ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 テコ入れ回。
 水着回になると女の子の水着の描写だけで文字数を奪われるので、必然的に前後編になってしまいます()


恋と青春のビーチサイド(前編)

 青い海、白い砂浜!! 青い空、輝く太陽!!  どこを見渡しても綺麗な自然が広がり、これほどまでに海開きな日はないだろう。日光で大海原がうねり輝き、砂浜もダイヤモンドのように煌びやかに輝いている。かと言って肌の艶を脅かすような強烈な日差しではなく、程よい暖かさで潮の香りも優しく満ちて居心地がいい。やはり海をウリにしている地域だけのことはあり、ビーチパラソルの下で寝そべってぼぉ~っとしているだけでも日々の疲れが取れそうだ。

 

 ただでさえ毎日教育実習の名の元で正社員教師からこき使われてるっていうのに、Aqoursの面々の面倒まで見てやってるんだからたまにはバカンス気分に浸ってもいいだろう。それにもうあと1週間で教育実習も終わるから、この綺麗な海を堪能せずに去るのはいささか勿体無い。ここへ来てまだ2週間程度の俺だが、もうこの街は第二の故郷と言っていいほどたくさんの思い出がある。そんな思い出を飾ってくれたこの海に、俺から直々に出向いてやったんだ感謝してくれ。俺に褒められるって、女の子なら卒倒するほどなんだぞ??

 

 しかし、ここまで内浦の海を持ち上げたのにも関わらず、俺の視界に海など映っていなかった。

 それもそのはず、目の前には自然の神秘を遥かに凌ぐ光景が広がっているのだから。その肌色を眩しく輝かせ、水も滴るいい女神たちがな。

 

 

「曜ちゃんいっくよーーっ!!」

「ヨーソロー!!」

「それっ!!」

「ちょっ!? 千歌ちゃんビーチボール高く上げすぎ!!」

 

 

 海に足首を突っ込みながら、千歌と曜はビーチバレーを楽しんでいた。そして俺はそんな2人が水着ではしゃいでいる姿を嗜んでいる。

 千歌の水着は上下共に黄色を基調としている、良くも悪くもシンプルな水着だ。下手に背伸びをして着飾らないのが彼女の無垢さを表現しているが、高校2年生にしては成長し過ぎているふくよかな胸が無邪気な彼女にミスマッチで微かに扇情的だ。

 曜は水色の水着で、水泳で育まれたくびれのある綺麗なスタイルをこれでもかというくらいに主張させている。彼女の水着と言えばスクール水着のイメージなのだが、逆にスク水姿を見慣れているからこそ普通の水着の可愛さと露出する肌の張りが際立っていた。

 

 2人とも活発なタイプなので、ただのビーチバレーであっても激しく動き回る。そうなればもちろん水着がズレそうになるくらいに胸が揺れ、下の水着も徐々におしりに食い込んでいく。どうだ? 海なんかよりもよっぽどこっちの光景の方が神秘的だろ?

 

 

「せんせぇ~!! そんなところで寝てないで一緒に遊ぼうよ~!! 梨子ちゃんも~!!」

「呼ばれてるぞ、梨子」

「今は作曲のイメージを想像しているところなので遊べません。というより、今日はAqoursの練習や歌詞作りのための海合宿なんですよね? 遊んでいていいんですか?」

「いいんじゃねぇの。いつも座って唸りながら考えてるんだったら、たまには思いっきり羽を伸ばしてみた方がいつもとは違うインスピレーションが浮かぶかもしれないし」

「いや、千歌ちゃんの場合は大抵歌詞が完成しないからとみんなに泣きついたりしてますけど……」

「…………ちょっとでもアイツを擁護しようとした俺が馬鹿みたいじゃねぇか」

「一度先生から千歌ちゃんをビシッと叱って欲しいです」

 

 

 俺の左隣に座っている梨子は、そう言いながら溜息をつく。歌詞がなければ作曲のしようがないので、作曲家にとっては作詞家の怠慢がストレスの一番の原因だろう。こうして思い返してみると、海未と真姫の組み合わせって無難であり最高の組み合わせだったんじゃないか?

