ラブライブ!~蓮ノ空との新たなる日常~   作:薮椿

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 今回はこの小説のUA(アクセス数)が100万を突破したため、以前からやりたいと話していた妹回です。

 しかしシスターズだけだと普段のお話と対して雰囲気が変わらないので、今回は更に妹キャラを増やしてガチの妹パラダイスにしてみました(笑)


【特別編】兄×妹×妹×妹×妹×妹

 

「おにーちゃん……おにーちゃん……」

 

 

 自分の名前を呼ぶ妹の声が聞こえ、俺は重い瞼に抗いながらゆっくりと目覚める。だが、ぼやけていた視界がはっきりとした時に映りこんだ時計の短針が「8」の文字を指し示していたのを見て、俺は再び瞼を降ろした。朝だということは分かっているが今日は休日、少しくらい遅く起きても文句を言われないし言わせない。ただでさえほぼ毎日μ'sの練習に付き合って疲れてるから、休日くらいはのんびりと寝かせて欲しいものだ。

 

 

「おにーちゃん……おにーちゃん……」

 

 

 しかし、妹さんは俺の眼覚めをご所望のようだ。こうなってしまうとコイツは俺が目覚めるまで一生耳元で「おにーちゃん」と囁き続けるのだが、逆にそれが心地よい子守歌になっていることに恐らく気付いていない。年下の女の子に寝かしつけてもらうなんて男としてのプライドが切り裂かれそうだが、そんなものは睡魔に比べれば安い代償だ。

 

 俺は寝る。どれだけ可愛い妹であろうとも、だからと言って兄が何でも言うことを聞くと思うなよ? 兄は妹の欲求を満たす都合のいい玩具じゃないんだ。たまには妹にもこうして世の中の厳しさを教えてあげないとな。

 

 

「おにーちゃんの、相変わらずおっきい……。脱がしていいかな……? いいよね!」

「!?!? ちょいちょいちょいちょい!!」

「あっ、起きた! おはよう、おにーちゃん!」

「おはよう、ここあ……って、ここあ!?」

 

 

 俺の目覚めを笑顔で迎えてくれたのは、矢澤にこの妹である矢澤ここあだった。

 てっきり楓だと思っていたので驚いたのだが、何よりビックリしたのはコイツの行動だ。さっき俺のズボンを脱がそうとしてたよな……? ここあの様子を見ても特に焦ったりしている訳ではなく、むしろ久しぶりに俺と会えたのが嬉しいのかずっと嬉しそうにしている。男のズボンを脱がそうとしていた奴がそんな満面な笑みを浮かべていると、ちょっと不気味なんだけど……。最近の女子学生は小遣い稼ぎに痴漢冤罪を仕立て上げるらしいし、ここあも俺と勝手に既成事実を作って慰謝料を請求しようとしてるのでは……? あのにこの妹だし、ありえるかも。

 

 

「久しぶりだね、おにーちゃん♪」

「久しぶりなのはそうだけど、お前さっき何をしようとしてた……?」

「ズボンを脱がそうとしてたこと? 男の人ってやっぱり朝は勃つんだなぁと思って。だから実際に見てみたくなったの!」

「そんな子供のような好奇心で言われても……」

「どうして? 別に減るものでもないし、おにーちゃんも見られたら喜ぶでしょ?」

「俺を露出魔みたいに言うんじゃねぇ!!」

 

 

 ネタで言っているのならまだしも、何の悪びれもなく露出魔認定してくるんだから尚更タチが悪い。覚えたての性知識を口に出したがるのは中学生の性なので、気にするだけ負けなのかもしれない。しかし今のここあは中学3年生、出会った頃は純粋の塊であるピュアな小学生だったのに誰に似てこうなったんだか……。

 

 

