ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は前作の『日常』にもあったデートブッキングのお話。
 流石に9人や12人をまとめて書く気力はないので、今回はにこまきのコンビの修羅場展開へとご案内!


デートブッキングは修羅の道

「さみぃ……ひたすら寒い」

 

 

 休日というのは、休む日と書いて休日と読む――――というくだりはもういっか。これまでも散々演説してきたことだから、もはや誰しも耳に穴があくほど聞き飽きているだろう。

 

 まあこの文句でお察しの通り、俺はまたしても休日だというのに買い出しに駆り出されている。さっき楓に叩き起され、『今日は買わなきゃいけないモノがたくさんあるんだけど、虚弱な女の子に荷物を持たせる気?こういう時こそ男の出番でしょ!!』と、朝の身支度も満足にさせてもらえず家から放り出されてしまった。

 

 なにが虚弱な女の子だよ。μ'sの練習でそこら辺の女の子よりは十分筋力があるくせに、そんなことがよく言えたものだ。女の子の前で『筋肉あるね』とか言ったら、全員から大バッシングを受けるので絶対に言えないが。

 

 

「とにかく、用事を済ませてサッサと帰ろう。俺のワイフ(こたつ)が待っている!」

 

 

 秋の終わりから冬に掛けて、毎年俺はこたつと結婚しているかってくらいこたつの虜となっている。あれは確実に人をダメにし、どんな男でも骨抜きにして腑抜けさせる、まさに魔性の女と何ら変わりはない。しかも男だけでなく女の子も同じように快楽の世界に陥落させてしまうのだから、案外そっちの毛もあると見た。こたつになればハーレムも逆ハーレムも作り放題だなこりゃ。

 

 

 なんてそんな馬鹿なことを考えながらぼぉ~と歩いていると、後ろから俺の名前を呼ぶような声が聞こえていたことに気が付いた。俺は一旦くだらない妄想から離れ、意識を現実へと引き戻す。

 

 

「零!ちょっと聞いてるの!?」

「なんだ真姫か」

「なんだとはご挨拶ね。さっきから何回も呼んでたのに」

「悪い。自宅で俺の帰宅を待ってくれている女の子の妄想をしてたから、全然気付かなかった」

「そ、それって、私たちの誰かってこと……?」

 

 

 ありゃりゃ、これはμ'sの誰かで妄想していたと勘違いされてるな。本当は帰宅した俺の冷たい身体を暖かく包み込んでくれるこたつのことを妄想していたのに……人間×無機物という、ある種かなり世紀末な妄想をな。

 

 

「まあそれはどうでもいいや。お前はこんなところで何してんだ?」

「欲しい本があるから、書店へ行こうと思って。あなたは?」

「俺は楓に家から追い出されて、買い出しに行っている途中だよ。今日は買うモノが多いからって、俺が駆り出されたんだ」

「へぇ、特に誰かに会いに行くのではないと……」

「まあ、そうだな」

「そっか、今は1人きりなのね……」

 

 

 なんか真姫がブツブツと言い始めたぞ。も、もしかしてこれは……この2人きりの状況、男と女の子が偶然出会って、女の子が男に要求してくることと言えば――――

 

 

 

 

 買い物の荷物持ちだ!!間違いない!!

 

 

 

 

「じゃ、俺そろそろ行くから!」

「ま、待って!!」

「なんでしょうか真姫お嬢様……もしかして私に荷物持ちなんていう雑用をお任せになるのでは……」

「どうしてそんなに低姿勢なのよ!私はただあなたの買い物に付き合ってあげようと思っただけよ」

「えっ、お前の買い物じゃなくて……俺の?」

「そもそも私の買い物って書店に行くだけだし。それに荷物多くなりそうなんでしょ?手伝ってあげるわよ」

 

 

 手伝ってくれるのはありがたいが、さっきからどうして上から目線なんだよ……ツンデレの特有の高圧的態度が遺憾なく発揮されてやがる。

 

 しかし女の子に荷物持ちを頼むのは男としてどうなんだ……?でも断ると真姫に悪いし、ここはお言葉に甘えて手を借りようか。

 

 

 あれ、そういやこれって普通に……デート、だよな?

 

 なるほど、だからさっきから真姫の顔が妙に紅潮していたのか。そりゃあコイツは自分からデートに誘うことがあまりないから、緊張するのも無理ないわな。

 

 

 よしっ、唐突に決まったデートだけど、勇気を出して誘ってくれた真姫のためにも彼女を楽しませてやるか!