 

 ちなみに梨子の水着は薄いピンク色。中々背伸びをしていると思ったが、彼女の容姿は年相応にも見えるし高校生よりも上にも見えるので、そこまで気になることではない。それよりも、ナチュラルに俺の隣に座っていることの方が驚きだ。以前だったら自分の肌すらも俺に見られるのを嫌っていたはずなのになぁ。それに寝転がっているせいか、顔の横に彼女の生太ももがある光景が本当に気にかかって仕方がないんだが!!

 

 

「そういや、他のみんなは何やってんだろう」

「善子ちゃんとルビィちゃんは……もぐもぐ……あそこにいるずら……むぐむぐ」

「喋るか食うかどっちかにしような、花丸……」

「ふぁ~い……もぐもぐ」

 

 

 俺の右隣に座っている花丸は、のっぽパン袋を開けて美味しそうに貪り食っていた。食べながら喋っているせいでパンくずがポロポロと溢れているが、そんな意地汚い様子を見ていると以前に図書館で見た清楚な彼女が嘘のように思えてくる。濡れ場シーンなんかでは動じないエロ耐性がある純粋なコイツが、まさか幼稚園のガキみたいな食い方してるとは目を逸らしたくなっちまうぞ……。そんな子供っぽい姿も可愛いと言えば可愛いんだけどね。

 

 ちなみに彼女の水着は肌に合うベージュ色なのだが、お菓子を食う目的でここに来ているのか薄手の青いパーカーを着ているので魅力半減だ。せっかく海に来てるんだからもっと開放的になってもいいだろうよ。まあ俺が花丸のわがままボディを水着込みで見たいだけなのだが……。

 

 

「違うわよルビィ!! もっとこう、色気を出すポーズ取れないの!?」

「そ、そんなのルビィには無理だよぉ……!!」

「あなたはヨハネのリトルデーモンなのよ!? このヨハネの大いなる力を授かってるんだから、不可能なんて何もないの!!」

「いつもその常套句でルビィを言いくるめようとしてるよね!?」

「さぁルビィ、もっと扇情的になりなさい!!! 幼気なあなたのエロスを地球人たちに見せつけ魅了して、ゆくゆくは全員ヨハネの眷属に洗脳するの!!」

「もう意味分からないよぉ……」

 

「なにやってんだアイツら……」

 

 

 善子はノートパソコンのキーボードを鳴らし、ルビィは善子の命令のアダルティックさにビクビクしている謎の光景が広がっていた。そして段々と善子の目が血走り、キーボードを高速で打ち鳴らしている。

 

 2人の水着は善子が紺色、ルビィが桃色基調の赤色だ。どちらも物凄くスタイルがいい訳ではないのだが、ここ数ヶ月間のスクールアイドル活動は伊達ではなく、普通のJKに比べれば程よく身体が引き締まっている。他のメンバーと比べれば小柄ながらも、男の目を惹きつける身体になったのも俺の指導の賜物だろう。

 

 

「おーい善子! スクールアイドルにあるまじき形相になってるぞ!」

「善子っていうなヨハネよ!! それに今小説書いてるから邪魔しないで!!」

「いつから作家になったんだお前……」

「リトルデーモンの黒澤ルビィは主であるヨハネから力を授かり、人間を魅了して自分と同じ眷属に洗脳するための作戦を企てるの。でも逆に人間に囚われてしまい、堕天使の謎を調べる調査団によって身体の隅々まで調べられちゃう! ルビィはたかが人間ごときの手に屈するはずがないと抵抗するんだけど、調査団の男たちはかなりのヤり手で、ルビィの身体は意思に反してどんどん気持ちよくなっていき――――」

「待って待って!! ルビィそんなヒドイことされちゃうの!?!? 登場人物のモデルになるだけだよね!? 実際にルビィの名前は使わないよね!?」

 

 