「つうか、俺のベッドに潜り込んで何をしてたんだ?」

「えっ? 女の子が男の人のベッドに潜り込む理由なんて1つしかないでしょ? 子供を作るために決まってるじゃん!」

「お前、子作りってのが具体的にどんなことをするのか知ってるのか……?」

「もちろん! だからおにーちゃんのズボンを脱がそうとしてたんだよ。おにーちゃんが見せてくれた"どーじんし"っていうのに、女の人が男の人のを咥えてるイラストがあったよね? それを真似してみようと思って♪」

「あっ、そう……」

 

 

 間違っているけど間違っていない子作りの解釈に、もはや苦笑いでしか反応できない。このまま間違った知識をここあに植え付けておくのか、それとも性教育として勘違いを正してやった方がいいのか……。多分だけど、ここあはまだ子作りがどれだけ官能的なのかを理解していない。そもそもコイツにエロい、発情、興奮と言った概念があるどうかも分からないため、俺のモノをしゃぶろうとしていたのも単純に子供故の好奇心からだろう。中学3年生にもなってこの手の知識に疎いのはそれはそれで躾たくなる衝動に駆られるが、そう言ったら言ったでこの世の中はすぐにロリコン判定を下してくるため、ここは敢えて今のここあを温かく見守ろう。

 

 ちなみにここあが言っていた、俺に同人誌を見せつけられたというのはまさしく事実である。事実とは言っても、4年前はまだ小学生だったコイツがそれこそ好奇心で俺の持つ同人誌を奪って勝手に読み漁ったんだけどな。それにその時はコイツの姉もいたため、俺はロリっ子2人にエロ本を見せたド畜生というレッテルを張られてこの4年間を生きている。

 

 そのせいかは知らないが、ここあが知識だけは無駄にある女子中学生に育ってしまった。普段はそこまで会う機会もないのだが、こうして顔を合わせると"おにーちゃん"と無邪気に慕ってくれているのにも関わらず行動だけは変態だから非常に反応が困る。言うなれば幼稚園児が珍しい昆虫を見つけて好奇心旺盛になって喜ぶ様と、俺のズボンを脱がそうとするここあの心情は恐らく一緒だろう。中身がピュアな子供のまま育った結果がこれだよ……。

 

 

 未だにベッドから降りようとしないここあをどうしようか検討していると、女の子の声と共に自室のドアが開いた。

 

 

「お兄様ー? 起きていらっしゃいますか?」

「こ、こころ!?」

 

 

 俺の部屋に入ってきたのは、何故かエプロンを装備しているここあの姉のこころだった。

 華のJKになったためか、4年前に中学一年生だった頃と比べると格段に大人っぽさが増している。軽くおめかししているからそう見えるだけかもしれないが、元々にこに大人の色気があるように妹の彼女も同様の魅力がある。だがその中にも矢澤姉妹特有の幼さはしっかりと残っており、背の低さや慎ましやかな胸はまさににこの体型そのものだ。だから大人っぽいけどロリっ子にも見えるという、奇妙な現象が起こっているのが今のこころなのである。

 

 それにしても、どうしてエプロンなんか付けてんだコイツ……? 俺の部屋にも何食わぬ顔で入ってきたし、まるで本当の妹みたいじゃねぇか。俺の驚いている顔を見てもこころはキョトンとしながら首を傾げるだけなので、もはや妹ではなく妻のポジションに堂々と君臨している。そのせいでここはパラレルワールドとかそういう類の世界なのかと勘違いしてしまいそうだ。

 

 

「あっ、起きていらっしゃったのですね! もうここあ、お兄様を起こしたらリビングへお連れするように言ったのに!」

「あはは、ゴメンゴメン。おにーちゃんのズボンが膨らんで苦しそうだったから、思わずベッドに潜り込んじゃった♪」

「ここあったら……」

「そうだそうだ、この変態を叱ってやってくれ」

「私も混ぜないってどういうこと!?」

「そっちかよ!?」

 

 

 こころは目を見開き眼力MAXで俺のズボン……ダイレクトに言ってしまえば股間部分をガン見する。その勢いに圧倒された俺は純粋っ子のように、思わず布団を下半身に羽織ってしまう。