 

 

「ほら、そうと決まれば行こう。いつまでも外にいちゃ寒すぎるから」

「えっ、付き合せてくれるの?」

「逆に付き合わせない理由がないしな。手伝ってくれるならなおさらのことだ」

「そ、そう、ありがとう」

「どうしてお前がお礼言うんだよ。ほら行くぞ」

「ま、待ちなさいよ!」

 

 

 先に歩き出した俺の後を、真姫が駆け足で追いついてくる。

 

 

 デートとあれば外に出るのも悪くはない、むしろ真姫とゆっくり話せる機会ができてラッキーだと。

 

 

 そう思っていた。もう既に修羅の道に足を踏み入れていることを知らずに……。

 

 

 

 

 しばらく2人でたわいもない話をしたり、最初は真姫の書店に行くかなどを一応デートのプランを考えていて意識を現実に保っていなかったせいか、俺は曲がり角から曲がってくる人に気付かなかった。

 

 

「きゃっ!」

「うおっ!」

「ちょっとなによ急に……ちゃんと前を見なさいよね――――って、零?」

「にこ!?」

 

 

 俺とぶつかりそうになったのはなんとにこだった。出会い頭にうっすらと小さな女の子の影が見えたから、『これはぶつかったらロリコン罪で逮捕で逮捕される!!』と危機感を募らせていたんだよ。いやぁにこでよかった!!最近は男にとって不平等社会だから、にこ以外のロリっ子だったら言い逃れすらさせてもらえなかっただろう。

 

 

「こんなところで会うなんて偶然ね。いや、もしかして必然かしら。ほら、にこたちはいつもお互いの愛で惹かれ合っているから♪」

「おう、そうだな」

「どうしてそんな軽く流すのよ……まあいいわ、零!」

「な、なんだ?嫌な予感がするけど……」

「にこにぶつかった罰として、これからにこの買い物に付き合いなさい!!」

「うん、知ってた」

 

 

 この理不尽さはいかにもにこらしい。ていうかぶつかりそうにはなったけど、ぶつかってはいないんだが……これも女性の言ったもの勝ちということか、おのれ男不平等社会。

 

 でもにことデートできるのなら俺も願ったり叶ったりだ。彼女は大学生だから、こうして面と向かって話す機会が減ってきてるんだよな。だったら今日はそのいい機会なんだけど……。

 

 

 

 

 ――――――なにか忘れているような……。

 

 

 

 

「ちょっと!!私のこと忘れてない!?」

「あっ……」

「あれ、真姫もいたんだ」

「いたわよ!!にこちゃんと会う前からずっと零と一緒にいたわよ!!」

 

 

 ずっと一緒なのかどうかは疑問だけど、一瞬でも真姫のことを忘れてしまったのは本当に申し訳ない。にことこうして休日にゆっくりと話ができる機会が訪れて、少し舞い上がってしまっただけだ。もちろん真姫とデートできるのは嬉しいよ!当たり前だろ!!

 

 

 だが……この2人はそうでもないらしい。

 真姫とにこ、2人の鋭い目線は火花を散らせながら激突する。俺の穏やかな休日は、女の子2人のデートブッキングにより修羅場と化してしまった。去年一度穂乃果たち9人とこんなことがあったけど、今はみんな俺の彼女なんだし、3人仲良くデートくらいしてもいいようなものだが……。しかしこの殺伐とした雰囲気を察するに、そんな穏便には話が進まないようだ。

 

 

「私の方が先にいたんだけど……」

「先にいたとか後から来たとかは問題じゃない。零が誰と行きたいのかが重要なのよ」

「零の意見を尊重したいのは分かるわ。でもデートは先着順よ」

「真姫は学院でいつでも零に会えるでしょ?にこは零と離れ離れになって、いつもいつも零のことを想ってハンカチを涙で濡らす毎日なのよ!?だからここは譲りなさい!」

「それこそ私には関係ないわね」

「なんですって!」

 

 

 こ、これがガチの修羅場って奴か……どう足掻いても3人仲良くデートできるような状況ではなさそうだな。それもそうか、だって真姫もにこもμ'sの中ではトップクラスの頑固者だし、素直に自分から引き下がるような奴らじゃない。俺のために争ってくれるのは嬉しいけど、徐々に胃がキリキリしてくるのは気のせい!?

 

 これが穂乃果や凛だったら仲良く和やかな雰囲気でデートできそうなのに……。

 

 

 そしてお互いに睨み合っていた2人が、次は同時に俺を睨みつける。こ、今度は俺が標的ですか!?!?