 もう同人誌御用達の王道エロ展開じゃねぇか……。しかもその展開が女子高校生でかつまだ1年の善子が妄想してるんだから世も末だ。まあ堕天使云々の中二病丸出しの小説よりかは、王道エロ展開のある小説の方が遥かに読んでもらいやすいが。偏見かもしれないけど、そのような小説を読む人って程度の違いはあれどみんな変態だから。

 

 

「全く皆さん遊んでばかり……。正直、大体は予想できていましたけど」

「まあまあダイヤ。最近かなり練習も煮詰めてたからたまにはいいんじゃない? 新曲作りという合宿の目的さえ見失わなければね」

「そう言いますけど果南さん、あなたもダイビングスーツを持って一体何をしようとしているんです?」

「海を目の前にしたら、ダイバーの血が騒いでならないからね。それじゃあちょっと泳いでくる!」

「あっ、果南さん!! 全くあの深海魚は……」

 

 

 何気なくボソッと聞こえたその呟きが一番怖いんだけど!? でもAqoursの真面目ちゃん代表である果南までもが遊びに走ったら、ダイヤの頭が痛くなるのも分からなくはない。だって最年長である3年生のもう1人の性格があんなのだからなぁ……。

 

 ダイヤの水着は純粋な黒髪とは対称的に、清純さを感じさせるくらいに真っ白だ。よく観察しなければ肌の白さと水着の白さが同化しているように思え、全裸に見えなくもないという錯覚を引き起こされる。スタイルは決して凹凸があるとは言えないが、その身体の細さは女性にとっては憧れの的だろう。

 

 もう既に海へ飛び込んでしまったが、果南の水着は海そのものを表しているかのような青色だった。彼女も曜と同じ普段はダイビングスーツ姿が基本なので、あまり肌の露出を見ることはない。だからこそ水着だけでは隠せない横乳やおしり肉など付いているところは肉厚に、逆に肉が不要な部分は引き締まっているスタイルの良さが如実に現れていた。

 

 

 それにしても、みんないい身体してるよなぁ。俺が目を付けた女の子たちのスタイルがいいのか、それとも俺が目を付けているからこそみんなのスタイルが良くなっているのか。前者なら俺の目に狂いがなく、後者なら俺のためにカラダ作りをしてくれる女の子たちご苦労さんだ。

 

 しかしどちらにせよ、女の子たちの身体をここまで合法的に見られるのも顧問という立ち位置のおかげだろう。卑しい胸の谷間、背中の滑らかなライン、蠱惑的な脇腹、お腹の柔らかな肉付き、艶のある太もも、ふくらはぎの質感――――どれもこれも水着という解放的な姿でないと見られないものばかりだ。しかも水着の防御壁があるのおかげか、みんなは誰も恥ずかしがって肌を見せまいとはしていない。それは俺に己の身体を見せつけているということ、つまりいくら女の子の肌を見ても後ろめたい気持ちは一切感じない訳だ。だって向こうから見せつけてくるんだから、見ちゃうのは仕方ないじゃん?

 

 

 腰を上げて座りながらそんな楽園を視姦していると、不意に後ろから怪しげな気配を感じた。

 振り向こうとしたその時、既に目の前に2つの肉丘――――もとい、おっぱいが広がっていた。俺の顔はそのおっぱいに包み込まれるように抱きしめられる。

 

 

「先生ってば、さっきからどこ見てるのぉ♪」

「うっ、がぁっ!! ま、鞠莉か!?」

「That's right! 女の子をおっぱいで判別できるなんて、先生ってばえっち~♪」

「違う!! Aqoursの中でこんなイタズラをするのはお前くらいだからだよ!!」

「Wow! そこまで私のことを分かってくれているなんて、ちょっと感激!」

「うぐっ!! んっ、ぐぐ……!!」

 

 