 

 こころも4年前まではこんな性格ではなく、単純に性知識に興味を示す普通の女子中学生だった。だけどここあと同じ経緯で俺の同人誌を見てからというもの、今度はこれまで蓄えてきた性知識を俺を相手に披露しようと目論んでいるのだ。ことりや楓などの変態ちゃんたちに比べればまだ可愛いのだが、普通に考えて淫乱ちゃんが1人増えてその相手をしなければならないという時点で頭が痛くなる。しかもコイツはことりや楓とは違って純粋に俺と身体を触れ合わせることを願っているため、心を鬼にして無下にはできないのがこれまたもどかしい。あの時どうしてコイツらに薄い本なんか見せたんだ、過去の俺……。

 

 

「お兄様!! ベッドを共にしているということは、もしかしてもうここあと……!?」

「んな訳ねぇだろ!! それにお前もがっついてくるんじゃねぇ!!」

「ヒ、ヒドイ……!! 4年前、何も知らない幼気な私たちに肉棒をしゃぶらせてきたというのに……!!」

「うっ、ぐっ……」

 

 

 コイツ、俺が一番思い出したくないことを思い出させやがって……。

 確かに俺は同人誌をコイツらに見られた反動と、ロリっ子がエロ本を興味津々で眺めている光景に若干欲情して勢いに任せてあんな行動に出た。それは紛れもない事実であり、当時小学生と中学生であった性知識も何も知らない少女2人を利用したのは否定しようがない。ただ自分の性欲を解消するためだけにロリっ子を騙して自分のモノをしゃぶらせたあの事件は、俺の人生の中でも1、2を争うほどの黒歴史となっている。だからこそ忘れようとしていたのだが、コイツらは俺と会うたびにその話をネタに擦り寄ってきやがる。まだJKとJCだから可愛いものだが、大人の世界になったら絶対に口止め料を払わされていただろう。

 

 

「あの時に子作りしたのに、まだおにーちゃんの子供できないんだよねー」

「ここあ、何度も言ってるでしょ? それだけでは赤ちゃんはできないって」

「でもおクチに白い液を飲み込めばできるって……」

「それは上のおクチ。お兄様が言ってるのは下のおクチのことだから」

「下の、おクチ……?」

 

 

 まだ純粋(だと思う)なここあは淫語の知識がほぼ皆無なため、下のおクチと言われても首を傾げるだけでそれ以上のアクションはない。対してこころは目を輝かせながら俺と俺の下半身は交互に見つめ、無駄な期待感に満ち溢れている。そんな上目遣いで見つめられても、絶対にヤらせてなんかやらねぇぞ? それにコイツらに手を出したことがにこにバレでもしたら……そこそこシスコンなアイツのことだ、一体何時間、いや何日に渡る説教をされるか分かったものじゃない。そう考えると、あんなことがあったのにこの4年間バレてないのが奇跡だな……。

 

 そんなことを思っていると、こころも俺のベッドに乗り込んできた。俺から仕掛けて来ないから自分から仕掛けようって腹なんだろうが、生憎変態ちゃんで反応するような下半身は持ち合わせていないんでね。そもそも21歳の男が15歳の少女にちょっと淫語を言われただけで下半身が反応するなんて、それ以上の不名誉がこの世にあるだろうか? いや、ない。つまりそういうことだよ。

 

 

 だが、俺が相手にしなければならない妹はこの2人で終わりではなかった。

 

 

「な、何をしているんですか……?」

「えっ、雪穂!?」

 

 

 突然突き刺すような声が聞こえてきたので発生源に目を向けてみると、そこには俺を冷たい目で見る雪穂が佇んでいた。部屋の入口に立ったままその場から動こうとせず、むしろこっちへ来ることに抵抗を抱いているようだ。

 

 