 

 

「零!!あなたはどっちとデートするの!?」

「この際だからハッキリしてもらうわよ!!」

「えぇ……」

 

 

 この俺に女の子に関する二者択一を迫るだと!?しかもこんな胃が切り詰められそうな状況で!?

 う~む……しかしどんな状況であれ、我が恋人たちに対する選択ならこれしかない!!

 

 

「3人でデートしよう!なっ?」

「…………」

「…………」

「な、なんだよその沈黙は……」

「なんとなく、アンタならそう言うと思ってたから」

「まあ大方予想通りよね」

 

 

 だったら何故聞いた……ああ見えて結構勇気を出して提案したんだぞ。もしかしたら刺されるかもしれないという怖気が……まあ刺されるのなら9股した時点で刺されてるか。

 

 

 そんな訳で2人に謎の納得をされながらも、俺たちの奇妙なデートが始まった。にこと真姫の間にピリピリとした空気が張り詰めながら……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「零♪」

「うおっ!ど、どうしたにこ!?」

 

 

 スーパーへ向けて歩いている途中、突然にこが俺の左腕に絡み付いてきた。大学生になったと言っても未だに彼女の慎ましやかな胸では流石におっぱいの感触はあまり感じないが、腕に笑顔の女の子が絡み付いているこの状況だけでも相当浮ついた気分になってしまう。そして背丈の都合上、必然的に彼女に上目遣いをされるのが本当に唆られるんだよ。容赦なく俺の心を奪いに来てるな。

 

 

 だがしかし、()()()()の彼女がそれを見て黙っている訳もなく――――

 

 

「ま、真姫……?」

「にこちゃんだけズルいじゃない」

「だからって無理に対抗しなくても……」

「私がしたいからいいの!!」

「さいですか……」

 

 

 今度は真姫が俺の右腕に絡み付いてきた。にことは違う、程よい大きさから少しばかり成長した、少々俺の手に余るサイズのおっぱいが腕に押し付けられる。そして自慢のツリ目で俺を睨むように見上げているのだが、頬が赤く染めて恥ずかしそうにしているそのギャップがまた堪らない。これがツンデレ特有の可愛さか。

 

 

 するとにこも真姫に更に対抗するためか、俺の腕に絡み付く強さが先程よりも格段に強くなった。腕だけでなく脚も絡ませてきそうな勢いで、俺の身体に密着する。

 

 

「ちょっとにこちゃん!いくらなんでもそれは抱きつきすぎじゃない!?」

「にこは零への愛を行動で示しているだけよ!まさか真姫ちゃんの愛はそんなものなのぉ~?」

「そんな訳ないでしょ!!私だってそのくらい……」

「お、おい真姫!!」

 

 

 にこが小悪魔顔で挑発し、相変わらず乗せられやすい真姫が簡単に誘導されて反抗する。まさに()()()()構図だなこれは。

 

 意地でもにこに負けたくないのか、真姫も俺の腕にコアラのように抱きつく。

 もうここまで抱きつかれると胸の大小は関係なく、にこと真姫の胸と胸の間に俺の腕がぎゅうぎゅうに押し込まれる。いわば擬似パイ○リのようで何とも唆られるシチュエーションだ。

 

 彼女たちが狙ってそうしているのかは分からないが、恐らくお互いに対抗意識を燃やしているため俺が興奮しそうになっていることなんて気付いてないだろう。

 

 

「零が歩きにくそうで困ってるわよ。そろそろ離れたらどう?」

「そんなこと言ったらにこちゃんもそうじゃない!零の腕がにこちゃんの体重で疲れちゃったらどうするのよ!」

「残念ながらにこはアンタよりも体重が軽いから問題ないわ。普段はロリだのなんだのをネタにされるけど、こうして恋人の腕にぶら下がれるのなら小柄なのも悪くないわね♪」

「あなたには余計な脂肪が付いてないものね。女性の胸が大好きな零にとっては致命的よ」

「誰がひんにゅーですって!?零が好きなのは女性の胸の感度よ!大きさは二の次だわ!!」

 

 

 その場に俺がいるのにも関わらず、俺を蚊帳の外に差し置いて2人の話題に勝手に俺が出演する謎の現象。しかもにこと真姫はそれぞれ俺の両腕に抱きついているから、2人の会話は俺を介しての口論となる。逆にこの口論に巻き込まれないだけマシと言えるのか……?