 鞠莉は自身の象徴の1つである自慢の巨乳を駆使して、俺の顔面をおっぱいで圧迫しやがる。ただおっぱいに顔を埋めるなら今まで幾度となく経験してきたのでそこまで取り乱すことではないが、問題なのは体勢だ。鞠莉は右腕を俺の頭に、左腕を背中に回し、暴れないように自分の脚で俺の脚をガッチリと固定している。そのせいでいくら女の子が相手だからと言っても、ここまでしっかりと締め付けられたら力を入れたところでまともに抵抗すらできない。しかも彼女の胸が柔らかすぎて、その感触が押し付けられる度に力が抜けるのでなおさらだ。

 

 

「ちょ、ちょっと鞠莉さん!? 先生困ってますけど……」

「大丈夫よ梨子。先生はこうしてあげればあげるほど、赤ちゃんみたいにもがいて喜ぶんだから♪」

「間違ってないけど、う、ぐっ……!!」

「ん~? 何言ってるのか分からないよ、先生♪」

「それはお前が勝手に……ぐぐっ! は、花丸助けてくれ!!」

「鞠莉さんも先生も大胆ずら……もぐもぐ」

「使えねぇ!!」

 

 

 隣で逆レイプ一歩手前の騒ぎが起こってるにも関わらず、花丸は持ち前の無頓着さを発揮してこちらに干渉しようとしない。鞠莉に襲われているせいでラブコメ御用達の現場と、美少女がほのぼのとお菓子を食べている現場の2つにくっきりと分かれている。同じビーチパラソルの下なのにここまで世界観が違うとか何事だよ……。

 

 

「つうか、どうしてこんなことをするんだ!?」

「どうしてって、先生があまりに無防備だったから襲っちゃった♪」

「理由が通り魔そのものじゃねぇか!?」

「だって先に『襲うよ』と宣告する通り魔はいないでしょ? つまりそういうことよ!」

「襲う宣言をしようがしまいが関係ないってこと分かってるよな!?」

 

 

 コイツが本当に無防備な俺を見て襲うと決めたのなら、将来は通り魔か痴漢魔になった方がAV業界の足しになるかもしれないぞ。どうやらAVは8割はヤラセらしいから、残る少数派に貢献できるかもな。

 

 そんな冗談はさておき、鞠莉の水着は紫を基調にしたマイクロではないけどマイクロに近いビキニだ。胸の露出も多いせいで、なおさら俺の顔は彼女の胸の弾力を浴びることとなる。流石Aqoursナンバー1のボリュームを誇る胸。他のメンバーの胸にも多少触れたことはあるものの、質感も触感も鞠莉のものが随一だ。

 

 

「鞠莉さん……。今回の合宿は新曲のアイデア出しのためなので、遊ぶ暇はないと伝えておきましたわよね……?」

「もう、ダイヤってば名前の通り頭が硬いんだから。頭も硬ければ心も頑固だし、乳首も硬いしで名前通りダイヤモンドみたい」

「今なんと仰いました……? 聞き捨てならないセリフが聞こえたような気がしたのですが……」

 

 

 ちょっとさっきの事実をもう一度言ってくれ! そしてその事実について詳しくねっとりと検証したいんだけど……無理ですかそうですか。どうして鞠莉がそんなことを知っているのかは分からないが、女の子同士って意外と胸を揉み合ったりしてるらしいから不自然ではないと言えば不自然ではない。特に鞠莉はイタズラでダイヤや果南の胸を触る時があるから、その2人の生態については俺よりもよく知っているだろう。羨ましい!!

 

 

「あれぇ~先生? ダイヤのどこを想像してるのかなぁ~?」

「な゛っ!?!? きょ、教師のくせに破廉恥ですわよ先生!!」

「どうしてそうなる!? とりあえず何でも俺に責任を押し付けておけばいい風潮やめろ!!」

「なんだ先生分かってるじゃない♪ 自分が女の子の怒りの捌け口だって」

「ドMかよ……。もうこの際自分が変態だってことは認めるけど、至ってノーマルだからな俺!!」

 

 

 勘違いされそうだから主張しておく。俺は今まで色々な趣味趣向をここで語ってきたが、それは一般男子なら誰もが抱く性癖であり、これまで曝け出してきた性癖の中で偏ったモノはほんの一握り、もしくは0のはずだ。だから俺は高らかに宣言をする。変態だが至極ノーマルな性癖の持ち主だと。