「どうしてそんなに離れてんだよ……」

「だって、女子高校生と中学生をベッドに連れ込んでる男性の部屋なんて……」

「連れ込んでるんじゃない! コイツらが勝手に来ただけだ!!」

「そんなっ!? 私たちとは遊びだったのですね、お兄様……」

「服もこんなに脱がしたくせに……。おにーちゃんのばか」

「お前らどこでそんな言葉覚えてきてんだよ……。そしてここあは服を着ろ」

 

 

 こころは横座りで嘘泣きをし、ここあは自分の服を多少着崩しあたかもさっきまで事案が発生していたかのように目論む。もちろんそんなのは事実無根だし雪穂もそんなことは分かっていると思うが、成人男性がJKとJCをベッドを共にしている時点でシチュエーションの背景など関係なくポルノ案件だ。俺が真面目にベッドから降りろと命令すれば2人は従うので、それをしないということはつまり――――雪穂はそのように想像しているに違いない。

 

 

 すると雪穂と同じく俺に追い打ちを掛けるように、部屋の外からまた新たな女の子の声が聞こえてきた。

 

 

「雪穂ー! こころちゃんとここあちゃんがどこに行ったか知らない?」

「あ、亜里沙。ここにいるよ」

「ここって、零くんの部屋だよね……って、えぇっ!?」

「亜里沙も来てたのかよ……」

 

 

 亜里沙は俺の部屋に顔を覗かせると、俺をベッドを共にしているこころとここあの姿を見て目を見開いて驚いた。それもそのはず、亜里沙からしてみれば話の流れが分かっていない状態で嘘泣きしてるJKと服を着崩しているJCの姿が目に映ったんだ。ピュアを体現したような彼女からすれば、この状況を見て捉えることはただ1つ――――

 

 

「ご、ゴメンなさい!! お邪魔しました!!」

「亜里沙。言っておくけどお前の勘違いだからな」

「楓に教えてもらいました。男女の行為中に他の女性が横槍を入れてはいけないって……」

「だから、これはお前の勘違いで……」

「それに男性は見られていると興奮できないとも楓が言っていました。ほら、雪穂も部屋を出て!」

「いやいや、私は3人を呼びに来たんだって!」

「亜里沙お姉様もああ言ってますし、もうお兄様と私は公認みたいですよ♪」

「こういう時って、『おにーちゃんは何もしなくていいから私に任せて』って言うんだっけ……?」

「どこからツッコミを入れたらいいのか分かんねぇ……」

「そんなお兄様、突っ込むだなんて……♪」

 

 

 全員が口々に好き勝手喋るため、もう誰を相手にしてやったらいいのか分からなくなってきた……。いや、ここまで来たら全員無視でもいいんじゃないかと思えてさえくる。こんなのを1人1人相手にしていたら日が暮れるどころか、収拾がつかず今日一日ずっとコイツらの相手をさせられるハメになるからな。それにこの混乱に乗じて部屋を抜け出してもバレないんじゃないかこれ。

 

 

「全く、どうしてお兄ちゃんの周りにはすぐ女の子が集まっちゃうかなぁ~」

「へっ? か、楓……」

「えいっ♪」

「ちょっ!? お前いつの間に俺の後ろに!?」

「やだなぁお兄ちゃん♪ 私は常にお兄ちゃんの側にいるのに……フフッ」

 

 

 怖っ!? 楓の笑顔って計算され尽くした黒さを感じる時があるから、その実感が沸くたびに彼女からヤンデレ臭がする。今回も音もなく俺の背後に忍び寄り、胸を背中に押し付けながら耳元で囁いてくる。楓の恰好を見るとエプロンを装着しているので今まさに朝食を作っている最中だと察せるのだが、自らの仕事を放棄して何やってんだコイツは……? ていうか、これまでの一連の会話を聞いていたってことは、それなりに前からこの部屋にいたってことだよな? そう考えるとコイツの存在に全く気付かなかった俺たちが鈍感なのか、それともコイツの潜伏能力の高さが異常なのか……。どちらにせよ楓が来てしまった以上、話が今まで以上に拗れて面倒な事態になるのは確定だということだ。

