

 

 片や闇の空が広がる古戦場、片や天空に浮かぶ神殿が広がっていた。俺は丁度その境界線に尻餅を着いた状態で座り込んでいる。そもそも何故俺がこんなファンタジックな空間に!?さっきまで狭い部室にいたはずだよな!?

 

 そしてその古戦場には穂乃果、神殿には凛が、それぞれ武器を手に持って――――って、えぇ!?ぶ、武器!?アイツらあんなの持ってたっけ!?

 

 穂乃果が持っているのは先端が尖った、いわゆる槍だろうか。恐らくその槍を立てれば彼女の身長よりも背が高い。凛が持っているのは自分の身体より数倍も大きいハンマーだ。だが彼女はそれを軽々と持ち上げて振り回している。

 

 

「やったね凛ちゃん。穂乃果のグングニルで貫かれる使徒は、凛ちゃんで1000人目だよ」

「そんな華奢な槍で凛を貫けるかな?その前に凛のミョルニルが、槍ごと穂乃果ちゃんを潰しちゃうにゃ!」

 

 

 またお互いにお互いを挑発し合うと、2人は武器を構えて向かい合う。

 静かな風の音だけが聞こえてくる。だがその音は、これから起こる激戦の始まりを告げていたのかもしれない……。

 

 

 そして遂に2人が動き出した。

 穂乃果も凛もその場で助走もなしに大きく飛び上がり、お互いの武器に力を込めてぶつかり合おうとする。

 

 

「このグングニルに闇の炎を込め、忌々しき光を断つ!!裁きの業火(ジャッジメント・ルシファー)!!」

「ミョルニルに集いし雷よ、蔓延る悪を殲滅せよ!!風狂う雷(ダーゴナイズ・ホーローカーン)!!」

 

 

 闇の炎と聖なる雷、両者が激突する。

 俺の目から見たら互いの力は全くの互角。グングニルとハンマーは、それぞれの属性を纏って唸りを上げながら互いを削り合う。穂乃果も凛も一歩も引かず身体から、穂乃果は闇、凛は光のオーラを増幅させている。相手を叩き潰すため、全力で内なる魔力を開放しているようだ。

 

 

――――って、待て待て!どうしてこんなに的確な解説をしているんだ!?まるで俺まで中二病みたいじゃねぇか!!もう帰りたい!!だけどここって一体どこなんだよ!?どうしてこうなった……確か穂乃果と凛が変な詠唱を始めた途端に魔法陣がピカッと光って……うん、よし、考えるのをやめよう!

 

 

「やるね凛ちゃん。でもその程度の雷じゃあ穂乃果を裁けないよ!」

「こんなのまだまだ序の口だよ!穂乃果ちゃんこそ、そんなしょぼい炎で闇の炎(ダークフレイム)の化身を名乗るとは片腹痛いにゃ!」

「この炎は言わばマッチの火と同じくらい。こんな低級技で瀕死になってもらっちゃ、逆に張り合いがないよ!」

「減らず口を!」

 

 

 空中で激突していた穂乃果と凛は一旦武器を下げ、お互いの領域の地へと再び足を着ける。だが2人は休む間もなく今度は全速力で、俺の目では追えない超スピードでまたしてもぶつかり合う。

 

 

「今こそ、穂乃果の左目に宿る厄災を1つ解放する時。その七つの大罪は、降り注いだ者を堕落の底へと突き落とす――――怠惰なる深淵(イグナーウス・テネブライ)!!」

 

 

 穂乃果はグングニルで凛ではなく、何もない空間を突き刺す。

 初めは外したと思ったのだが、穂乃果の不敵な笑みを見た途端にこの行動がその技の発動条件だと察した。

 

 刹那、空間に小さなヒビが入る。そのヒビは瞬く間に広がっていき、遂にその空間がガラスが大破したように勢いよく割れた。そしてその中から出てきたのは、おどろおどろしい"闇"。穂乃果は深淵と言っていたか。そこから得体の知れない、形も何もない()()が凛へと襲いかかる。

 

 

 しかし、凛は怯まない。むしろ彼女も笑みを浮かべ、待ってましたかと言わんばかりの表情だ。

 

 

「ならば凛も見せてあげるよ。七つの大罪を司る、裁きの雷を!!」

 

 

 神なのに大罪を司っているのか、もうこれ訳分かんねぇな――――とツッコミを入れたくなるが、俺が口出しできるような状況ではなさそうだ。そもそもこの戦闘に介入したいとは思わないが、普段ゲームの中で繰り広げられるであろうバトルが目の前で見られて、ちょっと興奮していたりもする。ちょっとだけな!

