ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回は『新日常』の一周年記念として、私が執筆している"ラブライブ!"と"ご注文はうさぎですか?"の小説のクロス回となっています。

 私が執筆をしていると言っても"ラブライブ!"は『新日常』寄り、"ご注文はうさぎですか?"は概ね原作通りのキャラ設定となっています。


 「ごちうさを知らないよ!!」という方にも楽しめるように書き上げましたので、是非最後まで楽しんでいってください!


【特別編】ラビットハウスいらっしゃいませ!(前編)

「わぁ~!この街、絵本の世界みたいだね!!」

「そうですね。写真で見るよりもとても綺麗です」

「うん!ここなら可愛い衣装のアイデアが浮かんできそう!」

 

 

 俺たちは目の前に広がる西洋風の綺麗な街並みに、立ち止まってしまうほどに目を奪われる。

 

 俺、穂乃果、ことり、海未の4人は、受験勉強の息抜き兼ライブの衣装と歌詞の新たなアイデア模索のために旅行へ来ていた。この街は"木組みの家と石畳の街"として有名らしく、実際に見てみるとその謳い文句が嘘ではないことがよく分かる。

 

 しかしこうして実際に眺めてみると、東フランスのヨーロッパのような街並みで日本とはとても思えない。穂乃果の言う通り、東京育ちの俺たちにとってはファンタジックな雰囲気がするな。

 

 

「あっ、零くん見て見て!あそこにウサギさんがいるよ!あそこにも!!」

「耳元でうるせぇな!分かってるって!!」

「すご~い!なんでこんなにウサギさんがいっぱいいるんだろ?はっ、まさかウサギに支配された街とか……?もしかしてここのウサギさんたちは、街の人が魔法でウサギに変えられた姿で――――」

「はいはいそこまで。変な被害妄想はやめろ」

「それに街の人、普通にいらっしゃいますし……」

 

 

 穂乃果のくだらない妄想はさて置き、すれ違う街の人を見るたびに、その人たちから爽やかな雰囲気が感じられる。空気が澄んでいて街も綺麗なだけでなく、単純に居心地がいいというか、街全体が活気に溢れている。野良ウサギも俺たち部外者にちょっかいを掛けてくることはないが、人に撫でられれば気持ちよさそうな表情を見せるため、かなり人懐っこい。

 

 総括すれば、街の環境、人、動物たち全てが一体となってこの街を作り上げているってところかな。だから部外者の俺たちでも居心地がいいと思えるのだろう。

 

 

「それで、まずはどこに行く?お前らそれぞれ行きたいところがあるんだろ?」

「ことりはフルール・ド・ラパンに行きたいな。お母さんが一度行ったらしいんだけど、その店のハーブティーが美味しかったって言ってたから」

「私は甘兎庵(あまうさあん)ですね。そこの和菓子がかなり独特と聞いているので、和菓子好きの私としては一目見ておこうかと」

「じゃあその2店は確定だな。おい穂乃果、お前はどこに――――」

「わぁ~!あそこにいっぱいウサギさんが!待ってぇ~!!」

「聞いてねぇし……」

「穂乃果ちゃん、相変わらずいつも通りだね……」

 

 

 見知らぬ土地に来て間もなく、ここまで街に馴染める能力は評価するべきだとは思うがな。しかし如何せん穂乃果のことだ、周りを巻き込んだ挙句いつの間にか自分だけ迷子になってましたぁ~なんて展開になりそうだ。だからこの俺がしっかりと見張っておかないと。

 

 

「ということで穂乃果、お前はどこへ行きたい――――って、あれ、穂乃果は!?」

「えっ、さっきまでそこでウサギと遊んでいたはずですが……」

「ま、まさか穂乃果ちゃん、ウサギを追いかけて行って……」

「くそっ、あの馬鹿野郎!!」

 

 

 光の速さでフラグを回収してんじゃねぇよ!!フリで見張っておくとか言ったんじゃないんだぞ!?どうして毎回いい意味でも悪い意味でもアイツは俺の期待を裏切らないのか。恋人同士だから?それにしても旅行先に来て早々行方不明になれる能力を発揮するのだけは勘弁して欲しい。日本だからまだいいとしても、アイツに絶対海外へ行かせられないな。