 

 

「お兄ちゃんも気が早いねぇ~。まさかこんな幼気な女の子をベッドに連れ込んで、ズボンも膨らませてやる気満々とは……」

「お前も悪ふざけするんじゃねぇよ! ていうか、どうして雪穂たちがウチにいるんだ?」

「元々私と亜里沙は楓と遊ぶ予定があったので、集合場所である零君の家に向かっていたんです。でもその途中でこころちゃんとここあちゃんに会って――」

「私たちも便乗させてもらったという訳です!」

「そしたらおにーちゃんがまだ起きてないっていうから、私が起こしてあげたんだ! ここも起きちゃってたけどね♪」

「ちょっ、触ろうとすんな!!」

 

 

 無邪気な笑顔で下半身を弄ろうとしてくるここあの行為が本当に怖く、下手に二度寝をしたら俺が寝ている間に下半身同士が直結していた……なんて事態になりかねなかった。さっきも言ったがここあは幼稚園児の好奇心感覚で性に興味を抱いているので、性行為をすることも躊躇がないかもしれない。休日だからって昼まで寝ようとする心意気を捨てて正解だったよ……。

 

 

 それはそうと、こころとここあが家にいるのは雪穂と亜里沙にくっ付いてきたからだそうだ。改めて部屋を見渡してみると、この4年間で一度も邂逅したことのない組み合わせが揃っていることに気付く。シスターズ側もにこには妹がいるという情報しか知らず、逆に矢澤姉妹はμ'sにシスターズという妹グループが存在している程度の情報しか知らなかったため、こうしてお互いに会うのはこれが初めてだったりする。

 

 つまり、俺の周りは妹、妹、妹、妹、妹で構成され、まさにギャルゲーやエロゲーの世界観そのものの光景が目の前に広がっていた。こんな可愛い妹たちに囲まれている状況を妹キャラ好きの奴が体験したら、速攻で卒倒して萌え死んでしまうだろう。なんたってシスコンらしい俺(認めたくないが、周りがそう言ってくる)からしてみても、この光景は夢のようだ。特段妹萌えという訳じゃないけど、多方面からお兄ちゃん扱いされるのは悪い気分ではない。むしろお兄ちゃんお兄ちゃんと呼ばれるだけでも心が躍ってしまうため、やっぱり俺はシスコンの毛があるのかも……?

 

 

「あ、あのぉ……」

「ん? どうした亜里沙?」

「わ、私もそっちに行っていいですか!?」

「へっ……?」

「ちょっと亜里沙!? あっちってベッドのことだよね!?」

「みんながいいのなら私もいいかなぁ~と思いまして……ダメ、ですか……?」

 

 

 ぐっ……!! どんな経緯でどんな理由でベッドに上がりたいのかは知らないが、涙目上目遣いは卑怯だろ……。それがあればどんな屈強な男の心であっても溶かせるので、男と駆け引きをする時には必須とも言える女性の武器である。もちろんその相手は俺であっても例外じゃないため、俺自身もあっけなくその武器に屈服して何も言い返すことができなくなっていた。

 

 亜里沙は丸めた右手で口元を隠し少しでも恥ずかしさを紛らわそうとしているのだが、逆にその仕草でこっちの顔が赤くなっちゃうから! しかも妹キャラの彼女にこんな仕草をされたら、断ることなんてできねぇじゃん!!