 

 

 いや、この2人の口論には終着点はない。だからこの論争を終結させるために2人が取る行動は絶対に――――

 

 

「零!私とにこちゃん、どっちが重い?胸の大きさも考慮に入れて!!」

「零!おっぱいはやっぱり感度なんでしょ!?大きさはそのあとじゃない!?」

「やっぱり!?でもなんか思ってた質問とちがぁーーーーーーーーう!!」

 

 

 俺はてっきり『どちらに抱きつかれたい?』と結論を急かされると思っていたのだが、コイツらなんていう質問してんだ!?しかも道のド真ん中で!!完全に痴女じゃねぇか!!

 

 

 おっぱいに関しては感度は確かに重要だ。でも手触りはやはり大きい方が揉み心地もいい訳で、感度は大きさに付随するものだと考えると、大きさの方が重要にも見える。だが小さくてもにこみたいに感度がいいおっぱいは少なからずあるしなぁ……うん、難しい。

 

 

「とにかくだ!2人共、重いから一旦離れてくれ」

 

 

 その瞬間だった、彼女たちの全体重を掛けた(かかと)落としが俺の両足にクリーンヒットする。

 

 

「いってぇえええええええええええええええええええええええええええ!!」

「女の子に向かって"重い"とか、道のド真ん中で言うんじゃないわよ!!反省しなさい!!」

「全くあなたはいつもいつもデリカシーの欠片もないんだから!!」

「お前らそういうところだけ結託してんじゃねぇよ!!」

 

 

 喧嘩するほど仲がいい典型的な例だなこれは……まあ仲が良くなければ同じμ'sで一年半以上一緒にやってきてないと思うが。にこも真姫も頑固者でツンデレ属性があり、面倒なことは避けようとするけどなんだかんだ言って手を差し伸べてしまう優しさを持っている。やっぱり似た者同士じゃんコイツら。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「そうだ。折角だし、明日にでも晩御飯を作りに行ってあげるわよ。どうせ家事を楓に任せてるんでしょ?だったらたまにはあの子にも楽をさせてあげないとね」

「急にどうした真姫……お前からそんな提案を持ちかけてくるなんて珍しい」

「別に!たまには彼女として、あなたに手料理を食べてもらいたいだけよ」

「真姫が物凄くデレてる!?明日は槍が降るかも!?」

「あなたねぇ……」

 

 

 スーパーマーケットでカートを引きながらダラダラと食材を選んでいたところに、まさかの真姫デレ。唐突な爆撃に俺も足を止めて困惑せざるを得なかった。だってあのツンデレ女王の真姫様だよ!?自ら手料理を振舞ってくれるなんて、デレ要素MAXすぎてキャラ崩壊も辞さない行動だぞ!!

 

 

「零~!買い物終わった?」

「えっ、まだだけど……」

 

 

 一旦俺たちとは別行動で他の食材を探しに行っていたにこが俺たちと合流した。彼女はこのスーパーの食材の位置を全て把握しているのだろう、俺と同時に入店したのにも関わらず既に自分の買い物は終えてしまったようだ。流石女子大生主婦、伊達に高校時代から妹の面倒を見てはいないということか。

 

 

「よし、それなら丁度良かった!明日、楓も連れてにこの家に来ない?久しぶりに一緒に食卓を囲みましょうよ。零が来てくれればこころたちも喜ぶと思うし」

「あ、明日……」

「ん?なにか用事でもあった?」

「明日は私が零たちの晩御飯を作ってあげるのよ」

「…………それいつ決まったの?」

「さっきよ」

「…………」

 

 

 あぁ、また始まってしまうこの2人の対決が……。さっきから何度も何度も、しかも俺を挟んで論争をするもんだから胃に穴が空きそうなんだよぉ~!!今も2人の鋭い目線の火花がバチバチと俺の目の前でぶつかり合ってるし……俺のために争うのはやめてくれ!!あっ、これ女の子が言うセリフか。

 

 

「にこがいない間に勝手に決めないでくれる?」

「勝手にいなくなるのが悪いのよ。それにあなたはよく零に手料理やお菓子を作ってきてるでしょ?たまには私に譲ってくれてもいいんじゃない?」

「それこそにこの勝手じゃない。そもそも真姫は料理自分で作ったことあるの?家に料理人がいる環境で」

「零の恋人になってからずっと練習してるから問題ないわよ。少なくとも家の料理人に褒められるくらいには成長してるわ。もしかしたらにこちゃんよりも上手になってるかも」

「フンッ、一年そこらしか料理をしたことのないひよっこが、もう3年以上も家庭の味を支えてきているにこに勝てるとでも?」

「なんですって?」

「なによ?」

 

 

 がぁああああああああああああああああああ!!どうしたらいいのこれ!?何故か胃が痛い!!錐か何かで胃を抉られているかのような感覚なんですけど!?しかもここはスーパーの中、周りに主婦や子供たちがいるんですが……。でも仲介に入ったら入ったで『零は引っ込んでて!!』と2人同時に言われそうじゃない?だってこの2人仲いいし!!