 

 

「穂乃果ちゃーーん!どこにいるの~!?」

「呼んでもどうせウサギに夢中で聞こえてないだろう。1つのことに熱中すると中々戻ってこない奴だから。まあ、勉強だけは例外だけど」

「確かにそうですけど、今は穂乃果と合流することが先決です」

「全く、面倒なことしてくれるなアイツは。とりあえず海未、一応穂乃果に電話してみろ」

「はい」

 

 

 なんにせよ、見知らぬ土地で迷子になるのは相当マズイ。だってアイツ地図読めねぇからな。とにかくこれ以上面倒なことにならないためには、早急に穂乃果を見つけ出す必要がある。

 

 どんなところでもちょっとした事件に巻き込まれる俺らって、ホントに不幸。まあそれが俺たちらしいんだけども。

 

 

「…………出ませんね」

「じゃあ自分が迷子になっているって気付いたら、そこから一切動くなと連絡しておけ。下手に動き回られると、探す手間が増えるだけだから」

「分かりました」

「いきなり大波乱な旅行になっちゃったね」

 

 

 俺たちは同時にため息をついて呆れる。

 

 

 

 

 すると俺は、俺たちに近付いてくる人影に気が付いた。和菓子のほのかな香りがふわりと鼻をくすぐる。

 

 

「あの~どうかしましたか?お困りのようですけど?」

 

 

 目の前に現れたのは、俺たちと同じ歳くらいの女の子だった。黒髪の長髪で、姫カットな容姿に違わぬ大和撫子然とした和服を着用している。その和を具現化したような風情から、海未とどことなく雰囲気が似ているな。しかし海未とは違って肉付きは彼女の方がよく、頬っぺとか胸とか、触ったら気持ちよさそう……。

 

 

 初対面からこんなことを考えてしまう辺り、俺もことりのことを言えないくらい末期の変態だと思うよ。色々と妄想が捗りそうだけど、今はとりあえず穂乃果の探索に集中するか。

 

 

「実は友達が迷子になったんだ。携帯に連絡しても出ねぇし」

「大変!この街って似たような建物が多いから、旅行に来た人が道に迷うことがよくあるんですよ」

「マジかよ……」

「友達にも連絡を入れて、見かけたら伝えてもらうように言っておきますね」

「助かる。ありがとう」

 

 

 そして俺たちは黒髪の大和撫子さんに穂乃果の名前と容姿を伝え、彼女の友達にも協力を要請した。

 まさか他人まで巻き込むことになるとは……合流したら穂乃果の土下座会見だな。

 

 

「本当にありがとうございます。あっ、えぇと……」

「宇治松千夜です。よろしくお願いします♪」

「宇治松さんですね。私は園田海未と申します」

「南ことりです♪」

「神崎零だ。穂乃果が迷惑を掛けて申し訳ない」

「いえいえ。それに名前呼びでいいですよ。こうして会ったのも何かの縁ですし、あなたたちとはすぐに仲良くなれるような感じがしますから」

「そっか。だったら別に敬語もいらねぇよ。高校生同士だろ?」

「そう?それじゃあそうさせてもらうわね♪」

 

 

 かつてはいきなり初対面で女の子を名前呼びするのは抵抗があったのだが、μ'sのみんなと触れ合っていく内にそれももう慣れた。それにこれからあのおバカちゃんを彼女と一緒に捜索するんだ、他人行儀な関係は極力排除しておいた方がいいだろう。幸い彼女、外部から来た俺たちのことを何の警戒もなく信用してくれているみたいだし。別に俺がいきなり女の子を食ってかかる訳じゃないけどね!