 

 

「天を引き裂き地を砕く、銀の雲より出でし黄金の剣!神の怒りで全ての(とが)を滅し、森羅万象を雷鳴の下に無へと帰せ!!強欲の無限雷(アワリーティア・インフィニットトニルス)!!」

 

 

 凛のミョルニルから目も眩む雷が(ほとばし)る。その雷は穂乃果が放った"何か"と激突し、一瞬にして雷が深淵の闇を包み込んだ。

 

 

「へっ!どう?凛の雷に裁けない悪はないんだよ」

「それはどうかな?それだったら凛ちゃんには穂乃果とっておきの死に惑い永遠に終わりし屍の戯曲(アガナエル)を聴かせてあげる!」

「なるほど。じゃあそろそろ凛も大技いっちゃうにゃ!穂乃果ちゃんに敗北の鎮魂歌(レクイエム)を奏でてあげる!!」

 

 

 2人は攻撃同士を衝突させたまま、大技を繰り出すために自身の魔力を高める。光と闇、その2つのオーラが増幅しすぎて今にも交わってしまいそうだ。見れば周りの世界も2人の交戦によって徐々に歪み始めている。そんな中で大技同士を叩き込んだら……俺、元の世界に戻れるの!?

 

 

「漆黒の炎が我が眼に宿り終焉の道(エンドロール)へと導く竜念の想と共に、幻想曲(ファンタジア)を奏で巻き上がる!!」

「天に輝く希望が我が手中に堕ちしとき、我は閃光の輝きと無限の能力(ちから)を得る。光よ、今こそ暗黒(ダークマター)に審判を下す時!!」

 

 

 この世界が発動した時と同じ、穂乃果の黄金の左目と凛の右腕の紋章が眩く光った。世界は既に崩壊の序曲を迎えているが、この2人にとってはそんなもの関係ないようだ。ただ目の前の敵を殲滅する、完全なる戦乙女(ヴァルキリー)となっていた。

 

 

 そして遂に、両者最後の技が発動する――――!!

 

 

 

 

「屍となって消えろ!!(トリガーハッピーエンド)ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「正義の名のもとに鉄槌を!!正義の光(ジャスディスレイ)ェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!」

 

 

 

 

 2つの技が、激突する。

 

 

 

 

 そこで、世界は壊れた。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「零君!大丈夫?」

「零く~ん!!」

「ん、んん……こ、ここは?」

「安心して、部室だよ」

 

 

 目が覚めると、そこは見慣れた部室……とは言っても黒のカーテンやら魔法陣やらで内装は様変わりしているが間違いない、いつのも部室に何とか戻ってきたようだ。気が付けば俺が来た時よりも部屋の中が散らかっている。恐らくさっきの戦闘中にコイツらが暴れすぎてしまったせいだろう。

 

 

「なんかさっきまでファンタジーの世界にいたような……」

「それはきっと零君にも中二病の素質があるってことだよ!」

「凛たちはあの世界を創造するのに数日掛かったのに、零くんはたった数分であの世界にのめり込めちゃうんだもん、すごいにゃ!!」

「創造って、ただの妄想だろ……」

 

 

 妄想にしてはやけにリアルだったけど、これも穂乃果と凛の妄想力がそれほど強かったってことなのか。まさかこの俺がイメージ拉致されるなんて……案外本気なのかコイツら。

 

 見れば魔法陣には等間隔に小さな電球が付けられていたし、さっきまでは暗さで目が慣れてなくて見えなかったが、部室のあちらこちらにも白い光を放つ電球が設置されていた。ただの遊びだと思っていたが、相当手の込んだことしてるな、やっぱり本気なのか。