 

 

「男は胃袋を掴まれるのが弱いから、にこの家庭の味が零をメロメロにするに違いないわ!いや、もうとっくになってるかも」

「料理は要するに作った人の気持ちよ!零への愛情なら私だって負けてないわ!!」

「それはにこだって同じことが言えるわよ!」

 

 

 話が平行線で全く終結の兆しが見えねぇ……そこまで話が続くだけ、やはりこの2人は似た者同士で仲がいいってことなのか。

 

 

 似た者同士で仲がいい……か。だったらこの状況の解決手段が見つかったかもしれないぞ。怒られるかもしれないしイチかバチかだけど、この状況を終息できるのならやってみる価値はある!

 

 

「にこ!真姫!」

「「なに!?」」

 

 

 やっぱり邪魔すんなみたいな目で睨みつけてきやがったか……でもここで怯む訳にはいかない。

 

 

「きゃっ!!」

「あっ……れ、零?!」

 

 

 俺は両腕でにこと真姫を自分の身体に2人同時に抱き寄せ、耳元で囁くように呟いた。

 

 

「2人共俺の恋人なんだしさ、俺はどちらか1人の料理じゃなくてお前ら2人の料理を食べたいんだ。だからお互いに争わないで、協力して俺のために手料理を振舞ってくれよ。明日真姫と楓と一緒ににこの家に行くからさ、その時に2人の手料理の合作、楽しみにしてるよ。とびきりの愛情が籠った、2人で仲良く作った最高の手料理をな」

「零……」

「そう、私たち2人の……」

 

 

 さっきまでいがみ合っていた2人の威圧が沈下していくのが分かる。どうやら無事に俺の想いが彼女たちの心に届いたらしい。

 

 

「まあ、零がそういうのなら仕方ないわね。今日のところは許してあげるわよ。零が喜んでくれるのならそれでいいし」

「私も零がそれでいいって言うのなら異論はないわね。私はただ私の作った料理を零が美味しそうに食べるところを見たいだけだし」

 

 

 チョロいと言ってしまうと聞こえは悪いが、やはりツンデレっ娘にはこちらからデレを見せつけることによって態度を軟化させることができる。現ににこも真姫も頬を染めてそっぽを向きながら何やらブツブツ言ってるし、多分これでよかったのだろう。やっぱり似た者同士だわこの2人。

 

 

 よしっ、これで大団円!!――――――と、思っていたのだが……。

 

 

 

 

 

「それにしても、全くしょうがないねぇ零は。にこたち2人の手料理が食べたいだなんて、どれだけ貪欲なのよ」

「そうそう、女の子が同時に手料理を作ってくれることなんて普通は有り得ないんだから、感謝して欲しいくらいね」

「お、お前らなぁ……誰のために謙ったと思ってんだ」

 

 

 折角いい感じで終われそうだったのに、微妙に素直になれず強がってしまうところもやっぱり似た者同士だ。

 

 まあそれがこの2人の可愛いところでもあるんだけどね!

 




 喧嘩するほど仲がいいというのは、にこまきのためにあるような言葉だと思うんだ。


 今回はにこまきコンビとの修羅場回でした。
 デートブッキングというよりかは、修羅場展開に重点を置いてみました。そもそもこの小説自体がμ's全員と恋人同士になっているので、修羅場展開を書こうと思ってもμ'sメンバー同士の仲が良すぎて修羅場にならないというある意味での欠点がありました。しかしにこまきに至っては本編でも零君が言った通りかなり頑固な性格を持っているので、この2人だけに至っては恋人同士になっても修羅場展開にはなりそうなんですよね。

 そもそもにこまきのコンビ自体、世間一般ではかなり人気なカップリングなのに本編でこの2人を明確に絡ませたのはこれが初だと思われます。別に嫌いだったからとかそういう訳ではなく、単純にたまたまです。そんなことを言いだしたら、まだ絡みが薄いカップリングはかなりいそうですが。というより確実にいますねこれは(笑)


 しばらくは次回予告はなしで。投稿に間が空くので、予告をしても途中でネタを変更したくなる可能性がありますから。


新たに高評価を下さった

山神さん

ありがとうございました!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

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