 

 

 

 

「よしっ、それじゃあ俺たちも穂乃果を探しに――――――」

 

 

 その時、俺は気付いていなかった。遥か上空から、黒い物体が俺の頭目掛けて真っ逆さまに落下していることに……。

 

 そしてその黒い物体は遂に、穂乃果捜索に意気込みを入れていた俺の脳天を――――

 

 

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 直撃した。

 

 

「れ、零君!?な、なにが起こったの!?急に零くんが瀕死に!?」

「さっき零の上に何かが落ちてきたような気がしましたけど……」

「あっ!あんこ、またカラスにさらわれたのね」

「そ、その子……ウサギ?」

「えぇ。あんこってば、よくカラスにさらわれては突然空から落ちてくるのよ。フフッ、可愛いわよね♪」

「笑いごとじゃねぇんだけど……あ~頭クラクラするぅ~」

 

 

 これ本当に穂乃果を探し出せるのか?もうアイツを見つける前に俺の方が気絶して黄泉の国に送られそうなんだが……幸先が不安だ。

 

 

 それにしても、目の前がぐるぐる回って身体がフラフラするぅ~……。

 どうやらウサギが俺に直撃したらしいのだが、生き物が空から降ってくるほどこの街は殺伐としてるのか?そのせいでもう意識が飛んじゃいそうなんだけど……。

 

 

 その時だった。俺の脚の近くをウサギ通りかかったのは。

 通りかかるだけならまだいい。だけど俺はそのウサギを踏まぬよう、ただでさえフラフラの身体を更に倒してウサギを避けようとした。

 

 だがもう既に意識の半分が飛んでいる俺に、身体を自在に制御する力は残されていない。当然身体を倒したら最後起き上がれる力もなく、俺の身体はそのまま地面に――――

 

 

「きゃっ!!」

「うぷっ……!!」

 

 

 倒れなかった。いや厳密には倒れたけど、地面には衝突せず柔らかいクッションのようなものに守られたようだ。

 でもなんだこのクッション、やけに人肌のような暖かさを感じるぞ。それに右手に程よい大きさのおまんじゅうが握られているような――――って、これは、この感触、弾力、温もりは、まさしく女の子の――――!!

 

 

「あ、んっ……零くん、くすぐったいわ……」

「零くん、道の真ん中で大胆だね♪」

「ち、千夜……」

 

 

 俺の下敷きになっていたのは千夜だった。

 そして俺の手が握り続けているのは、紛れもなく千夜のお胸さん!この大きさはことりや花陽と同じ、小柄ながらもボリューム満天のおっぱいだ!!

 

 もう少し、もう少しだけでいいから触っていい……?

 

 

「あっ、あ、ん……」

 

 

 おおっ、指が……指が食い込む!!もしかして和服だから下着を着けてないのか!?手に馴染むこの感触、やっぱり揉み心地は最高――――――

 

 

 

 

「零……そろそろいい加減にしないと、どうなるのか分かってますよね?私も見知らぬ土地でこんなことをしたくはありませんが、これ以上続けるというのなら容赦はしません」

 

 

 

 

「う、うっす……」

 

 

 海未の邪気が当社比1.5倍くらいに膨れ上がっている。見知らぬ土地で知り合ったばかりの女の子のおっぱいに触れる、それもまた一興だとは思わないか?思わないかぁ~……。

 

 

 結局至福の時間はほんの数秒で終了し、あのおバカさんの探索へと戻ることにした。

 ちなみに俺は気付かなかったけど、ことりと千夜でこんな会話が行われていたそうな。

 

 

「ねぇねぇ千夜ちゃん、零くんに触られた感想は?」

「そうねぇ~、とても上手だったわ♪ちょっと気持ちよくなっちゃうくらいに……」

「あの短時間で零くんのテクニックに気付けるなんて、ことりと千夜ちゃんって、どこか似てるところがあるのかも♪」

「そうね、フフフ♪」

 

 

 どうやら、出会ってはいけない2人が出会ってしまったようだ……。

 

 

 

 

~※~

 

 

 

 

「ウサギさん待ってぇ~!!」

 

 

 穂乃果は今、ウサギさんを追いかけているんだけど、ただのウサギさんじゃないんだよ!人間のような前髪があって、右目の十字傷が特徴的な強面でとてもワイルド!でも身体はとてももふもふしていて抱きしめたら絶対に気持ちがいいよあの子!

 

 だけど穂乃果が近付いたらすぐに逃げちゃうんだよね。警戒心が強いのか、それとも嫌われちゃってる?うぅ~でもこんなに珍しいウサギさんは初めて見るから、この街に来た記念に一回くらい抱きしめたいんだよ!

 

 

 すると突然、ワイルドなウサギさんが十字路の真ん中で立ち止まった。

 建物の間に逃げ込まれて苦労したけど、もう観念したみたいだね。一気に飛びついて捕まえちゃお!