 

 

「なぁ鞠莉、そろそろ離してくれねぇか? その……さ、胸圧が半端なくてそろそろどっぷり浸かっちゃいそうだから」

「そうですわよ! 先生困っているではありませんか!!」

「仕方ない。嫉妬するダイヤは怖いからねぇ~」

「し、嫉妬ってどういうことですの!?」

「えっ、違うの? 自分の胸じゃ先生にこんなことはできないから、私に嫉妬してるのかと思ったよ」

「な゛っ……そ、そんなことありませんから!! 先生もこんな肉の塊に粘着してないで、早く離れてください!!」

「頑固汚れみたいに言ってやるなよ……。それに抜け出せるのならとっくに抜け出してるよ」

 

 

 未だに雁字搦(がんじがら)めの体勢で鞠莉にホールドされている俺だが、傍から見たらJKに組み伏せられる二十歳超えの男というなんとも情けない構図が広がっている。まあ俺の心もこのまま鞠莉のおっぱいを堪能したいというワガママな欲求が多少なりともあるので、100%の力で抵抗できないというのが本音だが。

 

 

「先生やっぱり……もぐもぐ……ちょっと嬉しそうな顔してるずら……もぐもぐ」

「余計なこと言わなくてもいいから!! 食うか喋るかどっちかにしような!?」

「あながち間違ってもないですよ。さっきから叫んでいる内容とは裏腹に、声は嬉しそうですもん」

「梨子……お前も敵だったのか??」

「敵というか、そもそも味方になった覚えがないんですが」

「協定を忘れたのか!? このレ――――」

 

 

 その瞬間、梨子からお仕置きを兼ねたビンタが頬に炸裂した。テレビでビンタ音のSEに使えるくらいの決まり手であり、まさにお手本のようなビンタで痛みよりもそっちに感動してしまうくらいだ。あまりにも綺麗な音だったから、鞠莉もダイヤも、横でお菓子を貪り食っていた花丸すらもポカーンとしていた。

 ちなみにビンタされた理由はお察しのこと。決して口外してはならない彼女の趣味を思わず叫びそうになったからだ。これは味方だと思われなくても仕方ねぇわ……。

 

 

「梨子さん、あなた……結構大胆ですのね」

「でも顔赤くなってるずら」

「よ、余計な詮索はしなくてもいいですから!! 私のことは忘れて先生で遊んでいてください!!」

「おい俺を売るな!!」

 

 

 ここで梨子の趣味バラシをしたらそれはそれで面白く、俺も鞠莉に弄ばれるスパイラルから抜け出せるかもしれない。だがそうしてしまうとここまで良好に築いてきた梨子との関係からも脱却してしまうかもしれないので、ここはグッと我慢だ。つうか、全然離してくれねぇなコイツ……。

 

 

「あ゛ぁああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

「こ、今度は何だよ!?」

 

 

 一難去ってまた一難なのか、さっきまで離れたところで曜とビーチバレーをしていた千歌の叫び声が聞こえて来る。声のする方に頭を向けると、千歌と曜がいつの間にか近くにまでやって来て、ビーチパラソルの下にいる俺たちを覗いていた。

 

 

「鞠莉ちゃんズルい!! 私も先生を抱っこしてあげたいのに!!」

「おい、子供のおもちゃじゃねぇんだぞ俺は……」

「でもそんな感じがするよね、曜ちゃん?」

「うん。さっきからバタバタ騒いで、駄々っ子の子供みたいで可愛かったですよ!」

「ビーチバレーをしていたんじゃないのか……」

「それ以上に先生に夢中ですから♪」

「そ、そうか……」

 

 

 唐突にそういうことを言うのはやめてくれ、マジでドキッとするからさぁ……。しかし心を乱しているのは俺だけで、千歌は特に何とも思ってないだろう。もう自然と口からそのような言葉が漏れ出すあたり、俺への好意が高いってことだから嬉しくはある。

 