 

 

「おにーちゃんのベッド広いから、亜里沙おねーちゃんもこっちおいでよー!」

「これ俺のベッドなんだけど……。どの権限を持ってお前が仕切ってんだよ……」

「そ、それでは失礼します! あっ、その代わり私にできることがあれば何でも申し付けください!!」

「な、何でも……だと!?」

「お兄ちゃん、今何でもに反応したね……?」

「流石はお兄様! 男らしいケダモノです!」

「褒めてねぇだろそれ!!」

「…………ホントに変態」

「雪穂さん、マジなトーンで暴言吐くのやめてくれません? 俺の心って案外豆腐メンタルだから……」

 

 

 サラッと流れるように毒を吐くのはいつも通りの雪穂なので、むしろ安心していい……のかもしれない。だが彼女の言いたいことは分からなくもなく、これで俺のベッドには4人の妹たちが集結していることになる。前にここあ、右にこころ、左に亜里沙、後ろに楓が配置され、まさに妹たちのミックスサンドだ。四方八方見渡しても妹、妹、妹、妹。これが妹ぱらだいすってやつか……。

 

 

「はぁ……とにかく一息ついたらリビングに来てください。もうすぐで朝食できますから」

「えっ、雪穂が作ってくれてんの?」

「愛するお兄ちゃんのために、妹たちみんなが愛情を込めて作ってるんだよ♪」

「はぁ!? 違うし!! 楓を待ってる間が暇だったから!!」

「でも雪穂、零くんの好みの味付けとか楓に何度も聞いてたよね?」

「そ、それはそのぉ……」

「お兄様。これはいわゆるツンデレって属性ですか?」

「雪穂おねーちゃんも素直じゃないね♪」

「ちょっ!? 年上をからかわないの!!」

 

 

 ツンデレキャラに弄られる能力が備わっているのはもはやデフォであり、JCとJKからも笑顔でかき乱される始末である。雪穂は年下にバカにされた羞恥に耐えられなくなったのか、両手で部屋のドアを持ったまま身体が自然と部屋の外に向いていた。

 

 

「ほら、あとは雪穂だけだよ? お兄ちゃんのベッドに乗ってないのは」

「乗る必要ないよね!? ていうか朝ごはん作ってる最中でしょ!?」

「え? 妹の朝ごはんはお兄ちゃんの精液一番搾りって相場は決まってるじゃん」

「そうだったの!? 私、普通にいつも通りの朝ごはん食べちゃってた……」

「亜里沙は楓の言うことをいちいち真に受けなくていいから! 楓も嘘ばっかり教えない!」

「楓お姉様の教え、とても勉強になります! しっかりと覚えておかなくちゃ!」

「メモも取らなくてもいい!!」

「それじゃあここあは朝ごはん頂いちゃおっかなぁ~♪」

「零君のズボンも脱がそうとしない!!」

 

 

 ヤバイ、雪穂がツッコミを連打しすぎて死にそうになってる……。でもこの微笑ましいやり取りを見ていると、コイツらが本当の姉妹なんじゃないかと錯覚してしまう。もしそうだったら、雪穂が一番上のお姉ちゃんなのは彼女の過労死しそうなツッコミを聞いてるだけでも明らかだ。俺はそんな雪穂に妹たちの対処を任せておけばいいため、お兄ちゃんとしても楽で仕方がない。楓と2人で静かに過ごすってのも悪くないが、こうして妹たちに囲まれて騒がしくも微笑ましい光景を眺めながら生活するのも悪くないかもな。

 

 

「零くん、お願いがあるんですけど……」

「どうした亜里沙?」

「今日だけでいいので、零くんのことを"お兄ちゃん"と呼んでいいですか……? 迷惑なら雪穂も付けますので!!」

「なにその流れ!? 私はオマケなの!?」

「ま、まぁ別にいいけど……」

「やった! えへへ……お兄ちゃん♪」

「……なんか照れるな」

「むぅ~私がお兄ちゃんって呼ぶ時よりも嬉しそう……」

「嬉しいんじゃなくて、いつもは名前で呼ばれるから新鮮なんだよ。お前からはいつもそう呼ばれてるから慣れてんだよこっちも」

 

 