 

 

「よ~し、いい子だからそこから動かないでね……」

 

 

 穂乃果は抜き足差し足である程度ウサギさんに近づいた後、両腕を前に出してウサギさんをダイビングキャッチしようとした。

 

 だけどその時、道の角から女の子の声が聞こえてくる。

 

 

 

 

「あっ、ワイルドギースだ!こんなところで会うなんて偶然だね♪」

 

 

 

 

 その声の主がどんどん近付いてきているのが分かる!でも穂乃果のこの勢いは誰にも止められない!!ていうか誰か穂乃果を止めてぇえええええええええええええええ!!このままじゃ出会い頭にぶつかっちゃうからぁあああああああああああああああああああ!!

 

 

 声の主である女の子の影が建物の角から見えた。その一瞬で確認できたのは、茶髪でパンの香ばしい匂いを漂わせているってことだけど――――

 

 ぶ、ぶつかるぅううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!

 

 

「ど、どいてぇえええええええええええええええ!!」

「こんにちはワイルドギース――――って、えぇぇえええええええええ!?」

 

 

 そして穂乃果は勢いのまま、その女の子の懐に飛び込んでしまった。

 

 

「ぐふぅ!!」

「ぐあっ!!」

 

 

 穂乃果は女の子に飛びつく形で、その子を道端で押し倒してしまう。飛び掛った衝撃で頭がぐるぐるしてお星様が見えるけど、自分の両頬をペチンと叩いて正気を取り戻す。早く穂乃果の下敷きになった女の子を助けないといけないからね!

 

 

「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」

「ふにゅ~……」

「えっ、もしかして……死んでる!?あわわわ、穂乃果まさかの殺人者!?お、落ち着いて、こういう時は探偵モノの漫画で見た証拠の隠滅方法を……」

「ちょっとちょっと!助けてよぉ~!!」

「あっ、生き返った」

「初めから死んでないよ!!」

 

 

 死んでない……?あれほどの勢いで突撃されたのに、すぐに復活するなんて……。やっぱりこの街、人もウサギも只者じゃないね!

 

 

「それにしてもよかったぁ~!!死んでなくてよかったです!!」

「わぁーー!!そんなに抱きつかれると苦しーーー!!逆にそれで圧死しちゃいそうだからぁーーー!!」

「ご、ごめんなさい……穂乃果、いつもいつもつい先走っちゃって」

「あはは、私も似たようなものですよ~」

「あれ、そう言う意味では穂乃果たち……」

「結構似てるかもですね♪」

 

 

 この子、笑顔が眩しい!!今回は全面的に穂乃果が悪いのに、こんなキラキラとした明るい笑顔を向けてくれるなんて優しいなぁ――――あっ、そういえばまだ許してもらってないや!勝手に自己完結しちゃってた!!

 

 

 そして一旦穂乃果たちは立ち上がって、近くの噴水に腰を掛けてお話をすることにした。

 穂乃果がぶつかった女の子は保登心愛ちゃん。ココアってすごく可愛い名前だよね!にこちゃんの妹にも同じ名前の子がいるから、なんだか初めて会った気がしないよ。

 

 

 そういえば、なんか忘れているような気もするけど、忘れるくらいならそこまで重要なことじゃないよね!

 

 

「それじゃあ穂乃果ちゃんたちはスクールアイドルなんだ!?すごいっ!アイドルなんて憧れちゃうなぁ~」

「いやぁそれほどでも~……あるかな?"ラブライブ!"っていう、大きな大会で2回も優勝してるし」

「大会で優勝!?もう私には穂乃果ちゃんが眩しすぎて見ていられないよぉ!!」

「大袈裟だよココアちゃん」

 

 

 "ラブライブ!"で優勝したことは高らかに自慢することではないけど、それは武器になるから自己紹介の際にどんどん主張してやれというのが零君からの命令。こうやってプライベートで注目されるのは若干気恥ずかしさもあるけど、尊敬の目で見られるのはちょっと優越感を感じちゃったり。零君が色々なことを自慢したがる気持ちが分かったような気がするよ。

 

 