 ここでまた俺たちから離れたところから、R-18小説のロケハンをしていて今回の合宿の目的を完全に見失っている2人の声が聞こえてくる。

 

 

「ほらルビィ、みんなみたいに先生に抱きつきなさい!! 男に抱かれているアンタのリアルな表情を見れば、絶対に筆も進むから!!」

「そんなの無理だよぉ!! 先生であっても男の人なんて……!!」

「安心しなさい。先生に抱きしめられると心も身体もポカポカして、家族でも友達でも感じられないどこか不思議な感情が湧き上がってくるから」

「詳しいね善子ちゃん。もしかして先生に――――」

「あっ……あ゛ぁああああああああああああああ今のなし!! 先生なんかに身体を許す訳ないでしょ!!」

「その表現、ちょっと危ないよ……」

 

 

 エロ小説なんて書こうとしているから、日常会話でもそんなフレーズが出てくるんだよ……。

 それにしても、善子の身体も俺に負けずとも劣らず暖かかった記憶がある。そういや彼女の不幸体質改善作戦以降、目立った不幸話を聞かないので少しは効き目があったのだろうか。もしそうだとしても俺のハグのおかげかは分からないが、照れ隠しをするってことは何かしらの影響を彼女に与えたと思う。

 

 

「こうなったらみんなも先生をお人形さんのように抱きしめてみたらどう? 胸を当ててあげるとすぐに喜ぶから♪」

「ふざけんな。そんな単純な男じゃねぇ」

「それはやってみてからのお楽しみ! 曜! それパ~ス!」

「おわっ!!」

「えっ、私!?」

 

 

 突然鞠莉に背中を押された俺は、曜に襲いかかる形で全身から倒れようとする。

 しかし、曜はこう見えても運動能力が抜群の女の子である。緊急回避のためか咄嗟に倒れてきた俺の腕を掴むと、その勢いを利用して後ろへ放り投げた。いくら女性であっても力の入れどころと体勢さえ合っていれば、成人男性など軽々投げ飛ばせることを今まさに体験する。空中で一瞬視界が砂浜一色に染められたと思ったら、次の瞬間には空の青一色になるなど目まぐるしく変わる景色に着地する前から軽くクラクラしていた。

 

 そして更に次の瞬間には、海の綺麗な透明水が視界に広がって――――――水しぶきの音が大きく響き渡った。

 

 

「うっぷ!!」

「えぇっ!? せ、先生……?」

「か、果南……か」

「どうしたんですか先生!! ちょっとみんなぁーーーーっ!! いきなり先生が空からダイブしてきたんだけどぉーーーっ!!」

 

 

 丁度海に潜っていた果南に助けられた俺だが、もう既に意識半分で気絶しかかっている。辛うじて果南たちの声だけは聞こえるが、こっちからは行動を起こすことも声を出すことすらもできそうにない。

 

 俺は果南の肩を借りて何とかビーチサイドに戻ってくると、みんなが集まっているビーチパラソルの下に寝かせられる。さっき鞠莉たちが言ってたけど、もう本当のお人形さんみたいになってるな俺……。気分も悪くないし海にダイブしたおかげで身体に痛みもないので、意識が半分飛んでいることだけが気がかりだ。

 

 

「なるほどね。また鞠莉が遊んじゃったと」

「ゴメンなさい!! 先生の反応が面白くて……」

「まあ今は先生の意識を取り戻すことが最優先だね。幸いにも呼吸はしっかりしてるから、軽く人工呼吸をするくらいでいいと思うけど」

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

「ん? どうしたのみんな?」

「か、果南さん……今なんと仰いました?」

「だから軽く人工呼吸を」

「誰が……?」

「誰がって――――あっ!」

 

 

 果南も全てを察したようで、Aqours一同が全員沈黙する。

 俺に人工呼吸をする。つまり――――――Mouth-to-Mouthってことだ。

 

 

 

 

To Be Continued……

 




 お化け騒動同様に究極の選択を迫られたAqours。
 次回、零君を巡って一波乱かも……??




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浪花さん、りはさん

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