 普段は何気なく"お兄ちゃん"と呼ばれている日常だが、こうして別の女の子からそう呼ばれると慣れないためドキッとしてしまう。しかもベッドの上で俺の身体に擦り寄り、上目遣い+微笑みのコンボで”お兄ちゃん”呼びとか妹萌えの人種でなくとも心を射抜かれるだろう。まさにみんなが本当の妹になったみたいで、いっそのことこれからこの家族で第二の人生を歩んでも不自然に感じないほどだ。

 

 

「ほら、雪穂お姉様も!」

「雪穂おねーちゃんもごあんな~い!」

「ちょっと2人共!? うわっ!!」

「おっと!」

 

 

 雪穂はこころとここあに腕を引っ張られ、俺のベッドにダイブする形で乗り込んでしまった。俺は勢いよく倒れてきた雪穂を抱きしめながら受け止めた訳だが、さっきまで妹たちに散々弄られて心が乱れている彼女にこんなことをしたらどうなるかはお察しのことで――――

 

 

「雪穂ったらお兄ちゃんの胸に飛び込んじゃって……やっぱり溜まってたんだね♪」

「ち、違うから!! これは不可抗力で私のせいじゃなくて……れ、零君もいつまで抱き着いているんですか!?」

「わざわざ受け止めてやったのにひでぇ言い草……。そうだな、お前もお兄ちゃんって呼んでくれたら離してやるよ」

「はぁ!? どうして私がそんなことを……」

「だったらずっと抱き着いたままだぞ?」

「うぅ……お、お兄ちゃん。お兄ちゃん!」

「…………」

「何か言ってくださいよ!!」

「いや、想像以上にグッと来たからさ……」

 

 

 ツンデレでもありクーデレでもある雪穂を中々自分の思い通りに従わせるのは難しいが、その柵を超えて"お兄ちゃん"呼びをさせてみるとその苦労の分だけ心をガッチリ掴まれる。しかも顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに"お兄ちゃん"と呼ぶその姿は、いつもの落ち着いた態度の彼女とはまた違ったギャップを感じられて非常に愛おしい。普段は大人っぽい雪穂だけど、こうして見るとやっぱり妹キャラが似合ってるよな。

 

 

「私もおにーちゃんをおにーちゃんって呼んでドキドキさせたい! おにーちゃん♪」

「いやお前もいつもそう呼んでるから……」

「お兄様。お兄様……。お兄様!!」

「そんなに連呼されるとありがたみがなくなるからな……?」

「お兄ちゃんが本当のお兄ちゃんなのは私だけなんだよねぇ~お兄ちゃん♪」

「どうして張り合ってんだよ……」

「お兄ちゃん! えへへ、零くんがお兄ちゃんだと安心しちゃいます♪」

「もうこうなったらいっそのこと……」

「全く、お兄ちゃんは妹相手にデレデレしすぎだから」

「妹だからだよ――――って、案外馴染むの早いな!?」

 

 

 こんな感じで、俺は妹たちに囲まれながら今日を過ごすことになった。もうこの時点で"お兄ちゃん"がゲシュタルト崩壊しそうになっているが、シスコン気味な俺からしてみればむしろ嬉しい現象だ。ベッドの上に5人もの妹を侍らせる生活を送れるなんて、もう本当に第二の人生を歩んでいいかも……。

 

 




 私は妹キャラが自分の兄のことを"お兄ちゃん"と呼んでいるだけでも心に来る人種なので、シスターズが登場する回は毎回特に気合が入っています。しかも今回は久々に矢澤姉妹の出演ということもあり、正直この1話だけでは物足りませんでした。
なのでまたこのような機会があったら今度はAqours側の妹キャラであるルビィや、Saint Snowの理亞だったりを登場させて、ガチで妹だらけの回にしてみようと思いました(笑)


 そしてこの話を投稿した1時間半後にはサンシャイン2期も放送開始となるため、今後Aqoursのキャラもμ'sに負けないくらい活躍させられたらいいなぁと思っています!


新たに☆10評価をくださった

ちいさん

ありがとうございます!

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