「ココアちゃんはパン作りが得意なんでしょ?いいないいなぁ~」

「え、どうして?」

「穂乃果もパン大好きなんだけど、実家が和菓子屋で、出てくるおやつは毎回毎回和菓子なんだよ……だからたまにはパンも食べさせろぉおおおおおってなるよね」

「あはは。だったら折角だし、私のバイト先の店に来る?そこで私お手製のティッピーパンをご馳走してあ上げる!」

「ホントに!?ありがとぉ~ココアちゃん!さっきは勢いよくぶつかっちゃったのに、パンまでご馳走になるなんて……」

「でもあの激突があったから穂乃果ちゃんとお友達になれたんだし、むしろぶつかってよかったと思ってるよ!」

「ココアちゃん……あなたが神か」

 

 

 神様っていうのは意外と近くにいたんだね。ここまで心が寛大な人には出会ったことがないよ。強いて言えば、ことりちゃんや花陽ちゃんなら対抗できるかな?それにしても怒ってばっかりの海未ちゃんには、ココアちゃんの寛大さを見習って欲しいものだよ、うんうん。

 

 

「その代わり、一曲私の前で披露してくれない?穂乃果ちゃんの話を聞いてたら、スクールアイドルに興味が出てきちゃった!」

「ココアちゃんの高校にスクールアイドルはいないの?」

「そうなんだよ。だから私がスクールアイドルになるのもいいかなぁって」

「それじゃあココアちゃんには他にも夢が?」

「うんっ!街の国際バリスタ弁護士として、パンを焼きながら小説家として生きる。これが私の目指す道、私の人生!!」

「ちょっと、いや、とても欲張りしてるような……」

 

 

 バリスタで弁護士でパン職人で小説家……ココアちゃんが今までどんな道を歩いてきたのか気になってきたよ。それだけココアちゃんが多才だってことなのかな?もしそうだったらスクールアイドルも難なくこなせちゃうかも!

 

 

「でも1人だとスクールアイドルはできないよ?一緒にやってくれそうな人いるの?」

「もちろんいるよ!チノちゃんでしょ、リゼちゃんでしょ、千夜ちゃんにシャロちゃん!」

「おぉ、すぐに協力してくれそうな人の名前が出るなんてすごいね~!穂乃果もね…………あっ!!」

「ど、どうしたの急に大声出して?」

「零君たちのこと忘れてた……」

「零、くん?」

「うん、穂乃果と一緒にここへ旅行に来た人たちがいるんだよ!でもウサギを追いかけてたら、いつの間にか穂乃果、迷子になってた……」

「今気付いたんだ……」

 

 

 ワイルドなウサギさんにうつつを抜かしていたり、ココアちゃんと楽しくお喋りしていて、零君たちのことをすっかり忘れてたよ……。そっか、穂乃果迷子になっちゃったかぁ~アハハハ、ハハハ……はぁ~。

 

 

「ど、どうしよう……この街のこと全然知らないのに」

「私も一緒に探してあげるから元気出して、ね?」

「何から何までご迷惑をおかけします……」

 

 

 穂乃果から激突した挙句、パンまでご馳走になる約束をして、更には一緒に零君たちを探してもらうだなんて……これは後でしっかりとココアちゃんにお礼をしよう。なんなら、穂むらのほむまん24個セットを一年分贈呈することも辞さないよこれは。

 

 

 そんなお詫びの印で頭を駆け巡らせていると、穂乃果が通ってきた道から、上品そうな女の子がこちらに向かってきていることに気が付いた。

 

 

 

 

「見つけたわよココア!!」

 

 

 

 

「ん?あれ、シャロちゃんだ!やっほぉ~」

「シャロちゃん?」

 

 

 シャロちゃんと呼ばれた女の子は、ウェーブの掛かったくせ毛の金髪が特徴的で、カチューシャを着用している。なんだろう、一目見るだけで気品溢れるオーラを感じるというか、すごくお嬢様っぽい。でも背丈は小さくて可愛いけどね♪

 

 

「やっほーじゃいないわよ。アンタ、今買い出しの途中なんじゃないの?先輩から聞いたわよ」

「あ……忘れてたァアあああああああああああああああああああああああ!!」

「なぁ~んだ、ココアちゃんも穂乃果と一緒じゃん♪激突した時から、ココアちゃんとは波長が合うと思ってたんだ」

「私もだよ!やっぱり私と穂乃果ちゃんが出会ったのは、運命でもあり必然でもあったんだね!」

 

 

 パン愛好家というだけでも同志なのに、ここまでノリや意見が一致するのは珍しすぎるよ!穂乃果たちを出会わせてくれた、あのワイルドなウサギさんには感謝だね!