 

 

「でも凛知ってるよ!零くんが凛たちの戦い、意外とノリノリで見ていたってこと♪」

「うぐっ、ま、まぁ男ならカッコいい戦闘は一度くらい夢を見るものだからな」

「じゃあ折角だからさ、零君の必殺技も考えようよ!穂乃果たちも一緒に考えてあげるから!」

「そ、そうか。なら一個くらいいいかな」

 

 

 ま、まあこんなことをするのは今日だけだし!2人の戦闘シーンを見て、ちょっとカッコいいと思っただけだから!別に技名を考えるだけだったらノーカンでしょ!そもそも何のカウントをしているのかって話だけど……とにかく!俺は《そっち方面》じゃないことだけ留意してもらえればそれでいいから!!

 

 

「穂乃果思いついたよ!零君の技名は色欲の迷宮(リヒド・ラスビリントゥ)でどう?変態だし♪」

「変態をこんなところでフューチャーするなよ。それにお前ら、七つの大罪好きだよな……」

「それじゃあ凛が前口上を考えてあげるね!えぇとねぇ……血の盟約に従い、我、永久(とこしえ)の迷宮を創造す――――なんてどう?即席だからまだ短いけど」

「いや、パッとすぐにそのセリフが出てくることが凄いわ……」

「じゃあ実際にやってみよう!前口上を言ったあとに技の名前を高らかに叫んでね!」

 

 

 あれ?俺段々と2人に流されてね……?このままだと本格的に中二病ロードに足を踏み入れてしまうんだが……。ま、まあ今だけ、今だけだから!!

 

 

 俺は凛から黒のローブを借りて身に纏うと、軽く咳払いをして喉の調子を整える。

 

 

 よし、行くぞ――――

 

 

「血の盟約に従い、我、永久(とこしえ)の迷宮を創造す!発動せよ!!色欲の迷宮(リヒド・ラスビリントゥ)!!」

 

 

 言ってしまった……でも案外カッコよく決まったような気がするのは俺だけか?

 だがしかし、穂乃果と凛は黙ったままだった。

 

 

「お、オイ!!なんとか言えよ!!」

「れ、零君……」

「なんだよ」

「後ろ……」

「へ……」

 

 

 2人に言われて後ろを振り返ると、そこには……そこには――――!!

 

 

「ま、真姫……」

 

 

 真姫が口を開けて唖然としていた。

 み、見られた!?よりにもよって一番こんな俺を見下してきそうな奴に見られた!!見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた見られた!!

 

 

 あ゛ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

 

「真姫!!」

「ちょっと近付かないでもらえますか?」

「えぇっ!?なんでそんなに他人行儀なんだよ!?」

「今日はもう帰ります。さようなら神崎零さん」

「お゛ぉおおおい!!敬称付きはやめて!!一番心に来るからぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「あぁもう!!近寄らないで!!」

「今度は犯罪者を見る目に!?俺なにもしてないだろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「あれで何もしてないってよく言えたわね!!ていうか、その変なマント着たまま抱きつかないでよ恥ずかしい!!」

 

 

 そして本日付けでこの俺、神崎零は人生終わりの日を迎えたのであった。

 

 

「やっぱり零くんはいつもの零くんが一番だにゃ~♪」 

「だね~♪」

「お前らが乗せてきたんだろ!!」

 




 執筆し終えて一言―――――疲れた!!


 ということで今回は中二病回でしたと。
 私自身まずこのような文章を書かないので、執筆途中はかなり悲鳴を上げてました(笑)
そのため本物の中二病の皆様からしたら、私の中二病のセリフやワードは生温かったかもしれませんね。多分これが私の限界です(笑)
限界は感じましたが楽しく執筆できたのは事実で、前回の真面目回もそうだったのですが、やはりいつもと違う文章を書くのは自分にとっていい刺激となりますしマンネリ化も防げますし、割りと執筆して良かったんじゃないかと思っています。


 次回は久々にR-17.9回になる予定ですが、そのお相手はA-RISEのツバサさん!!


新たに高評価を下さった

元SEALs隊員さん、ロキロキさん

ありがとうございました!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

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