 

 

「あのぉ~2人共?それぞれ迷惑を掛けている人がいるってこと、忘れてない?」

「「あっ……」」

「全く、本当に似た者同士だわ……」

「アハハ……えぇと、シャロちゃんでよかったんだっけ?」

「えぇ、桐間紗路よ。よろしくね、高坂穂乃果さん」

「あれ、穂乃果の名前知ってるの?」

「さっきから自分のことを穂乃果って言ってたじゃない。それに千夜から聞いてるの、『高坂穂乃果って人が迷子だから、見かけたら教えてくれ』ってね。そしてあなたが神崎零さんの連れだって伝えられたけど」

「そうそう零君にことりちゃんに海未ちゃん!早く穂乃果のお友達を2人にも紹介したいよ!」

「だ・か・ら!今あなた迷子なのよ!!自覚あるの!?」

 

 

 そうだったそうだった!いやぁ~こうやってどんどんお友達の輪が広がって嬉しいから、つい話し込んじゃうんだよね。シャロちゃんのツッコミには勢いがあるし、話していて全然飽きないよ!

 

 でも、零君と海未ちゃんはカンカンに怒ってるだろうなぁ……今帰ると怖いから、もうちょっとだけ話し込んでちゃダメ?ダメですか……はい。

 

 

「千夜の話では、穂乃果の携帯に零さんたちが連絡を入れたって言ってたけど」

「携帯……あっ、それも忘れてた!!」

「もう~穂乃果ちゃんってば、うっかりさん♪」

「えへへ、よく言われるんだぁ~♪」

「アンタたちねぇ……はぁ」

 

 

 シャロちゃんは呆れたようにため息を吐く――――いや、もう完全に穂乃果たちに呆れてるねこれは。確かに穂乃果は結構うっかりさんなところはあるけど、今日はココアちゃんたちと出会って楽しくなっちゃっただけだもん!嬉しさが先行しちゃってたから、この忘れはノーカンノーカン。

 

 

「それじゃあ早く戻るわよ」

「そうだね、穂乃果ちゃんをお友達のところに送り届けてあげないと」

「人の心配もいいけど、アンタも早くラビットハウスに戻りなさい!!バイト中にサボってんじゃないわよ!!」

「はいぃぃ申し訳ございません!!」

 

 

 この時、穂乃果は悟った。

 シャロちゃん、海未ちゃん並に苦労してるんだなぁと。海未ちゃんとはいいお酒……はまだ未成年だから無理だけど、いいコーヒーが飲めそうだね。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 ここでもう一度サブタイを見てみましょう。いいツッコミをお待ちしています(笑)


 今回は『新日常』の一周年記念として、私の小説同士なのですがコラボ回を執筆してみました!
元々この2作品のキャラクターが非常に大好きで、いつかはクロスさせてみたかったのです。しかし『新日常』はメインキャラが13人、ごちうさでもメインと呼べるキャラは8~9人くらいはいるので、流石に全員を出演させることは不可能だということをお察しください。"ラブライブ!"側のメンバーは零君を入れて4人、ごちうさ側はココアたち5人が限度ですかね。

 そして元々は1話で収めるつもりだったのですが、これでようやく半分位です(笑)
なのでチノちゃんやリゼの登場は次回ということで、彼女たち推しの方には申し訳ないです!


 一周年記念と謳っているように、4月2日でこの小説が1歳の誕生日を迎えます!本当は2日にハーレム回を投稿しようと思っていたのですが、前述の理由から、その日はクロス回の後編となりそうです。その後、ハーレムの真髄回を投稿します。また一周年の感想は、4月2日投稿時にでも語ろうかと思っています。


新たに高評価を下さった

孤独の龍さん、与那覇さん

ありがとうございました!


Twitter始めてみた。
 https://twitter.com/CamelliaDahlia

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